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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
21/175

第21話「3位勇者」


 勇者が現れた……


 存在は知ってはいたが思っていた以上に早い遭遇だ、なんと言っても異世界生活3日目の出来事だ。

 あ、違った、初日に出くわしてたんだ……


 俺の中にある勇者のイメージはズバリ「役立たず」だ、何故こんなイメージが付いているのか不思議でならない。

 勇者といえばゲームでは主人公ポジションに置かれるキャラだ、王道RPGでは特に顕著だ。

 まぁ中には10年以上奴隷をやってた勇者の父親……だと思ってたらVRだった、なんて主人公もいたけど…… あ、そうだ白馬に俺から借りパクしたドラクエ代を請求しよう。


 …………


 今気付いたけど俺ってローレシアスタイルだよな? 歴代主人公の中で唯一魔法の才能を持っていない憐れな主人公…… せめて俺にも「もょもと」並みのパワーがあれば!

 どっかにサマルという名のすれちがい王子と、ムーンという名のイヌ姫はいないのだろうか?

 いや、サマルはいらねーや、イヌ姫だけいればイイ、呪いを解くとフルヌードを披露してくれるイヌ姫様。


 えぇっと…… 何の話してたんだっけ? あ、そうそう、勇者役立たず問題だ、何故そんなイメージが染み付いているのか? きっと勇者が役に立たないネット小説でもどっかで読んだんだろう。


 さて、ここからが本題だ。

 今俺の目の前にはホンモノの勇者がいる、日本なら自分のコトを勇者だと名乗ったりすると生暖かい目で見られるだろう。

 もしそれがガチで言ってるのだとしたら距離を置かれるか超心配される事になる。


 正直俺も距離置きたい…… だってこの勇者、妙に人間臭いと言うか…… 本来勇者とは清廉潔白であるべきなのだが、コイツからはちょっと低俗の気配がする。

 パーティーメンバーを美少女で固めているのがその証拠だ。


 もっとも、日本からやって来た英雄候補もロクなのが居ないからあまり人のコトは言えない、まぁ俺は英雄候補じゃないから言いたい放題させてもらうがな。


 この世界の美的感覚が現代日本と同等とは限らないが、客観的な意見を言わせてもらうと勇者ルーファスは正真正銘イケメンだ、ランクで言うとA級あるいはS級ってところだ。

 髪は赤毛だが地球のオレンジっぽい赤毛では無く、熱血属性とか炎属性を与えられるアニメ的な赤毛、魚に腕を喰われた大海賊っぽい色かな?

 そして美少女を侍らせルー様とか呼ばれてやがる…… こう言う奴を見ると無性に(ヘコ)ませたくなる。


 だがコイツは《超越級(オーバード)》、ゴブリンよりも強い。

 どんなにイキった不良だってヘビー級プロボクサーみたいな体格の奴にはケンカを売らないだろう、当然だ、アイツらは基本的に自分が勝てる相手にしかケンカを売らない。

 だがそれは悪いコトじゃない…… いや弱い者イジメは問題だが、自分の勝てない相手に挑むのはバカのする事だ。


 だが……


 強い弱いはなにも等級だけで測れるモノでは無い。

 如何にステータス的に劣っていても、知恵と勇気とほんのちょっとのズル次第で幾らでも勝機は掴めるのだ!


 だが…… ハイオークから無様に逃げたとは言え相手は超越級(オーバード)だ、属性もなんかいっぱい付いている、ベルリネッタなら余裕でボコれるだろうけど足長蜂とゴブリンぐらいしかリアルバトルの経験がない俺では勝ち目は無いだろう。


 だが幸いなことに勇者ルーファスはバカだ。

 それも超越級のバカだ。


 クックックッ…… 俺が教えてやろう、相手を舐めてかかると命に関わるという事を! その身を持ってな!!



