第二章 事実
ここは、主にあの不可解な存在の”男”と”俺”の会話がメーンの場面です。
主人公とかの心理に飛躍があることをご了承ください。
気持ち良く目が覚めることなど無く、只魘された。単なる悪夢の延長線であれば、こんなにも気分は暗く、苦しい物ではないはずだ。だが、テレビを付ければ、そんな期待等は掴みかけた助けを、一瞬にして消えるかのようであった。
ふ……ハハハハ…………
俺が殺したんだ。あんだけの人数を。普通じゃ出来ないぜ。何万という数を、たった一人で殺したんだぜ。
無意識的に狂笑と狂声が同時に口から放たれた。
慰めにも成らならず、むしろ、自殺願望が湧いた。
画面に映った殺伐とした風景と死者の数が異様に訳もなく、不可解な組合わせに思えた。
絶対、あいつと話をしなければならない。
学校には遅刻する事覚悟で駅周辺で、あいつを探す事にした。先生に叱られようが、殴られようが知ったことじゃねぇ。こっちは一大事なんだ。
自転車を駐輪場に置き、急いで駅前に来た。……あいつだ。間違いない、この目を疑ってみたけど、やはり、あいつだ。またしても寒気のする笑みを浮かべていた。
「おい、こらぁ。くそじじぃ。」
思わず、飛びかかりそうになったが、その一言で他人の視線を集めていることに気が付いたので、気を取り直して男に近づいた。
「やぁ、いかがお過ごしかな?」
「……おい、俺が貴様に会いに来た理由を知っているんだろう」
「はて、なんのことかのぉ。私には分からん。……あぁ、思い出した。昨日の話についてかぁ。ケケ…嘘を言って、キレてんのか?そりゃ、悪かったぁ。なぁ、大した事じゃないだろ。ちょっとは、私の軽いファンタジーは面白かっただろう……」
「惚けるんじゃねよ!」
「…おいおい、君も鈍感だなぁ。ここで暴力沙汰でも起こしてみれば、どうなることぐらい分かるでしょう。分かったんならぁ…」
掴んでいたそいつの胸倉を離した。
上のプラットホームでは発車の合図となる不協和音によって構成されたメロディーが注意を喚起していた。
「ふ……君がどうして、ここに来たか……」
少し沈黙が続いた。言葉を選んでいる素振りを見せ、口元が動いた。
「ここでは、話しづらい。私についてきてくれ。」
男は、手招きをして歩き始めた。俺も仕方なく付いていくことにした。着いた先は人気のない公園だった。
「……お前さんは、薄々気づいているんだろ、その様子からすれば。」
「ああ、俺だって信じる事は初めは出来なかった。というか、今では起きた事が全て嘘であれば良いのにって思ってる。」
「…だが、そうではない。だろ?」
「……そうだ!てめぇが渡した不可解な物のせいで、俺は人を殺した事でどれだけ苦しんでいるか。」
「苦しむ?それはどうして?私には理解できない。強大な力を得て、何が苦しいとでも言うものか。」
「…はぁ、どうしてって。何万っていう人命を殺してしまった事への罪の意識が理解できないだとぉ!?」
「罪の意識?ならば、何故人を殺してはいけないのか?むしろ、地球上の人口が減れば、懸念されている諸問題が解決するじゃないか。しかも、誰しも必ず死を迎える、それが早いか遅いかの違いに過ぎない。なのに、正義の味方のつもりになりやがって、結局はどうして人を殺してはいけないのか、分かってないんじゃないか?」
「……」
不意を突かれたような気がした。
「ほら、見ろ。やはり答えられない。」
「……いや、違う。断じてそんな事は無い。何故、人を殺してはいけないか?恥ずかしながら、俺的には、一人の人間が他人を理由も無く殺してはいけないのは、そいつに奪い取ってはいけない未来があり、生きる権利があるからだと思うからだ。」
「……。成る程、ねぇ。まぁその事は良いとして、せっかく手に入れた力をそんな風に評価していたとは。まぁ、君は私に会いたい理由は、言い争いをする為ではあるまい。ちょうど、どの道、君は私と会わなければならない状況下にあった、なぜなら私は重大な事実を君にはまだ打ち明けてはいないからだ。」
真面目な顔をして言った。
「君は、とてつもないゲームに参加した、いや参加させたのだが、これまで起きた事は偶然ではないのはご存じであろう。只、これまで起きた事象は偶然性によって、その場で起きたのかと思うか?」
「…!? それはどういう意味だ!」
「…全ての物事、現象には必ず原因がある。各地で起こした災害は、様々な条件が重なって、その地で起きた。ここからが肝心だ。このゲームでは災害が起こる地点の条件等を見つける事が出来れば君の勝ちだ。だが…」
次の瞬間、男はばつが悪いような顔をして、俺は思いがけない事実を突きつけられる。
「…条件を推測するには、多くの――を起こさなければ、法則性を見つける事は出来ない。つまり、君が勝つために多くの人命が失われるということだ。じゃあ、負ければ良いだろうと思うだろう。だが、間違った条件を導き出せば…ゲームと災害は続けられる。もし、それを恐れるなら、ゲームからリタイアをする必要がある、そうする為には、使用者の血をインクに入れなければならない…」
……ゲーム……人命が関わる、この事態をゲームだなんて……。
「なんだ、簡単じゃないか。それなら、俺はこのゲームからリタイアするぜ…」
男の顔から表情が消えた。
「…血を入れるという意味は、そのままの意味ではないのだよ…つまり、死だ!」
「……はぁ、ふざけるのもいい加減にしろよ、畜生!てめぇが勝手に引き込んで起きながら、こんな目に会わなきゃいけないんだよ!!」
俺は、男の顔面を殴って、男の口は赤くなった。でも男は別段、怒るような素振りや殴り返すような気配は無かった。
「…はぁ、私だって君にそんな重荷を背負わせたくはなかった…。でも、でも…こうすることしか、私には道が無かったんだ…申し訳ないと思ってるよ…でも、私のような者は託すことくらいしか……。」
男の目からは一粒、落ちていった。
「クソ!!そんな事言ったて、それが償いにはならない!どうしろって言うんだ!?」
「……君ならば、必ず出来る。だから、私のやったことを許さなくても良い。とにかく、君に掛かっているんだ!」
男の言葉の最後は声が裏返って、よく聞き取る事は出来なかった。いや、俺が冷静を失っていただけであろうか。
その男の遣る瀬無い表情は忘れられない。この超自然的な現象の前にもう引き下がる事が出来ないと察した俺は思わず、
「……そうか、分かった。だが、俺はお前を一生恨むだろう。けど…俺は多数の人命を消した責任がある、その人々為にも引き下がる事は出来ない。少ない数でこのペンの法則を見つけて、こんな腐ったゲームなんか終わらせてやる。というより、終わらせるしかないのだから…。」
いかがでしたか、書いている私でさえもこんな状況は無茶苦茶だと思います。
彼は、この後どのようにしてゲームを制するのか……
拙い文章ですか、読んでいただきありがとうございます。