表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/77

第13話:冒険者の宿屋へ

 冒険者としてのボクの初仕事は、順調に幕を開ける。

 薬草のバリン草を採取して、一日で22,420ペリカも稼げたのだ。


 その日の夕方は900ペリカの豪華な定食を食べて、一人で初仕事の祝杯を上げていた。

 ちなみに酒は飲んだことは無いので、食事で水の祝杯だ。


 食事を済ませて、街の通りに出る。


「さて、今宵の宿はどうしよう?」


 ハメルーンの街に来てからは、大通りの短期宿泊の宿屋に連泊している。

 だが冒険者として、生活を稼ぐ目途ができた。

 今宵からは“長期型の宿”に泊まった方が、良いだろう。


「長期型の宿はどこにしよう? 変な所に長期間は、嫌だしな……」


 こう見えて睡眠にする場所には、少しうるさいタイプ。

 周りの環境が静かで、しっかりしたベッドじゃないと寝られないのだ。


「でも、ハメルーンに知り合いの宿は、ないしな……あっ、そういえば!」


 そんな時、“ある宿”の存在を思い出す。

 よし、行ってみよう。


 通りを下町に進んでいく。

 商店の人に聞き込みをして、目当ての場所を探していく。


「あった! 《煉瓦亭》……ここだ!」


 目当ての店は《煉瓦亭》という宿屋。

 二日ほど前、ハメルーン城の井戸の所にいた女性に、この宿屋のことを聞いていたのだ。


 たしかあの女性の旦那さんが経営している、と言っていたはず。

 宿屋の扉を開けて、中に入っていく。


「いらっしゃいませ! ん? あんたは、あの時の坊やかい?」


「あっ、あの時の!」


 宿屋の玄関にいたのは、エプロン姿の女性。あの井戸で教えてくれた人だ。

 夕方以降は宿屋の女将をしているという。


「あら? その恰好は、もしかしたら冒険者になったのかい?」


「はい、そうです。長期型の宿を探しています? ここは可能ですか?」


「ああ、もちろんさ。長期なら一週間単位で前払い。一日分を払うよりも、何割かお得だよ」


 女将さんに説明を聞いていく。

 普通の宿屋として泊まるのなら、一泊一人2,500ペリカかかる。


 でも一週間だと一日あたり1,500ペリカ。

 かなりお得になるという。


「おお、それはお得ですね! それならまずは一週間分を前払いします!」


「あいよ! あっ、でも、今は注意事項があって、食事が出ないんだよね。厨房機器が壊れちゃって、旦那が直しているだけど、さっぱりで……」


 煉瓦亭の一階は食堂と小さな酒場が、兼用剣になっている。

 泊まった人は朝食と夕食を食べられるシステム。


 でも今は奥の厨房機器が故障中。

 食事は近隣の他の店を、使う必要があるという。


「厨房機器の故障ですか? 良かったら見てみましょうか?」


「そういえば、坊や、鍛冶師だったね。見てもらっていいかい?」


「はい、もちろんです!」


 困った時はお互い様。

 それにボクは困っている人を助けるために冒険者になった。


 女将さんの案内で厨房に入っていく。

 旦那さんが苦心している修理を、バトンタッチで引き継ぐ。壊れている部分を、確認していく。


「なるほど、分かりました。火炎の出る魔道具と、厨房機器の連結が詰まっています。もしもよかったら修理しておきますか?」


「それは助かるわ。それなら、頼んだよ! えーと……」


「ボクはハルクです。女将さん」


「そうか、頼んだよ、ハルク!」


 本格的に修理することになった。

 女将さんは宿屋の仕事に戻っていく。調理人の旦那さんは、明日の朝食の食材の買い出しに。

 ボクは一人でゆっくりと修理だ。


「よし、直していくか! えーと、ここは……こうして、よし。直ったぞ! ん? こっちの機器も少し古くなっているな。せっかくだからコッソリ直しておこう。あっ、こちっちも……」


 神経質な性格なので、壊れている部分が、どうしても気になる。

 自分で直せる部分は、大げさにならない程度に修理しておく。前の工房の反省を生かしているのだ。


 よし、こんな感じでいいかな? 報告にいこう。


「女将さん。修理が終わりました。確認お願いします」


「ん? もう出来たのかい? ウチの旦那も帰ってきたから、確認してもらうか」


 買い出しから、旦那さんも帰宅した。三人で厨房の機器を確認する。

 旦那さんが、厨房の魔道具コンロに着火する。


 カチッ、ゴーーー!


 おお、いい感じで火が出たぞ。

 調理の魔道具はミカエル城で、たまに修理していた。だから得意な分野だ。


「うん、ありがとね。ハルク。これで明日の朝は、美味い朝食を出してあげるよ!」


「それは楽しみです」


 食事はボクの中では、トップクラスに好きなこと。

 美味しい食事を食べている瞬間は、本当に幸せなのだ。


「それではお休みなさい、女将さん」


 部屋の鍵を貰い、二階の長期専用部屋に入る。

 室内は一人用のベッドと、収納タンスがあるだけのシンプルな間取り。

 広すぎず、狭すぎ丁度良い感じだ。


「窓の外は……うん、下町だから、夜は静かだな」


 環境的にも良い感じ。

 これなら朝まで熟睡できるだろう。凄く“当たり”な気がする。


「さて、寝る前に身体を……って、そうか。ここもお風呂がないのか」


 一般的に街の宿屋には“お風呂”はない。

 街の公共サウナに入ってくるか、水とタオルで身体を拭くのが、一般的なのだ。


「お風呂に入りたいな……久しぶりに」


 ミカエル城の地下に住んでいた時は、毎日のようにお風呂に入っていた。

 お風呂と言っても、天然の温泉。

 地下から湧き出てきた源泉を、ボクが温泉として活用していたのだ。


「仕方がない。今日は軽く身体を拭いて、寝るとするか……」


 お風呂の問題は、近いうちに何とかしたい。

 何しろ冒険者は汗と泥で、かなり身体が汚れてしまう。


 でも、一軒家でも買わない限り、お風呂は難しいだろう。


「ん? まてよ。ここは間取り的に、『一階の奥に使ってない空間』がありそうだな? よし、明日の朝にでも、女将さんに確認してみよう!」


 そんなことを思っていたら、眠気が襲ってきた。

 身体を拭き手、ボクはそのまま夢の中に落ちていく。


 ◇


 翌朝になる。

 下町の宿屋《煉瓦亭》の朝食会場に、事件が起きる。


「な、何だ、この美味い朝食は⁉」


「ああ、本当だ! この黄金色の卵焼きは⁉


「こ、これほど美味い料理は、生まれて初めて食べたぞ!」


「おい、こっちのスープも絶品だぞ! あぁ……高級レストランよりも美味だぞ!」


 ――――なんと煉瓦亭の朝食が異常なほど、味が向上していたのだ。


 原因は不明。


 何故なら食材は今までと、まったく同じものを使用していた。

 調理人も調理方法も、今までと全く一緒なのだ。


 ――――でも“修理したばかりの厨房”で作ると、何故か格段に味が向上してしまうのだ。


「むにゃ、むにゃ……そろそろ、起きなとな……ぐー」


 でも二度寝をしてしまったボクは、そんな一階での事件に気がつかなかったのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ペリカに猛烈な違和感が…w カ〇ジの1ペリカ=0.1円のイメージがあるからなぁ…。
[良い点] 物語は楽しめる [気になる点] 良い作品になりそうなんですが、誤字の多さで物語から現実に引き戻されてしまいます。 今一度、読み直して誤字の修正をお願いします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