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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
27/175

第27話「ユリアリーデ・エルフィアナ」


「ユリアがいつもダボダボの外套を纏ってたのはその胸を隠すためだったんだな」

「うぅ…… はい、この国でこの胸は非常に目立つので」


 それはそうだろう、中学の合唱部の中に一人だけデスメタル系バンドのヴォーカルが混ざってたら誰だって注目する。悪目立ちってやつだ。


「だが街中で外套を纏ってる奴なんていなかった、その方が目立ってたんじゃないか?」

「う…… それはそう……なんですけど……」

「まず服をどうにかすべきだったんじゃないだろうか?」


 そう…… ユリアの服装は見事なまでの乳袋だ、リアルで初めて見た。

 個人的な感想を言わせてもらうなら俺は今のままでもイイと思う、さっきからユリアがため息を吐く度にプルンって揺れるのも見てて楽しい。


「この国の人々は元々動きを阻害しない服装を好むんです」

「ん? 言われてみればみんな身体のラインが出るピッチリした服着てたな」


 乳が無いのに潔いなぁって思ってた。


「だから服も…… 身体のラインがくっきり出てしまうものしか売ってないんです」

「あ~……」

「なので胸の部分だけ自分で直した服を着てるんです、服を全身分作る技術なんて私にはありませんから」


 そうだな…… ただ単に乳袋じゃない服を作るだけならそんなに難しくなはいだろう、デカい袋に穴を開けるだけで服っぽくなる、でもそれじゃ「この国で目立たない服」にはならないからな。


「だから他所の国に行けば色々な服も売ってるだろうし、それに何より…… この胸でも人の注目を浴びずに生きていけるから冒険者を目指してるんです」

「…………」


 そんな事はない。断言できる。

 ユリアの胸は他所の国に行っても確実に目立つ。

 その証拠に俺の視線はさっきからユリアの胸にくぎ付けだ。


 これは意識改革が必要だな。

 下手な幻想を抱いて他所の国へ行ったら3分で人攫いにつかまるパターンだ。


「ユリア」

「はい? なんですか?」

「誰も君に教えなかったようだから言わせてもらう」

「へ? キ…キミ!? はい?」


「君は同族の耳長族(エルフ)から見れば肉の付き過ぎた醜い豚にしか見えないだろう」

「ヒッ!! ヒドイ!?」


「だが他種族…… こと人間族(ヒウマ)の目には全く別の存在として映るだろう」

「あの…… 贅沢言うようですけどもう少し言い方に配慮いただけませんか? 私、一応乙女なんです」


人間族(ヒウマ)の人攫いや奴隷商人やヒャッハー!な人達からは、君は大粒のダイヤを身に着けた極上の獲物に見えることだろう」

「要するにそれは…… 私は六種族(セトラ)ですらなく、ならず者の餌……ってコトですか?」


 アレレ? なんか落ち込んでる? 俺の言いたいコトがうまく伝わってない感じだ。


「そうじゃない、つまり他の耳長族(エルフ)に無い君だけの特徴、例えばキリッとしたツリ目美人が多い耳長族(エルフ)の中で一人だけタレ目なところとか……」

「あうっ!」グサッ!


「長身スレンダー美人の中で唯一俺より身長が低いチビなところとか……」

「うぐっ!」ドスッ!


「みんな自信の表れのようにピンと立った耳なのに、一人だけ自信なさげなタレ耳なところとか……」

「はうっ!」ブスッ!


「そして何よりみんな体脂肪率一桁みたいな耳長族(エルフ)の中で唯一脂肪をブクブク溜め込みまくったかのようなその駄肉!!」

「がはっ!!」ガガン!


「………… マスター」

「ん? なんだベルリネッタ? 今大事な話を……」

「いえ、マスターはドS……なの?」

「どこでそんな言葉を…… いや、なんで今そんなコトを聞く?」

「イジメよくない…… 可哀そうだと思う……」


 イジメ? 俺はイジメと差別と偽善者は大嫌いなんだが?

