第35話「俺でもそうする」
俺たちが鎖円の中に入ると模様がゆっくり明滅し始める。
さっきも見ていたがコレはアレだ、「ご乗車の方はお急ぎください」の合図だ。
あ、俺ら3人だけだからもう出発してもイイっすヨ。
ピコン…… ピコン…… ピコン…… ピコン…… ピコン…… ピコン……
「…………」
はよ行けや。
模様の明滅は少しずつ早くなり、およそ1分ほどで点灯状態になった、そして……
カッ!!
一際強い光が放たれ目を閉じる。
再び目を開けるとそこには101体の骸骨の群れが出現していた。
…………
101体の白骨死体…… どう見ても人間の骨なんだがアレって元は人間だったのかな? いや…… ヒト種は滅多に魔物にならないってベルリネッタが言ってたっけ? それに魔物化してもかなり上位の魔物になるようなことも言ってた気が…… 確か『龍種』とか『デウスマギア』とか……
まぁアイツ等は元人間じゃないだろう、見た目も生物に見えないからな、変な葛藤やトラウマが発生することもない。言ってしまえば今から行われるのは供養だ、ちゃっちゃと片付けてしまおう。
「それじゃ作戦通り行こうか」
「イエスマスター」
「りょ、了解であります!」
まぁ作戦と呼べるほど立派なモノじゃないがな……
「プロトアームズ《C》局地戦用兵器・無限螺旋槍
プロトアームズ《S》高機動支援兵装・空間機動翼・同時展開」
ベルリネッタがいつものように戦闘用のオーパーツを呼び出す。
ロマン武器のドリル『無限螺旋槍』と…… 機械の翼!?
「ベルリネッタ…… それは……」
「? 重力下戦闘で使用する…… 空中戦用装備」
そりゃそうだろう、その見た目と名前で水中戦用装備とかはあり得ない……
空間機動翼と呼ばれたその装備はベルリネッタの背後に浮いている、直接接続はされないのか?
見た目はまんまアレだ、物語の後半で主人公が乗るロボットに付いてそうな可動式の羽根だ。きっと光る粒子が溢れ出して光の翼ッポイものをを形成するんだ。
「戦闘開始」
シュンッ! ドゴォン!!
ベルリネッタが一足先に戦闘を開始した。
今まで目の前にいたのに一瞬で敵集団に突っ込んでいた…… 速…… 自分でもよく目で追えたなって思える圧倒的な速度、まるで瞬間移動だ。
あれって生身の人間が使ったら内臓潰れてケツから噴き出すだろ、それほどの機動力だった。
だがその戦う姿は実に美しい…… 予想通り光の粒子が舞い遠目には天使っぽく見える。
ゴスロリ天使…… 武器はゴツイがそれがイイ…… 頭の上で光の輪っかが形成される装備ってないのかな?
「イヅナ様! 何のんきに観戦してるんですか!? 戦闘始まってるんですよッ!! ッてゆーか私たち攻撃のコトばかり考えていて防御のコト全く考えてませんよね! どーするんですか!! 集中砲火されたら1秒で死にますッ!!」
ユリアが今更騒ぎ出した、敵の攻撃が始まってから騒いでどうする、それくらい想定しておけよ。
お前の取り柄といったらオッパイと射撃だろ? その立派過ぎる胸の弾力でトゲ付き鉄球を跳ね返せよ!……と言いたいトコロだがそんなコトをしたら確実に血塗れスプラッタだ。
せめてトゲが付いていなければッ! ……いや、そういう問題じゃないか。
だったらその射撃の腕前で飛来するトゲ付き鉄球をスナイプしろよ。
「き…きたぁぁぁーーー!!!! あ… もうダメだ、ユリアリーデ・エルフィアナ享年34歳、主がポンコツなせいで冒険者歴半日で死す……」
誰がポンコツだコノヤロー、パニックで心の声が駄々洩れになってやがる。
つーかお前34だったのか? アラフォー一歩手前じゃねーか、その割にはお肌もプルプルで胸も全く垂れてないな。
エルフが見た目通りの年齢じゃないのはよくあるパターンだが、思っていた以上に中途半端な年齢だった。同年代か100歳越えのどっちかだと思ってたんだがなぁ……
おっと、今はそれどころじゃなかったな、ユリアのお仕置きは後にして今は迫りくる敵の砲撃を何とかするか。
「ストレージ起動、領域外からの飛来物を全て収納しろ」
「キャー! もうダメだぁ~…… ぁぁぁ~……」
鉄球は俺たちに着弾する前に音もなく消えていった。
しかしこの攻撃、微妙に弧を描いているモノのほぼ水平に飛んできた、敵との距離は100m近く離れているのにだ…… まともに喰らったらタダじゃ済まないな。
鉄球の直径は約10cm、重量10kg、ありゃ? 材質が鉄じゃない、ヤマダタイト? 誰だよ? 響きが異世界っぽくないな……
「アレ? 生きてる?」
「おいユリアリーデ34歳、いつまで呆けているんだ? さっさと攻撃しろ」
「なっ!? なぜ私の年齢をッ!? まさか心が読めるの!!?」
オメーが自分で言ったんだよポンコツ。
「敵の攻撃は俺が防いでいるからその隙に攻撃しろ」
「イ……イヅナ様は防御のコト考えてたんですね?」
「遠距離攻撃してくる奴と対峙して防御を考えない奴がいるワケないだろ」
もちろん防御のコトは考えてた、問題はそれを伝えるのを忘れていたってだけだ。
「いいから、防御のコトは俺に任せてユリアは攻撃に集中しろ」
「りょ、了解しました! 敵の攻撃を気にしなくていい射手の強さを御覧に入れます!」
ユリアは片膝をつく体勢でしゃがみ込み連続射撃を開始した……
この手のライフルはよく寝そべって撃つシーンを見た気がするんだが…… まぁ遮蔽物も何もないこの場所じゃかえって危険か。
ダァンッ!! ダァンッ!! ダァンッ!!
