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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
22/175

第22話「お金目的」


「ル…! ルー様ーーー!!」


 取り巻きガールズがカラカラに乾いた勇者に群がる、一瞬ピラミッドを盗掘しようとしてる盗賊に見えてしまった…… いかんいかん、そこはせめて考古学者だろ?

 おっと、熱放射を止めておかないとイカサマがバレるかも知れない、それに彼女たちまで干乾びる。


「フラン! はやくルー様に水を!!」

「は、はいぃ! お… おおぉぉお……」

「はやく!!」

「せ……急かさないでくださいぃ~! お…大いなる癒しの水よ在れ!《大水滴(アクアドロップ)》!」


 女僧侶が呪文を唱えると空中に直径1メートル程の水の球が生まれた。

 そしてそのまま勇者目掛けて落ちた……



 ドボン! ジュゥーーー!



 うぇ? ジューって音した? チョットやり過ぎちゃったかな? テヘ♪

 干乾びると言うより焼け焦げちゃったか……


「マスター、お疲れ様」

「おう、ありがと」


 ウチの取り巻きガールズ(単体)だって負けてないぞ? ちゃんと冷えた水を用意してくれていた。

 いや~大変な戦いだった、まさに死闘だね、まさか1時間近くも粘るとはホントに人間かアイツ? 腐っても《超越級(オーバード)》だ。おかげで退屈と壮絶な死闘を繰り広げてしまった。


「ベルリネッタ、チョット彼女たちをスキャンしてみてくれ」

「イエスマスター」



 名 前:フランチェスカ・フローリオ

 種 族:人間族(ヒウマ)・女・16歳

 属 性:水・光

 戦 種:神官

 浸蝕率:C

 ―――

 勇者の魂(ブレイブソウル)



 女僧侶はフランチェスカ……か、属性も如何にも聖職者っぽい構成だ。


「ダメ! まだ熱い! フランもう一発!!」

「えぇえ!? お…大いにゃる…… 大いなる癒しの水よ在れ!《大水滴(アクアドロップ)》!」


「噛んだ……」

「噛みましたね……」


 あ、真っ赤になってる…… ちょっとカワイイ……

 ちなみに他の二人のステータスは?



 名 前:ナタリア・ルエラス

 種 族:人間族(ヒウマ)・女・18歳

 属 性:火・土

 戦 種:剣士

 浸蝕率:D

 ―――

 勇者の魂(ブレイブソウル)



 名 前:ヴェラ・イルクナー

 種 族:人間族(ヒウマ)・女・17歳

 属 性:火・風・闇

 戦 種:魔術師

 浸蝕率:C

 ―――

 勇者の魂(ブレイブソウル)



 女剣士はナタリア、意外にも一人だけ浸蝕率Dだ。

 女魔法使いはヴェラ、心に闇を抱えている…… あ、属性と心の闇は関係ないか?


 4人とも「勇者の魂(ブレイブソウル)」を持ってる……

 もしかしてパーティー名かな? それなら共通の項目が表示されるのも納得だ。


 なんと言うか…… 勇者、戦士、僧侶、魔法使い…… 何の捻りも無いスタンダードな構成だ、メーカーがデフォルトで設定したんじゃねーの? って感じの構成だ。

 俺だったら転職前提でセクシーギャルの女遊び人を入れるな、もちろんゲームだったらの話だ。


「あの~、そろそろ報酬の話に移りたいんですが~……」

「ヒュー…… ヒュー……」


 勇者の呼吸は今にも止まりそうだった……

 フランとナタリアがローブを広げて日陰を作り、ヴェラが勇者を膝枕しながら魔法を掛けてるっぽい、水属性と氷属性は共通なのかな? 多分 体温を下げる効果があるヤツだろう。

 ………… 魔無(マナレス)にボロ負けした勇者のクセにイイ御身分だな? 爆発しろ!


