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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 獣人族/ビスト 編 ――
34/175

第34話「勇者には皮肉が通じない」


 なぜか唐突に始まった勇者との勝負、ヒトは争わなければ存在していけないのだろうか?

 きっと勇者なんて肩書のせいで素直に負けを認めることができないんだろう…… やれやれ、俺のような平和主義者を巻き込むのはやめて欲しいものだ。


 まぁ巻き込まれた以上全力で叩き潰さなければならないがな……


「さて、下の戦いも終わったようだ、次は俺たちの番だがどちらから行く?」

「は?」


 勇者の言う通り前のパーティーの戦闘はすでに終わっていた、はえーよ、3分くらいで終わってしまった。

 敵軍隊の何匹かは倒したみたいだが…… 正直やる気が感じられん、あいつら本気で攻略する気ないだろ?


 しかし順番か…… この手の勝負事は後出しの方が勝率が高いのは言うまでもない、料理漫画なんかだと後攻の勝率は9割を超えると思う。


 直接対決なら先攻の方が有利だろう、問答無用で相手をぶん殴ればダメージを与えられる、つまり相手の腕や足を一撃で破壊すれば攻撃力を落とすことができる、そうなれば勝利は確定だ。

 それ以前に一撃で相手を死に追いやることすらできるかも知れない……


 だが今回の場合のように、別の相手とそれぞれ戦う場合は後攻の方が有利だ。

 理由は単純明快、先に戦ったやつのダメージ分だけ後攻が有利になるからだ。

 唯一懸念があるとすれば先攻が逃げ切りを狙った場合だ。先に戦って過半数を倒すかボス個体を倒すかだ。


 ま、その可能性は限りなく低いと思うがな。


「イヅナ様、どうせ条件は変わらないんですから後攻のほうが良いと思いますよ」

「ん? 条件変わらないって?」

「ここの魔物は一戦ごとに補充されるんです、だから先でも後でも条件は変わりません」

「あ…… そうなんだ」


 チッ! よく考えればわかるコトだった。

 兵隊が補充されなければ魔物軍団なんかとっくに全滅してるに決まってるじゃねーか。


 だったら勇者たちに先にやらせて敵の動き方を見るのもアリだな。


「俺たちは後攻でいい、勇者さんたちお先にどーぞ」

「ふん、そうか、では先に行かせてもらう。あぁそうだ、俺たちの結果を見てからギブアップしてもいいからな? もちろんお前の負けになるが」

「はいはい、勝ち目がないと思ったらギブアップさせてもらうよ、誰かさんみたいに死にかけるまで戦うつもりはないから」

「……?」


 あ、ダメだ、勇者には皮肉が通じない、コイツバカだ。



―――


――




 勇者パーティー…… えーと…… 勇者の魂(ブレイブソウル)だったっけ? 彼らの戦いを一言で言い表すとすれば「慎重」そのものだった。


「来るぞッ!! 備えろッ!!」

「はいっ!」


 まず女僧侶(フラン)が『盾弓骸骨(スカルタンク)』のトゲ付き鉄球の遠距離質量攻撃を水の帯のようなもので防いでいる、多分防御系の魔法だろう、結構激しい攻撃なのだが今のところすべて防いでいる。


 そして女魔法使い(ヴェラ)が『飛翔骸骨(ファイタースカル)』の突撃攻撃を風の魔法で逸らしている、ただし一匹だけは通している。


 その抜けてきた一匹を女剣士(ナタリア)が素早く叩き落し……


 そして動けなくなった敵を勇者(ルーファス)が燃える剣でとどめを刺す……


「ハアアアァァッ!! 火炎斬り(ファイアスラッシュ)!!」


 なんつーかさ勇者…… 「来るぞッ!! 備えろッ!!」とか言ってたけどお前が一番ラクしてねーか?


「ウオオオォォ!! 業火斬り(フレイムザッパー)!!」


 それともラクしてるように見えてとどめを刺すのって大変なのだろうか?


「テリャアアアァァッ!! 爆炎斬り(ブレイズソード)!!」


 …………


「ゥエエエェェっと…… 炎炎斬り(ファイアザッパー)!!」


 ? 今技名間違えなかったか?

