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第10話 うそっ 私の管理内容酷すぎっ!?

グランは女神気取りのノアルに対し、俺に行ったのと同じ説明をより詳しく行っていた。その全容を聞くや否や、顔は引き攣り青ざめ、ガクガク震え上がっていた。


「うそっ 私達の管理内容酷すぎっ!?」


どこの一昔前の転職を促すテロップか!?という一言だったが、元ネタを知っている転生者であるガッチャンと俺はなんとか笑いを堪えていた。


「全て事実です、この国エナド全域で起こっている就職難、生存難の状況になります。女神様の職務に至っては、ご参考頂いてこの世界の運用の是正改善にお役立て頂けたら幸いと思い進言させて頂きました。」


グランは話を裏付ける内容の資料をいくつも紙で用意していた、周到すぎるだろ。

簡易的にまとめ上げ、魔導機器なるコピー機で複写したものをノアルに差し出してこうも言った。


「もう少し、進む時代に沿った転生特典の内容と、伴った発展を見据えられていたのなら、時代がこれほどに至らないものにはならないかとも思いましたが…こればかりは理想論・たられば論の杞憂ですな、失礼。」


もうグランはいっそ警備隊の一司令官から政治家になった方がいいんじゃなかろうか?そんなことすら思わされる一言だったが、ノアルには重かった様だ。

しきりに小声でボソボソと…


“あたししらなかった、わるくない、忙しすぎて何もかもわからなかった、視察だって別担当だし、転生科に所属したのも2年前、しゃかりきに働いた結果がこれ? あたしだけひどくない?…そうよ、前任者や先輩と上司が全部悪いのよ…告発よ、それしかない 誰に当たれば… 上から3番目の統括神様と界王様に告発よ… 前からいたクズエンマや雇われ神のやつら共々のキャリアからリアルなネック、だらしないシモまでキュッとカットしなきゃ…“

などと恐ろしい言葉の数々が漏れ出ていた。


そろそろ意識を戻してやらないと、このままノアルの世界に戻るとか言い出しかねない。

俺は目の前から、依代であるエミーナの肩をもち、揺りながら声をかけた。

「ノアルさーん、そろそろ戻って来てくださーい! 現実逃避はそろそろやめましょ〜 告発は後でも出来ますよ〜 まずは是正する方法考えましょ〜!!」

「…はっ!! 私はどこ?ここは誰?今は空腹、休みはいつ!?」


思いっきり話の衝撃がすごかったらしい、これは重症を通り越して、大丈夫でない致命傷のようだ。すると横に座っていたクゥラも声をかけ始めてくれた。


「女神様、お気を確かに持ってくださいませ、まだこの世界も希望がないわけではありません。

誰かの傷を癒やしたり、なおしたり、魔物や魔族の凶暴化を食い止めたり、ダンジョンや大陸も、開発や開拓もされきっていませんし、きっとまだ何かできるはずですよ!!」


聞いていた俺もクゥラの甲斐甲斐しさに可愛く感じていた。

ん!? 何かできる、なおす…、訂正…、

“そうだ、コイツ何か渡されたとか言ってたじゃねえか!?“

まだ虚ろな顔をしているノアルに、試しにすっとぼけながら言ってみた。


「女神様〜、転生特典やステータスを訂正できるアイテムとか何かあるんじゃないんですか〜?」


言った途端に皆が静まった。

“え、そんなのあるの!?”

って言いたい顔だよな、うんわかるぞ!!


「…ぁ!!(しばらくの空白)…ああっ、そうよ!そうだったわ!!それが仕事だったのよ!!」


絶望の断崖絶壁から一歩遠のくような、一縷の望みが見えていた様な顔だった。上位の神々がもつとされるステータスや訂正できるアイテムをダメ上司から手渡されてこの世界に降りてきたことをすっかり忘れていたらしい。なんと拙いオツムだ!?

ノアルは手を伸ばした。

すると、収納魔法の類のなのだろう。黒い穴をその場に展開させて、中に手を入れてシャ●ハタ印のようなものを取り出した。

“カレクトスタンプ〜“

と猫型ロボットの道具と見紛う説明がされた。


「このスタンプを打たれた転生者は、ステータスシートが紙で出てきて、修正できる内容ならカレクトペンで修正できるの、これがその… ぅえ“っ!? 」


…駄女神としてお約束の展開が始まった様だった。

ノアルが再び黒い穴をその場で出して、腕まで突っ込んだり覗き込んだりして、何かを取り出そうと弄り始めた。

その様子を例えるなら、咄嗟に秘密道具を取り出そうとパニックになっている劇場版青ダヌキそのものだった。

さてはこいつ、大事なものをうっかりして忘れてきたな!?


ノアルの顔が青ざめて愕然とし、またしてもうなだれはじめた。


「無い、ペン忘れた… うわぁぁん…あだじのばがぁ〜(泣」


あ〜あ、大泣き始めちゃったよ、その依代さんでその泣き方は辞めてやれマジで!!エミーナさんの大人びた綺麗さイメージが木っ端微塵に砕け散ってるぅっ!!


“グゥゥゥゥ〜“


緊張感を台無しにする腹の虫の音が鳴り響いたが、どうやらノアル…の入っているエミーナの体からのものだった。

ギャン泣くか腹空かすかどっちかにしろ!?って、もうツッコむのもいい加減疲れてきたところだった。

依代って体力使うんだったな と皆も苦笑いをしていた。

それに、結構時間が経っていたようだった。


「まあ、食事をとるいい機会だ。この件は一旦保留として解散とするから、各自何かつまんできてくれ。明日、また同じ時間で解決策を話そうか!」


グランはその場の空気を流す発言をしてくれた。

加えて、クランは俺に向かってクゥラに使っていた封印器具ミサンガを渡してきた。


「リヒト、お前に女神様の暴走抑制に使っていた封印器具を預ける。

エミーナを依代としているなら大丈夫だと思うが、また暴走ということになった際はお前達に初動と封印を任せたい。」

多分、何かのフラグかもしれないが、そうならないよう祈っておこう。

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