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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 耳長族/エルフ 編 ――
15/175

第15話「定番中の定番」


 それでは早速恩を売りに行こう! やられてしまう前に!

 もし間に合わずにやられてしまったら、遺品は俺が有難く使わせてもらうよ、だから迷わず成仏してくれ。


 いや、もちろん見捨てるつもりはない、情報も仕入れたいしね。


 …………


 もしかしてSF超科学なら死体の脳みそから情報を抜き出すコトもできるかも知れない……

 いや、もちろん助けるって! 恐らくグロいことになるであろう開頭手術なんて見たくない!


「マスター、戦闘に介入するつもりなら命令ください」

「いや…… ここは俺に行かせてくれ」

「えっ!?」


 ベルリネッタの顔に珍しく表情が浮かぶ、顔に『驚・愕・!!』って勘亭流フォントで書かれてる、俺が働くとは思ってなかったらしい。

 どうやら俺にニートの才能がある事を見抜いているようだ。


「マスターは今までにどれだけ戦闘経験…… ある?」

「何十という数の魔王を倒し世界を救ってきたぜ?」

「現実では?」

「小6の時、部屋に入って来た足長蜂と30分の激闘の末、無傷で撃退することに成功した!

 あ、あと昨日ゴブリン倒した」


 …………

 …………


「マスター」

「うん?」

「マスターはどうぞお休みになって……ください」

「あ、はい、スンマセン」


 なんとなく「お前は引っ込んでろ」という心の声が聞こえた気がした…… いや、心の声というよりCPUの音って言うべきかな?

 どうやらベルリネッタがやるらしい、それはつまり俺が出るまでも無いって意味だよな?

 そうだな、ご主人様は後ろでどっしり構えていて見守るのが仕事だ、決してコレを無職とは言わない。


「プロトアームズ《R》対星戦術兵器・惑星破壊砲(ディストラクター)…… 展開(スタンバイ)


 はい? 今ナニか物騒な名前が……



 フォン!!



 ベルリネッタの右側の空間が歪んだと思ったら巨大な兵器が姿を現した。

 エルスヴィタールよりも長い3m以上の砲身を持つ巨大な大砲だった、それは空中に浮遊したまま砲口を敵に向けている。

 つーかエルスヴィタールのエーテリウス粒子砲とやらは使わないんだ…… まぁ当たり前か、敵はほぼ真下、撃つためには垂直にならなければならない、俺が乗ってる時はチョットやめて欲しいな。


 …………ん?


「待て待て待て待て待てッ! ちょっと待てぇぃ!!」

「ナニ? マスター」

「お前はミミズ駆除の為に星を破壊する気か!?」


 今、惑星破壊砲って言ったよね? どう考えても過剰戦力だ、ネズミ退治に地球破壊爆弾を使うようなモノだ、必要ないから! ネコイラズで十分だから!


「心配ないです…… 自分に使用権限のある兵器、あくまで試験兵器(テストタイプ)、この惑星破壊砲も実際に惑星を破壊できる威力……出ません」

「そ……そうなのか?」

「イエス、最大出力でも衛星を破壊するの……やっとだと思う」


 そっかぁ~、それなら一安心……なワケねーだろ!

 衛星って人工衛星のことだよね!? まさか空に浮かんでいる本物の月のことじゃ無いよね? あ、空に月が二つ浮かんでる…… さすが異世界、コレなら一つ壊されても安心だね♪


 …………


 そうじゃなくって!

 冷静に考えれば人工衛星のはずない! 元々は惑星を破壊する兵器なんだ、その試作品の最高出力で人工衛星破壊が限界だったら出力に差がありすぎる!

 月を破壊できる武器を地中のミミズ目掛けて撃ったら辺り一面一瞬で吹き飛ぶだろ!


 …………と、取り乱してしまったが、よくよく考えれば「ご主人様大好き♪」なベルリネッタが俺に危険がおよぶ攻撃をするワケないじゃないか。

 あれが実弾兵器でもない限り威力調節だってできるはず、動力パイプが付いてるしきっとビーム兵器だ。


 …………


 大丈夫だよネ? ダンジョンさえ出てしまえばご主人様はもう用済み、この場で消そうとか考えてないよね?


「ターゲットロックオン、惑星破壊砲(ディストラクター)…… 発射」



 キュイィィィン…… ズドォォォン!!!!



