011 告白
投稿遅れました、ごめんなさい。
1章書き直すって言っときながら、前から考えてた続きを書きました。
因みにストックはないです。
遅筆ですが、今年中にはこの作品を完結させたいです。
うーん、長い。
前回のあらすじ
● 吸血鬼の少女に真弓さん(?)殺されてよく分からないけど、夢落ちになってる?
なんか頭痛くて真弓さん(?)に八つ当たりしちゃった、どうしよう!?
それでは続きをどうぞ!
先ほどまで食堂にいた。
二胡さんと話をしていた。
そう、累が僕の傍にいた筈だった。
──は、ずだったのに。
「教室の前?」
生徒たちの喧噪が聞こえる。
ドア越しに教室の中を伺っても、累の姿は何処にもない。
時間が巻き戻ったのか、進んだのかは分からない。……そもそも、これが一度目の再現であるかも疑わしい。
「ええーい! ままよぉ!」
思い切ってドアを開けると、ルーチンと言わんばかりに喧騒が僕を迎えた。
「おはようございます、勇貴さん」
生徒たちを掻き分け、真弓さんがやって来る。
さっきまで彼女の姿はなかったというのに、不思議だ。
「おはよう、真弓さん。さっきはゴメンね。気にかけてくれてたってのに、追い払うような真似しちゃって」
真弓さんに今朝のことを謝っておく。
何となく、それがベストのような気がした。
「──え? ……え、ええ! そうですね! ……全く反省して下さいよ、勇貴さん。勇貴さんが見捨てるから、あの女が調子に乗るんです」
酷い責任転嫁。
そして、これは一度目と同じ反応。
「────」
やはり、朝起きた時に出会った真弓さんと今の真弓さんは違う気がする。
ジジジ。
いや、それ依然にこんな責任転嫁を、あの真弓さんがしていたかも怪しい。
「どうかされましたか、勇貴さん?」
心配そうな顔をする真弓さん/不審そうに目を細める少女。
彼女の名前を知っている。
腰まで届く栗色の髪をイジる/ざっくばらんに切りそろえた黒髪を掻く姿は忘れもしない。
キキキ。
キキキ。
「う、ううう」
雑音が酷く、また頭が痛くなる。
少女は真弓さんだ。
真弓さん。
そう、名城真弓さんである。
あの優しげで、儚い少女こそ、『名城真弓』であった筈なのに。
キキキ。
何処からか嗤う声。
耳障りだ。
目障りだ。
もう、うんざりだ。
「……ごめん。変なことを聞くけど、良い?」
痛い。
痛い痛い痛い。
頭が痛くて、真弓さんをマトモに見れない。
「……何でしょう?」
だってのに、少女の表情が影となって伺えない。
否、それ以前に彼女が何を考えてるか分からない。
──けど。
「真弓さん。君は──」
ブツリと意識がそこで途絶えた。
自我が薄れていたのは確かで、僕の冒険の旅は今終わりを告げた。
ザー、ザー。
そうして、永い永い眠りへと誘われる筈だった。
キキキ!
キキキ!
戯れ言が脳をかき乱す。
思考がブレて、何も考えることが出来ない。
けど、僕が見なくてはいけない真実がそこにはあった。
「君は、誰?」
ピシリ。
硝子の砕ける音がした。
息が止まる。
時間も止まる。
すると暗闇が僕を包み込み、世界が停止した。
「──っ!」
混濁する意識。
またやり直せと、誰かが僕の足を底無し沼へと引っ張った。
「──っ!」
何も出来ない。
息をすることも。体を動かすことも。あらゆるパターンを思考することさえ七瀬勇貴には許されない。
ありとあらゆる事象が僕を置いて暗闇に消えていく。
「──ぅあ」
苦しい。
痛い。
辛い。
どうして?
ねえ、どうして?
何を間違えたって言うの?
何が正しくなかったと言うんだ?
だって、そうだろ!
あんなにも必死だった。
■■も、天音も、四葉さんも、六花も自分の大切なモノのために足掻いてた。
それなのに、何も出来ないまま終わるのか?
こんな場所で、一人寂しく死んでいくってのか?
僕は。
──僕は!
「あーあ。どうして、気づいちゃうんですかねー。このまま脳天気にしてれば、全て終わったっていうのに、ね」
暗闇の中で現れる■■は、とても馴染みのある声なのに名前が思い出せない。
「所詮、貴方は哀れな実験動物でしかなく。換えの利く部品なんです。それが、自由に生きたいだの言い出すんですから、笑っちゃいますよね」
少女の嘲笑は止まらない。
底なし沼に僕は堕ちていく。
ズブズブ、ズブズブと意識が途絶えていくんだ。
「ぐぅ、が」
痛い。
頭が酷く痛い。
まるで、自分が自分じゃなくなるみたいで怖くなる。
「い、やだ。こんな、……ところで、死、に、たく、な、い」
朦朧とする意識の中、必死で手を伸ばす。
そうして、場面が切り替わる。
永遠にも思える暗闇からドアを開いてそれは訪れた。
「──っ」
朦朧とする意識の中、自分が教室に立っている。
「此処は──」
ピシャリ!