ユリアの持つ《電磁投射狙撃銃》は弾丸の補給が要らない。
まぁSF超兵器だからな、深く考えてはいけない…… 創作物、特にゲームとかだと装填数は設定されてても残弾数なんか有って無いようなモノだからな。
バアァーーーン!!!! バアァーーーン!!!! バアァーーーン!!!!
弾丸は盾弓骸骨の眉間あたりに命中する、そして体ごと爆発して粉々に吹っ飛び足首くらいしか残ってない。
巨大トカゲの時より威力は控えめだ、だがうまく当てれば1発で2~3匹巻き込めると思っていたのだが、1発目が着弾した直後に敵は密集隊形を解いて散開しやがった。
魔物のくせに統制が取れてる? 俺と違って骸骨将軍はお飾りじゃないらしい、ちゃんと働いてるのか……
俺なら死んだ後まで働きたくないな…… 生きてる今だって働きたくないのに……
一方ベルリネッタの方は……
飛翔骸骨も全部飛び上がっているが…… こちらも散開している、まぁ空中で密集とかしたらすぐに接触事故起こして墜落するよな。
だが妙なのは敵が1匹ずつベルリネッタに突っ込んでいってるってコトだ。
普通なら複数で突っ込んでいったり緩急を付けたりするものだ、少なくとも1匹ずつ挑んだりはしないだろう、そんなコトをしたところで順番に返り討ちに遭うのは確定的に明らかだ。
それでも1匹ずつ挑むなら考えられる理由は二つ、何かしらの罠か時間稼ぎだ。
そもそも小細工を弄するということは正攻法ではベルリネッタに勝てないということだ。う~ん…… あのベルリネッタに罠が通じるとは思えない。
つまり罠だったら安心して見ていられる、きっと罠ごとドリルで粉砕してくれるだろう。
問題は目的が時間稼ぎだった場合だ、いったい何がしたいんだろう? 時間をかけたって戦力が減るだけだ。
実際敵戦力はガンガン削られている、もうそろそろ半分くらいは倒せたかな?
ガゴン!!
「ッ!?」
ヤマダ球がストレージ領域外ギリギリの位置に着弾した? 珍しいなすでに数百発飛んできてるのに外れたのは初めてだ……
え? もしかしてこの砲弾って爆発するのか? まぁストレージ領域外で爆発しても問題ないが…… いや、ヤマダ球の成分表示では爆発する形跡は見られないが…… 魔法は何が起こるか判らないからな。
ビーーーッ!! ビーーーッ!!
!? なんだ!? 警戒アラーム!?
「イヅナ様ッ!!」
「ッ!?」
警戒アラームは後ろから聞こえた、ユリアの切羽詰まった声で視線を背後へ向けるとそこには何故か骸骨将軍が迫ってきていた。
「は??」
え? なんでコイツ目の前にいるんだよ? 意味が判らん! いやそれよりも……!
骸骨将軍は巨大な鎌を振り上げ今まさに俺の首を刈ろうとしているところだった!!
「うおおおぉぉぉおッ!?!?」
ブオオォオン!!
間一髪、右に飛ぶことで鎌を避けることに成功した。
俺ってこんなにも反射神経良かったのか、自分でも驚きだ。
それよりも……
「何だコイツ! 何で目の前にいるんだよ!?」
ユリアさんちゃんと見ててください! よそ見してた俺も悪いけどさ……
「分かりません!! 突然転移してきたんです!! こんな能力いままで確認されてません!!」
もしかして敵の数が半分以下になったら使ってくる能力か? コレを待ってたのか? 或いは転移のための魔力を充填していたのか……
この世界には転移で移動する術があるコトを知っていたのに忘れてた!
