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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第四章:影絵情景
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018 拙い言葉で、意味が解らない理屈だ


 やった! 書けたぞ!

 さて、白紙の019に取り掛からなくては……!



 家畜たちがワタシを取り囲む。


 「これで終わりだ、シェリア・ウェザリウス!」


 どうして?

 あれほど反逆の芽が出ないよう、念入りに間引きをした筈なのに!


 意味が解らない。

 ワタシは何故、ワタシを守る兵に剣を向けられているのです?


 「お前が! お前が城主様を殺した! そして多くの命を虫けらのように扱った! それは許されざるものだ!」


 あらゆる罵倒が飛び交い、城からワタシを家畜たちは引きずり下ろします。


 何故だ? ワタシはワタシであろうとしただけなのに、オマエらはワタシに対し反逆をするのです!


 「魔女だ。お前は魔女だ! この魔女め! 我々の城主様を……俺たちの平穏を返せ!」


 石を投げられる。

 多くの人間にも殴られる。

 傷をつけられ、火で炙られる。

 それはまるで、ワタシが家畜たちにしてきた躾のような仕打ちだった。


 「皆殺しだ! 魔女なんかを王族にした奴らなんぞ、皆殺しにしてしまえ!!!」


 平民は貴族に傅くだけの家畜だった筈。

 それなのにどうして、そんな家畜にワタシが傅かなければならないのです?


 「殺せ! 魔女を処刑しろ!」


 死ね。死ね、死ね、死ね!


 「いーや、こいつは只で殺してやるには勿体ない! そうだ、この魔女が死ぬまで皆で口汚く罵ってやろうぞ!」


 消えろ、消えろ、消えろ!

 どうしてオマエが。

 どうしてオマエなんかが!


 あらゆる罵詈雑言を受けたワタシは、こうして地を這いずる虫けらとなったのです。


 「虫けら! ゴミ屑! どうしてテメェが生きて、オレの愛するダニーがミンチにならなきゃいけなかった! どうして、どうして──!」


 虫けらとなったワタシの毎日は、ゴミ屑扱いで始まります。


 「返しておくれ! 私たちのメアリーを返しておくれ! 可愛い、可愛いダリルも返しておくれ! なんで? どうして、私たちの大切な子たちが殺されなきゃいけなかったのさ!?」


 知りませんよ。

 そうである運命を呪えば宜しいのではありませんか?

 ワタシのような貴族に生まれなかったそいつらが悪いのです。


 ええ。ワタシは城主。

 神と持て囃されるべき、至上の存在。


 そんなワタシを辱めるとは、天罰が下りますよ。


 「こいつ、全く反省してないぞ!」


 一人の妖精は嗤いました。

 それを見て、一斉に愚民たちは憤りました。


 「そうだ。みんな、良いことを思い付いたぞ! こいつを今日から掃き溜めにして扱き使ってやろう! ありとあらゆる拷問もかけて、甚振ってやろう! そうだ。そうしよう。それが良い!」


 歌うように家畜たちは狂っていきます。

 笑うように虫けらは壊れてしまいました。


 その日から恥辱の限りに尽くされたワタシは、多くの欲の捌け口となったのです。


 「い、いぃやぁああああああああああ!!!」


 ワタシは城主。

 平民は傅く為の家畜に過ぎなかったのに、最早、それは見る影もありません。

 だって、只の虫けらとなったワタシにはそれを咎める権利さえ剥奪されたのですから。


 屈辱でした。

 それに耐えるしかなかったワタシは自ら死ぬことも許されませんでした。


 ですが。

 ある日、そんな虫けらに大魔術師と名乗る男が二十歳を過ぎるまでに死ぬ呪いを与えたのです。


 「喜べ、感謝しろ。お前に呪いをくれてやったぞ」


 男はワタシに掛けた呪いが、どんなことをしても絶対に解くことの出来ない呪いだと自慢しました。

 ですがそれは、死を許されない虫けらにとって救いでしかなく。


 「あり、が、と、う」


 当然のように、ワタシは男の言う通り感謝した訳ですよ。


 「おいおい。まだ(こうべ)を垂れるのは早いぞ」


 ですが、大魔術師の男はそんなワタシを制しました。


 「実にお前は愚かな人間だった。器にお前を選んで正解だった」


 しかも何食わぬ顔で、ワタシを嘲笑ったのです。


 「聞くが良いぞ、シェリア・ウェザリウス。お前が創り上げたゲヘナは実に素晴らしいものだった。『外なる神』も賞賛されておった。故に、『外なる神』はそんなお前に恩恵を捧げてやることにしたそうだ」


 ワタシはシェリア。

 あらゆる平民を傅かせる、神に匹敵する存在。

 そんなワタシに対し、そいつは嘲笑うように救いの手を差し伸べました。


 「あ、ああ、あああああああああああああああああああ!!!」


 酷い話でしょう。

 その所為で、ワタシは死に物狂いで生を求めることになったのです。


 何度も言いますが、ワタシは城主。家畜たちを幾ら間引こうと揺るがぬ絶対王者。

 そんなワタシが無様に死を受け入れるなど、在ってはならないのです。


 ◇


 「貴女の目論見は知りませんが、勇貴さんには指一本触れさせませんよ、魔女」


 微笑むシェリア会長にすかさず真弓さんが魔女と呼んだ。


 「──ってことは……」


 つまりシェリア会長こそ、この世界で悪逆の限りを尽くす黒幕ということになるのか?