「あなた一体何者? なんでそんな涼しい顔してられるの?」


 勇者を膝枕したままヴェラが代表して話しかけてきた、どうやら彼女が勇者パーティーの参謀役らしい。

 まだしばらく勇者の意識は戻りそうにない、仕方ないから彼女と交渉するか。


「ふっ…… 俺の生まれ育った国の夏の暑さはこんなモンじゃないぜ?」


 ……と、適当言っておく。

 ビックなサイトで行われる真夏の祭典は地獄の業火に焼かれるレベルらしいし…… 行った事ないから知らないけど。


「そう…… 最初からそっちに有利な条件だったのね…… それに気付けなかった私たちの敗北よ」


 ヴェラは素直に勇者の敗北を認めた…… 認めたならそんな親の仇でも見るような目で睨まないで欲しいんだが……


「それで? あなたはルーファスに何を望むの?」

「そうだなぁ……」


 勇者の体毛を全て剃り落すとか面白そうだけど、俺には一つも得が無いし…… ここはやはり当初の予定通り……


「おう、金目のモン出しな」

「お金目的? やっぱり英雄の資質に欠けるのね」

「おいおい、この不毛な争いはそもそもそっちが言い出した事だろ? 「命を差し出せ」とか「女を寄越せ」とか言われてもおかしくない状況だ、それを金で解決してやるんだからむしろ良心的だろ?」

「それでも資質に欠ける行為と言わざるを得ない、こんな砂漠の真ん中でお金を取られたら命に関わる」


 ナニ言ってんだよ? アンタ達ほどのステータスがあるなら旅の資金なんか幾らでも稼げるだろ?

 そう言うセリフは魔力も金も運も無く、砂漠のど真ん中のゴブリンがノーガードで闊歩しているダンジョンに放り出されてから言え。

 お前らは気づいてないようだけど、魔力を持ってるってだけでこの世界では物凄く恵まれてるんだぜ?


「何か勘違いしてるようだけど、俺は一昨日なんの説明も無く砂漠のど真ん中に放り出されたんだぞ?

 金も無ければ誰かさんの言うような支援も受けていない」

「え…… え?」

「命からがら街に辿り着き、何とか金を稼ごうとしていたら一方的に「冒険者を辞めろ」とか言ってくる、そのほうが余ほど命に関わる、野垂れ死ねと言ってるようなモノだ」

「…………」

「勝手な思い込みで人を勝手に悪と断罪する…… さて? 勇者の資質に欠けているのは一体誰だろう?」

「う……」


 うむ、口先の魔術絶好調。


「いいわ、勝負は勝負、好きにするといいわ、腰の小袋がルー様の財布よ」

「はいどーも」


 ………… 銅貨が1枚と鉄の貨幣が5枚…… 少なくとも大金には見えないが……


「価値が分からない、これ幾らぐらいなの?」

「1,500ディル…… ルーファスったらいつのまに無駄遣いしたのかしら?」


 ヴェラがニヤニヤしてる、う~ん意地悪そうなドS顔だこと。

 1,500円…… 今どき小学生だってもっと持ってるぞ? これじゃ一人分の宿代にもならなそうだ。


「残念だったわね? ルーファスってお金を持つとすぐに無駄遣いしちゃうから《勇者の魂(ブレイブソウル)》の資金管理は私がしてるの。

 貴方たちの対決はあくまで貴方たち個人の物、他のメンバーに請求する権利は無いわ」


 《勇者の魂(ブレイブソウル)》ってのはやっぱりパーティー名のことか。

 白々しい…… 対決前に勇者から金を預かってたトコロをベルリネッタが見てたぞ?

 正直このケースも予想してた、敵対しないで済むよう穏便に進めていたつもりだが、そっちがその気ならこっちにも考えがある、後悔させてやるからな?


「そうかぁ、まさか勇者がお小遣い制だったとはなぁ…… まぁいいや、代わりにこの剣貰うから」


 砂漠に半分刺さったままの装飾過剰な剣を抜く、うん、高そうだ、付いてる大粒の宝石だけでも相当な値段になる。

 そういえばダンジョンで見かけた時はこんな剣持ってなかった、これだったらハイオークに勝てたのだろうか? だとしたら前に持ってた剣よりも高値がつくハズだ。


「なっ!? ちょっ! ちょっと待ちなさい!! それはルール違反……!」

「俺はさっき金目のモノを寄越せと言った、金だけを寄越せとは言ってない、売れそうなモノを持ってたらそれも対象になる、だろ?」

「だ…… だったらその剣は対象外よ! それはルーファスにしか使えない勇者専用の超越級(オーバード)装備! 値はつかないわ!」


 おぉ、それを捨てるなんてとんでもない……的な装備か、つーか武器にも等級ってあったのか。


「値はつかない…… 果たして本当にそうかな?」

「え?」

「世の中にはコレクターって呼ばれる人がいるんだよ、たとえ自分で使えなくても世界に1本だけの剣をコレクションしたいと思う人は必ずいる、ましてや超越級(オーバード)装備、レアリティが高い。

 それに勇者専用装備と言うなら他の勇者に売りつけるって手もある」

「なっ!?」

「もちろん俺は今すぐ旅の資金が欲しい、どこに居るか分からない他の勇者に直接売りつけるのは不可能だ。

 だがこの街には多くの商人がいる、中には他の勇者を知ってる人もいるかも知れない、そういう人にこの剣を売却する、その人が後に別の勇者にさらに高値で売却する、そういう売り方も存在するんだよ」


 要するに転売だな、この文化は地球から伝わらなかったのだろうか?

