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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
25/175

第25話「イキり散らす」


 トンネルを抜けるとそこはダンジョンだった……

 そして当たり前のように明るい、まったく便利な世界だ。


 しかし街の地下にこれほど広大な空間が…… もしかして世界樹の根が創り出したダンジョンなのかもしれない、だとしたら相当深いんだろう。


「一次試験は明日の正午までに指定された素材を持って“闘技場”へ行くことだ。また素材提出は試験終了後になる、それまでに理由の如何に問わず素材を失った場合は失格となるので注意するように。

 ただしその場合でも試験終了前ならば再度収集することは認められている」


 なるほど…… つまり他の受験者の足を引っ張るコトも可能なワケだ……

 もっともこの耳長族(エルフ)だらけの街で人間族(ヒウマ)の俺がそれをしたら後でどんな目に合わされるか分かったものじゃないな。

 それよりこの世界って1日24時間なのかな? 話を聞いた限りじゃソレっぽいが…… 後でユリアに確認しておこう。


「それでは…… 試験開始!」


 試験官が開始の合図を出すと2チームが勢いよく走りだした。

 あれは「漆黒苔」の第3チームと「キロタイト鉱石」の第4チームだな。


 「光キノコ」の第1チームと「下級魔石」の第2チームはダラダラ歩いてる…… やはり難易度設定が適当過ぎるだろ。


 そして本来なら死に物狂いで走り出さなければならないハズの「世界樹琥珀」の我らが第5チームは立ち尽くしている……

 ユリアに率先して動いて欲しいトコロなんだが……


「……………………」ズーーーン


 当のユリアは絶賛絶望中、まぁ仕方ないか。

 そもそも死に物狂いで走ったってドコへ行く?って話だしな。


「ベルリネッタ、ちょっと検索かけてみてくれないか?」

「イエスマスター、《万能地図(マップ)》《固有走査(スキャン)》並列起動……開始」



 みょんみょん



 おでこの上の生え際辺りから飛び出しているベルリネッタのアホ毛が揺れている…… あれはレーダーアンテナの役割もあったのか。素晴らしいギミックだ、ベルリネッタの設計者とはうまい酒が飲めそうだ…… 酒とか飲んだことないけど。


 う~む、これで都合よく見つけられればイイんだが、普通の琥珀とは違う世界樹琥珀……つまり未知の物質だ。せめてサンプルがあればよかったんだが……

 これは賭けだな、この検索で引っかからないようならもう駄目だろう。


「検索終了、それらしき物質……ヒットした」

「おお!」

「場所は第3階層、直線距離で7212mの位置」


 直線で7キロ…… ダンジョンを壊さず道なりに進んだとしたら結構な距離になりそうだ。

 その物質が本当に世界樹琥珀かどうか分からないが他にアテが無いんだ、賭けてみるしかないだろう。


「ベルリネッタ、現場までのナビゲートは可能か?」

「問題ない」

「それじゃ頼む、ほらユリア行くぞ? いつまで落ち込んでるんだよ?」

「行くって…… ドコに?」

「そりゃもちろん世界樹琥珀(らしき物)を採りにだよ」



―――



 しばらく進んだが未だにエンカウントはゼロだ、冒険者はおろか魔物にすら出くわさない。

 もしかしたら試験中は一般冒険者は立ち入り禁止になってるのかもしれない、通路の幅も異様に広いしもともと第一階層には魔物が少ないのかもな。


「あ、あそこがゴールの闘技場ですよ」

「ん?」


 脇道の先にやたら明るい部屋が…… あれは自然光か?


「今すぐあそこへ行くのも良いかもしれませんね? アテもなくダンジョンを彷徨うなんて時間の無駄ですし…… ハハ……」


 う~ん…… これが試験10連敗が決定した(と思っている)ヒトの思考か、1回20万…… バイト少女が病むのも当然の摂理といえよう。

 この分だと世界樹琥珀を発見するまで元に戻りそうにないな。


「ほら行くぞ」

「あ…… はい…… そうですね…… せっかく20万も払ったんですからダンジョン観光でもして元を取らないと…… 私はもう見飽きてますけど……ね、ハハ……」


 いちいちネガティブだなぁ…… ん?



「そっちに行ったぞ!」

「逃がすな!!」

「クソッ! 硬い!」



 誰か戦闘中だ、相手は…… !? 巨大芋虫!? デッカ!! 1mくらいあるぞ!? キッショ~!



