↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/77

第40話:ハメルーン城の状況

 第三王女マリエルから手紙を貰う。


「サラ、おはよう! 今、大丈夫? マリエルから手紙がきたんだけど?」


「あっ、ハルク君。おはようございます。お城に⁉ はい、もちろんです!」


 魔術街に寄って、見習い魔術師サラも誘い、二人で城に向かう。

 城の正門では手紙を見せて、王宮へと向かう。


「ハルク様! サラ! こちらです!」


 途中の城の中庭で、銀髪色白の少女が声をかけてくる。第三王女のマリエルだ。


「マリエル、おはよう。あれ、今日は王宮じゃないの?」


「はい、ハルク様。実は城の敷地内に、素敵な“展望台”を見つけたのです。今日はそこでお茶会をしようと思っております!」


 前にお茶会をしたのは王宮の中庭。活発なマリエルは、新しい場所を見つけたのだろう。


 マリエルの案内で展望台に向かう。

 城の敷地内を進んで、目的の場所にたどり着く。


「ここです。私の見つけた秘密の展望台は!」

「えっ……ここ?」


 マリエルの先導でたどり着いたのは、城の最上階にある展望台。


 いや……兵士の使う“見張り台”だった。

 地上からかなり離れていて、時おり強い風も吹きつけてくる高所だ。


「マ、マリエル……ちょっと高すぎて、怖いんだけど、本当にここなの?」

「はい、ハルク様! 素敵な眺めで、お茶会にピッタリだと思いませんか?」


「いや、たしかに眺めは最高だけど、少し怖いというか……サラも、怖くない?」

「いえ、私は大丈夫です、ハルク君。むしろ高いところには憧れていたので、凄く嬉しいです!」


 マリエルとサラは大はしゃぎで、見張り台からの景色を眺めていた。もしかしたら女の子は高い所が好きなのだろうか。


(高い所か……うっ……真下を見ないようにしよう)


 一方でボクは高い所は、あまり得意ではない。

 幼い頃から地下鉱脈に籠っていたから、こうした開放感のある高所は少し怖いのだ。


 でも『高い所が怖いから止めよう』と言ったから、男としてカッコ悪い。我慢してお茶会に参加することにした。


「では、お席はこちらです、ハルク様!」


 お茶会のテーブルセットは、前もってセットされていた。

 侍女の人たちが見張り台の脇で、お茶とお菓子も用意してくれる。移動式のケータリングセットみたいな感じだ。


 ボクとマリエル、サラの三人で席に座り、お茶を頂いていく。


「ふう……美味しいね。そういえば、こうして三人でお茶会をするのは、久しぶりな感じだね。お城の方はだいぶ落ち着いたの、マリエル?」


 邪竜バルドス討伐後は、ハメルーン城も色々とバタバタの雰囲気だった。

 この三人でゆっくりと話ことは久しぶりなのだ。


「はい、ハルク様。先日のミカエル軍との戦によって、メルーン軍にも多少の被害は出ておりました。それでも、あの大規模な襲撃を考えたら、異常なほどの軽い被害でした」


 街の城壁を指差しながら、マリエルは状況を説明してくる。


 ミカエル軍との戦いでは、剣を交えた直接的な戦闘は行われなかったという。

 城壁の上から一方的にハメルーン軍が、弓矢と投石で攻撃しかけていた。

 そのため守備隊の死者もほとんど出ず、回復魔法によって今は全員が元気だという。


「あと、その後の邪竜の襲撃の件で実は、城で不思議な現象が起きていたました」


「不思議な現象? どんな?」


「邪竜の“火炎吐(ブレス)”攻撃が、城に襲いかかってきた時、不思議な光が城を守ってくれたそうです」


 マリエルの説明は次の通りだった。


 邪竜バルドスは“火炎吐(ブレス)”で、ハメルーン城にも攻撃してきた。

 だが命中する寸前、城の中の柱が黄金色に光ったと。

 その光の加護のお蔭で、城内では死者は一人もでなかったというのだ。


「ちょうど、あの柱の辺りです。発光現象が目撃されたのは」


「へー、あの柱が。不思議なこともあるんだね」


 マリエルが指差した先に、一本の柱があった。

 あそこに神の加護なんかが、かけられているのかな。ボクも後で帰る時に触って、ご利益を受けていこうかな。


 ん?

