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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
17/175

第17話「俺の趣味だ」


「マスター、おはよ……」

「あぁ、おはよう…… でもそこはおに~ちゃん起き…… いやなんでもない」

「?」


 う~ん、目覚めて1秒で妄想をはじめるとは…… 俺まだ寝てるのかな?


「ん?」


 ベルリネッタが至近距離で俺の顔を覗き込んでいる、もしかして膝枕してもらってるのか? スベスベしてて心地良い…… って、ベルリネッタ全裸じゃねーか! なんで俺は寝てるんだよ! 勿体ない!!

 じゃなくって!!


「服はどうしたんだよ!?」


 ユリアに毛布代わりってことで貸してもらった砂ゾリの天幕をベルリネッタに被せた。


「すでに完成してる」

「へ? あ……」


 そうだった、昨日寝る前に俺の学ランとYシャツを材料にしてベルリネッタ用の服を作るよう指示してたんだった。

 つーか、一晩中全裸で服作ってたのか? くそぅ、俺も起きてればよかった。


「装備してもいい?」

「あ……あぁ、是非とも着てみてくれ」


 ユリアが起きて全裸少女を目撃する前に……


 ベルリネッタはそのまま天幕の下でゴソゴソと着替え始める。


「あれ? いま服持ってたっけ?」

「プレアデスに素材を転送して加工して取り寄せた」


 そういえば転送機能があったんだったな。


「それじゃこんなところで野宿しなくても、プレアデスに戻って宿泊できたんじゃないのか?」

「それムリ、転送は生物には適用できない、理由はストレージと同じ」


 なるほど、マナウイルス流入阻止のための水際対策か。

 しかし今のプレアデスの艦内はウイルスに汚染されまくってるし今更って気も…… いや、そこは徹底してやらないと何時になってもウイルスを除去できないもんな。

 天然痘だって撲滅までに20年以上掛かったって話だし……


「へっくしょん! うぅ~……っ」


 砂漠の夜が寒いとは聞いていたが本当だったな……


 最初は昼のうちにストレージに溜め込みまくった熱を利用しようかとも思ったが、10分縛りのせいで全く使い物にならなかった。

 メモリを増設したらこの10分縛りを改造しよう。



 チラ



 周囲を見渡してもユリアはどこにも見当たらない、天幕の一部が砂漠に落ちてるだけ…… 魔物に喰われた?……のならベルリネッタが察知して報告してくれたはず……

 よく見れば天幕の真ん中あたりが膨らんでいる。


 そっとめくってみるとそこには…… ユリアの生首が!

 じゃなくって身体を砂に埋めてるのか、なるほど、こうやって夜の寒さをしのぐのか…… 砂漠に住むトカゲみたいなことをする奴だ、コレってこの世界の常識なの? 砂まみれになるよな…… いや、それ以前に昨日デスワームに襲われたのに勇気あるね?


 …………


 まさか本当にデスワームに喰われてて首しか残ってない……なんてこと無いだろうな?


「す~…… す~……」


 ほ、息してる、取り合えず胴体は喰われてなさそうだ。


「マスター、召し替え終わった」

「ん? おぉ!」


 昨日は裸Yシャツ、さっきまでは全裸、そして今のベルリネッタはゴスロリだ。

 学ランとYシャツを素材にしたから色は黒と白しか使えない、そしてその色の組み合わせの服といったらなぜかゴスロリしか思い浮かばなかった。

 あの時なぜセーラー服や修道服が出てこなかったのだろう? 謎だ。


「マスターはゴスロリ萌え…… 記憶した」


 あぁ…… ベルリネッタが余計なことを覚えてしまった…… 別にゴスロリ萌えって訳じゃないんだが、もちろん嫌いじゃないけどさ。

 それよりも萌えって辞書に載ってるのか…… 神楽橋飯綱はまた一つ賢くなってしまった。



―――



 その後、起きてきたユリアに「お嬢サマって貴族様だったの? じゃあなんで昨日はあんなイカガワシイ格好してたの?」と聞かれてしまった。


 なんでと聞かれたら「俺の趣味だ」としか答えられないよな…… もちろん黙秘したけど。



―――


――




 日が昇り、さぁ出発! という段階で問題発生。

 さすがにエルスヴィタールに3人は乗れないよな…… いや、俺を乙女サンドにすればイケないこともない? いやイケる! ピッタリ密着すれば3人乗りも可能だ!!