 しかし貨幣のある世界なら元々あってもおかしくないんだが…… 交易品とかも広い意味では転売に当たるかも知れないし。


「さて、買い手を探すか、ここはスマラグドス森樹国の首都だ、当然商人だって沢山いる、競ってくれればいい値がつきそうだ」

「ちょっ! ちょっと待て! 待って!!」

「あ~…… ちなみに俺は売る相手を選ばない、一番高値を付けてくれた人に売る、もちろんアンタらが一番高値を付けるならアンタらに売るよ?」

「そ……それが狙いか……」

「嫌なら買わなくていい、別の誰かに売るだけだ、ただしその場合俺が売った値段より更に高い金額を請求される事になるだろうなぁ」

「くっ……!」

「ついでに異世界歴3日目の若造にケンカを売ったあげくボロ負けし、勇者の象徴たる武器を奪われ売り払われた憐れな勇者として伝説に残るかも知れないな?」

「……っ!」


 ヴェラの顔色が悪くなった、もう一押しかな?


「或いはそんな勇者の面汚しは他の勇者からお叱りを受けるかも知れないな、それとも勇者の称号をはく奪される? 暗殺者が差し向けられる可能性だって十分にある…… だが今ならまだ間に合う」


 ……かも知れない。


「わ…… わかった……」

「ん?」

「わ…… 私たちが買い取る……」

「なんだって?」

「私たちに買い取らせて下さい!! お願いします!!」

「ふぅ~…… 俺は誰に売ってもイイんだけどきちんと頭を下げてお願いされたら仕方ないなぁ」


 フハハ! 勝った!


「それじゃ当面の旅費ってことで…… どれくらい必要かよく分からないんだが、取りあえず100万で」

「なっ!? そ…そんな大金持ってるワケないでしょ!? 私たちだって少ない支援で何とか遣り繰りしてるってのに!」


 偉そうなコト言っといて自分たちはしっかり支援を受けてるんじゃないか。


「そんな事は知らん、なにせこの世界に来てまだ3日目だ、100万がどれだけの価値かよく分からん。

 ちなみに1円……じゃなくて1ディルたりとも負かりならんからな、この剣の値段は100万ディル、払えなければ他の奴に売る」

「だ……だからそんなに持ってないって言ってるでしょ……」


「甘えるなッ!!!! だったら借金して払え!!!!」


「……っ……っ!?!?」

「…………」

「…………」

「…………」


 うむ、みんな目が点になってるな、魔王と戦う勇者は施されて当然とか思ってるのかね? そんなヌルイRPGがあってたまるか! 王様は薬草数個買っただけで尽きる資金しか提供してくれないんだよ! 勇者は苦労してナンボだ!


「剣は持っていかないでくれ? 誰にも売らないでくれ? そんな大金持っていない? どれだけ甘えれば気が済むんだ? 元々この勝負は勇者が言い出したモノだろ? 自分の言葉に責任くらい持て、仮にも勇者なんだからな!」

「う…… うぅ……」

「ここには現金を持ってる商人がたくさん居る、勇者の肩書があれば金を借りるのも難しくないだろ? よく知らないけど3位勇者って有名人なんだろ?」

「あ…… あ……」

「日暮れまでは待つ、それまでに金を用意できなければ剣は二度と戻ってこないと思え、勇者の剣が一旦流れてしまえば巡り巡って行きつく先は魔王城の宝箱の中かもしれない」

「なっ!?」


 或いは隠しダンジョンの最下層か……


「俺達はギルドで待ってるからなるべく急いだ方がいいぞ、俺の気が変わらん内にな?」


 なるべく人目につく場所で待つ、追い詰められた人間は時として凶行に及ぶことがあるからな。

 これだけの目撃者がいる上に、さすがに勇者一行がそんなことするとは思わないけど、可能性はゼロじゃない。


「あ…… あ……! あ……!! 悪魔ぁぁぁーーー!!」


 ヴェラの絶望に満ちた叫びが砂漠に響いた……

 誰が悪魔だ、失礼な奴め。




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