 ………… あ。


「…………」チ~~~ン


 いつの間にかユリアが真っ白になって白目を剥いてる、まだ話は終わってないのに……


「ゴホン、つまり何が言いたいのかというと…… 今挙げたユリアだけが持つ特徴は君の魅力だということだ」

「………… は? はい?」


「ユリアは自分が欠点だらけだと思っているようだが、それはあくまでも耳長族(エルフ)の価値観の中だけの話だ、他種族が見ればとても魅力的に見える」

「?? ????」


「つまり他種族、もっと言えば人間族(ヒウマ)、さらに言えば異世界からの来訪者」


 後ついでに言えば日本からやってきた思春期真っただ中の十代男子…… 分かり易く言えば俺だな。


「そういう人たちから見たらユリアはこの上なく魅力的だってコト、それこそ全エルフが束になって掛かっても敵わないくらい可愛いってコトだ」

「か…… かぁっ!?!?///」


「だからこの街から出るなら自分が可愛いことを自覚しといてくれ」

「かわっ… 可愛っ… かわわわわッ!!///」


 どこかあどけない顔をしてるのにナイス駄肉のエルフとか…… 薄い本も厚くなるわ。

 故に彼女は狙われる、変態貴族や異世界転移者、あと忘れちゃいけないのがオークとかだな、俺も散々お世話になった。



 パンパン!



「ん?」

「ご苦労様でしたマスター、後の処理…… 私がやる」

「処理? 何の話?」

「彼女……これ以上マスターの話、まともに聞ける状態じゃない」



 ぷしゅぅ~~~///



 ユリアは真っ赤になって頭から湯気が昇ってる……

 あぁ、そうか…… きっと今まで自分の容姿を褒められたコトなど無かったのだろう。

 耳長族(エルフ)のストライクゾーンが他種族と大きくズレていて良かったよ、そうでなきゃユリアはとっくの昔に肉奴隷にされてただろうからな。


「ユリアリーデ・エルフィアナ」

「へあ?///」

「お話したいこと……あります、一緒に来て?」

「あぅ、はい、行きます行きます///」


 だから簡単について行くなよ…… いや、今はいいんだけどさ?


「それじゃマスター、ちょっとお傍……離れる」

「え? 遠くまで行くの?」

「ううん、すぐそこ、マスターはその場……動かないで、バリアに触れるの……人体に有害」

「は!? バリア!?」


 そんなのあったの!? つーかバリアの境界ドコだよ? 有害なんだろ?


 ……あ、二人とももういない……


 ……おい、マジで一歩も動けねーぞ……



―――


――




 異世界生活5日目……



 翌朝起きると―――


「おはようございます、イヅナ様、ベルリネッタ様」


 俺とベルリネッタの敬称がずいぶんと偉そうな感じになってた。

 ユリアの様子が明らかにおかしい…… ベルリネッタお前いったい何を吹き込んだんだ? それともこれがベルリネッタの言う純血種保護計画の一端なのだろうか?

 昨日まで「少年」とか呼ばれてたのに、一晩明けたら「様」付けされてるなんて……


 …………


 ま、いいか、異世界に転移した思春期男子はこの程度で動揺したりしない。

 ある日突然「ご主人様」呼ばわりになっても平静を保ってみせるぜ!



―――



 朝食後、ゴール地点の闘技場へ向けて出発。

 規定時間まで闘技場に入れないので大抵のチームはギリギリにやってくるのが常識だそうだ。

 他チームの妨害を警戒しているのだろう、だが俺たちが妨害されることはなかった。

 そもそも一次試験を突破できるとは思われてなかったんだろうな、それに妨害ってのはする方にもリスクがある、今回みたいに一次試験突破確実のチームが二つ以上あった場合は他のチームの動向も気にしなければならない。

 どこかのチームを襲っているところを更に別のチームに襲われて敗退する…… そんなコトになるなら危険を伴う妨害工作なんかしない方がマシだ。


 そもそも妨害なんかしたって何の得もないし……


 ベルリネッタのマップで確認してみたが、闘技場の近くには2チームが息を潜めつつ試験終了時間を待っていた。

 あえて一番広い通路を堂々と通ったが襲ってはこなかった、ビビりどもめ。

 まぁ正しい判断だといえる、もし来てたら返り討ちにされてたぜ? もちろんベルリネッタに。



―――



 闘技場…… そこは天井が抜けて空が見えていた。

 さらに穴の外側には観客席が作られている、なるほど、確かに闘技場っぽい作りだ。


 …………


 一つ気になるのは何故か観客が結構いるってトコロだ、なんだよ、これから吟遊詩人のコンサートでも始まるのか?