 ……と、思っていたんだけど……


「私のことはお気になさらず行ってください、北東へまっすぐ進めば街につきますから」


 ユリアは最初から一緒に行くつもりはなかったらしい。


「商品をここに放置していく訳にはいきません、そんなコトしたら賠償金の支払いで私は確実に奴隷落ちです」


 異世界はバイトに厳しい世界らしい…… しかしだからといって……


「だがどうするんだ? ここまではハゲダチョウに砂ゾリを引かせて来たんだろ?」

「はげだちょう? スナトリトカゲのジョセフィーヌです」


 ジョセフィーヌ…… なんちゅ~ネーミングセンスだよ。


「この子もレンタルだったんで既に収支はマイナスです、だからこそ荷物は自分で引いてでも持って帰らなければならないんです!」


 …………


 無理に決まってんだろ、コイツ現実が全然見えてないぞ。

 こんな大きなソリ、女の子一人の力でどうにかなる重量じゃない。


 個人的には助けてあげたい…… この世界の常識がない俺たちとしては街での案内役がいてくれたほうが何かと助かる。

 本音を言えば助けたことを恩に着せて謝礼を頂きたいトコロだが、奴隷落ち一歩手前の少女から金を巻き上げるほど外道ではない。


 だが助ける為にはどうしてもベルリネッタの協力が必要だ、しかしベルリネッタは汚染体なんか死ねばいいと思っているクチだ。

 果たして協力してくれるだろうか?

 マスター権限で強制的に従わせることはしたくない、ベルリネッタは自由意志を持ってるから理不尽な命令を続けていれば反乱とか起こすかもしれない……

 SFではしょっちゅう機械は反乱を起こすからな、ロボット三原則仕事しろ。


「マスター、彼女を助けよ?」

「え?」

「ナニ?」

「あぁ、いや、そうだな助けよう」


 ベルリネッタが自分の意志でウイルス感染者を助けようと言い出した?

 もしかして俺の顔色を見て提案してくれたのだろうか?


 それとも莫大な謝礼を要求して骨の髄までしゃぶり尽くすつもりか?


 例えば……



『こんなはした金じゃ全然足りないわよ? やっぱり奴隷商にでも売り払うしかないわね?』

『お…お許しください! お許しくださいぃ!』

『ふん! そんなに奴隷落ちは嫌? だったら選ばせてあげる、奴隷商に売られるか、それとも我が偉大なるマスターの性欲処理ペットになるか? どっちがい~い?』

『そ……そんな……』

『早く選びなさい、選ばないなら奴隷商に売り払うわよ?』

『うぅ…… ペ…ペ…ットに……なります……///』

『聞こえないわよ! もっと大きな声で言いなさい!』

『うぅ/// ペットになります! イヅナ様の性欲処理ペットになります! ならせて下さい!!///』

『アハハハハハハ♪ それじゃ今日からあんたの名前はポチね♪ これから喋る時は必ず語尾に「ワン」と付けなさい♪』

『うぅ…… ぐす…… わ……わかりました……ワン』



 ……とか?


 もしそうならなんてご主人様思いのアンドロイドなんだろう、今後ベルリネッタに足を向けて寝れないな。


 …………


 ま、俺じゃないんだからそんなコト考えてるワケないか。

 つーか妄想の中のベルリネッタが全然キャラ違ったな、誰だよアレ……




 結局エルスヴィタールで砂ゾリを引っ張っていくことになった。

 牽引ビームなんて便利なモノもあるのだが、流石に目立ちすぎるためロープで引っ張る形に落ち着いた。

 もっともオーパーツで砂ゾリを引っ張って街に入ったらそれだけで注目の的だろうが……

 あぁ、ちなみにユリアは砂ゾリの方に乗っている、乙女サンドができなかったのは残念だ。


「うぅ…… 何度も何度も助けていただいてありがとうございます、このご恩はいつか必ず!」


 貧乏少女の恩返しなんかまったく期待できない、これがもしエロ漫画の世界なら「身体で返します」とか言い出すんだが、現実世界でそんなことを言うヤツが存在するとは思えないしな。