―――


――




 俺達は全員建物の外へ出た、勇者がそれを望んだからだ。

 酒場で飲んでいた奴らが何か面白がってついてきてしまったがとりあえず無視しよう。

 まずは勝負の内容を決めないとな。


「う~~~ん…… 勝負の方法は俺が選んでいいんですよね?」

「もちろんだ、二言は無い、ただし明らかに公平性を欠く勝負だったら口を挟ませてもらうぞ」


 ほぅ? 事前に布石を打つくらいの知恵はあったのか……

 これで山手線の駅名を交互に言い合う伝統的な勝負は出来なくなってしまったな。


「う~~~ん…… 公平な勝負…… 公平な勝負…… おぉ! あ、いやダメだな…… う~~~ん……」

「おい…… 早く決めろよ……」

「いやいやチョット待ってください、双方が納得できて暴力に寄らない勝負法を考えてるんですから。

 う~~~~~ん……」


 木漏れ日が当たると黒い服が熱を吸収して熱い、外は砂漠だもんな……

 おぉ! そうだ! それでいいじゃん♪


「決めました、暑さ我慢対決にしましょう」

「暑さ我慢対決?」

「砂漠の灼熱の暑さにどちらがより長く耐えられるか競うんです。

 そうですね…… 陽の光を遮るもののない場所で同時に立ち続ける、勝敗は立っていられなくなったら負け、或いはギブアップした場合。

 日暮れまで両方立っていたら引き分けってことにしましょうか? どうです?」

「ふむ……」


 勇者は考え込む表情をしながらチラリと仲間に視線を送る。


 コクリ…… と、仲間の女魔法使いが小さく頷く。


「確かにこちらが一方的に不利って事はなさそうだな」


 勝負内容を確認してもらったのか……

 勇者は慎重なのか、話を理解できないバカなのか…… そんなに難しい話はしてないし、さすがに前者だよな?


「では条件を対等にするために、そちらは黒のローブを纏ってください」

「は? なんでそんな? ……まぁいいが……」


 まさか…… 黒色が光を吸収することを知らないんじゃないよな? ファンタジー世界では光の勉強とか…… してないか、アレって一応科学に分類されるもんな。

 この世界って文明度が中世ヨーロッパ頃より高いのかと思ったけど全然そんなコト無いのか?

 建築様式とかが高度なのは全部地球からもたらされたモノだからなのかな?


 多分この世界は科学的検証を行わない、その現象がなぜ起こるのか理解して無い、ただ感覚的にそうなると分かっているだけだ。

 アーチ構造がなんとなく頑丈って分かるだけで、なぜ頑丈か理解して無いんだ。


 なるほど、転移者たちが挙って知識無双をしたがるワケだ、これならこの世界の住人に対して付け入る隙がありそうだ。

 試しに勇者相手に小学生レベルの科学知識でマウント取ってやるぜ!


「それじゃ後は報酬…… いや、対価か」

「そっちは好きなものを要求すればいい」

「おいおい、そんなこと簡単に言っていいのか? 命を寄こせとか言われたらどうするつもりだよ?」

「構わない、何でも言うがいい、もし万が一お前が勝てたら……の話だがな?」


 マジかよ…… どんだけ暑さ我慢対決に自信満々なんだよ? 確かに炎属性っぽい髪色してるけどさ。

 もしかして普段からロウソクプレイとかして熱さに馴れてるのかな?


「まぁいい、それじゃそっちは勝ったら何を要求するつもりなんだ?」


 俺は事前に確認させてもらう、命とか身体とかベルリネッタとか要求されたら困るから。


「ん…… そう……だな……」チラチラ

「?」


 勇者の視線の先……


 → → → エルスヴィタール


 オーパーツ狙いかよ!! ハァ…… コイツ小物だ……


「つまり他人のオモチャが羨ましくって因縁吹っ掛けてたワケか、子供だってそんなことしないぞ?」

「そっ! そんなつもりはない!! ただ俺たちの方が有効活用できそうだと思っただけだッ!! 妙な言い掛かりをつけるのは止めてもらおうか!! 正勇者への侮辱と受け取るぞッ!!」


 そうだよ侮辱してるんだよ、そんぐらい分かれよ。


「それでどうするんだ?」

「ハァ……」


 ま、別にいいか、所有権を譲り渡してもマスター登録しなきゃ使えないんだ、使えなければ重さは60t鉄の塊と変わらない。

 動かすこともできずに項垂れる小物勇者を見るのもまた一興、もちろん負けるつもりもないが……


「わかったよ、対価はそれでいい」

「よし!! これで…… フフフッ!」


 もう勝った気でいるのか? ハイオークから逃げ出したくせに何故そこまで自己評価を高くできるんだ?


