第28話「二次試験」
この試験、運の要素がデカすぎるだろ……
本来、資格というものはそれに見合った実力を有する者に与えられるべきものだ。
「運も実力のうち」なんて言葉がある、あぁそうだろう、確かな実力があろうとも「運」が無ければ成し遂げられないことなど山ほどある。
逆に「運」さえあれば実力以上の働きをする者だっている。
だがそれはダメだ、間違っている。
例えば運転免許を運だけで取っていい訳がない。道路交通法を丸暗記しろとは言わないが、せめて交通ルールくらいは覚えておいて貰わなければ困る。
歩道を歩いていたら運頼みのトラックドライバーに突っ込まれて異世界行きとか冗談じゃない。
異世界の理不尽さを誰よりも知ってる俺だからよく判る。
冒険者試験は冒険者としての実力を図るためのものだろ? 運だけでLv.1の戦士がダンジョンの最下層を目指していい訳が無い。
一人ならいいさ、日本人の大好きな自己責任ってコトで勝手に自爆しようがマスコミに叩かれようがご自由にどうぞって感じだ。
もちろんパーティーでも一人の幸運でみんなが助かることがあるかもしれない、だがそいつが助かるために他の奴が犠牲になったらどうする? 運の悪い俺は絶対に犠牲者ポジションだ。
要するに「運」などという不確かなモノに任せてはいけないということだ。
つまり一次試験の難易度で二次試験の難易度を調整すべきだと言いたい!
…………
アレ? それだと一次試験を何もせずに突破した俺の難易度は爆上げするってコトか?
……
…………
………………
うん、たまにはランダムもいい気がしてきた。
「これよりくじを引いてもらい、その順番で魔物と戦ってもらう」
「あ、ちなみに順番が後の方ほどイイといわれています、魔物は勝ち抜き制になるので前の人がダメージを与えてくれたら有利になります。
もっとも前の人が倒してしまったら新しい魔物が召喚されるので……」
やっぱり運か…… せめてポイント制にしろよ、高難易度ばかりに当たった人が可哀そうだろ。
―――
厳選なるくじ引きの結果……
「あ…… あぁぁ……」
「…………」
一番手はユリアになりました。
不用意にフラグを立てるから……
ちなみにベルリネッタは4番目、俺は5番目だった。
これで俺の相手も召喚されたての活きの良い奴になることが確定した……
「それでは二次試験を始める、受験者以外は武闘台を降りなさい。それとギブアップは手遅れになる前にするように、引き際を見極めるのも冒険者には必要な要素じゃ」
あ、ギブアップは認められてるんだ。
倒れるまで戦えとか言われなくてよかった。
「それじゃユリア、まぁ…… 頑張れよ、応援してるから」
「あ…… あぁぁ……」
なんかダメっぽそうだな……
「ユリアリーデ」
「ひゃっ! ひゃいッ!!」
ベルリネッタに声を掛けられたユリアが過剰な反応を示した、ひゃいって…… テンパり過ぎだろ?
「マスターも応援してる、なので武器の使用を許可する、必ず勝利して」
「わ……わかりましゅた……」
武器? そういえば昨日まで背負っていた槍はいつの間にか布が巻かれていた、なんで隠してるの?
「これより無作為召喚を始める、受験者以外は早く武闘台から降りなさい」
あ、俺たちのコトだ、こんなことで睨まれるのもバカらしいからさっさと降りよう。
「※※※※※※※※※※」
じーさんエルフがなにか小声で呟いてる、呪文の詠唱だろうか?
すると武闘台の中央の床が光始める、光の文字で描かれた魔方陣がゆっくりと回り始めた。
ズズズ―――
『ギャアアアアァァァアア!!!!』
現れたのは体長5mはありそうな巨大トカゲだった…… 見た目はほぼドラゴンだ。
あれがこの辺に生息しているモンスターなのか? イモムシとは迫力が違い過ぎるがホントに同レベルなのか?
