021 想いの結晶
驚愕する二胡に向けて、青と赤で装飾された無機質な剣を構える。
「邪魔者は消したと思った? ……残念だったね。僕、諦めが悪くなったみたいでさ。この通り、舞い戻って来たよ」
「──っ!」
わなわなと身体を震わせ、二胡が口元をキュッと結ぶ。
互いの視線が交わり、無言の応酬で相手の動きを牽制し合う。
「何それ?」
沈黙に耐えきれなくなったのか、二胡が口を開く。
「さあ? 解んない。……ああ、でも。強いて言うなら、みんながくれた想いの結晶とかそういうのなんじゃない?」
「……バカにしてる?」
イライラしながら僕の言葉に二胡は毒を吐いた。
「あーあ。本っ当、意味解んない。どんな手を使って、『無の空間』を脱したのか知らないけどさぁ、愚者くん。もしかして私の一撃を凌いだぐらいでいい気になってる?」
そんなことを言って、二胡が無骨な大剣を構える。
だが、その構えに先ほどまでの余裕が微塵も感じられない。
「別にいい気になってるつもりはないよ。というか、僕にそんな余裕ないことぐらい分かるでしょ」
二胡の殺気が強くなる。
まるで、眠れる獅子を起こしたような雰囲気だった。
けど、それは僕の正直な本音だし、間違ったことも言ってない。
というか、こんな解りやすい挑発に乗るとか二胡の方がいい気になってたんじゃないのかな?
「アハハ! そりゃあ、そうだね!」
そう僕が思うと二胡はそうだったと言い、壊れたラジカセのように一人で何度も頷いた。
「うん、やっぱり愚者くんは此処で始末しよう。そうするべきだし。それが良い。それが良いなら、そうしよう!」
そんなことを叫ぶと、大剣を勢いよく振るう。
瞬間。
二胡の姿がその場から消えた。
「──っな!?」
真弓さんとシェリア会長が驚く。
瞬時に僕は幻影疾風を駆使し、コンマ数秒の世界に埋没する。
「此処で始末しておけば、私たちの懸念もなくなるってもの! それは、一石二鳥ってヤツだよね!」
消えたかと思われた二胡の声が部屋中に響く。
嫌な予感がし、咄嗟に無機質な剣を振るう。
「──っ!」
ガキン!
目の前で火花が散る。
痺れるほど強い衝撃が剣を通して伝わった。
「──っち! まだまだ!」
不可視の一撃を弾き返すものの、その後も容赦なく二胡にの攻撃は続く。
「ぐぅ、ぅううう!」
直感で、あやす様に剣戟を捌いていく。
「ほーれ、どうしたのさ? さっきまでの威勢は何処に行ったよ!?」
死の一閃が僕を襲う。
どんな手品なのかは不明だが、今、確実に視覚外の領域から二胡は攻撃を繰り出している。
疾風幻影を発動させても尚、捉えきれない速さで二胡は僕を翻弄しているのだ。
「──っ」
下手に動いたら、敗北する。
そんな予感が僕を攻めあぐねた。
「どうせ、私なんて余裕なんでしょ!? 眼中にないって言いたいんでしょ!? そういう目つきだった! そういう態度だった! お前なんかいらないって顔してんじゃねーですよ、愚者くん!」
何が気に障ったのか。
何をそんなに恐れてるのか。
何故、癇癪を起こすみたいに二胡は大剣を振るっているのだろう。
ああ。二胡の言い分は滅茶苦茶で、それまでの態度に手の平を反すものだった。
そうまでして怯えているのは、きっと彼女にはそれがとても大切で譲れないものなんだろう。
──でも。
「そんなの知るか! 眼中にないとか、目つきやら態度が気に入らないとか知るもんか! そんなのは君の主観だ! 僕が気にすることじゃない!」
それを受け入れてやるなんて、人間として破綻している。
気に入らないから他人を間違いだと言うのは間違いだ。
寧ろ、そんなことを言い出す二胡の方が間違ってると言える。
「うるさい! うるさい、うるさいうるさいうるさい、うるさぁあい! そんなもの考えたって、どうせ愚者くんには無駄だよ! 意味ないってのに、一丁前に人間やってるんじゃない!!!」
なんて自分勝手な言い分だ。
「うるせぇえ!!! ──そんなもの、君に決められる謂れはない!!!」
不可視の一撃が強くなる。
不条理を受け入れろと二胡が猛攻を仕掛けてくる。
そんなものは知らない。
そんなクソの理屈、解って堪るものかと刃を押し返す。
「────」
埒が明かない。
兎に角、この現状を何とかしようと新しく手に入れた権能を使うことに決めた。
ドクン。
心臓が高鳴り、耳鳴りが聞こえ、身体が不調を訴える。
それらを無視し、目の前に二胡がいるものだと思い込めばそれが事象となって顕現しだす。
「ああ、もう! いい加減、堕ちなさいよ!!!」
ガ、キィイイイン!!!
鉄と鉄がぶつかり合う。
軋むように、音を立てながら空間が歪む。
それは世界の法則が乱れるかの如く、現実を侵食していく。
「「あ、あれは!?」」
二人が驚愕する。
それを無視して、目の前に現れた二胡へと思い切り剣を振るった。
「──っな、に!?」
攻め手に回った僕に二胡も驚いた。
だが、それは戦いの最中には決定的な隙でしかない。
「うらぁあああああ!!!」
当然のようにがら空きとなった懐に渾身の一閃が輝く。
「ぎゃ、あ、ああ、ああああああああああ!!!」
耳を劈く悲鳴。
痛い、痛いと喚きながら、その場をのたうち回る少女。
鮮血は舞わない。
只、文字の羅列が粒子となって二胡から散っていく。
「そ、そんな、バカな。……まさか、こんな短期間で憤怒の権能を覚醒させたですって? あの魔導魔術王ですら、そんな芸当出来なかったというのに──」
痛みに苦悶する二胡は、そんなことを漏らす。
それがどういう意味か解らないし、解りたくない。
「いや、まだだよ。まだ、終わらない。終わらせて堪るものですか! ……ふざけてる。こんな都合の良い展開、私たちは認めないよ!」
二胡には戦意が残ってる。
──だが、その身体は消えかけており、使い物にはならない。
「覚え■な■い、愚者■ん! 絶■、後■さ■■やるんですから!」
最期にそう叫んで、二胡は消失する。
その言葉が何を意味するか僕には分からない。
けど、今はこの勝利を素直に喜んでおくことにしよう。
次回、明日投稿出来たら最高!
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