「うわっ!?」


 砲口から強烈な光が放たれると同時に衝撃波が発生する、危うく上空300mの空の上で投げ出されるところだった。

 撃つ前に「対ショック・対閃光防御」とか言ってくれよ。



 ブシュゥゥゥゥゥ ジャキン!



「敵消滅……確認、状況終了です」

「一瞬だな……おい」


 情緒が無い…… うおっ!?


 砂漠にぽっかりと穴が開いていた、爆発系じゃ無く貫通系だったのか、しかも崩れないところを見ると周囲の砂がガラス状に変化してガッチリ固まってるのかもしれない……

 そう言えばこの星って平面だったよな? 今の威力じゃ裏側まで突き抜けたんじゃないか?

 もし巨大な亀とか象とかが世界を支えてたら殺してたトコロだ、なんて危険な兵器を使いやがるんだ。



―――


――




「大丈夫か?」


 エルスヴィタールを着陸させ、さも俺が助けました……みたいな顔をして話し掛ける、もちろん恩を売るためだ。

 常にポーカーフェイスでジト目のベルリネッタは交渉事には強そうだけど、人の感情の機微には疎そうだ。

 ここは中学三年間一度も夏休みの宿題を自力でやったことのない(友達に写させてもらってきた)俺が交渉しよう。


「あ…… あぅ……あ……」


 あ、さっきの天変地異級の攻撃を見て完全に怯えてらっしゃる。

 やっぱりやり過ぎだよなアレ…… と言うかこの声……


「ほ、ほ、ほ、本当にありがどうございばずーーーッ!! ギミ達は命の恩人でずーーーッ!! 感謝じでいまずッ!! ありがどぉぉぉおっ!!」

「あ…… はい……」


 予想外の事態だ…… ダボダボの外套を頭から被ってたから気付かなかったけど助けた相手は女の子だった、涙と鼻水でヒドイことになってるけど女の子だ、脳内フィルターで涙と鼻水を取り除いてみる…… うん、たぶん美少女だ。

 それもただの美少女じゃない、フードを取ると普通の人とは明らかに違うものが飛び出した。


 耳が長いんです…… そう、彼女は《エルフ》だ!!


 異世界モノでは定番中の定番! むしろ異世界モノで出てこないほうが稀な種族エルフだ!!

 アレだな、森とともに生き、魔法か弓が得意で緑っぽい服を好んで着る。

 そしてエルフの女性は色々な意味でモテモテだ、それこそ人間に限らず魔物やエロ同人でも大人気だ!

 彼女たちには俺も日ごろから色々お世話になっております! ライトハンド・ストローキングで夜な夜なセッションを……


 ゴホン。


 まぁそれは置いておくとして…… 彼女は何でこんな場所にいるのだろう? 砂漠のど真ん中だぜ?

 脇には毛の毟られたダチョウの死骸と巨大なソリ…… もしかして運び屋かな? それにしてもハゲダチョウでけーな、これだけデカいと竜っぽくも見える。


 それに彼女は見てなかったのだろうか? あの大地を貫き月すら破壊できる非常識極まりない攻撃を……

 もしかして剣と魔法の世界ではアレくらいみんな普通に出来るのだろうか?


 攻撃よりミミズに怯えてたのかもしれないな、あんな生物にエルフが捕らえられたら苗床一直線!って感じだもんな。


 しかしこっちは打算や思惑、最悪の展開を想像していたのに、こうも純粋に感謝されると助けた側なのに悪いコトした気分になる……


「マスター…… やっぱりカウンセリング……受けた方がいいのでは?」ボソ


 やかましい! お前だって魔力持ちを汚染体呼ばわりしてるじゃないか! 突然異世界に転移させられ迫害を受ければ人間不信にだってなるんだよ!

 そうだ油断するな神楽橋飯綱! 彼女だって今は鼻水垂らしながら感謝しているが俺達が魔無(マナレス)だと知れば豹変するかもしれない。


「あ! し……失礼しました! 私、ユリアリーデ・エルフィアナといいます!」

「ん? あぁ、俺は神楽橋飯綱、こっちはベルリネッタだ」


 ベルリネッタのファミリーネームも考えておくべきかな? 人と関われば名乗る機会も増えるだろうし……


「あの…… もしかして少年とお嬢さんは異世界から来た《英雄候補》……だったりします?」

「!? な……なに?」


 いきなりバレた!? いや、俺は英雄候補じゃないけどさ……

 コイツまさか鑑定とかの技能を持ってるのか?