 「それは少なからず語弊がありますわ、七瀬勇貴」


 僕の考えをシェリア会長は否定する。

 やっぱり、彼女も僕の思考を読めるらしい。


 「驚かないとは、珍しいですわね」


 ……当たり前だ。

 親友が言っていたことを早々に忘れてなるものかよ。


 「──そう。確かに、如月累はアナタにとっては親友と差し支えないキャラですわね」


 ……。

 シェリア会長が何処か遠い目をしてる。

 それだけで、僕が何かを忘れてしまったのだと理解する。


 「そう、かな。……アハハ、そう言ってくれると彼も浮かばれるのかもしれないね」


 彼女の真意は解らない。

 でもこの時、いつも通りのクラス委員長である彼女なら今回も僕の力になってくれるだろうと思った。


 「……それは、何故ですの?」


 シェリア会長の訝しげな表情を見て、僕は思った。


 嗚呼、そうか。

 幾ら思考が読めると言っても、何でも察することが出来る超次元の存在ではないんだ。


 それが解ってしまうと、何だか自分がバカみたいに思えてしまう。

 いや、実際バカなんだろう。


 そして、目の前の彼女も同じくらい頭が悪い。

 どうして、そんな単純なことが解らないのかと言いたい。


 「ほら、シェリア会長はさ。良い人だからね」


 だから、黙ったままの彼女に自分の考えを突き付けてやった。


 「……訳が分かりませんわ」


 案の定、シェリア会長は解らないと言った。

 けど、僕は知ってる。

 シェリア会長の不器用ながらも優しい人間だと言うことを知っているんだ。


 「優しい人間? ワタクシはそんな人間じゃありませんわ」


 目の前の少女は解らないと言う。

 そりゃあ、真実を知る真弓さんは彼女を魔女だと決めつける根拠があるのかもしれない。


 もし仮にシェリア会長が悪逆非道な人間であるのなら。

 それでは、あの夕焼けの教室で彼女が僕の頼みを断ろうとした説明つかない。


 だって、そうだろ。

 魔女と呼ばれる黒幕なら、何としても邪魔者の鈴手を排除しなくてはならない。

 こちらを全力でサポートすることは有っても、妨げになることは不都合なことである筈だ。


 「それに、さ」


 黙ったままのシェリア会長を見つめる。


 「あの時、君は言ったじゃないか。共闘、楽しかったですって。それはつまり、僕のことが憎からず嫌ってないってことでしょ?」


 そう。

 嫌ってない。

 僕のことをどうでも実験動物(モルモット)と思っているのなら、そんな言葉は出ないし感情も抱かない。


 「────」


 その証拠にシェリア会長は何も言わない。


 十分だ。

 その沈黙だけで僕らは分かり合えた。


 「だったら、今、僕らが手を組んだって問題ない筈だよ」


 手を差し伸べる。

 我ながら拙い言葉で、意味が解らない理屈だ。

 本当、そんなのだから多くのモノを取りこぼしたのかもしれない。


 けれど、僕は信じたい。

 あの夕焼けの教室で僕の手を取ったシェリア会長を信じ続けたいんだ。


 「愚かですわ」


 僕が喋り終わると、シェリア会長が閉ざしていた口を開けた。

 その一言は実に今の状況を物語っていた。


 「そうだね」


 でもそんなことは解り切ってるし、もう振り切ってる。

 そうじゃなければ、僕は進めない。

 愚かでも、バカでも。

 この感情に嘘はつけない。


 「本当に愚かですわ。ええ、本当にアナタは──」


 部屋に入って来るシェリア会長。

 その足取りは慌ただしく、額にはバッテン印が見えてるような感じがする。


 ああ、それは正しい。

 だが僕は訂正する気はない。


 目の前に来るシェリア会長。

 何も言わない真弓さん。


 「でもそういうの、ワタクシ嫌いじゃありませんわ」


 そう言って、シェリア会長は差し伸べた僕の手に握手する。


 カチリ。

 何かの欠片が填まったような気がした。



 今度こそ次の投稿は未定です。

 でも、今月中には四章を終わらせる予定ですのでよろしくお願いします!


 この作品が面白い、続きが気になる、応援してると思ったらと少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!


 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!


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