 ちなみに勇者の攻撃は名前は違っても全部同じ角度からの炎の斬り攻撃だ、せめて角度くらい変えろよ。


 とにかくこんな感じで味方に被害が出ないように慎重に一匹ずつ倒している。

 多分だけど…… 他のパーティーもこんな感じで戦っているんだと思う。

 これが10年間49階層で足踏みしながら編み出された最も安全な対ボス戦術なんだろう、間違っても攻略法ではない。


 そして特に打ち合わせもせずに始めたにも拘らず完璧なルーチンで作業をこなす勇者パーティー。奴らがこのボス戦を何度もこなしていることは明白だ。

 自分の得意分野で勝負する……それ自体は正しいコトなんだが…… やってることが小物臭い。


 しかしこの戦い方、僧侶と魔法使いの負担が大きい。

 俺は魔力ゼロだから魔法使用による魔力の消費量はよく分からんが、使い続ければ当然減っていくはずだ。

 この世界ってMP回復アイテムとかあるのかな?

 あ、何か飲んだ、やはりあるのかMP回復薬! すぐ壊れる指輪に祈ったりしないんだ。


 あれ? 魔力ってマナウイルスが作ってるんだよな? 彼女たちはいったい何を飲んだんだ? まさかウイルスてんこ盛りの液体直飲みじゃないよな?



「さすが超級パーティー『勇者の魂(ブレイブソウル)』だな……」

「あぁ、もしかして新記録いくんじゃないか?」

「いつになく気合が入っているようだしな……」



 周囲の観戦者も注目している、やはり何度も挑戦してやがったのか。



「ハアアアァァ!! エルエネミス流剣術・信天翁(しんてんおう)!!!!」



 ズバアァーーーッ!!!!



 おや? 最後だけなんか違ったぞ?


「「「おおおぉぉぉ!!!!」」」

「いったっ! 20匹目の大台だッ!!」

「スゲーーー!!!」



 ………… 20/101…… スゴさが分からん……

 アレがそんなにすごいコトならよくこの階層までこれたなと言いたい。

 大体何であんな正統派な攻略をしてるのだろう? 広範囲殲滅魔法みたいなのは無いのか? それに……


「ユリアに質問なんだけどさ……」

「はい? なんですか?」

「この世界って浄化魔法って存在しないの?」

「?? ジョーカマホウ?」

「え~と、アンデッドに特効な魔法」

「イヅナ様の世界にはそんな魔法が存在するんですか!?」


 いやねーよ、そもそも魔法が存在しないし。

 ふむ…… 勇者パーティーの僧侶が浄化魔法を使わないってコトは、この世界にはターンアンデッドとかそういうのは存在しないってコトか。


「ベルリネッタに質問」

「なに? マスター」

「ストレージは生命以外を収納できるって話だったけど、アンデッドやゴーレムみたいな明らかに生物じゃない物って収納できるのか?」

「ムリ、アレらは魔法生命体に分類される、収納は不可能…… 前提として魔法生命体の方が生物ベースの魔物よりマナウイルスの浸蝕率が高い…… アレを収納するなんてとんでもない」


 やっぱり駄目か、そもそもウイルスが生命と定義していいかよくわからない存在なんだが。

 ストレージに入れられれば簡単だったのにズルは出来そうにないな。



「「「おおおぉぉぉ!!!!」」」



 ん? 勇者パーティーが全員鎖円の外に出てる、どうやら終わったらしいな。

 うわぁ…… めっちゃイイ笑顔でこっちに寄ってくる…… 早足で……

 女僧侶(フラン)女魔法使い(ヴェラ)がグロッキー状態なんだからもう少し気を使ってやれよ。なんで自分のために戦ってくれた女の子より男の俺にまっしぐらで近寄ってくるんだよ。

 しかも超イイ笑顔で……


「さて、次は君の番だね」ファサァ


 勇者は髪の毛ファッサ~しながら上から目線で話しかけてくる、髪の毛サラサラじゃねーか、汗すら掻いてねー。


「あぁ、うん、お疲れ……」

「フフフッ、1年ぶりに記録を更新してしまったかな? 君たちの番だけど……まだやるのかい? ギブアップしてくれても構わないんだよ? 結果が見えてる勝負で危険を冒すことも無いだろう?」

「それはお気遣いどーも、それはそれとして一つ質問があるんだけど……」

「うん? なんだい?」

「ちゃんと見てなかったんだけど、結局何匹倒したの?」


 ピシッ!!


