第26話「エルフ山脈」
「とりゃーーー!!」
スカッ!
「えいやーーー!!」
スカッ!
「んもぉーーー!!」
スカッ!
先ほどからユリアがメガキャタピラー相手に攻撃をミスりまくってる、相手はメタルでもないのに何なんだこの命中率の低さは?
確かにメガキャタピラーも芋虫とは思えない機敏さを誇っている、だが槍で捉えられないほどの素早さじゃない。
ポンコツにもほどがある……
そもそも彼女は何で槍を使ってるんだろう? あまり慣れてるようにも見えないし……
今まで見かけた耳長族は弓か剣か杖を持っていた、少なくとも槍を装備した耳長族は見かけなかった。
ユリアは魔法が使えないから杖を装備しても鈍器にしかならない、あの立ち回りを見るに剣も厳しいだろう。
だったら普通は弓だろ? 耳長族は弓を装備すると補正が掛かるイメージがあるし。
まぁあの命中率ではあっという間に矢を撃ち尽くして丸腰になって逃げだすのがオチだが……
…………
彼女はナゼ冒険者を目指すのだろう?
ハッキリ言って向いてないと思うんだが……
ま、夢を見るのは個人の自由だがね。
「ベルリネッタ頼む」
「イエス、マスターの指令受託、戦闘……開始。
プロトアームズ《C》局地戦用兵器・無限螺旋槍・展開」
ベルリネッタの右腕側に巨大兵器が転送される。
大きさは無限回転式電磁加速砲と大差ない……いや、少し小さいくらいか?
形状は長い棒に突起物の付いた金属製の布のようなモノが螺旋状に巻き付いている……
巨大な傘を持ってるようにも見えるのだが…… ハッキリ言ってドリルだ。
カチッ ギュイイイィィィィイィィイィン!!!!
金属布が高速回転を始める…… やっぱりどう見てもドリルだ。
「目標補足…… 発射」
ドギュイイイィィィィイィィイイン!!!!
発射されたドリルは敵を一瞬で消し飛ばし、ダンジョンの奥へと消えていった。
シュルルルルル――― ジャキン!!
そしてワイヤーらしき物で繋がっていたドリルは自動でベルリネッタの元へ戻ってきた。
…………
発射するのかよ!! てっきり近接戦闘するのかと思ったのに。
床が思いっきりえぐれてる…… コレって真下に撃ったら3mくらいの大穴が開いたんじゃないか?
しかしまぁ、毎度のことながら戦闘描写をする暇すらないな、常にオーバーキルだ。
「目標殲滅」
「うん、ゴクロウサマ」
―――
その後、遭遇した魔物はすべてベルリネッタが始末していった。
ユリアが前に出ても危険が増えるだけで時間の無駄だから……
いや、ちょっと待てよ? ユリアもそうだが……俺は?
武器が無くなっちゃったから結局ベルリネッタに丸投げだ。
また後で代わりの武器を用意してもらおう、昆虫系の魔物が多いし素手戦闘とかあり得ないから。
そんなワケで完全にベルリネッタ頼りで第三階層の奥、目的地前までやってきた。
「この壁の奥、水平方向におよそ15mほどの位置……小さな空洞がある、そこに世界樹琥珀(仮)がある」
目の前にあるのはただの石壁、世界樹の根が石化したモノかな?
「15m先じゃストレージで採取するワケにもいかないな」
「私が掘る?」
なるほど、ドリルの正しい使い方だな。
「そうだな、ベルリネッタはドリル……じゃなくて無限螺旋槍でゆっくり掘り進んでくれ、俺はそのすぐ後ろで壁の残骸をストレージに収納しながらついて行く」
「イエスマスター、作戦開始します」
作戦とかそんな大げさなモノでもないのだが……
ギュイイィィィイン!! バゴォッ!!!!
うおっ!?
突然壁に直径2mほどの穴が開く、そして瓦礫が銃弾のような速度で無数に飛び出してくる…… コレ…… ストレージが無かったら周りにいる人間は穴だらけになってたトコだぞ。
採掘現場とかちゃんと見たことないけど、思っていたのとだいぶ違うな。
「回転出力21%、現状維持する」
ベルリネッタは岩壁を普通に歩く速度で掘り進めていく、トンネルってこんな簡単に作れるものじゃないんだが…… いや、トンネルを作るだけなら例のビーム兵器を使えば一瞬で地の果てまで開通できるんだったな。
シュウゥゥゥン―――
「作戦終了」
「アレ? もう?」
アッという間だ、1分も掛かってない。
「これ……世界樹琥珀(仮)」
そういってベルリネッタは小さな空洞に手を突っ込み拾い上げた物を渡してきた。
それは透明感のあるオレンジ色でビー玉サイズの小さな石、例えるなら……そう、小さなドラゴン〇ールだ、何年か前コレにそっくりなスーパーボールを親戚の兄ちゃんから貰ったなぁ、地面に叩き付けると思いっきり弾むアレ。どこに仕舞ったっけ?
