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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第四章:影絵情景
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023 満ちる刻


 「ゴホン。それでは僭越ながら今度はワタクシ、シェリア・ウェサリウスが説明させて頂きますわね」


 今度はシェリア会長が生き生きとした顔をしだした。


 「──と、意気揚々と言ってみたモノの何からお話しした方が宜しいか分かりませんわね。どれを話してもこんがらがるのは間違いなしでしょうし……。ええ、そうですわ。先ず、名城真弓に訂正することから始めるとしますわね」


 自信満々の割には、出鼻をくじくような物言いだった。


 「何です?」


 相変わらず真弓さんは不満気な顔をしている。


 「ワタクシは魔女ではあり、魔女ではありませんわ」


 ……変な言い回しだった。

 というか、それは魔女なのだと認めているのではないか?


 「アナタがそう思うのは、まあ無理はありませんわ。でも、ワタクシは魔女であって魔女でない。単純に言って、ワタクシの身体は魔女として機能しているもののワタクシという個人の感情は魔女でないということですの」


 うん?

 いや、どういうこと?


 「──もしかして、アナタもそういうことなんですか?」


 真弓さんは何かに気付いたみたいだ。


 「ええ。名城真弓、アナタの想像通りですわ。ワタクシもまたシェリアでありながら、シェリアではないのですのよ」


 シェリアであってシェリアでない。

 それは、自分が自分でないってこと?

 あれ? それって、誰かと同じことになってる気が……。


 「勇貴さん。その解釈で間違いないと思います。寧ろ、そうでないと都合がつかないことが多すぎます」


 なるほど、オートマンと六花さんのやったことを魔女が二番煎じでやってたってことか。


 「いえ。この場合は六花さんが二番煎じをしたとのだと思いますよ」


 え、そうなの?

 まあ、魔女がシェリア会長の身体を使って行動していたってことは解った。

 でも、そうなると益々解らないことも出てきた。


 「ええ。何故、今、ワタクシは自分の身体としてこの身体を自由に出来ているのかをお聞きになりたいのでしょう?」


 「そうですね。それを答えてくれるのなら、私も助かります」


 真弓さんが僕とシェリア会長の間に割って入る。

 これから殺し合いでも仕掛けるような警戒だ。


 「まあ、お上品ですのね。でも安心なさってくださりません? もし、ワタクシが魔女のままだったら、今頃アナタ達はこの色欲の権能(チート)によって仕留めてますわよ」


 突然、シェリア会長が僕に拳銃を構える。


 「──っな!?」


 それに対し一層、警戒心が強くなる真弓さん。

 冗談だと分かっても、銃を突きつけられるのは気持ちが落ち着かない。


 「あら、冗談かどうかはまだ分かりませんわよ」


 シェリア会長が怪しげに微笑む。


 「いや、信じる。信じるって決めたからには、僕は君を疑わないよ」


 そんなシェリア会長に拗ねたように言葉を返す。


 「────」


 互いに黙ったまま、視線だけが交じる。


 「ワタクシを信じると言ったのは嘘ではないですわね」


 シェリア会長が銃口を下ろす。

 それを見て、やっぱりシェリア会長はお人好しなんだなって思った。


 「だから、ワタクシは──」


 「魔女、いえ、シェリアさん。はぐらかさないでください。私たちはまだ、肝心なことを聞いてません」


 シェリア会長が何かを言いかけた時、真弓さんが再び口を挟んだ。


 「……ええ。分かっておりますわ。ワタクシが今、自由にできているのは何故か。それは、魔女が色欲の権能(チート)を介してワタクシの身体に魔術誓約(ギアス)を埋め込んだからですの」


 ……それは、六花さんとオートマンのと何が違うんだ?


 「全然、違いますわ。六花は自身の魂をアストラルコードに変換してダーレスの黒箱を介してオートマンが行った権能(チート)の代償の穴をついただけですの。一方、魔女は自身の魂を色欲の権能(チート)で無理矢理ワタクシの身体に介することで身体を共有させたのですわ」


 つまり?


 「ああ、そういうことですか。つまり、魔女が権能(チート)を発動させていない間は貴女の身体には存在できないということなんですね」


 また、真弓さんの方が先に解ったらしい。

 すまないが、僕にはちんぷんかんぷんだ。

 説明してくれぇえ、マユえもん!


