五十二ヘルツの怪物
更新遅くなり、申し訳ございません。
しかも本編ではありません。
ユニークアクセス2000突破記念のifルートです。
内容は、二章で天音を倒せなかったらこうなるというものです。
途中、年齢制限が入る内容なので運営からダメ出しされたら編集するかもしれません。
それでは、どうぞ。
このどうしようもない話はバッドエンドだ。
志し半ば死んだ愚者の物語。
断罪の末路。
泡沫の夢。
「■■、■?」
五十二ヘルツの怪物が苦しげに鳴く。
それは、一度の怠惰が招いた結末に過ぎなかった。
◇
「お前に殺されて良かったなんて、あんまりじゃないか!」
癇癪のような叫びをする天音と、その背後に現れる蜥蜴の怪物。
揺るぎない信念も理念もぶち壊すそれを殺さなければ、先には進めないのは解ってた。
けれど。
僕は天音を殺せなかった。
だって、彼女の笑みを思い出してしまった。
幸せそうに兄さんと呼んでいる少女を斬ることは余りにも罪深く。
その手に握る最強の権能を振るうことは傲慢に他ならなかったのだ。
「──ぐぅ、あ、ああ!!!」
僕は傲慢で、怠惰だった。
結末から逃げたから、こうなった。
ミチミチと潰れる僕を蜥蜴の怪物が美味しそうに頬張った。
得難い激痛が襲う。
あらゆるモノがこぼれ落ちる。
ぐちゃぐちゃ。
ぐちゃぐちゃ。
四肢が捥がれても、頭が潰れても、心臓を引きずり出されても。
ぐちゃぐちゃ。
ぐちゃぐちゃ。
何回も身体がぐちゃぐちゃに食い潰されては殺される。
ぐちゃぐちゃ、ずびしゃあ!
そして、死ぬ度に身体が再生されてはその行程を繰り返す。
──そうして、命じられたことしか出来ない哀れな肉人形が完成した。
「おはよう」
キーンコーン、カーンコーン。
終幕の鐘が哀れな肉人形の誕生を告げる。
◇
「兄さん!」
殺せなかった少女の弾む声。
遠い何処かで救いたかった彼女に、誰も救いの手を差しのべない。
「アハハ! 嫌だわ、兄さん! またそう言ってはぐらかすんでしょう?」
真っ赤な髪が掬われる。
微睡みの日常を慈しむ姿は、とても愛らしいものだった。
──そこに広がる惨状に目を逸らせられればだが。
地べたに転がる無数の生徒。
その内の一人は、何処かで見たことがある人間擬き。
御主人様である■■はその一人の頭を思い切り踏みつける。
「ぐぅえ!」
ジタバタと手足を抗うが、踏み付ける少女は足の力は弛めない。
「アハハ! 超ウケるんですけど!!!」
寧ろそんな姿に狂った女は興奮しだす始末だから手に負えない。
「ユ、ユーキぃ……。ち、くしょう」
苦悶の声がした。
それに対し、嫌な予感もした。
そのことを伝えようとしたら、それをする前に教室の窓から落ちていく人影が見えて──。
数秒後にヒキガエルの潰れる音が響き渡る。
「ああ、ダメね。何度やっても兄さんの自殺癖は止まらないわ」
次よ、と僕に指示をする少女。
髪の色と同じように教室を染め上げたのは、他ならぬ■■だった。
酷い話だと思ったが、それも仕方ないと割り切った。
だって踏み潰した奴の所為で、久留里四葉の飛び降りを阻止出来なかったのだ。
八つ当たりの一つもしたくなるのが人情というものだろう?
「やれやれ」
次なる夢へとシフトする為、魔女を殺して奪った権能を駆使する。
また同じ夢。
■■が望むのなら、何度だってこの夢を繰り返す。
そうするために身体の器官は全て天音に書き換えられてしまった。
だから、もう■■の命令に逆らうことは出来ないのだ。
久留里四葉が死なない夢を求めて、久留里四葉が絶対に死ぬ夢を見る。
そうすることでしか、■■の願いは叶わないという矛盾。
でも、そうしなければ奇跡が起きないことも■■はよく理解していた。
だから、仕方ない。
無意味な繰り返しでも、那由多ほど回数を重ねればバグの一つは生まれるのだと信じるしかない。
それに縋るしか、■■の願いは叶わないのだろう。
ソレハ、アワレなコトだナと思った。
「何見てんだよ? 気持ち悪い!」
いきなり■■に首から上が消し飛ばされる。
理不尽の極み!?
◇
目が覚める。
何度やっても同じ夢。
永遠に繰り返される死の循環は終わらない。
「お、お前はオレじゃ、──っぴぎゃあ!!!」
何百もそんなことを繰り返す内に、地団駄を踏む肥えた肉塊も、仮面の魔術師も、恋に盲目な少女さえも殺していく。
■■に命ぜられるまま権能持ちからチカラを蓄える。
そうして、僕は僕じゃなくなっていき──。
ズブリ!
「……なんで、だよ?」
雨が降る。
世界は矛盾しない。
永遠に久留里四葉は死んでいく。
そうなることが大前提で形成された夢の世界なのだから当然だ。
それ故に天音の心が折れるのも無理はなく、それより早くこちらが限界に達したのも仕方ない。
仕方ない。
そう義務付けられたことだから仕方ない。
仕方ない。
そんなことは聞いてなかったんだから──。
仕方ない。仕方ない。仕方ない、仕方ない、仕方ない。仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕かたない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕かタない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方なイ仕方ない仕方ない仕方ない仕方ナナい仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ナイ仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ない仕方ナい仕方ない仕方ナイ。
だから、天音が僕に殺されるもの仕方ないだろ?