 そういえば“あの柱”は、どこかで見たことがあるような。

 最初に城に来た時に、ボクが勝手に修理した柱に、少し似ているような気がする。


 まぁ、でも気のせいだろう。

 建物の柱なんて、どれも似たような形と色をしている。


 まさか『偶然ボクが修理した柱に、“火炎吐(ブレス)”を弾き返す加護がかかっていた』そんな非常識的なことは起きるはずがないだろう。


「とにかく城も無事で良かったね。あっ、そういえばマリエル。城の中に随分と、異国の商人が歩いていたね? なにかあったの?」


 ここに来る城の敷地内。

 道中に異国の衣装の商人と、すれ違ってきた。以前にはなかった、不思議な光景なのだ。


「実は彼ら他国商人は、アバロンの素材を買いに来ているのです、ハルク様」


「アバロンの素材を? でも、わざわざどうして他国から?」


「邪竜とはいえアバロンは古代竜エンシェント・ドラゴンの一匹。その素材は魔道具や武具などの、貴重な材料となることです。そのため噂を聞いた他国の大商人が、かなりの高値で買っていくそうです」


「そうだったんだ。そんなことが……」


 そういえばドルトンさんも『国が買える価値がある』と言っていたような気がする。あれは大げさな話ではなかったのか。


「バルドスの素材の売上高は、今では国家予算を大幅に超えています。お蔭で街の復興や低税率で、ハメルーンの市民に還元できています」


「なるほど。そういうことだったのか」


 最近のハメルーンの街は、市民が暮らしやすくなっていた。バルドス素材の売上が、その根底にあったのだ。


 バルドの素材に関しては、誰にも言えない当事者だけど、何となくボクも嬉しくなってしまう。


「ハメルーンがここまで上向きになったのも、全て……“邪竜殺しの英雄”様と“虹色の聖獣”様のお蔭です。本当に感謝しかありません」


「…………」「…………」


 マリエルの感謝の言葉に、ボクと隣のサラは思わずドキリとしてしまう。


 何故なら“邪竜殺しの英雄”の正体はボク。“虹色の聖獣”を作ったのもボクで、砲手はサラ。

 マリエルには言ってないから、何となく気まずいのだ。


「ハルク様…………」


 そして意味深な顔でマリエルは、ボクの顔を見つめてくる。

 何かを言いたそうな、何かを勘付いているような、そんな不思議な表情だ。


「ふう……さて、少し難しい政治の話になってしまいましたね。では、また楽しいお話をしましょう、ハルク様、サラ!」


 マリエルはいつもの元気な表情に戻る。

 微笑みながらお茶のお替りを、侍女に用意させる。


 ――――そんな時だった。見張り台に一人の騎士がやってきた。


「マリエル様、失礼します! 申し訳ありませんが、国主様がお呼びでございます。大事な話で急用でございます!」


 騎士は近衛騎士の人。かなり緊迫した表情だ。


「大事な話ですか? いったいどのような用件ですか?」


「はっ……ですが……」


 ボクとサラの顔を、騎士は見てくる。部外者には言えない、大事な話なのであろう。


「この二人は信頼のおける、私の友です。構わず報告しなさい」


「はっ、失礼いたしました! それで申し上げます。隣国のミカエル王国への使節団の件です。マリエル様の出発が急遽早まったとのことです!」


「そうですか……分かりました。それなら今すぐ参ります」


 用件を聞いて、マリエルの表情が変わる。かなり妙な顔だ。


 しかも近衛騎士の発した内容は、ボクがとても気になること。思わず口が開いてしまう。


「マリエル、ミカエル王都に行くの?」


「はい。新しいミカエル国王は戦の補償金を、こちらに送ってくれました。かなり有効的な方です。ですが今までは両国は敵対同士……そこで親善を深めるために、友好の使節団として私が行くことになりました」


