001 張りぼてのプロローグ
お待たせしました。
五章の投稿をしたいと思います。
前回のあらすじ
●魔女、討伐完了!
それでは、本編、第五章:真世界帰閉ノ扉をお楽しみ下さい。
地を這う虫けらは死にました。
親愛に溺れる盲目は息絶えました。
何もかもが終わりです。
何もかもがつまらないことで躓きます。
グチャグチャ/痛い。
ビチャビチャ/止めてくれ。
愚かな思念を潰します。
無意味な幻想を引き裂きます。
退屈な妄執は相手にもしません。
「つまらない。人間はつまらない。あの男が死んでから、こんなにも退屈で死にそうだ」
肉塊が蠢くのを神父は見続ける。
誰よりも夢の終わりを肉塊となったそれは望むのです。
キキキ/もう嫌だ。
キキキ/もうたくさんだ。
影絵たちはそんな肉塊になりたくないと囁き合います。
「何たることだ」
醜悪な神は尚も月を見上げた。
何もない世界に色を付与しても、彼の心は満たされない。
ピー、ガガガ。
何故、娯楽が死んだのか意味が解らない。
つまらない。
退屈で、退屈で、──何もかもがどうでも良く思えてしまうのです。
世界は再び動き出しますが、最早、神父には回り出した羅針盤に何の価値も見出せない。
すると、そんな神父に影絵たちはこれからどうするかを囁き合うのです。
キキキ/どうしよう?
キキキ/苦しい。
キキキィ!/痛い!
キ、キキィイ/嘘つき。死ね。
魔導魔術王は、この夢の中ならいつか退屈を殺す者がやって来ると言っていた。
──けれど、七回目をしてもそれは現れなかった。
カチカチカチ。
さあ狂え、色のない絵本よ。終末装置がこの退屈を殺す時まで狂い続けるのだ。
ジジジ。
ノイズが狂わせる。
狂わせて、狂わせて。やがて、一つの事実を神父に思い出させる。
ダーレスの黒箱も残り少なくなった。
そこまで追い詰められたのはどうしてか。
──否、追い込んだのは果たして誰だったか。
キキキ/忘れろ。
忘れろと脳という器官を通じて影絵たちは囁き続け、──遂に彼らはオリジナルの因子までも消失させ、鐘の音を響かせ始める。
「くだらない。そして、つまらない。最早、この世は有象無象で埋め尽くされている」
それが気に入らないと、グシャグシャの白髪を掻きながら神父は求める。
消毒を。滅亡を。根源を。生命を。
その全て理解したが故に『外なる神』は全て理解出来ていない。
無論。
男もそれらを許容することも受け入れるつもりもなかった。
カチカチカチ。
運命は回る。
空想の張りぼてを稼働し続ける。
ドクン。
借り物の心臓が高鳴った。
同時に偽物の身体が苦痛を訴えた。
血涙を流す器官は、神父には不要のシステムでしかなかった。
ビシャビシャ、ビシャッ!
永久機関は存在しない。
存在するのは、果てる崩壊のみ。
歌うように神父は交信の杖へと足を運ぶ。
「嗚呼、──オマエが居ない世界はこんなにも退屈だ」
疼く傷に顔をしかめて男は嗤うのだった。
◇
チクタク、チクタク。
逆さまに回る記憶を眺め、刻一刻と終末装置は夢の終わりに近づくのを感じた。
────「好きです、付き合ってください!」
それは、古い記憶だった。
まだ僕が自我を保っていた頃に、夜の教室で少女が自分に想いを告げた時の話だ。
覚えてる。
頬を真っ赤にし、くしゃくしゃと栗色の髪を掻く姿に愛しさを感じたんだ。
────「えー、っと」
正面切っての告白に男は頬を掻く。
どうしたものかと考えてると、そこで自分も少女のことが好きだと気が付いた。
カチカチカチ。
────「──っぐぅ、ぁあああ!」
頭が痛くなる。
まるで、少女の告白を受ける選択が間違いだと言わんばかりに痛みが増した。
────「──あ」
それを見て、少女が泣きそうな顔になる。
見たくなかった。
けれど見なくてはいけない思い出だった。
チクタク、チクタク。
見たくないモノは、見てはいけないモノだけど。
時間は有限で、夢はいつか覚めなくてはならないのだと知っている。
「う、ううう、うううううううううううううう」
色褪せていく記憶に僕は涙を流すことしか出来ない。
ゴポゴポ/苦しい。
ゴポゴポ/痛い。
ゴポゴポ、ゴポゴポ/息が出来ない。
僕は今、真っ暗闇に一人きり。
それが間違いない真実で、本当の現実だ。
「ハア、ハア──ハッ、ァア!」
間違えた。
間違えた、間違えた、間違えた。
幾つもの夢を間違えたことに、能無しの僕は此処に来るまで気付かなかった。