どっちかと戦えと言われたら迷わずイモムシを選ぶぞ俺は。
「うわっ!? レアモンスターだ!!」
「マジかよ!! 俺2番目なんだぞ!?」
レアモンスターか、そうだよな、ダンジョンだもんな、レアなモンスターだっているよなぁ…… きっとトカゲの宝玉とかをドロップするんだろう。
ユリアさん引き強いなぁ…… まるで芸人だ。
しかしユリアは臆することなく外套を脱ぎ捨て戦闘態勢を取る。
昨晩ぶりの乳袋がコンニチハ…… ん? あれは槍じゃない…… ライフル?
見た目は対物ライフルだ、大きさはユリアの身長より長い、数本の光るラインが入っているトコロを見ると超科学兵器の一種のようだが……
「なるほど…… アレなら乳首を犠牲にすることなく撃てるってワケか!」
せっかく射撃の才能があるならそれを生かさないのはモッタイナイ!
ただし物凄く取り回しが悪そうだ、少なくともこんな近距離で使う武器ではない。
「電磁投射狙撃銃です」
ベルリネッタの《無限回転式電磁加速砲》の単発超射程バージョンってコトか。
それ絶対に当たったら「相手は死ぬ」系の兵器だろ? ヤバくね?
…………
今更かな? ベルリネッタの使う兵器は全部確実に相手を即死させる威力があった、それが一個増えたからって今更だったな。
そうだよ、相手はほぼドラゴン、魔無が挑むならスティンガーミサイルくらい携行してても文句は言われないハズだ。
まぁ…… ミサイルより威力がエグいかもしれないけど……
「それでは二次試験…… 始め!」
耳長族の職員が一方的に試合開始を宣言する。
う~ん、どう見ても受験生の手に負えないレアモンスターは見て見ぬフリですか?
『ギャアアァァァァアッ!!』
見た目がほぼドラゴンの大トカゲは開始の合図を待っていたかのようにユリアに襲い掛かる!
その気持ちは分かる、こんな見晴らしのいい平地だらけの土地で美しい富士山が見えたら「いっちょ登ってみよう♪」って気持ちになるのは。
普段運動なんか全然しない俺ですら思わずピッケルとザイルを買いに行こうと思うレベルだ。
だがなぁ…… その山、俺も知らないうちにとんでもない兵器が設置されてたんだぜ……
ヒュッ ドガアァン!!
ユリアは大トカゲの突撃を避け逃げまわってる、昨日の槍さばきを見てて思ったがあまり運動神経は良くないらしい。華麗さとか欠片もない。
この試験は武闘台から落ちたら失格になる、相手が無駄にデカいから素早く勝負を決めないとヤバいのになぜ撃たない? 一発撃てばそれで終わりだろ?
「くっ!!」
『ギャアアァァァァアッ!!』
もしかして射線を測ってるのか? 弓矢なら百発百中の腕前でも使い慣れないライフルでは外す可能性もある、下手に外したら死人が出るもんな、それくらい慎重になってしかるべきだ。
しかし無敵時間が発生するゲーム的緊急回避を使ってるが、現実だと普通に巻き込まれるぞ? それ。
バッ!!
「ここッ!! イレイサー発射!!」
ダァンッ!!!! バアァーーーン!!!! ビチャビチャビチャ!
ユリアの放った弾丸は…… 大トカゲの脳天に見事に直撃した!
そして体長5mはありそうな巨大トカゲの体の半分を吹き飛ばし、色々なモノをバラまいてくれた。
トカゲの残り半分はその場でビクンビクンしてた……
「……は?」×大勢
俺とベルリネッタ以外の全員が「は?」って言った、もちろんユリア自身もだ。
「なるほど…… 自己申告するだけあって射撃能力はなかなか…… 目標に極めて正確に直撃させる技術力…… これならスマートブレッド機能はオミットしても良さそう……」
ベルリネッタは冷静にユリアの射撃能力を評価してた。
てかスマートブレッド機能って弾の自動追尾機能のコトだよな? それがあれば素人でも使えるだろ? 俺にもくれよ。
いや、それよりも今ナニしたの?