「何故…… そう思う?」

「ナゼもナニもその名前…… それにそんな珍妙な格好していれば……」


 珍妙とは何事だ! 由緒正しき異世界主人公の標準装備と由緒正しき裸Yシャツを言うに事欠いて珍妙とはっ!!


 …………


 まぁ、ここが仮に日本だったとしてもこの格好で駅前とか歩いてたら確実に職質されるよな、異世界主人公装備はちょっと引かれる程度だろうけど裸Yシャツはマズイ、俺も駅前で裸Yシャツの美少女と出会ったら転んだフリしてスライディング激写を試みるかも知れない。

 確かに珍妙と言われても仕方ないな……


 やはり服は必要だ、この格好のまま街へ行ったらどうしたって目立ってしまう。

 よくよく考えたらベルリネッタは俺と違ってパワードスーツを装備する必要がないんだ、だったら俺の学ランを素材にして服を作れないだろうか?

 後で確認してみよう。


「1年くらい前だったでしょうか? 聖皇教会と盤面議会から英雄候補が現れると神託が下った……と発表があったんです」


 そう言えばお姫様も俺達が来ることを事前に知ってたな。


「『数人の英雄候補が現れ世界を統一し最も偉業を成した者は神へと至る』……と、そんな所に見たコトも無い異世界の服を着た恐ろしく強いヒトが現れれば……もしかしてって思ったんです」


 世界の統一? それをやりたいなら高校生じゃ無く織田信長とかを召喚しろよ、うつけ者め!

 つーか目的変わってね? 帰るために魔物を退治するって話だったのに、完全に魔王と戦わせる気満々な神託じゃん。


「大地を消失させる程の強い力、もしかしてそれが異世界の魔法なのですか? それだけの力があれば確かに世界を統一できそう……」

「いや…… え~と……」


 異世界の魔法というより異星の超科学ね、確かに知らない人間が見れば異世界の魔法に見えるかもな。

 やはり魔力持ちと誤認させれば迫害はされずに済むのか…… どっかでマジックでも買って手の平にマークを描いておくか。

 だがここは情報収集のために敢えて何も知らないフリをする…… 実際なにも知らないからね。


「その…… 色々仰ってますが何の事だか全く理解できないんですよ、我々は突然砂漠のど真ん中に放り出され現状を何一つ把握できていません、もし宜しければ知ってる事を教えて頂けませんか?」

「え? 盤面議会から説明を受けてないのですか? 確かアヴァロニアが英雄候補支援国に指定されてたハズだけど……」


 アヴァロニア! この世界で唯一知ってる国名が出てきた、チャンス!


「アヴァロニア……とは?」

「えぇっと、東方アヴァロニア大陸にある世界最大の人間族国家です」


 東方アヴァロニア大陸…… やはり海の向こうだったか。


「アナタたちが何故こんなトコロに飛ばされたのか分かりませんがアヴァロニアに行くことをオススメしますよ、英雄候補なら手厚い支援をうけられるハズです」

「支援?」

「なんと言ってもアヴァロニアは金持ち国ですからね、きっと最高級の武器防具が与えられ、消耗品はもちろん目玉が飛び出るほど高価な魔道具、あらゆる施設なんかも無料で使えるハズです。

 なんとも羨ましい話ですね」

「は……はは……」


 ホントにね…… 羨ましい話だよ……

 お姫様から貰ったお小遣いすら取り上げられた身からすると、あまりにもの扱いの違いに国ごと亡びろ!って気分になる。


「アナタたち英雄候補は世界の希望ですから」


 そうか、きっと白馬なんかは超VIP待遇を受けてるんだろうな、それでみんなで仲良くポチャポチャお風呂、あったかい布団で眠るんだろなぁ…… いいないいな人間扱いされていいなぁ。


 俺なんか人間じゃないって言われたぜ?






《特別解説》

『織田信長/おだのぶなが』

 多分日本で一番有名な戦国武将、色々な創作物に登場し、近年では女体化させられることも少なくない。


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