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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第五章:真世界帰閉ノ扉
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019 七転八起

 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


 やっと書けたので、投稿しますね。


 前回のあらすじ


 ● 真弓さんと再会。ウェイトリー襲撃。


 それでは、本編をお楽しみ下さい。


 グシャリと崩れる天井。

 ミシリと壊れる壁。


 「ククク! さあ、殺戮の時間(ショータイム)の始まりだ!」


 白衣の魔術師(ウェイトリー)が吠える。

 すると空間を歪ませ、怪物がこちらへと近づいてくる。


 思えば、此処まで来るのに多くのモノを取りこぼしてきた。

 天音の嘆き、リテイク先輩の想い、累たちの願いを斬り捨てたて来たんだ。


 「ウウウウ、ヴォオオオオオオン!!!」


 怪物が咆哮する。

 その遠吠えに世界が震え、目の前にノイズのような傷が増えていく。


 「──光よ!」


 真弓さんが怪物へと魔術を放ち、光の雨を降り注ぐ。

 しかし──。


 「シュルルル!」


 光の雨を避け、僕らへと毒牙を向ける蛇の頭。

 まるでこれまでの奮闘が無駄だと(さえ)ずるよう、舌を捲し立てていた。


 「──っ」


 ヤバい。

 咄嗟に魔術破戒(タイプ・ソード)現実化(リアルブート)しようと構える。


 ──だが。


 「大丈夫です!」


 それを真弓さんが手で制する。

 光の雨を物ともせず、僕らの前へ躍り出る怪物の尾。


 「シッ、シャアアア!!!」


 死が迫る中、数秒後に訪れる末路(ビジョン)が頭に過る。


 ドクン。


 真弓さんが叫ぶ。


 「輝く光の盾シャイニング・シールド!」


 すると、僕らを大きな光の膜が覆う。


 「キッシャアアア!」


 蛇の頭が弾かれ、吹き飛ぶ。

 続いて獅子の腕が振るわれるものの、それを押し上げ光の膜は広がっていく。


 「グゥウウウア!!!」


 異形の怪物が後ろへと下がる。


 ──しかし。


 「──ッハ! それがどうした!」


 それをウェイトリー=ウェストは許さない。

 真弓さんの魔術を、宙を掴むように継ぎ接ぎの腕を構えて、無意味と嗤う。


 すると──。


 ピキリ。


 何かが罅割れる音。


 ピキリ、ピキリ。


 光の膜が輝きを増す。


 「そ、それは!?」


 真弓さんが驚愕する。

 僕も目を見開く。

 空気が凍るような感覚に襲われ、ドバドバと圧縮された何かが僕らへ向かって堕ちてくる。


 「────」


 ゾクリ。


 現れたそれに言葉が出ない。

 いや、怖気が走ったと言い直すべきか。


 「ぅう、あ」


 光の膜を覆うように、それはゴポリと落ちてくる。

 真っ黒い泥のような何かが無数の目玉をギョロリと睨むのに、震えが止まらない。


 ダズゲデェ、ダズゲデェエ!

 ミズデナイデェ!

 アビャ、ビャ、ビャ、ビャアアア!


 泥から這い出ようと無数の人の腕が藻掻いてる。

 得体の知れない何かの助けを乞う叫びも聞こえてくる。


 「あっ、あ、ああ、ぁあああ」


 真弓さんが悲鳴を漏らす。

 黒い泥を敬うように、異形の怪物が後退する。

 光輝く膜に罅が入る。


 「偽物よ。幾ら模倣しようと、本物には至れぬことを思い知るが良い」


 人形男が嗤う。

 ゴポゴポと泡立って、黒い泥が光の膜に侵蝕する。

 怨嗟の声が止まらない。


 そうして──。


 「目覚めよ、混沌」


 遂に光の膜が破られ、『混沌』が僕らをあっという間に飲み込んだんだ。






























 キキキ。

 キキキ。


 キキキ、キキキ。キキキィ、キキキ、キキキ! キキキ、キキキ、キキキ。キキキ、キキキ、キキキ。キキキ。キキキ、キキキ、キキキ、キキキ、キキキ! キキキィ、キキキィ、キキキィイ!


 海の藻屑と化す意識。

 キュルキュルと巻き戻る人の理性。

 正気を失う直前、地の果てで(オレ)は再び目を覚ます。


 「──っ」


 身震いする。

 先ほどの光景(ユメ)が頭から離れず、思考が定まらない。


 「あ、あ、ぅううう」


 その所為か言葉を上手く喋れず嗚咽し、頭を思い切り殴られたように目の前が眩んで仕方ない。


 「──っ! あ、ぐぅ、うううう」


 呂律が回る。

 舌が上手く働かない。

 ジタバタと手足を動かすも、哀れな虫けらは何も出来ない。


 「あ、ああ、ぁああああああああああああああああ」


 助けに行かないといけない。

 なのに、夢へ戻ることを体が拒んでる。


 「──! ──!」


 どうして、駄目なんだ?

 やっぱりオレなんかじゃ、出来ないのか?