 なるほど、そういうことか。

 噂によるとミカエル王国の新しい国王は、かなり友好的な人らしい。

 だから莫大な補償金を貰った礼を、今度はハメルーンから行うのだろう。友好関係を深めるために。


 そのためには身分の高い者ほど、相手に誠意が通じる。第三王女であるマリエルが、今回は使節団の代表に選ばれたのであろう。


「でも、マリエル。まだミカエル王都は少し危険だと思うよ。大丈夫?」


 噂によると新しいミカエル国王は、半ばクーデターに近い状態で、王座に就いたという。

 そのため前国王派の傭兵崩れと、未だに王都で対立している。


 前国王の間接的な死因である、ハメルーン国の使節団がどんな目に合うか、想像もつかいない状況なのだ。


「ご心配ありがとうございます、ハルク様。ですが危険な状況だからこそ、使節団が向かうことで効果はあります。ハメルーンの今後の発展のために、私は命を賭けて、この任務を成功させてきます!」


 マリエルは強い覚悟でいた。

 危険が待ちかまえていても、国主の娘として責務を全うしようしていたのだ。


「それでハルク様、サラ。申し訳ありませんが、お茶会はここまで。王都から戻ってきたら、また必ずお茶会をしましょう」


「うん……マリエルも気をつけて」


 覚悟を決めたマリエルを、ボクたちは見送る。


 お茶会も急遽中止になったので、ボクたちは城の外から出ていく。

 大通りを歩きながら、ボクとサラは重い雰囲気になってしまう。


「ハルク君……マリエル様、大丈夫かな……」

「そうだね、少し心配だよね。護衛的に」


 今は豊かになってきたけど、ハメルーンは基本的に小国。使節団の護衛にも、それほど多くの護衛は付けられないだろう。

 その分だけ王都でのマリエルの危険度が、格段に上がるのだ。


「マリエル様……」


 サラはかなり心配そうな顔をしている。

 その気持ちはボクも同じ。

 同じくらいの年ごろの少女が、命を賭けて国のために尽くそうとしているのだ。


 ボクにも何か手伝うことがあれば。

 でも自分は一介の駆け出し冒険者でしかない。騎士のように護衛に付くことは出来ないのだ。


「ん? あっ、そうか!」


 そんな困っていた時だった。ナイスアイデアが浮かんでくる。


「どうしたんですか、ハルク君?」


「マリエルのことが心配なら、王都での彼女を守ってあげればいんだよ、サラ!」


 とても簡単なことだった。人手が足りないのなら、増やせばいいのだ。


「それはたしかに、でも、どうやって?」


「ボクも王都に行って、コッソリとマリエルのことを守ればいいだよ!」


 自分で発案したけど、これはナイスアイデア。

 勝手に王都にいって、密かに彼女を守るのなら、何も問題はないのだ。

 何も事件が起きなかったなら、またハメルーンに戻ってくればいいし。


「なるほど、それは名案ですね! ぜひ私も付いていきたいです! マリエル様は大事な友だちなので!」


 先ほどまで重かったサラの表情が、パッと明るくなる。そして強い覚悟を秘めていた。


「でも大丈夫なの、サラ? 店の手伝いとか?」


「はい。お婆様は基本的に一人で、何でもできる人。実は私がいなくても大丈夫なんです。必ず説得してみせます!」


「そうだったんだ。それならボクはドルトンさんに相談してくるね。旅の準備が終わったら、サラの店に迎えにいくから!」


「はい、私も必ず説得して、旅の準備をしておきます!」


 作戦は決まった。

 ボクたちはいったん分かれて、旅の準備に向かう。後で合流して、一緒に王都に向かう作戦だ。


「マリエルのために、王都か……よし、頑張っていこう!」


 こうして王女マリエル……“友だちマリエル”のために、ボクたちは王都へ旅立つことを決意するのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] バルドスの素材の上の、ボクは置き手紙を書いておく。 バルドスの素材の上に、ボクは置き手紙を書いておく。 ではないですか。
[気になる点] あ、アバロン? いつ?何処で読み飛ばしたのか 不覚だった [一言] アバロン回は後で出て来るんですよね、 又新たなチートかな? 『すごくたのしみです』 (棒読み) ( ̄∀ ̄) …
[気になる点] アバロンの素材とは? 文面的にアバロンではなくバルドスでは? [一言] 他の作品含め誤字脱字多過ぎでは? 投稿前に一字一句しっかりと読み直してから投稿すれば誤字脱字の量もグッと減ると思…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。