ベルリネッタに視線を送る、説明ヨロ。
「イレイサーは空気中からエーテリウス粒子を取り出し縮退し半物質化した弾丸を形成し撃ちだす。負荷と混合粒子によって性質が変化する比較的扱いやすい兵器…… その分威力も控え目……」
言ってるコトの殆どが意味不明でした。
唯一理解できたのは「控え目」って部分だけ。
控え目? 今のが?
まぁそうだろう、ベルリネッタが普段使ってる兵器に比べれば……な。
「おい、今のは魔法じゃないぞ」
「だいたいあの娘は魔法を使えないだろ?」
「まさか…… オーパーツ!?」
なんか職員が審議してる、もしかしてオーパーツ使いじゃ冒険者に成れないのかな?
「え~…… 受験番号21番ユリアリーデ…… 合格……です」
「え? ご…合格? ほ…本当に……ですか?」
「う……うむ、思うところはあるが西ユグドラシル冒険者組合の基準はクリアしている。
従って間違いなく合格じゃ」
「ぃ…… やったあああぁぁぁーーー!!」
ユリアは飛び跳ねて喜んでいた……
苦節11回目の挑戦、今までに掛かった金額は220万ディル、コンパクトカーが買えるほどの値段を貧乏少女が捻出するのはさぞ大変だったことだろう。
その喜びを全身で表現している…… 大きな胸がバルン♪バルン♪って音が聞こえてきそうなくらい揺れている……
痛くないのだろうか?
「やりました!! 私とうとうやりましたぁ!!」
タッタッタッ バッ! ガシッ! ムニョン♪
感極まったユリアに抱き着かれた!
うおぉぉおっ!? こ…これはッ!! なんと素晴らしい弾力と息苦しいほどの圧迫感! 思わず悟りが開けそうだ!
でも手に持った超兵器は置いとてほしいな、エーテリウス粒子コワイ。
「マスターに苦痛を与えないで」
ペイッ
「あいたっ!」
俺に抱き着いていたユリアはベルリネッタに剥がされポイ捨てされた。
う~む、AIでは理解できないか、苦痛の中に悦びを見出すヒトの性癖は…… おっと、もちろん俺はマゾじゃないぞ。
「※※※※※※※※※※」
お? 俺がイニシエーションしている隙に次のランダム召喚が行われていた。
ズズズ―――
『シャアアァァァ』
召喚されたのは…… 岩? 異世界の岩ってそんな赤い彗星みたいな鳴き声出すの?
あ、違った、よく見れば岩っぽい質感の芋虫だ、体長1mの王蟲って感じだ…… 目は付いてないけど。
「嘘だろ…… 2連続でレアモンスターが出てくるなんて……」
対戦相手のエルフが絶望している、彼の武器は弓だ…… 確かに火力が足りなそうだ。
―――
――
―
「ギ……ギブアップ……」
戦いは一方的なモノだった……
エルフの男が距離を取りつつ弓を射かける…… ただそれだけだ、岩芋虫は動きも遅く反撃も全くしてこなかった、だが硬い。
すべての矢が尽きたところでギブアップ、小さなナイフも持ってるようだがやるだけ無駄だからな。
あの岩芋虫かなり硬い、あの防御を遠隔武器で突破したかったら対物ライフルぐらい持ってこないとな。
「なぁベルリネッタ」
「ナニ? マスター」
「ユリアに貸したライフル俺にも貸してくれね?」
「マスターは電磁投射狙撃銃射撃許可証…… 持ってる?」
「いや、無いな」
「じゃあダメ」
これだよ…… 逆に聞きたいんだがユリアは電磁投射狙撃銃射撃許可証を持っているのか? どこで取得できるんだよ? 耳長族の小学校ではそんな授業があったりするのか?
