↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/77

第54話:高級な魔道具店

 サラの買い物に付き合って、高級そうな魔道具店にやってきた。


「うっ……凄く豪華だな」


 やってきたのはいいが商館の入り口の前で、思わず足が止まる。

 入り口には守衛が立っており、来店者に威圧感を与えていた。防犯上の守衛なんだろうが、かなり入り辛い雰囲気だ。


「いきましょう、ハルク君」

「そ、そうだね」


 サラはあまり気にしていない雰囲気。彼女に先導されるように、商館の中に入っていく。


「いらっしゃいませ、お客様」


 中に入ると店の店員が、丁寧に挨拶してくる。店内と店員もかなり高級な雰囲気だ。


「……?」


 挨拶をした直後、店員の表情が少しだけ曇る。

 ボクたちの恰好を見て、微妙に態度を変えたのだ。


(ボクたちの格好? あっ、そういうことか……)


 この店は王都の中でも、かなり高級な部類に入るのだろう。店内にいるお客さんは、貴族や裕福な商人などのお金持ちが多い。


 そんな中でも、ボクたちは異質。店の雰囲気に合わない格好をしているのだ。


(ヤバイな……この普段着来たのは、失敗だったかな……)


 いつもの《鎧服(アーマー・クロス)》をボクは着ている。

 マリエルの優雅なドレスと同じミスリル製。だがこっちは目立たないように、最近は色を加工していた。

 そのため怪しい服を着た客に、店員からは見えるのであろう。


 あとサラも少しだけ、高級店の買い物にそぐわない格好だ。

 見習い魔術師の彼女は、基本的にいつも魔道ローブを着ている。祖母から貰った大事なローブだが、少々年季が入っていた。


 だからボクと同じように高級店には似合わない。店員が眉をひそめるのも無理はないのだ。


「あっ! あそこの売り場です、ハルク君! いきましょう」

「あっ、うん」


 でも純粋なサラは、店員の負の視線に気が付いていない。ボクを引っ張って、店の奥へと進んでいく。

 進んだ先にあったのは、店の中でもひと際高級な区画。魔道具に使う宝玉売り場だった。


「うわ……凄くきれい……」


 売り場を見渡して、サラは目を輝かせている。

 まるで高級な宝石店のように、ガラスケースの中に色とりどりの宝玉が並んでいる。


 おそらく王都では宝玉を、宝石としても装飾しているのだろう。ペンダントや指輪、ネックレスがあった。

 この店は魔道具店でありながら、高級宝飾店も兼ねているのだろう。それなら客層に金持ちが多いのもうなずける。


 ひそ……ひそ……


 そんな時だった。周りから誰かのヒソヒソ話が聞こえてきた。

 小声で話をしているのは他の買い物客。貴族たち金持ちの客だ。


 いったい何の話をしているのだろう? ボクは少しだけ耳をすます。


 ……「ねぇ、見てごらんなさい。あんな小汚い客が、来ましたわよ……」

 ……「きっと、この店の値段も分からずに、迷い込んだのよ……」

 ……「もしかしたらスリかもしれませんわ。お財布や指輪に気を付けないですわ……」

 ……「たしかにですわ。店員や守衛は、何をやっているのよ。早く追い出して欲しいわ……」


 なんと貴族たちが負の視線を向けてきたのは、ボクたちに対してだった。

 店の格式にそぐわない汚い格好のボクたちを、明らかに蔑んでいたのだ。


 ひそ……ひそ……ざわ……ざわ……


 陰口を叩く貴族は、段々と増えていく。宝玉売り場の雰囲気は、少し悪くなってきた


「うーん? お婆様に頼まれた宝玉はないな。ちょっと店員さんに聞いてきます!」


 そんな悪い雰囲気に、サラはまだ気が付いていない。ガラスケースの向こう側にいる店員に声をかけにいく。


「あのー、すみません。ガラネット宝玉を探しているんですが、ありますか? 燃えるような赤い宝玉なんですが?」


「ガラネット宝玉ですか? はい、もちろんございます。ですが貴重な品なので、ガラスケースには並べておりません。希望があってから、金庫から出す規則になっております」


 祖母のマーズナルさんから買い物を頼まれたのは、ガラネットという名の赤い宝玉らしい。

 店員さんの説明だと、かなり高価で貴重な品だけど、今も店にあるという。在庫があると聞いて、サラの表情は明るくなる。


「よかった。それなら見せていただいてもいいですか? 品質を確認したいので」


「あの……お客様。恐れ入りますが、ガラネット宝玉は大変高価となっております。失礼がお客様のような方には……手が出る値段では……」


 男性店員は言葉を急に濁してきた。

 サラの薄汚れたローブをジロジロ見てきて、何かを言いたそうにしている。明らかに態度が最初とは違う。


(あっ……あの店員、まさか……⁉)


 店員の態度は明らかに『お前のような薄汚い貧乏人のガキには、うちのガルネット宝玉は手が届かないんだよ! あと、うちのように格式の高い店には、お前みたいな貧乏が来来るんじゃねぇよ!』と言っていた。


「えっ……? わ、私は買い物を頼まれて、本当に買いにきたんです……」


 露骨な店員の態度と、売り場の異常な雰囲気に、ようやくサラは事態に気がつく。顔を真っ赤にして、自分の身の潔白を説明していた。


「はぁ……そうですか。それなら保護者の方も、一緒に来ていたらければ幸いです。申し訳ございません。おい、キミ。このお客様を、他の店に案内してあげなさい。相応しい店にだぞ!」


 男性店員はため息をつきながら、守衛を呼び出す。他の店に案内と言いながら、サラを店の外に追い払おうとしていた。


「そ、そんな……私は本当に、買い物にきただけなのに……」


 まさかの事態にサラは顔を青くする。自分は正式な買い物客だと、必死で説明していた。


「くすくす……ざまぁ、ないわなね。あの薄汚い子は……」

「早く店から出ていけばいいのに……」

「ガルネット宝玉なんて、私たちでも憧れの存在なのに、本当に無知な貧乏人は怖いわよね……」


 先ほどの貴族たちは、更にサラのことを嘲笑してきた。ちゃんと買い物にきたサラを、まるでコソ泥のように蔑んできたのだ。


「くっ……サラ!」


 こうなったら、もう見ていられない。

 ボクは彼女の元に駆け付けるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。