007 クラヤミの僕
お久し振りです、お待たせしました(待ってない)!
ボチボチ本編の投稿を再開します。
前回のあらすじ
● 真弓さんと喧嘩中に勇貴さん、倒れる。
それでは、どうぞ本編をお楽しみ下さい。
ピー、ガガガ。
ピー、……ガガガ!
「回帰せよ、咎人。繰り返せ、影絵。──死を慈しむ、その膨大なデータにて待ち人は焦がれる」
電波信号を受諾。
悪辣飢餓は存在の抹消を記せ。
さすれば、我らは神の領域へ近づかん。
カタカタカタ。
カタカタカタ。
影絵は描く。
何度目の物語を脳内へと打ち込んでいく。
それを見届ける神父は、待ちに待ったシナリオの出来に満足する。
「──さて、諸君。舞台は整った」
神父が告げる。
愚者の自我が崩壊し、無への領域へと堕ちていく。
彼の旅路を願ったのは、真の叡智を求めた三人の魔術師だった。
「これにて、『真世界』への扉を開く刻だ」
キキキ。
キキキ。
その開幕を影絵たちが歓喜する。
その言葉を待っていたと外道たちは狂喜する。
「キャハハハ! 良いデェスね。良いデェスね! 此処まで待ったかいが在ったってモノデェスよ!」
外道はキキキと嗤い、矛盾を孕んだ妄想を噛み締める。
「ああ、待ちわびたぞ。これこそが、我が極点に至る通過点に成らず。キキキ」
外道は悦んだ。
観客を楽しませる為でなく、自身の飽くなき欲求を叶えるだけの愚か者には、その言葉が相応しいと思うのだ。
キーン、コーン。
カーン、コーン。
終末を告げる鐘が鳴る。
「つまらない」
何度も使いまわされたそれに飽きが来るのは、みんな同じ。
だが安堵せよ、■■。
彼らでは真実へと至る道は切り開けないと知れ。
キキキ!
キキキ!
「ああ、本当につまらない。──後、何度同じことを繰り返せば良いのだ」
神父はため息を吐く。
その顔は三人の外道たちとは違い、暗いものが見えていた。
「すぴー、すぴー。何度でも。──私たちの悲願が叶うまで、アレは何度だって繰り返すでしょう」
学生服の少女が微睡むように呟いた。
◇
────「夢を見たんです」
声がする。
────「とても温かな、優しいユメでした」
聞き覚えのある、優しい少女の声だ。
────「でも、それはとても悲しいモノでしかないのです」
いつだったか、そんな話をしていたことさえ僕は忘れていた。
それは奇怪な夢。
願うことも、足掻くことも、交わす約束の何もかもを同じ、──決められた一日を永遠に繰り返す産物だった。
そこに救いはなく。
誰からも期待されることはない。
それは皮肉なことに、生きることから逃げた愚か者には似合いの末路だった。
────「勇貴さんが食べていたのと同じものを食べてみようと思いまして」
逃げるしかなかった。
物語の主人公みたいに立ち向かうことなど、自分には出来る訳がないんだ。
だから、それを永遠に見続けるしかない僕は、影絵以下の出来損ないに違いない。
────「……そこは、真弓って呼んで下さいよぉ」
パラパラと堕ちる記憶たち。
手を取ることも、立ち向かうことも、生きることも放棄した僕にはそれが果たされることはない。
──羨ましかった。
自分には出来ない選択を取る彼の姿は、まさに理想の自分そのものだったから。
────「でも、許します。許しちゃいます。その代わりなんですが、私のこと、下の名前で呼んで下さい」
色んなことがあった。
都合のいいことしか記憶できない僕は、それでも生きる為に必死で足掻き続けた。
一方、何も出来ない自分は暗闇の中を独り閉じこもるしか出来ない。
……惨めだ。
────「真っ赤ですね」
夕焼けで■■さんが笑った。ゴミ屑みたいな自分の手をいつも取ってくれた。月が綺麗ですね、なんて洒落た言い回しもされたこともあった。
────「怖いですか、勇貴さん?」
遠い日のこと。
霞んでしまって、よく思い出せない約束。
それだけを想い、それだけを願い、それだけの為に尽くした影絵が七瀬勇貴を抱きしめる。
────「貴方が救われるにはそれしかない。先に進むには、それを破戒するしかないのです」
多くのことを取りこぼした。
名も知らない誰かの願いさえ、奪った。
そうしてこれまでを逃げて、逃げ続けて僕は生きた。
────「諦めません。何度だって、私は諦めませんよ」
終わらない今日を見続ける。
訪れることのない明日は期待しない。
なのに。
────「■■さんは立ち上がるんです」
こんな僕に影絵は見限らない。
幻想を巻き込んで、画面の自分に手を差し伸べ続けたんだ。
────「駄目です! そんなのは駄目です、■■さん!!!」
でも、それも終わり。
幾ら呼びかけても現実はこんなものだ。
どれだけ足掻こうとも覆されることのない壁があるのはいつものことだ。
────「立って下さい、■■さん。貴方はこんなところで終われない。いや、終わってはいけないんです」
止めろ。
どうしようもないんだ。
大体、僕には立ち上がる勇気なんてないし。道を切り開く意志も、立ち向かうだけの気力も持ち合わせていない。
ないない尽くしの駄目人間でしか、ないんだ。
────「そうです。何度繰り返そうが、貴方は立ち上がる。そうでなくては生きられない。■■さんが知らなくても、それを私は覚えてます。大丈夫。貴方なら出来る。──だって、こんなにも貴方は強くて優しいんですから!」
どれもこれも僕には真似できない行動をするそいつは壊れていく。
「──畜生」
複製された自分が倒れてる。
自分と同じ姿だった魂の灯が消えかけてる。
あり得たかもしれない絵空事は、現実に耐えきれず過負荷をしてしまった。
────「勇貴さん、お願いですから、目を覚まして下さい。勇貴さん。勇貴さん!」
影絵が泣いている。
でも、それは叶わない。
だって電源の入らない機械には、何をしても意味がない。
役に立たないガラクタはいつだって廃棄するのが道理なんだ。
意味がない。
意味がない。
意味がないって、いうのに──。
「──どうして、だ?」
涙が止まらない。
手を伸ばしても誰も掴まない現実が僕を押し寄せる。
嫌だ。
嫌なんだ。
あんなにも頑張ってた。
彼が頑張って、努力して、必死になって生きようと足掻いてたのが分かってるから。
「ああ、──クソ。どうして、こうなんだ」
気付くのが遅すぎた。
このままだと僕は何も出来ないまま終わる。
最後にアイツも言ってたじゃないか。
────「お疲れ様、■■。どうやら、キミの時間は此処までのようだ」
だから。
だから──。
ジジジ。
暗闇から手を伸ばす。
無我夢中で救いを求めて、もう一度、助けを願う。
彼女が言ってくれた。
彼女だけが僕を忘れなかった。
それだけじゃない、みんなが僕を助けようと必死でアイツラと戦ってくれていたんだ。
だというのに──、この身体はまだ起き上がることすら出来てなかった。
キキキ。
キキキ。
そんな僕を影絵たちが嗤う。
「────」
助けは来ない。
ピンチの時に弱者を助けてくれるのは、いつだって空想の中と決まってる。
「──っ」
──そうして、■■が足掻くことを諦めかけた、その時。
「これで分かっただろう、■■■■? 現実なんてこんなもんだって、言うことを、さ」
暗闇の中で、■■飛鳥の声が聞こえた。
次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!
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