 あ、ちょっとだけ笑顔が引きつった。

 別に煽ったワケじゃなくホントに判らないんだよなぁ、魔物軍団はすでに全部消えちゃってるし。


「途中で「20匹目の大台」って聞こえたけどたった1/5だし…… もしかして50匹くらい倒したの? ねぇ?ねぇ?」

「…………」ピクピク


 未だに笑顔だけど眉間にシワが寄ってる。

 煽り耐性ひっく。


「マスター、討伐数21匹」

「えっ!? それであのドヤ顔!? 勇者なのに!? もしかして勇者って……!! おっと失礼、口が滑った」


「…………ッッッ!!!!」ピキピキ


 顔が赤くなってきたな、この辺りで止めておこう。

 さっきみたいに大声で騒がれたら五月蝿くてかなわんからな。


「それじゃ次は俺たちの番だ、行こっか」


 小刻みに震えながらフリーズしている勇者をスルー、さっさと離れる。


「あ、あのっ! イヅナ様、作戦は? 私は? 何をすればいいんですか?」

「ん? そうだな……」


 軍隊を相手にする場合、一番効率がいいのはやはり……


「ベルリネッタ、あいつらを一気に殲滅できる爆弾とかないかな?」

「爆弾は持ってない、エーテリウス干渉爆発を発生させれば…… 一気に殲滅できる」

「だったらそれ…… いや、ちょっと待てよ?」

「?」


 今までベルリネッタが敵を殲滅した時は大体やり過ぎだった…… 常にオーバーキル状態だ。

 そのエーテリウス干渉爆発とやらも間違いなく敵を一気に殲滅できるのだろう…… それはいい。


 問題は「敵以外」がどうなるかだ。


 彼女の保護対象である俺とユリアの安全は保障されるだろう、たとえ爆心地にいようとも無敵バリアとかで守られるんだ。

 だがそれ以外はどうだろう? 勇者とその仲間…… 観戦者…… ダンジョンの中にいる冒険者…… そして東西ユグドラシル市民……

 大体やり過ぎるベルリネッタのコトだ、下手をしたらツァーリ・ボンバ級の威力があるかもしれない。


 …………


 どうしよう、ホントに50メガトンくらいの威力ありそうで全然笑えない。


「うん、シンプルに行こう。ユリアは《電磁投射狙撃銃(イレイサー)》で『盾弓骸骨(スカルタンク)』を処理していってくれ」

「はい! 了解です!」


「ベルリネッタは『飛翔骸骨(ファイタースカル)』を…… 近接攻撃で対処してくれるか?」

「イエスマスター」


 今更なんだがようやく気付いた、ベルリネッタがやり過ぎるのは所持している兵器の威力が強すぎるからだ。

 そしてその威力は遠距離攻撃兵器の方が圧倒的に高い、当然だな、遠距離攻撃なら自機が巻き込まれることは無いのだから。

 逆に言えば近距離攻撃兵器ならば手加減が出来るってコトだ、自分のすぐ近くで大爆発を起こせば当然巻き込まれる、そんな危険な兵器はさすがに使わないだろう。


 いい加減俺も学んだよ。

 狭いダンジョンでイオ〇ズンなんか使おうものなら落盤・崩落・ダンジョン崩壊の危険を伴う。

 ゲームだと何の問題も無いのに現実世界はそういうところがリアルで困る。(当たり前)


 もちろん俺はベルリネッタを信じてる、しかしだ……

 彼女の「敵戦力の無力化」と俺の「敵戦力の無力化」には大きな隔たりがある。


 俺の言う無力化は「戦闘継続が困難あるいは不可能な状態」を指すが、ベルリネッタの無力化は「死んだ敵は戦力には含まれないじゃん☆」……かも知れない。


 ……つーかその可能性の方が高い。

 だからこそ大規模破壊が起こらない接近戦をオーダーしておけば安心して見ていられるってワケだ。


 …………


 アレ? これだと俺がするコトが無いな……

 ま、いいか、後ろでふんぞり返って如何にも「軍師です」って顔して見ていよう。






《特別解説》

『信天翁』

 アホウドリのコト……


『ツァーリ・ボンバ』

 旧ソ連が開発した最強の核爆弾。なろう読者なら当然知ってるので詳細は割愛。


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