 ……というか、もうすでに充分恩は返して貰ってるんだけどね。

 水と食料の提供だ。

 ストレージで空気中の水分をかき集めようかと思ったんだが、ここは砂漠だ、水分なんて殆どありゃしない、パサパサのカラッカラに乾燥している。

 雲でも出てればエルスヴィタールで上空まで直接水を集めに行けたんだが…… 雲一つない晴天だ。


 もともと一人分しか持っていなかった水を分けてくれたんだ、それだけでもありがたい…… なにせもう少しでろ過したションベンを飲まなきゃいけなかったんだからな。


 俺の尊厳の恩人だ。


「しかしこんな危険な仕事を何で一人でやってるんだ? 普通護衛とかつけるだろ?」


 ファンタジー世界では砂漠の魔物は言うに及ばず、砂漠の盗賊なんてのもいるんじゃないのか? 地球ですらかつてはそんな奴らがいたらしいし……

 今でもいるのかな? モヒカンと改造バギーとヒャッハー!な人達…… あれは砂漠じゃなく荒野か?


「この無限砂漠で護衛を付ける運び屋なんて滅多にいませんよ」

「そうなのか?」

「はい、この砂漠でこんなに魔物が出るなんて異常事態です、それに備えて常に護衛を雇うなど普通はあり得ません」


 異常事態……ねぇ? 数多くのRPGをプレイしてきた俺に言わせればこんなにエンカウント率の低い砂漠はありえない、普通もっと出てくるだろ? 水とか氷属性に弱い魔物が。

 ゲームなら……


 あ、そういえばベルリネッタもこの砂漠にはほとんど魔物が出ない……ようなこと言ってたな。



 ピ!



「ん?」

「マスター、25km前方に生体反応感知した、向こうもこっちに向かってきてる…… このまま進むと約10分で接触する」


 やっぱり魔物出るのか…… これも異常事態だからか。


「殲滅……する?」


 ここは避けるか聞く場面だろ? 迷わず殲滅を提案するか?


「人はいないのか?」

「イエス、砂魚種10匹の群れ」


 あぁ、RPGやハンティングゲームじゃ砂の海を泳ぐ魚のモンスターってよく出てくるけど、普通に考えれば砂なんて泳げるワケねーじゃん? どうゆう魔物なんだろう? やはり魔法の力で何かしてるのか? 興味深いな。


「殲滅はいいんだがやりすぎないようにしてくれ」

「?」

「昨日のアレは威力がデカすぎる、もう少し穏便な手段で頼む」


 もしかしたら素材が売れるかもしれないだろ? 10匹分もあれば土属性の片手剣くらい作れるかもしれない。


「マスターの指令を受託、穏便な手段で対処」

「あぁ、頼む」

「プロトアームズ《K》局地制圧兵器・無限回転式電磁加速砲(インブレイグ)展開(スタンバイ)


 ん?



 フォン!!



 昨日の惑星破壊兵器とは違いベルリネッタの左腕あたりに巨大兵器が出現する。

 いや…… 昨日の奴ほどデカくないがそれでも2m近くある…… 見た目はまんまガトリング砲だ。



 シュイイイィィィーーーン!!



 多銃身部分が高速回転を始めた……

 いや、ちょっと待て、地球のガトリング砲だって1秒間に何十発も弾丸を発射して目標を粉々にするんだぞ?

 それをSF超兵器で…… しかもレールガンを連発って…… 大惨事の予感しかしない!


発射(ファイア)

「ちょっ…!!」



 バババババババババババッッッ!!!!





 ドゴオオオォォォォオオォォオォォオン!!!!



 うわぁ…… 数キロ先で100m以上の高さの砂柱が立ってる……


「目標殲滅」

「あ……そう…… うん、ゴクロウサマデシタ」


 確かに昨日よりは控えめだ、少なくとも星に穴は開いてないだろう、だが俺の思う穏便ってこんなに過激じゃない。

 俺とベルリネッタの間には如何ともしがたい認識のズレがある……

 コミュニケーションって大事だなぁ……って思った、特に異文化コミュニケーションは……

 アレじゃ素材は欠片も残ってないだろうなぁ……


「あ…… あわ…… ぁわわ……」


 後ろのソリから一部始終を見ていたユリアだが、何が起こったのか分からなかっただろう。

 説明するのも面倒だ、放っておこう。しばらくは「あわあわ」しか言わないだろうし……




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