とにかくこれが本当に世界樹琥珀か確認しないとな、ぬか喜びって可能性もある。
「ユリア」
「あ…… ぁわわ…… あわ?」
まだアワアワ言ってるのか、いい加減慣れろ。
「コレ、見つけたんだけど世界樹琥珀かな?」
「は? えっと? !?!? こ…これはッ!?!? この美しい琥珀色!! 間違いなく世界樹琥珀です!!」
色だけで断定していいのか? だったら地球からスーパーボール持ってくればよかった、きっと高値で売れたぜ、なんといっても中にラメとか☆が入ってるからな。
「じゃあ一次試験は?」
「突破確実です!! ありがとうございまぁーすッ!!」
ユリアはビー玉サイズの世界樹琥珀を掲げ歓喜の踊りを舞っている。
真のポンコツはここで転んで落として世界樹琥珀を紛失するんだよな…… まぁストレージがあれば見つけるのは容易なので好きなだけ踊らせてやろう。
ガッ! ドサッ!
「イッタァーーー! あ…あれ? せ…世界樹琥珀は……? あれ? あれ!?」
案の定、世界樹琥珀を放り投げやがった…… ポンコツめ。
―――
――
―
世界樹琥珀回収後、第二階層まで戻り野営をすることになった。
野営をするなら魔物がほとんどいない第一階層の方が良いように思える…… だが今は試験中、妨害工作があるかもしれない。
故に狙われにくい第二階層でのキャンプと相成ったのだ。
そんなものはベルリネッタに地雷でも仕掛けてもらえば魔物ともども爆☆殺余裕なんだが、他の受験生を殺すのはさすがにやり過ぎなので自重する。
「なんで二人は野営準備をして来ないんですか? そりゃ私も説明不足でしたけど……」
「いや~、研修旅行なら宿くらいあると思ってたんだが」
日本なら野宿前提の研修旅行などあり得ない、それはサバイバル実習とか別ジャンルの話だ。
「確かに地下15階には《迷宮村》があるらしいですけど、初心者じゃそんな深い階層まで潜れませんよ」
あ、あるんだ、ダンジョン内で営業してる宿屋…… 適当に言っただけなのに……
「テントは私の持ってきた一人用のしかないけど二人までなら一緒に使えます、どうせ誰かは交代で見張りをしないといけないですし」
ダンジョン内でテントって必要なのか? まぁ裸じゃないと寝れない人には必要だろうが……
…………
今「二人までなら一緒に使えます」って言った? 俺も寝る時は全裸主義になろうかな?
「あとは食料ですが…… 幸いここは食べられる虫系モンス……」
「食料と水はある、心配無用だ」
一泊二日だから念のためそれはストレージに突っ込んできた、ぜってー虫なんか食べないからな!
「そ……そうですか」
ユリアはちょっとホッとした顔をしている、もしかして俺たちが食料を奪って自分が虫を喰うはめになるとか考えてたんだろうか? 俺この子にそこまでヒドイことしたっけ?
「それより…… 時間もあるから聞いておきたいんだが」
「はい、なんですか?」
「ユリアは二次試験に進んだことはあるのか?」
「ッ!!」
二次試験は戦闘技術がどうのと言っていたが……
「え……えぇ、初めて受験した時は一次試験を通過できました……」
そこから8連敗か…… その時合格できてればこんな苦労は無かったろうに。
「じゃあ二次試験の内容も分かるんだよな?」
「そうですね…… 試験の度に違いますけど今回は恐らく魔物との1対1の戦闘になると思います」
「えっ!? チーム戦じゃないの!?」
「そういう時もありますけど今回は一次試験で低難易度の課題が2チームありましたから、そういう時の二次試験はだいたい個人戦ですね」
お…おう、いや大丈夫だ、これは冒険者資格試験、当然魔物も初心者用のが出てくるハズ! パワードスーツを身に着けた俺ならイケるさ!
実戦経験はほぼゼロだが…… きっとイケるさ!
「マスター」
「うん?」
「マスターのコト……私が養う、安心」
「あ… うん… アリガト」
俺が負けることを前提とした励まし…… いや、励ましてないよな今の?