「こ……これは一体!? あ! 少年!」


 あ、ユリアだ。

 心なしかさっきより少しやつれてる、きっと酷いパワハラに遭ったのだろう。


「いったい何の騒ぎですかこれは?」


 移動する俺たちの後を多くの野次馬たちが付いてくる、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。


「アチラの方にケンカ売られちゃいまして……」

「あれは…… まさか3位勇者?」

「? なに? 3位勇者って?」

「えぇっと…… この世界には勇者の家系バレンティア家っていうのがあって、その一族に連なる者に時折り現れる、高い能力を持つ者のコトです。

 彼はバレンティア一族の中に現れた3番目の勇者です。あ、ちなみに正勇者は今のところ全部で3人ですね」


 あんなのが他にまだ2人もいるのかよ? 他の2人は小物じゃないといいんだけど。


「あの…… いくらキミが強くても正勇者とコトを構えるのはおススメしません、彼らはこの世界でもトップクラスに入る程の実力の持ち主ですから」


 どうだかな? ハイオークから逃げる奴らだぜ? 装備が揃ってないとか言い訳してたけど。


 しかし……


「大丈夫だよ、何も決闘しようってんじゃないんです、やるのは暑さ我慢対決だ」

「暑さ我慢対決? なんでそんな意味不明なことを?」


 なんでってそりゃ俺が確実に勝てる勝負を選択したからさ。



―――



 勝負は首都のすぐそばの砂漠のくぼ地で行われる事になった。

 砂が光を反射して下からも強烈に照らされている感じだ。


「くっ……」


 そして勝負を始める前から小物勇者は既に苦しそうだ……


「何の騒ぎだ?」

「お祭りか?」

「正勇者 対 英雄候補の対決だよ~♪ BET(ベット)の受付終了間際だよ~♪」

「お、俺は英雄候補に賭けてみるかな?」

「はぁ? ここは正勇者だろ?」


 くぼ地の周りには既に数百人のギャラリーが集まっている、あ、売り子がビールっぽい飲み物売ってる…… 完全に見世物になってしまったな。


「さて、それじゃさっさと始めましょうか、始める前に倒れられたら意味が無いから」

「そ…… そうだな…… 早く始めよう……」


 勇者は息も絶え絶えって感じだな、この状況でまだ勇者に賭けるヤツがいるのが驚きだ。


「待ちなさい、最後に一つ条件を出します」

「あ?」


 声を上げたのは勇者の仲間の女魔法使いだ、いや…… さっさと始めないとお前のルー様が苦しそうだよ?


「双方とも魔法の使用を禁止します、魔法を使ったらいつになっても勝負がつかないでしょ?」

「お…… 俺はそれで…… 構わない……」

「あぁ、自分も了解です」


 確かに勇者が水魔法とか使ってたらいつになっても終わらないかもしれない。

 俺は始めっから魔法なんて使えないから関係ないんだが……


「ちなみに私は魔法発動時の魔力を知覚できます、不正はできないので留意してくださいね」

「ハァ…… ハァ……」

「りょ~か~い」


 他には無いな? マジで勇者が倒れそうだからさっさと始めよう。


「それでは勇者対俺、暑さ我慢対決始めます!」


 ラウンドワン! ファイッ!




――― 開始10分後 ―――




「ねぇねぇルー様~、暇だからおしゃべりしない?」

「ハァ……ハァ……ハァ……」


 へんじがない。まるでしかばねのようだ……




――― 開始20分後 ―――




「…………」

「ハッ……ハッ……ハッ……」


 勇者は黒のローブを頭の上に掲げて日傘代わりにしている…… あれ普通にルール違反だよな? ローブ纏ってないし……

 俺は優しいからその事を追求しないけどね……




――― 開始30分後 ―――




「あの~、そろそろギブアップしたら?」

「う…… うるふぁい…… しゃへられるれらろ…… うれら……」

「え? なんて?」

「うる…… ふぁい……」


 多分「うるさい」だな、それ以外は解読不能。




――― 開始40分後 ―――




「ふぁぁぁ~~~…… 暇……」

「ヒュ~…… ヒュ~…… ヒュ~……」


 勇者はウンコ座りをしながら砂漠に鞘ごと剣を刺し全体重を預けてる、辛うじて「倒れていない」状態だ。

 呼吸音とかヤバそうな感じになってきたし…… てかギャラリーもドン引きだ。

 しまったなぁ、敗北条件にドクターストップも入れておくべきだった。




――― 開始50分後 ―――




「…………」

「お゛……」

「ん?」

「お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」



 フワ…… パサ……



 勇者は雄叫びを上げたのち、まるで枯葉が落ちる様に倒れた。

 「ドサ」じゃなく「パサ」だった、なんか軽く乾いた音だった……


「ル…! ルー様ぁーーー!!」


 勇者…… なんか痩せたなぁ……

 1時間も経たずにミイラ男の完成だ、ピラミッドで徘徊してたら討伐対象間違い無し。


 実は勝負の前から俺の周りの熱を勇者目掛けて放出してたんだ、それだけで体感温度は20度近く上がってたハズだ。

 いや、よく頑張ったよ、きっとお前なら立派な即身仏にだってなれるよ。


 南無……






《特別解説》

『もょもと』

 FC版ドラクエⅡで強くてニューゲームができる人、発音は不明。

ゆうて いみや おうきむ

こうほ りいゆ うじとり

やまあ きらぺ ぺぺぺぺ

ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ

ぺぺぺ ぺぺぺ ぺぺぺぺ ぺぺ


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