だが考えようによっては悪くない、多分コイツを倒せばこちらの勝利が確定する。
ならば反撃あるのみ! 相手は所詮骨だ! その肋骨をへし折って「くっ、アバラ2、3本いったか」って言わせてやる!
「《報復棘山田》!!」
先ほどから収納しまくってるトゲ付きヤマダ球をそのままお返しだ!
ガンッ!! ドスン!
「は?」
ストレージから撃ち出したヤマダ球は確かに肋骨を直撃した。
だが骸骨将軍はビクともしていない…… 相当なスピードと質量があったのにヒビ一つ入ってねーぞ!!
こいつのアバラ、クッソ硬いッ!!
ブンッブンッブンッ!!
攻守交代と云わんばかりに骸骨将軍は反撃に移る。
頭の上で大鎌を高速回転させ始めた、あ、ずりぃ! 柄を握ったまま手首部分が回転してやがる! 人間には決してできない挙動だ。
その状態で突進してくる…… リーチが長い分だけチェーンソーを振り回す殺人鬼より厄介だと思う。
「ちぃっ! ウオッ!? ひえっ!!」
ヤバイ! 避けるだけで精一杯だ! ベルリネッタさんマスターが大ピンチですよ!
しかしベルリネッタは遠くで飛翔骸骨の相手をしている…… 気付いてない……ワケじゃないよな? 俺が指示したせいだろうか? そんなプログラム通りにしか動けないキャラじゃないと思ってたんだが……
よし! ユリア! 俺が引きつけてる隙きに背後から撃て! 鎌振り回して人を襲う骨に遠慮はいらない!
しかしユリアはいつの間にかストレージ領域から出ていたため、敵の集中砲火を受けて逃げ惑ってる…… なんで俺の傍から離れてるんだ? お前、骸骨将軍から逃げただろ?
クソッ! どいつもこいつも微妙に役に立たない! こうなったら俺がやるしかないか……
もちろん鎖円の外まで逃げればいいんだがそれをするとターゲットがユリアに代わって確実に殺される、まだ魅惑の袋の中身を見ていないのに殺させるワケにはいかない!
しかしどうする? ナニかないか? 思い出せ! 相手は所詮ホネだ、カルシウムだ、なにか弱点は…… そういえば昔コーラを飲みすぎると骨が溶けるとか聞いたことあるな…… 残念! ストレージにコーラは1mlも入ってない!
いや、それ以前の問題だったな。
発想を変えろ! 骨じゃなくアンデッドだ! アンデッドは水に弱いって聞いたことがある気が…… 砂漠の真ん中だからなぁ、水なんか全く持ってない。
一応おしっこ収納してあるけど効くかな? 俺が美少女だったらまさに聖水なんだけど…… 今の状況でイヅナ印の聖水を掛けたらその状態で突っ込んでくるコトになる…… やめておこう。
ビシュン!!
「うおっ!?」
ヤバイ、どんどん速くなってきた、このままじゃ…… 何かないか? 何か……
………………
あ、ある! あった!
アンデッドに超効きそうなの!
両足に力を込め飛び上がる!
ダンッ!!
すると一気に10m以上も真上に跳躍ができた。
なにげにパワードスーツの機能を使ったの初めてだ、なかなか気持ちイイなコレ♪
だが今はアイツを倒すことが最優先だ!
「くらえ!! 《山吹色の太陽光線》!!」
カッ!!!!
『ギャアアアァァァアアアァァア!!!!』
骸骨将軍は光の柱に飲み込まれた!
肺も声帯も無いのにどこかからか響いてきた断末魔が耳に心地良い♪
フハハハハッ! 眩しかろう? 俺が砂漠を旅する間ずっと収納しまくってた強烈な太陽光の収束レーザーだ! 山吹色って名付けたけど普通に白い光だったな、ちょっと失敗。
…………
つーか眩しいよ! もういいよな?
スゥゥゥ――― スタッ
床石が少し溶けてる…… それだけで凄まじい熱量だったことが伺える。
そんなレーザー照射跡には既に骸骨将軍はいなくなっていた……
骨の欠片すら残らなかった……
恐らく浄化されたんだろう、二〇ラムで倒された敵は経験値すら残さないのと同じ理屈だな。
ガシャン! ガシャン! ドサッ!
「お?」
飛んでいた骸骨は力を失い地面に落ち、砲撃していた骸骨は次々と倒れていった。
予想通りボスを倒したことで付属品どもも機能を停止したようだ。
「ふっ、勝ったな」
サボる気満々だったのに、結果的には俺大活躍だった。
《特別解説》
『聖水』
聖なる水、悪魔とかアンデッドに有効。美少女の体内で生成されるものはご褒美になってしまうらしい。