 「ぽわん、ぽわ~んのぷぷらぱー……コホン。えーと、ですね。勇貴さんは魔術破戒(タイプ・ソード)を無意識で現実化(リアルブート)出来ないですよね。それと同じで、魔女はシェリアさんの身体に自分の魂を転写させるのに権能(チート)を使ってるんです。……つまりですね、魔女はシェリアさんの身体を使うと意識していないとシェリアさんの身体をコントロールすることが出来ないんです」


 ……あ、そうか。権能(チート)を使用するのにも代償を支払い続ける必要があるんだっけ。

 常に意識してそれを行使するということは、魔女は何らかの代償を支払い続けてしまう。

 それを防ぐ為に魔女はシェリア会長に身体の支配権を返す必要があるのか。


 「そういうことですよ、ゆう太くん」


 うん、よく解ったよ。ありがとう。


 「ちょっ、ちょっと、今のやり取りは何なんですの!? 何、そのヘンテコな掛け合いは! 今世紀最大に意味が分かりませんわよ!」


 僕らの掛け合いに突っ込みだすシェリア会長。

 何だかテンパって、支離滅裂な言い草な気がする。


 あー、もう。折角、話が纏まって来たのにシェリア会長、うるさい。


 「な、なんですのー!」


 何処からか取り出したハンカチを握りしめながら、シェリア会長はムキーと言い出した。


 「とにかく! 此処には魔女がいないということは解りました。けど、それならシェリアさん。魔女は今、何処にいるんですか?」


 ヒステリックを起こしてるシェリア会長に真弓さんが魔女の行方を聞く。


 「そんなのコントロールルームに決まってますわ!」


 それに対しシェリア会長は語尾を強くしつつ、そう答えたのだった。


 ◇


 「それにしても、アナタも人が悪いわねぇ」


 魔女が拳銃を構えて言います。


 「そんなものを隠してるなんて」


 魔女が私たちを見下ろした。

 虫けらのように見下して、地べたを這いずる幻想を踏みつけるのです。


 「ええ、解ってましたよ。だってワタシ、悪意に関して人一番敏感ですもの」


 クスクス/キキキ。

 クスクス/キキキ。


 影が嗤います。

 愚かな私たちを影絵に飲み込もうとするのです。


 「此処で退場されるのですから、次なんてアナタたちには必要ないでしょう」


 勝利を確信した魔女は引き金を絞る。

 どうやら彼女の方が一枚上手らしく、『私たち』の存在は認知されていたようでした。


 「良いのかい? 此処でボクを始末したらキミはきっと後悔すると思うよ」


 ■■は少しでも注意を逸らそうと話をします。


 「構いませんよ。一度その術式さえ理解してしまえば、後は色欲の権能(チート)で補えます。寧ろ、余計な懸念材料を残す方が計画に支障をきたすことでしょう」


 淡々と魔女は答えます。

 不必要だと言い、魔弾を装填する姿に迷いは見えません。


 「そうかい。それは良かった」


 ■■は目を瞑り、影絵たちは仲間が増えるのを今か今かと待ちわびます。


 「……そう言えば、思ったんだけどさ」


 撃たれる覚悟を決めた■■は、魔女に最期の言葉を放ちます。


 「何かしら? 命乞いなら、出来るだけみっともなく見せて頂戴。その方が愉しめますので」


 カチャリ。

 引き金を絞る指に力が入りますが──。


 「本当にキミって詰めが甘いよね」


 ジグザグ、ジグザグ。

 ジョキジョキ、ジョッキン!


 魔女と私たちを隔てる空間が引き裂かれました。


 「──っな!?」


 それに対し、彼女は驚くばかりで何も出来ません。


 「それじゃあね、魔女さん。少しは相手の力量がどんなものか見極めてから動きなよ」


 黒髪の少女は手を掲げ、虹色の光にその身を包み込みます。


 それは、新たなる星の輝きで。

 それは、未知なる領域の進化へ至る道筋でしかありません。


 「逃げるんじゃありません、このゴミ屑共!」


 魔女はなす術もなく、空間の歪みに乗り込まれる私たちを取り逃がします。


 「────」


 私の心はがらんどう。

 私の魂はしんだどうぜん。


 何をするにしても、みたされない。

 それが私という世界の『えいきゅうきかん』の証明になります。


 チクタク、チクタク。

 時間は止まらない。


 それは、つまり。

 誰も彼の行方を阻むことは出来ないのです。



 ストックが尽きました。只今、続きを執筆してますが、明日から続きの投稿は無理かもしれません。

 この作品が面白い、続きが気になる、応援してると思ったらと少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!


 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!


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