 これじゃあ、みんなが託したもの、全部、無駄にしちまう。


 ひしひしと無力感が押し寄せる。

 オレがオレである限り、その性を責め立ててしまう。


 そうしていると──。


 「こんなとこで何やってんの?」


 見知らぬ誰かが声をかけてきた。


 「──んぁ、れ?」


 声のする方へ目を向けると、こちらを見知らぬ青年がそこにいた。


 「誰でも良いだろ。んで、何やってんの?」


 「──っ」


 淀んだ青い瞳がオレを睨む──が、不思議と悪い気はしなかった。

 寧ろ、懐かしさを感じてる始末だ。


 何処かで会った訳でもなく、此処に来てから死んだ自分でもない筈なのに。


 「何? もう諦めんの?」


 胸を穿つ強い言葉。

 突き刺さる筈のそれは不思議と痛くない。


 「……そうだな。お前は頑張ったよ。天音も、鈴手も、瑞希も、ウェザリウスも──そして、あの『アトラク=ナクア』さえ倒した。スゲーことだと思うぜ」


 男子生徒は尊いモノを見るような眼差しを送るだけで、オレを傷つけない。


 「ああ。此処で逃げたって罰は当たらない。なんせ死ぬ気で努力した結果なんだから、な。──んで、だ。此処まで言っておいてだが、どうするんだ?」


 唐突な質問をされる。

 それは目を逸らしてはいけない現実を突きつけられたと思った。


 けど。


 「ぅうう、ぐぅ」


 言葉が喉に閊える。

 想いをぶつけたくても、うまく声が出せない。


 「このまま、諦めるか。それとも、また辛い現実に立ち向かうか。どちらを選んでも良い」


 究極の二択。

 目を背けて人間未満の生を望むか。

 それとも自分の意志を以て生を諦めるか。


 どちらにしても最悪な未来が待っているだろう。


 「そうか? まあ、お前がそう思うんなら、そうなんだろうよ。──けど、よ。それでも、あの子はお前を待ってるんだ」


 青年は見つめる。

 迷うばかりで選べないオレを見つめ続けてる。


 「ああ、そうだ。最悪だ。確かにこいつは逃げ出したくなるぐらい最悪だ。起き上がる為の薪もなく、戦う為の炎もない。しかも何も見えない暗闇に一人ぼっちときてる。そりゃあ、心が折れるのも仕方がない」


 似ている。

 誰にと聞かれたら言葉が詰まってしまうが、いつか見た少女の想い人と姿が被ってしまう。


 「だが、そんなお前を待っててくれてる女がいる。そんなお前に手を引っ張って欲しいと願う女がいる。誰でもない、お前じゃなきゃ彼女は救われない」


 青年が気さくに、誰でもないオレを彼女が待ってるんだと肩を叩く。


 「……あ」


 「ほら、これで少しは楽になったろ」


 「ま、待って! 貴方は──」


 ヒーローがオレを突き飛ばす。

 せめて名前だけでも聞いておこうと思ったのに、再び意識が遠のく。


 「今度こそ泣かせんなよ、──じゃあな!」


 夢へと微睡む中、その言葉が頭の中を響いた。


 ◇


 キキキ。

 キキキ。


 ウルタールの猫が鳴きました。

 影絵たちも混沌の誕生を喜びました。

 誰の願いも届かない深淵で、希望を求めて『私』は歩くのです。


 カタカタカタ。

 カタカタカタ。


 何も見えない。

 誰の鼓動も聞こえない中で、彼を一人きりにさせたと思うと胸が苦しくなった。


 「────」


 夢があった。

 願いがあった。

 想いというものに憧れたから、此処まで私たちは紡いで来れたのに。


 「う、ぅううう」


 その結果がこれだ。

 人形男が召喚した『混沌』によって、彼は再び過負荷(オーバーロード)させられてしまった。

 意識を強制シャットダウンさせられると言うことは、彼の意識の片隅で影絵が形成するこの夢世界の死である。


 つまり、何が言いたいかというと。

 電源を入れる為のエネルギーがない機械と同じで、今度こそ彼は立ち上がることが出来なくなったということだ。


 だから、それもこれで終わり。

 此処では『名城真弓()』が求めた未来も、『フィリア(誰か)』が見た夢も叶わないってことだ。


 「……ゃ、だ」


 それが、現実。

 それこそが、作り物の私たちが得られる精一杯だった。


 「……い、やだ」


 本音を漏らすも、現状は何も変わらない。


 キキキ!

 キキキ!


 遠巻きに見ていた影絵たちが私に手を伸ばす。


 「こんなの、嫌だ」


 影絵たちが私を侵蝕し、全身を真っ黒に染めていく。

 気が狂いそうな激痛にのたうち回るも、現実は変えられない。


 「こんなの、──あんまりです!」


 そうだ。

 やっと彼が彼であることを思い出せたのに、こんな最期じゃ報われない。


 シスカさんの努力も。

 ナコトさんの親愛も。

 リテイクさんの犠牲も。

 久留里さんの慟哭さえ無駄になる。


 ────「もう一度、彼に果てのない空を見せてあげて」


 そして、飛鳥さんとの約束も果たせないのだ。


 「誰か、誰か助けてください」


 立ち上がる。

 無意味でも、これまでの過程を無駄にしたくないと私は懇願する。


 「──っ! お願いです! 誰でも良いから、■■さんを助けて下さい!」


 叫んだ。

 自分の体がどうなろうと構わず、叫び続けた。


 瞬間。


 「そういや、知ってたか? 今日、転校生が来るって話をよ」


 キーン、コーン。

 カーン、コーン。


 真っ暗な世界に鐘が鳴る。

 どうしようもない現実に光が差す。


 キキキ?

 キキキ!?


 影絵たちが消えていく。

 塵となって世界の一部へと戻っていく。


 カツン。


 誰かが駆けつける。


 「よう、待たせたな」


 動けない私。

 半分が黒くなって使い物にならない身体で、突然現れた男子生徒を見る。


 「なんで、此処に戻って来れたかって? それはオレも知らねぇけど──」


 助けを呼ぶ声にやって来る。

 窮地の時に駆けつける人を知っている。

 誰かの為に傷つく人のことを、ヒーローと呼ぶらしい。


 「まあ、でも。戻って来れたんなら、やることは一つだよな!」


 そう言って、私のヒーローが私の手を取った。


 次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!

 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!

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