「覚めなきゃ。早く、目を覚まさないと──」
目に見えない星を掴もうと手を伸ばすが、それは届かない。
ああ。でも、どうしてか。
それでも僕は、ひたすら希望を求めて手を伸ばす。
ドクン。
心臓が鼓動すると、意識が曖昧になっていく。
その瞬間──。
「──っ」
ジジジ。
眩暈が画面を伝って、やって来た。
キキキ。
キキキ。
ピエロが歌うように跳び跳ね、淑女が見せる嘲笑を響かせる。
真っ赤な梨の実を上手にジャグリングして、観客を笑わせる。
なんて、愉しいサーカスだ。
なんて、狂ったショウの始まりだ。
「さあ、次の夢が始まるよ。今度のは誰も見たことのない、飛び切りだ」
そうして意識が真っ白になる中、何処かで知的そうな少女の声が聞こえた。
チュン、チュン。
チュン、チュン。
「────」
小鳥のさえずりと共に、陽気な日差しが僕を出迎える。
嫌なことの何もかもを忘れさせる微睡みだった。
「────」
黒の魔導書はいない。
きっと、あの黒髪の少女が藤岡飛鳥の真の姿なのだ。
魔導書としての外観を消した以上、流石に男の部屋に入っては来れないのだろう。
「いや、それは無いね。少女の姿であろうと関係なくボクは侵入するさ。それぐらいボクはキミが好きなんだからね」
……あれ?
今、誰かの声がした気がする。
ギギギ。
ブリキの首を曲げ、部屋を見渡すとそこには──。
「おはよう、愚者七号」
寝ている僕を愛しそうに見つめる少女が居る。
ドンガラ、ガッシャーン!
「な、ななな、何で部屋にいるんだぁあああ!!!!!?」
頭がパニック。
気持ちもパニック。
朝っぱらから大きな声が出て、驚愕の嵐が吹き荒れる。
──だが、それも無理はない。
だって居るはずのない少女が枕元に居るんだから、驚くのは無理もなかった。
「何でも何もないさ。ボクはいつでもキミの部屋に侵入出来るのだから居る。当たり前のことだよ」
そして件の少女は、何食わぬ顔で可笑しなことを言い出す始末。
「いや、当たり前じゃないよね!? ……え? 何、僕が間違ってるの!?」
思わず突っ込む僕。
けれどそんな僕を無視してドヤ顔する少女。
平然とそんなことを言うものだから、僕の常識が間違っているのかと思ってしまう。
バタンと勢いよく部屋のドアが開かれる。
「いいえ、そんなことはありませんよ、勇貴さん!」
僕の言葉に反応するように開けたドアから真弓さんが入って来た。
なーんだ、僕は間違ってないんだ。
真弓さんが言うなら、それは正しいのだと自信がつくと言うものだ。
……あれ?
「いやいやいやいや! ちょっと待って!? ──え? 真弓さんの方こそ、こんな朝っぱらから何で部屋に入って来れるの!?」
部屋の前で待機していたとしか思えないタイミングじゃないか!
「それが在るのだよ、真弓」
「スルーされた!?」
淡々とドヤ顔をする黒髪少女、もとい藤岡飛鳥。
そして僕の人権は何処に行った?
「ぐぬぅう。そ、そんな羨まけしからんこと、許される筈がないです!」
興奮しているのか、真っ赤な顔で真弓さんは反論しだす。
「ふ、ふふん。ボクには、『藤岡飛鳥』にはその権利があるのさ。まさに、特権階級。特権階級にして、王者の極致。つまるところ、チートなのだよ!」
何やら熱弁しだす痴女その一。
うん、そうだな。もう君と関係を持つの止めようかな。
「な、な、ななな、何ですとぉお!!!」
卓袱台がひっくり返ったかのリアクションをする痴女その二。
どうしてだろう、真弓さん。これから君と二人きりになるのが怖くなってきたよ。
「──ということで、これから愚者七号のお着換えタイムはボク一人で鑑賞させて貰うから、キミは早々に出ていきたまえ」
「う、ぅううう。それが敗者の運命とでも言うんですか……!」
ドヤ顔する藤岡飛鳥と悔しそうに歯ぎしりする真弓さん。
「いや、君も出ていくんだよ!」
それに対し、大きな声でツッコミをすると──。
バサバサ。
何処かで鳥たちが羽ばたく音が聞こえた気がした。
次話の更新は、8月11日になります。ストックがないに等しいのでスローペースになりますがそんな作者の作品が面白い、続きが気になる、応援してると思ったらと少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!
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