 ドスッ!! ブシャアァーーー!!



『キィィィィィィィ!!』


 ………… 芋虫ってキィィって鳴くんだ、初めて知った、勉強になるなぁ……


「や……やったぞ…… これで一次試験突破だ」

「ふぅ…… てこづらせやがって」


 体液まみれのエルフたちが芋虫を解体し始めた、うげ…… やはりそうなのか、解体しないといけないのか……

 俺…… 仮に冒険者になれたとしてもやっていけるのだろうか? 解体とかハードル高いなぁ。


「おい、ダメだハズレだ、こいつ魔石が入ってない」

「嘘だろ…… せっかく倒したのに……」


 どうやらアレは「下級魔石」がお題の第2チームらしい。

 へ~…… 魔石って取れないコトもあるんだ、せっかく体液まみれになりながら解体したのに魔石なしって…… ご愁傷様。


「ん?」

「あ」


 返り体液を浴びて茶色いまだら模様になったエルフと目が合った。


「おい、あっち……」

「ん? あぁ駄肉か、まだ諦めてないのか」

「無理もないさ、試験料も安くはないからな」

「あんな疫病神と組まされて人間族(ヒウマ)も悲惨だな」


「……ッ」


 なんか言いたい放題されてるな、だが冷静に考えれば疫病神扱いされるのも理解できる。

 一次試験はチーム戦、今までユリアとチームを組んだ奴はみんな落ちたってコトだ、それが9回も続けば疫病神と呼ばれても仕方ないといえる。


 今のセリフだけ聞けば耳長族(エルフ)人間族(ヒウマ)と同じく魔無(マナレス)差別が根付いているように見える。

 だが過去には魔無(マナレス)とチームを組んでくれた奴が9回もいたんだ、それだけで人間族(ヒウマ)よりマシな気がする、もちろん人間族(ヒウマ)にも良い奴はいるかもしれない…… 今のところはセレスティーナ姫しか思い浮かばないが……


 取り合えず同じ魔無(マナレス)として聞いてて気分が悪いので無視しよう。


「気にするな、行くぞ」

「え? あ、はい……」


 耳長族(エルフ)の集団をスルーする…… 壁際まで避けて。

 なんかあの人たちまだら模様で汚らしいから。




―― 第二階層 ――



 第一階層がえらい広かった、下の階層へ行くための階段はいくつかあるらしいが、最短ルートを選んでもらったにもかかわらずタップリ3kmくらいはあった。

 その間、魔物との遭遇はゼロ、遠くの方にチラっと見えたコトはあったが戦闘にはならなかった。

 やはり第一階層には殆ど魔物がいないようだ。


 そして第二階層……

 通路の幅は第一階層の半分ほど、それでもまだかなり広い。

 そして魔物を見かける確率も上がった、まだ戦闘には至っていないのだが……



 メガキャタピラー

  属 性:土

  浸蝕率:F


 ポイズンワーム

  属 性:土

  浸蝕率:F


 ロンリーアント

  属 性:土

  浸蝕率:F



 見ての通り虫ばっかだ、属性も浸蝕率もみんな一緒。


「第一世界樹迷宮の上層に生息している魔物はほとんど昆虫系ですね、ごく稀に植物系や爬虫類系なんかも出ますが、滅多に現れません」


 ……と、いうことらしい。

 上層に出てくる魔物はほとんど下級らしいのだが、普通に考えて巨大昆虫ってヤバいよね? ノミが人間大の大きさだったら垂直飛びで100m以上飛べるって聞いたことがある……

 もちろん大きくなれば重量も増すし、そもそもここは地球じゃない別の星だ、物理法則も違っているだろう…………違ってるよね?


 う~ん…… いくら超科学力のパワードスーツでも垂直飛び100m行けるだろうか?

 まぁそんな化け物昆虫が出てこないことを祈ろう、少なくとも上層には出てこないハズだから。



 ピ



 あ、今のって……


「マスター、前方より魔物1接近、接触は避けられない、殲滅……する?」


 また殲滅か…… まぁそれしかないんだけどさ……

 しかしベルリネッタに任せて大丈夫だろうか? 

 例えダンジョンが崩壊しても俺たちがそれに巻き込まれることは無いだろう。

 だがここより下の階層にいる冒険者が生き埋めになるようなのは困る。


「ベルリネッタ、今回は俺がやっていいか?」

「マスターが…… 働く? 正気? もし熱でもあるなら今すぐ引き返して……」


 う~ん、ただちょっと働くって言っただけで正気を疑われたぞ? 俺のコトを一体何だと思ってるんだこのロボ子は?