まぁ最悪の事態になっても俺にはニート許可証を無制限に発行してくれるロボ子がいるから老後も安心なんだが……
「ユリアは二次試験大丈夫なのか? さっきの戦闘を見る限り槍の扱いには慣れてないようだったが?」
「うっ!」
自分のことを棚に上げてユリアに話題を振る。
ダメだったらお前も俺と一緒にニートするか? ダメ人間って自分と同じくらいダメな奴を見ると落ち着くんだよね。
「私は…… もしかしたらお二人は気付いていたかもしれないですが、魔法が使えない…… いえ、魔力を持たない《魔無》と呼ばれる劣等種なんです」
うん、知ってた。俺も俺も♪
「こう見えても私は子供のころ西ユグドラシル一の弓使いでした、大人ですら敵わないほどの…… 神童……なんて呼ばれてたコトもありました」
「はあ? じゃあ何で弓を使わないんだ? 元神童なんだろ?」
「うぐっ! その…… 使わないんじゃなくて…… 使えないんです」
?? マスタークラスの弓の腕前を持ちながら弓が使えない理由ってナニ?
弓道部の先輩がゲスワカメだから嫌になった……とかか?
「初めて冒険者試験を受けた時はこんなじゃなかったんですけど……」
そう言ってユリアはいつも着ていたダボダボの外套を脱いだ。
そこに現れたのは……
――― 山だった ―――
「ッ!! そ……それはッ!!」
この国に来て以来、エルフ平原やエルフヶ丘などの穏やかな光景が広がっていた、そんな風光明媚な景色の中に突如として聳え立つエルフ山脈が現れた瞬間だった!!
その人を寄せ付けない圧倒的で雄大な姿に感動を覚える! スマホの待ち受け画面にしたいほどだ!
それはもう「タユン」って擬音が聞こえてきそうな見事な巨乳だった、その外套の下にこんな見事な宝物が隠されていたとはッ!!
それと同時に弓が使えない理由が理解できた。
「その…… まぁ…… 引っ掛かるんです、構えを変えたり試行錯誤もしてみたのですが精度が落ちるだけで使い物にならなくて……
最後に射った時は乳首が飛んだかと思いました…… それ以来トラウマで弓が引けなくなりました」
乳首は飛んでないんだな? 無事なんだな? ふぅ~、よかった、それを聞いて安心した。
俺は夏の富士山よりちょっと雪をかぶった富士山の方が好きだ、そんなちょっとした違いでも富士山の持つ魅力は大きく変わると思っている。
先っぽにワンポイント有ると無いとじゃ大違いだからな。
ん? 何の話してたんだっけ? あ~そうそう、B地区の話だったな。
そういえば地球の神話でもそんな話があったな、弓を使うために右胸を切り落とすとか…… 恐ろしくてグロくて神をも恐れぬ大罪の物語が…… 確かアマゾネスだったっけ?
「えっと…… 気持ち悪いですよね? こんなモノ見せてしまってスミマセン」
「? 気持ち悪い?」
ナニを言ってるんだ? 確かに切り落とし済みの胸を見せられたらチョット引いてたかもしれないが、こんな素晴らしいモノを見せてもらって感謝してるほどなのに?
むしろ眼福。
今まで見てきた耳長族が鉛筆の芯だとすれば、ユリアはブリリアント・カットされた大粒のダイヤモンドだ。輝きが違うというか比べるのもおこがましい! 同じ炭素原子でもそれくらい違う。
「耳長族にはスレンダーな人しか居ないから、この胸は異様で醜く見えるんです」
「あぁ~~…… だから「駄肉」って呼ばれてたのか」
「うぐっ!!」
「気持ちは分からないが言いたいことは理解できる」
魔無の迫害と同じだ。
例えば100人のハゲがいたとしよう、その中にたった1人だけフッサフサの男がいたら…… 嫉妬・羨望・妬みの対象になるのも当然といえる。下手したら襲われて髪の毛毟られる。
ユリアの場合はその逆だ、100人の普通の中にたった1人の異端がいれば気味悪がられるものだ。
なんてモッタイナイ…… だが不幸中の幸いだったとも言える。
耳長族にはキモく見えるユリアの胸も人間族が見れば大粒ダイヤだ。
魔無の彼女がもし人間族の国に生まれていたら今頃きっと性奴隷にされていただろう、男貴族に性奴隷として売られかけた俺が言うんだから間違いない。
「もしかして冒険者を目指す理由って……」
「移住のためです、耳長族は繁殖力が他種族より低いため移住が滅多に認められないのですが、冒険者には移住の許可が出るんです」
それかぁ…… 何百万ディル掛けてでも冒険者になりたかった理由は。
「いつかアヴァロニア大陸の東にあるという『ルース』という街に行きたいんです。そこでなら差別を気にせず暮らせるって…… まぁただの噂なんですけどね」
俺と目的地が一緒だった、そうだよな、魔無にとっての最後の希望だ。
そしてセレスティーナ姫の証言の裏が取れた、やっぱりお姫様はアヴァロニア王国唯一の良心だったんだ。
しかし彼女が人間族の大陸に行って無事で済むだろうか? だって魔無でポンコツ巨乳エルフなんだぜ? それどう考えてもエロ同人ルート一直線だろ?
やはり魔無は保護しなければ!




