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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
18/175

第18話「元凶」


「後どれくらいで街に着くんだ? まだ掛かりそうなのか?」


 エルスヴィタールは時速100km近い速度で移動している、昨日の移動分も合わせると700~800km近く移動してるんじゃないだろうか?

 まさかコースがズレて街を通り過ぎてる……なんてこと無いだろうな?


「じっ! 時間的には…そろそ… うきゃああああ!!」


 ユリアが奇声を上げている……

 エルスヴィタールに牽引されてる砂ゾリは砂山を越えるたびに上下左右に弾みまくっている、かれこれ5時間もやってるんだから慣れないものかね?



 ピ



 ん? スピードが落ちた? また魔物か? 今度は原型が残るように倒してくれ。


「ハアッ… ハアッ… あ……あと少し……みたいですよ……」

「?」

「空…… 見てください……」


 空? この雲ひとつない青空は見飽きた…… ん? 遠くになにか浮いてる?

 アレは……船? おおっ! なんか木造船が空に浮いている!! しかも一つじゃない、複数だ!


「もしかして飛空艇か?」

「飛空……? ああ、この世界では空船(くうせん)です、色々種類はあるんですが空を飛べる船を全てまとめて空船と呼んでいます」


 おお! コレだよ! コレこそが剣と魔法の世界に相応しい! ザ☆王道!!って感じだ!

 見たところ飛んでいる空船は二種類、一つは地球の飛行船みたいな気嚢で木造船を吊るしてるようなタイプと、ヘリコプターやドローンのような回転翼で浮力を得ているモノだ。

 大型のモノは気嚢タイプで小型のものはドローンタイプのようだ、飛行機のような翼で揚力を得るタイプは無さそうだな……


 個人的にはどうやって浮いてるのか外観からは想像もできない未確認飛行物体タイプ、例えば円筒状の塔がそのまま浮遊している「魔法で浮いてます」って感じのも欲しかったんだが、そういったタイプは見受けられない。

 まぁ色々種類もあるみたいだし、世界のどこかにはアダムスキー型の空船とかあるかもしれないな。


 それにしても遠くに浮いている船なのによく見えるなぁ…… 俺、この世界に来て視力が上がったのかな?


 ちなみにウチの船のプレアデスには翼が付いていた、もっともあれは重力制御翼で揚力を得るためのモノでは無いそうだが。


「アヴァロニアに行くにはアレに乗るのか?」


 ハッキリ言って乗ってみたい!


「あ、いえ、アヴァロニアに直接行ける便はありません、近くの国まで行って陸路で国境を越える必要があります」

「え? そうなの?」

「アヴァロニアは人間族国家以外の船籍の直接乗り付けを禁止していますから」


 あぁ、そういえばクソ騎士コンラッドがそんなようなこと言ってたな……

 だがそこはどーでもいい、俺の目的地はルースであってアヴァロニアじゃない。

 ルース行きの便があれば乗ってみたいし、滞在中に調べてみるか。


「空船は陸路を行くより安全で速いですけど…… ただ…… その…… 高いですよ?」

「…………」


 まぁそうだよな…… うん、知ってた。


「ちなみに陸路だとどれくらいかかるんだ?」

「えっと…… 予算は空船運賃の1/10くらいで済んで、時間は半年程度でしょうか…… でもそのオーパーツがあれば早ければ1カ月くらいで着くかもしれません」


 陸路ルート一択だな。空路ルートは予算10倍って…… 具体的な金額を聞くのが怖い。

 でも乗ってみたいなぁ…… くそぅ! マヨネーズ無双ができてたら迷わず空路を選んだものを!

 こうなったら一か八かでタピオカ無双やってみるか? 問題はタピオカの作り方を知らないってとこなんだが……


「あ、見えてきましたよ」

「うん?」


 砂の山の向こうに山脈みたいな山の連なりが見えてきた。

 このソリで山越えするのは厳しい気がするんだが……


「フフッ、あれは山じゃないんです」

「は?」

「まぁ行けばわかります」


 なんか勿体ぶってる、どうやらサプライズがあるらしい。



―――



 それは山では無かった、遠くから見たときは山脈みたいに見えたが思ったよりずっと近かった、それでも高さ数百メートルはある岩山の連なりだ。

 いや…… これ岩か? なにか質感が……


「驚きましたか? これかぶなんですよ?」

「カブ? カブって秒で億を稼げる現代の錬金術の?」

「?? 意味がよくわからないけど多分違います、これは1000年前に倒れた大木の幹の一部、それが化石化したモノです」

「は? 大木? この巨大な岩壁が?」


 確かに根っこみたいなのが伸びてて岩というには不自然な形状をしているが、コレがホントに樹だったとしたら幹回り何km? いや何十kmはくだらないサイズだ。

 異世界で巨大な樹といえば……


「ここはスマラグドス森樹国、首都ユグドラシルです」


 ユリアが国名及び都市名を教えてくれた。

 スマラグドス森樹国、首都ユグドラシル…… 想像通りだった。

 つまりこれは世界樹の残骸だ…… 確かユグドラシルって世界樹のコトだよね? 葉っぱで人が生き返って何故か一枚しか採取できないあの……


 だがそれよりもまず一つツッコみたいのはドコら辺が森樹国なんだ? ここ思いっ切り砂漠のど真ん中なんだが?