◇
ドバドバと流れる血液。
目を見開いて死ぬ少女には、何処までも救いがなかった。
手にした魔術破戒を引き抜く。
鮮血が僕の頬を更に真っ赤にする。
もう彼女の我が儘は聞こえない。
魂の抜けた身体。
意思のない肉塊。
死を与える断罪者は生き続けるように死んでいた。
「──ソウダ。オマエはソレでヨイ」
僕の口から僕のモノではない呟きが漏れる。
キーンコーン、カーンコーン。
崩壊の嘆きが綴られて、終幕の鐘が鳴った。
──そこへ、いつかの少女が遅れてやって来る。
宿命だと言わんばかりの邂逅。
だが思えばこうなることは初めから決まっていた。
僕はもう人形でしかなかったから諦めたけど、■■さんは人間みたいに生きたかったようでまだ諦めることが出来ないみたいだった。
それもこれで全部台無しで、寧ろ今になって来てしまったことが状況を悪化させているとも言えた。
まあ、これも運命なんだから仕方ないよね。
でも、だからこそ■■■■の末路がこんなにも呆気ないとは思わなかった。
「い、や。……いや、です。勇貴さん、■■さん! いや! いやです!!!」
涙を流す誰か。
最期まで抗った少女は、断罪者となった僕を見た。
もう頭は痛くない。
少女の泣き顔に何も心は動かされない。
だから、少女を断頭することに躊躇いはなかったよ。
グシャリ!
プレス機に潰されるような、呆気ない幕切れ。
豚の悲鳴は聞こえない。
それをする前に喉を潰したから、当然と言えば当然の話だった。
びちゃびちゃノ海に足が浸かる。
ぐちゃぐちゃノ体に血が飛び散った。
「……ああ、良い。良い、良い良い良い、良いよ!!!」
血まみれの身体を抱き締める。
興奮が抑えられず、僕はその場で蹲り死体の彼女に欲情する。
冷たくなっていく身体に獣となった僕は、愛撫を嗜むよう傷つける。
抵抗のない人形を犯す下劣な嬌声が止められない。
突き動かされる衝動のままに死肉に集る僕は、正に怪物と呼ばれるに相応しい。
ああ、そうだ。
天使だ、天使に会いに行こう。
今の僕なら、きっと神様が罰を与えてくださるに違いない。
肉塊に欲望をさらけ出した僕は、ステップを弾むよう次なる獲物を求め出す。
「次は? 次の獲物は無いの!?」
御主人様に催促するよう叫ぶ。
そんな僕を窘める■は正に理想の王である。
「フム。ナラバ、外へトムカウとスルカ。ダガソレニハ、マダ邪魔ガイル。コロセ。スベテノ幻想ドモヲコロセ……!」
導かれるように、幻想たちの元へ向かう。
最後まで立ち向かった彼女たちを殺すのは最高に気持ち良いに決まってる。
◇
ズシャア!
オレンジの髪が散らばった。
真っ赤な海が教室に広がった。
完全に近い権能を手にした僕にみんなは手も足も出なかった。
死刑執行は続く。
みんなの嘆きが校舎中に響き渡る。
楽しい。楽しい。楽しい。楽しい。楽しい。楽しい。
ああ、本当に──。
「そこまでです」
校舎に居た幻想たちを虐殺してると、誰かが僕に立ち塞がった。
月明かりが眩しすぎて、顔はよく見えなかった。
誰の声なのか、判別しても意味がなかった。
けれど、目を眩ませる金髪が綺麗だった。
断罪者の僕に、目の前の少女を思い出そうも意味がないのは解ってる。
でも目の前の少女を見ていたら、大切なことを思い出せそうなんだ。
「ええ、それは貴方が言う通り思い出しても意味のないことなんです。だから、良いんです。これで終わらせてあげます」
そう言って、物凄い速さで何かを少女は振るう。
目映い刃がとても綺麗なのに、僕の気持ちはちっとも晴れなかった。
「な、に、それ?」
機械の身体を動かし身構える。
亡霊の意思を宿して、奥底に眠る権能を呼び覚ます。
コンマ一秒を永遠の世界にしようとした瞬間――、少女の言葉に僕は納得してしまった。
そう、それがいけなかった。
敵が殺しに来てるっていうのに、そんな余分なことを考えてたら致命的な隙でしかない。
だから、彼女の放つ一閃を腹に貰ってしまったのも仕方ないことだった。
「──あ」
ヒュン、と体勢が崩れる。
瞬きする間もなく心臓の鼓動が止まった。
「────」
互いに見つめ合う。
ズルリと真っ二つに僕の上半身が堕ちていく。
吐血するよう倒れる僕を彼女は眉一つ動かさない。
その姿がまるで人形のようだと思った。
「そう、だな。確かにわたしたちは人形だ」
少女の嘆きに能なしの僕は言い返せない。
嗚呼、死がやって来る。
断線した意識を世界は許さない。
こうして僕のつまらない人生は幕を閉ざすのだ。
死を目前にして漸く僕は少女の名前を思い出す。
それが堪らなく嬉しくて、彼女に名前を思い出したことを伝えたくなった。
最期の力を振り絞る。
それは、一度の怠惰が招いた結末に過ぎなかった。
五十二ヘルツの怪物が苦し気に鳴く。
「■■、■?」
泡沫の夢。
断罪の末路。
志し半ば死んだ愚者の物語。
このどうしようもない話はそんなバッドエンドだ。
本編の更新は、今月中にボチボチします。
話の展開は決まっているのですが、如何せん筆が進まないのです。ごめんなさい。
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