第11話:最初の依頼
ようやく自分用の装備が完成。
街の中心部にある冒険ギルドに向かう。
意気揚々と受付カウンターに申し込みをする。
「あのー、冒険者の登録をしたのですが」
「いらっしゃいませ。あっ、あなたは? その恰好は……装備を用意してきたんですね?」
受付のお姉さんは、ボクのことを覚えてくれていた。
前回は鍛冶師の格好だったので、受付でやんわり断られてしまった。
だから今回は剣と鎧で武装してきたのだ。
「はい、言われた通り、武器と鎧を準備してきました」
「たしかに剣は、剣ですが……その服は鎧ですか?」
「はい、鎧です。触ってみて下さい。どうぞ」
ミスリル製の《鎧服》は、ぱっと見は服にしか見えない。
だから、百聞は一見に如かず。受付のお姉さんの目の前の身体を差し出す。
「えっ……本当ですね⁉ 柔らかいけど、力を込めて押すと信じられないくらいに固くなります。よく分かりませんが、鎧として認定しておきますね。では、これがギルドカードです。この申し込み用紙に書いてください。あと説明はこの紙に書いてあるので、確認してください」
受付のお姉さんがくれた用紙には、箇条書きで色んな冒険者規則が書いてあった。
・各国の法律を必ず守ること。
・依頼の横取りや、虚偽の報告はしていけない。
など基本的なことばかり。
でも荒くれ者が多い冒険者は、こうした基本的な規律も大事なのであろう。
《冒険王ハンス》に書かれていた内容なので、愛読者のボクは大丈夫だ。
あとボクは《冒険者ランクF》からのスタートなる。
説明文によると冒険者ランクは次のような感じだ。
――――◇――――◇――――
《冒険者ランク目安》
・Sランク:大陸の危機に動員されるほどの、伝説級の冒険者(大陸にも数人しかいない)
・Aランク:複数の町や国の危機を解決できるほどの、国家級の冒険者(一ヵ国に十数人しかいない)
・Bランク:大きな街の危機を解決することができるほどの、凄腕の冒険者(大きな街に十数にしかいない)
・Cランク:小さな町や村の危機を解決することができる強さ(そこそこの数がいる)
・Dランク:初心者を脱却。そこそこの冒険者。(けっこうな数がいる)
・Eランク:まだ駆け出しで、弱い魔物を退治するレベル。(かなり多い)
・Fランク:登録したばかりの新人で、雑務がほとんど
――――◇――――◇――――
説明によると、こんな感じだった。
冒険者として一人前と言えるのは、Dランクから上の人たち。
EランクとFランクは半人前の扱いをされる。
ランクCまでなら、努力さえすれば常人でも到達可能。
でも到達する前に、死亡率も上がり全体数も少ない。
だからランクCでも、かなり凄腕と頼りにされる。
Bランクより上には、よほどの才能がないと上がれない。
だからランクB以上は本当に凄い人。
AランクとSランクは雲の上だろう。
そんな中でも最下層のFランクから、ボクはスタートとなる。
十回くらい依頼を成功させたら、ランクEの昇格試験に挑めるようだ。
「はい、これで受理しました。ハルクさんです。これから、よろしくお願いいたします。さっそく何か依頼を受けていきますか?」
「はい、せっかくなので。でもボクは戦闘経験がゼロなので、何かありますか?」
「それなら……この“バリン草”という薬草の採取の依頼はどうですか? 子どもでも出来る、初心者向けです」
「薬草の採取……分かりました、これにします!」
受付のお姉さんにバリン草の見本を見せてもらう。
なるほど黄色の小さな花がついた、変わった形の葉。これなら間違えることはないだろう。
一束あたりの報酬は10ペリカ。
一ヶ月の生活費が十五万ペリカなので、一束辺りの報酬はかなり少ない。
10束も採取してきても、報酬は100ペリカしかない。
子どものお小遣い稼ぎ程度の仕事だった。
「いよいよ、初仕事か!」
でもボクはかつてなく興奮していた。
なぜなら初めて自分の意思で、仕事に挑戦するのだ。
それに冒険王ハンスも最初の依頼は、薬草の採取だった。偶然とはいえ、何か嬉しい。
「さて、ギルドを出ていこうかな……うっ、あれは⁉」
そんな時だった。ギルドに他の冒険者が入ってきた。
何か怖そうな人たち。
ひと言で説明するなら『新人に足を引っかけて因縁をつけてくる、落ちぶれ系の冒険者風』だった。
(冒険王ハンスも最初、あんな感じの強面の人たちに因縁をつけられたんだよな⁉ これはまずい!)
腕っぷしの強いハンスは、物語で因縁相手を吹き飛ばしていた。
でもボクは戦闘経験がない素人。すぐさまUターン。受付のお姉さんに再び話しかける。
「あのー、すみません。裏口とか、ないですか?」
「えっ、裏口ですか? あっちにありますが、遠回りになりますよ。いいんですか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます!」
ボクは愚痴にダッシュで向かう。
ふう……何とか無事に冒険者ギルドから脱出できた。
さて、バリン草の採取に向かうとするか。
場所は街を出て西に向かった草原か。よし、いってみよう。
◇
バリン草の群生地にやってきた。
「おっ、これがバリン草か! 所々に結構生えているな」
バリン草は目立つ花の色なので、簡単に見つけられる。
試しに一束を採取してみた。これで10ペリカ分だ。
「うーん、採取は簡単だけど、毎回、屈まないといけないのは、ちょっと腰に悪そうだな」
五歳の時から鍛冶師の仕事をしてきたので、腰の扱いには気を付けてきた。
特に立つと屈む、この反復動作は、かなり腰に悪い。
出来れば採取方法を改善したい。
「何か腰に良い採取方法はないかな……あっ、そうか!」
ナイスアイデアが浮かんできた。
誰にも見つからないように【収納】を発動。中から《持ち運び鍛冶場》を取り出す。
ドーーーン!
炉と鞴、金床など、使い込まれた鍛冶道具。
簡単に説明するなら“鍛冶場の個室”が、草原の中に出現したのだ。
周りから見たら異様な光景だが、他に採取している人はいない。
たぶん、大丈夫だろう。
「よし、『腰を痛めない薬草の採取の道具』を作ろう!」
こうしてボクは一束10ペリカの報酬のために、新しい採取道具の製造に取りかかるのであった。