「フフッ、驚きました? この街は1000年前に倒れた世界樹・ユグドラシルの切り株の中に作られた都市なんです」

「切り株……の中!?」

「広さは20k㎡以上、約10万の民が暮らしてます」


 …………ッ! ちょっと悔しいけどマジで驚いた、さすがファンタジー異世界! 俺の常識など通用しないな。


「そんな巨大な樹がかつてあったのか……」

「はい、その枝葉は大陸を覆い、その頂は星まで届いたと云われています」


 それは流石にナイ。

 だがそこまで巨大な樹なら宇宙までは届いてたかもしれないな。


 しかしそんな大樹が倒れるなんて1000年前に一体どんな天変地異が起きたんだよ……


 …………


 アレ? 1000年前?


 …………


 何故か心当たりがあるんですが……



 チラッ



 ベルリネッタの顔を覗き込む、相変わらず無表情だ、一体何を考えているのやら……

 ユリアに聞こえないように小声で話す。


「あ~…… あのさベルリネッタさん」

「? なに?」

「1000年前に世界樹が倒れたんだって…… なにか知ってたりする?」

「私が知る限り1000年前の時点でこの地にそんな巨大樹はなかった」

「そ…… そうなのか?」

「イエス、この地に巨大樹があったのは1019年前、調査船が落ちる時に引っ掛かってへし折れた…… おかげでプレアデスが弾かれるし迷惑な樹」


 やっぱりかぁあぁ!! こいつ世界樹へし折りやがった!! 何してくれてんだよ!

 枝程度だったら過去の偉人みたいに素直に謝れば許されただろうけど、御神木を根本からポッキリ折ったら大問題だ! ゴメンじゃ済まない。


 …………


 よし! 聞かなかったコトにしよう!

 真実を話したところで誰も信じやしないからな、だったらワザワザ喋る必要ない、アレは不幸な天変地異だったんだ。

 実際ベルリネッタだってワザとやった訳じゃないだろうからな……

 いや、墜落の勢いを落とすためにワザと当たりに行った可能性はある……な。


 ヤメヤメ! 俺は1019年前の世界樹倒木事件の真相など知らない。

 それよりも気になっていることをユリアに聞こう、現実逃避ではない。


「さっきスマラグドス森樹国って言ってたよね? どこらへんが森樹国なの? 見渡す限り砂だらけなんだけど?」

「あ、それは…… 私も直接見たわけじゃないんですが、この辺はかつて緑に覆われた土地で「大森林」と呼ばれていたらしいです。

 ところが1000年前、世界樹が倒れたのと時を同じくしてゲヘナの火が発生しました」

「ゲヘナの火?」

「はい、1000年前から少しずつ延焼区域を広げ、樹も大地も全て燃やし尽くし無に変えてしまう…… この地が『無限砂漠』と呼ばれる原因です。

 今でも砂漠の外延部で燃え続け少しずつ少しずつ砂漠を広げています、唯一焼け残ったのがこのユグドラシルの幹の一部だけだったそうです」


 ゲヘナの火…… いや、それよりも気になるワードが…… また1000年前?


「あのさベルリネッタ」

「なに?」

「1000年前から燃え続けているゲヘナの火って何のコトだか分かるか?」

「ゲヘナの火…… ファイアウォールのコトかも」


 やはり知ってたか……


「ちなみにそれはどういったモノなんだ?」

「ファイアウォールは汚染…… 魔力を焼却する。

 1019年前、この地は緑に溢れる豊かな土地だった…… でも植物というのは大量のマナウイルスを保有してる、だからファイアウォールを使い焼却した」


 oh……


「あ~…… 念のため確認なんだけどさ、ファイアウォールで焼かれた土地ってどうなるの?」

「大地からマナ…… 魔力は失われ砂漠化する」


 やはりか! それってつまり……


「無限砂漠・グラスディタースを生み出したのはベルリネッタってコトか?」

「イエス」


 ぐおおぉぉぉ!! 何考えてんだこのロボ子は!! 六大厄災の一つを生み出した元凶じゃねーか! いくら魔力が嫌いだからってよその星で世界最大の砂漠を作るなよ!


「じゃあ、この砂漠に殆んど魔物がいなかった理由って?」

「自然魔力…… 空気中に魔力が存在しないと殆んどの魔物は生存できない…… 魔力は魔物の生存に必要不可欠、魔力の無い環境に置かれた魔物は共食いをして魔力を摂取、結果砂漠から魔物が消えた」

「それじゃあココに来るまでに何度も魔物に遭遇した理由って……」

「ファイアウォールを解除した、墜落地点からようやく移動できるようになったからもう必要ないと判断」


 この混乱の元凶はベルリネッタだった…… それどころか六大厄災の一つ無限砂漠の生みの親でした……

 よし! この事実は墓まで持っていこう!


 ある意味、六大厄災の一つを俺が止めたと言っても過言では無い、普通なら英雄として扱われただろう…… 俺が魔無(マナレス)じゃ無かったらな。

 この事実を公表したところで誰も信じはしないだろう、仮に誰か信じたとしても俺とベルリネッタは世界中の人から恨まれて殺される……


 だって犯人とそのマスターなんだから……






《特別解説》

『世界樹/せかいじゅ』

 世界を支えるデカい樹、ゲームや漫画、世界中の神話など至る所に出てくる。

 日本ではやはり死者蘇生アイテムとして有名。


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