「危険が少ない状況で例のベヒモスを試しておきたいんだ」

「それは…… 確かにそう……かも、わかりました」


 よし! これで今日から俺もイキりデビューだ!

 何の苦労もせず手に入れた力でイキり散らす…… うむ、異世界主人公のあるべき姿だ。



 ジャキン!



 ストレージからTSoM-01 硬滅式・地龍殺し《ベヒモス》を取り出し構える。

 …………構えたのはいいんだが、未だに敵を目視できない。


「ベルリネッタ、敵の位置は……」

「情報をリンク、これよりアドヴァンスドサポートが可能になります」


 サポートくらいは受けていいだろう、なにせこっちは素人だ。


「頼む」

「イエスマスター、アドヴァンスドサポートスタート」



 キュイィィン



「お? おおッ!?」


 何か視界にターゲットマーカーが浮かんだ、立体映像か?

 いいね、SFっぽくてこういうの好きだぜ♪


 敵はこちらに向かってきてるようだが、まだこっちを捕捉しているワケではなさそうだ。

 シルエットだけは見えるようになったけど…… まぁ多分芋虫か何かだろう。



 ピッ!!



 ターゲットマーカーが敵をロックオンすると銃身の先にリング状の光が幾つも現れた……

 あれ……

 なんか……

 ちょっと……

 大袈裟だな……

 引き金引いて大丈夫?


 いや、今更もう止められない、なんか充填してるっぽいし……

 いいや、いっちまえ!


「発射」



 キュィン! バシュッ!!



 強い光を放つ小さな弾が形成され、音よりも速い速度で視界の外へ消えていった。

 あの速度なら着弾までに0.1秒も掛からないハズ……


 ……なんだけど。


「…………?」


 反応がない…… 外した? いや、俺が自分の感覚だけで撃ったのならハズレてもおかしくないんだが、超科学力のサポート込みで的を外すとは思えない。


「マスター、衝撃くる、備えて」

「は?」

「次元アンカー固定、シールド……展開」


 俺たちの周りに不可視のシールドが展開される、それと同時に……



 ビュオオオオオッ!!



 ダンジョン全体が揺れているような震動と猛烈な風が吹き荒れた。


「これは…… 後ろから吹いてきてる?」


 ベルリネッタのシールドのおかげで吹き飛ばされずに済んでいるが、多分シールドが無ければ人が飛ぶレベルだろう。

 ただ揺れと強風は数秒で収まりダンジョン内には静寂が戻った……


「……い、今のは……?」

「敵生体への命中を確認、消滅した」


 何がどうなったのかの説明を求めたかったんだが……

 どのみち進行方向だ、見ればわかる。



―――



 魔物がいた筈の場所は直径10m程の球状に抉り取られナニも無くなっていた……

 つーか上と下の階層が見えてる…… 三層ぶち抜いた……

 ナンダコレ? ブラックホールでも発生したのか?


「マスター朗報です」

「どうした?」

「ショートカット通路が出来た」

「あ、そうだね……」


 それよりも誰も巻き込んで無いだろうな? それだけが心配だ。


「ベルリネッタ、ベヒモスって……」

「あらゆる物質を分解・消滅させる兵器です。

 今回は限定空間内のすべてを消滅させたみたい、さっきの強風は消滅の際に発生した真空に周囲の空気が引き寄せられた為に起こった」


 ソーナンダー…… これ威力ヤベーよ、街地下ダンジョンで使っていい物じゃねーよ。

 陥没とか起こっても責任なんてとれねーよ。


「やはり試射は必要、想定より効果が大きかった」

「え? もしかしてベヒモスっていま初めて使ったの?」

「イエス」


 イエスじゃなくってさぁ! 暴発とかしてたらどうすんのよ?


「でもこれ…… 至近距離で使えない」

「うん、俺もそう思う」

「じゃあストレージへ納めておいて、こっちで調整してみる」

「ア、ハイ……」


 あぁ…… 唯一の武器が封印されてしまった……


「あ…… あわ…… ぁわわ……」


 ユリアは相変わらず「あわあわ」言ってる……

 ま、いいか、放っておこう。






《特別解説》

『みょんみょん』

 ベルリネッタのレーダーアンテナが起動した時に発生する出典不明の謎の擬音。


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