ハァ…… まぁいい、あの程度の相手ならパワードスーツで強化した肉弾攻撃でイケるだろう。
まだ試したことはないが……イケるよね? 丁度いい機会だしどれくらいのパワーが出せるのか試してみよう。
「それでは二次試験、第三試合…… 始め!」
おっと、次の試験が始まってる、今度の男の武器は……剣か。
男は最初、地面と体の隙間を狙っていたがさすがにそこまで近づくと触手の様なモノを出して反撃してくる、そうなるとすぐに離脱できる体勢で外殻を攻撃するしかない。
ギンッ! ギンッ! ガキンッ!!
だが岩芋虫の外殻はかなり硬くどれだけ斬りつけてもビクともしない。
まぁ弓矢が全部弾かれた時点で予想は出来ていたが……
ギンッ! キンッ! カキーーーンッ!!
お? 音が変わった? って剣が折れたのか。
「うわああぁぁぁあ!!!! 俺の99,800ディルの鋼鉄の剣がぁぁぁあああッ!!!!」
試合はそこでTKOになった、男が戦意喪失したためだ、約10万の武器がぶっ壊れたらそりゃショックだろう。
ゲームと違ってこの世界の武器は高いようだ、いや、現実的な値段なのかな?
「次は私、行ってくる」
「ちょ…ちょっと待ったベルリネッタ」
「? ナニ? マスター」
「今回は施設を壊さないレベルまで出力を落としてやってくれ」
正直ユリアもかなりヤリ過ぎだったが、ベルリネッタにはそろそろ「手加減」ってやつを覚えてほしい。
「イエスマスター、命令を受諾」
それだけ言うとベルリネッタはさっさと武闘台に登って行った…… ホントに解ったのだろうか?
「それでは二次試験、第四試合…… 始め!」
試合開始と同時にベルリネッタは無造作に岩芋虫に近づいていく。
ドリルはまだ回転させていないがどうするつもりなのだろうか?
手を伸ばせば岩芋虫に触れる距離まで近づくと反撃用の触手が伸びてくる、ベルリネッタはその触手の生え際辺り目掛けて……
バキィッ!!
触手などお構いなしにケリを放った!
しかもあの重そうな岩芋虫を斜め上へ数メートル浮き上がらせる威力だ。
……あのイモムシ、見た目だけで実際は重くないのか? 騙された。
カチッ ギュイイイィィィィイィィイィン!!!!
ドリルが高速回転を始めた…… あ、これはヤバいかも……
ベルリネッタは岩芋虫の落下予測地点に飛び込み、落ちてきたトコロをドリルで突き刺した!
ズブシャアアァァァア!!!! ビチャッ!!!!
岩芋虫は一瞬で粉微塵になり、緑色の体液という名の血の雨を降らせた……
「おえぇええ!!」
「うぎゃあああ!!!」
「なんだそれーーーッ!!」
闘技場はアッという間に地獄絵図と化した……
まぁ耳長族はみんな緑系の服を好んできてるからそんなに気にならないよ。でもシミになると思うから帰ったらすぐに洗濯したほうが良いよ?
ちなみに俺の方には体液は飛んでこなかった、念の為ストレージで防御はしていたが心配なかったな。
さすがご主人様大好き♪なベルリネッタだ、ちゃんと配慮してくれていた。
《特別解説》
『ゲーム的緊急回避/げーむてききんきゅうかいひ』
謎の無敵時間が発生する緊急回避法。成功すると例え巨大生物に踏みつぶされようが、串刺しにされようが、炎で焼かれようが無傷で済む。
現実世界では無敵時間は発生しないので間違っても真似しないように。
『赤い彗星/あかいすいせい』
機動戦士ガンダムに登場した主人公のライバルの異名。
実際は「赤」というより「ピンク」である。