 まさか二次試験の見学か? なんて暇人どもだ。



 一次試験終了。


 小粒の世界樹琥珀を提出したら、なんか大騒ぎになっていた。そんな歴史に残りそうなレア素材を課題にすんじゃねーよ!

 おい! そこの面長エルフ! 黙って持っていくな! 欲しいなら金払え! それは俺たちが採取したモノだぞ! もし隠匿したら後で金庫の中身をストレージで丸ごと没収するからな!


「一次試験は終了じゃ」


 なんか老人の姿をした耳長族(エルフ)が現れた…… 老人タイプは初めて見たな……


「あ、あの人は西ユグドラシルギルドのギルドマスターです、確か今年で1001歳とか……」


 ユリアがこっそり教えてくれた。

 1001…… ベルリネッタが引きこもりを始めたすぐ後に生まれたのか。


「今更なんだが耳長族(エルフ)って寿命はどれくらいなんだ?」

人間族(ヒウマ)の10倍って言われてるけど、1000歳まで生きる人は滅多にいないです」


 そうか、今の話からすると人間族(ヒウマ)と日本人の平均的な寿命は同じくらいらしい。

 あれ? じゃあユリアは今いくつなんだ? タメくらいだと思ってたんだが耳長族(エルフ)が成長速度の遅い種族だとしたら、この見た目で150~160歳とかなのか?

 だとしたら昨日はずいぶんと失礼なことを言ってしまったな…… いや、年齢は関係ないか。


「一次試験合格は第1チーム、第2チーム、それと第5チームじゃ」


 やはり生き残ってたのは低難易度の2チームだけか…… 超高難易度だった第5チームは二次試験免除でもよくね?


「それでは引き続き二次試験を開始する」



 オオオォォォーーー!!



 ………… なんか外野がうるせーぞ、受験生は全く盛り上がってないのに。


「ご覧の通り二次試験は見世物になるんです、私この雰囲気がホントに苦手なんですよね……」


 ユリアがため息交じりにつぶやく、彼女は常連だもんな、あ、いや、二次試験挑戦はこれで2回目だっけ?


「二次試験は無作為召喚による魔物との一騎打ちである、勝利した者に冒険者資格を与える」


 無作為召喚? つまりランダムで魔物を呼び出すってコトだよな?

 それ…… 物凄く運に左右されないか?

 ヤバイ…… なんとなく俺はドラゴンとか引き当てる気がする…… 今週の乙女座はきっと運勢が宇宙レベルで最悪だからな。


「あ、だ……大丈夫ですよ! 無作為召喚はあくまで「近くの魔物」をランダムで呼び出すものです! 冒険者試験で使われる無作為召喚の出力ではせいぜい地下5層までの魔物に限られます!」


 俺が何を考えてるのか察知したユリアがフォローを入れてきた……

 だがなぜか全く安心できない、例えば無作為召喚を行った瞬間、たまたま上空を巨大ドラゴンが飛んでいてそれが召喚されてしまう可能性だってゼロじゃない。


「今までこの無作為召喚で事故が起こったことはないのか?」

「あぇ~…… 2~300年前に下層の魔物が産卵のために上層に上がって来ていたのを召喚してしまって大惨事になった……ってコトはあったらしいです」

「ほらやっぱりな」


 過去の教訓全く生かされてない! 絶対今日大惨事が起きるよ!

 登校中のバスの中でいきなり異世界に召喚されてからこっち、ありとあらゆる苦難を(略)……な目にあってきた俺が言うんだから間違いないよ!






《特別解説》

『耳長族/エルフ』

 もはや説明不要の超有名亜人種。ファンタジー種族エルフの起源はJ・R・R・トールキンの著書から、耳長エルフの起源はロードス島戦記と云われているらしい。(うろ覚え)


『薄い本』

 主に『成人向け』の二次創作同人誌をさす。

 その薄さ故、登場キャラクターの設定や物語を描く余裕がないため元ネタに依存している。


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