水に弾く足音。
いつの間にか血の海となった教室の床を僕は踏みしめてる。
「アハ■ハ破!」
濁声のような笑いが頭に響く。
何が可笑しいのか解らないが、廊下にいる少女はずっとゲラゲラ笑ってる。
「う、あ」
酷い女だ。
いい加減、その耳をツンザく嗤いが忌々しい。
グラリと傾く感覚。
神経が麻痺して、現状の把握が朧気になる。
ジジジ。
お膳立てされた殺戮舞台。
クルリ、とスカートを靡かせてる様は少女の異様さを語る。
悲しいとは思わない。
それをするだけの虐殺を少女はしてきた。
なら、此処で僕が■■■■先輩を殺すのは、道理だ。
ピシャリ!
少女と僕の間合いは十メートルを切った。
思い出せ、僕。
何をしなくちゃいけないのかは、もう十分解ってるだろ。
「──っ」
イメージする。
あらゆる幻想を葬る最強の魔剣だ。
ピシャリ!
鮮血が迸る。
血迷うように得物を現実化し、意識が苛まれる。
「──っ、──!」
血反吐を吐く。
汚らしい湖にみっともない姿が映り、自嘲する。
嗚呼、とてもくだらない夢を見た。
「あ、──あはは」
笑えない。
全く以て笑えない。
何故か傷だらけの少女はこちらに歩み寄って来る。
ビュー、と風が靡く。
それに呼応するよう、この手に握る魔術破戒が熱を帯びる。
五メートル。
切り込むには、まだ遠い。
持てる力を総動員し、僕が打てる最高の一手をシュミレーションする。
ドクン。
心臓が跳ねる。
緊張で息が詰まりそうだ。
ドクン。
目映い月に手を掲げる。
吸血姫は、不遜な笑みを浮かべて見下してる。
──ドクン。
脈動を繰り返す心臓。
空に浮かぶ偉大なお方を降ろすには、チカラが足りない。
ナラ、オマエはココデ死ネルノカ?
頭の中で誰かが囁く。
それは明確に現状を理解してる。
悪魔のように残虐で、天使のように無垢で、人間のように傍観した言葉をひたすら投げ掛けてくる。
ジジジ。
乱雑する思考。
継ぎ接ぎで足していく倫理観。
ゴチャゴチャと綯交ぜに、見ている世界が崩れてく。
ピシャリ!
──同時に自分の中の価値観が、遂に壊れた。
何気ない幸せも。
何でもない日常も。
そう有りたいと願ったことだと心の中で決めつけて──。
「──ああ、笑えよ。笑っていれば良いさ」
見たいものしか見れなくなって、聞きたいことしか聞こえなくなった。
本当のことは何一つ見つからない。
自分にとって大事なモノが何なのか分からない。
けど、僕はそれを見つけたい。
──だったら、それを見つける為に此処で貴女を打倒する他ないんだ!
「亜ッハ■■■はハ!」
砂嵐が晴れる。
圧倒的な実力差。
絶望的な状況。
誰かが決めた強者と弱者の境目。
──満月の下で吸血鬼に常人が敵う訳がない。
「──っつぅ」
駆け出す僕。
それを受け入れる少女。
ジグザグと何かが切れていく中、僕は彼女に向けて得物を構える。
──「ねえ、■■の声、聴かせて」
月明かりにいつか見た光景を幻視する。
そうだ。
僕は、彼女の傍に居たかった。
──だが、それは叶えられない。
僕にはそれを許容するだけのチカラが足らない。
何もかもを犠牲にしなければ、奪ったものへの手向けも出来ない。
忘却していた魔術器官を呼び覚ます。
体中が重く、胸に突き刺さる痛みが辛い。
一秒が止まって、数分が永遠のように感じた。
ドクン。
跳ねる心臓。
脈動する度に痛くなる動力回路。
手に汗を握る感覚に神経を尖らせて──。
「──っつぅうう、らぁ、」
ジグザグ、ジグザグ。
狂ったように手を伸ばす吸血姫。
只、ひたすらに間違いを訴える声を僕は無視し続ける。
「起動確認、幻影疾風の発現を許可します」
頭の中で機械的な少女の声がした。
幻聴に連れられて、渾身の一撃が放たれる。
ジジジ。
そう。決定的な何かが欠けているのに、この身体は止まらない。
「──ぁあああ!」
弧の字を描く、僕の斬撃。
慣性の法則に従って振り下ろされる一撃は、停止命令は受け付けない。
「アハハハハハハハハ!!!」
──そうして。
星の見えない夜。
虚ろな視界の中、断罪の魔剣が少女の体を両断した。
「──あ。ア、ぁア亜ア!!!」
宙を舞う少女の身体。
口から吐血するのも無視して、彼女は空へ手を伸ばす。
ジジジ。
見えない。
見えて。
どうか目を覚まして。
私の声を聞いて!
こんなにも貴方のことを思ってるのに──!
何で? どうして!? ……嗚呼、そうか。そうだった。──ア、アハハ! 私、馬鹿みたい。
幻聴が途絶えない。
■■■■先輩が塵となって消えていく。
「────?」
紫の髪を揺らし、必死で手を伸ばす姿に違和感を覚える。
「──わた、し、」
リテイク。
リテイク・ラヴィヴロンツ。
死に際に目を細める少女。
今になって、そんな彼女の名前を思い出す。
「わたしだ、って、三木、あ、い、し、て、る、よ」
その言葉を最期に少女の姿はかき消えた。
それを呆然と見ていたら、頭に言葉が浮かんだ。
────「それをどうして何も持たない私が蔑ろに出来ると言うの?」
「──あ」
権能を手にしてからの日々の記憶が頭の中を駆け巡る。
何もかもが嫌になった僕を立ち上がらせ、窮地を何度も救った人。
傷ついても僕の味方でいてくれた恩人を、どうしてか忘れてしまっていた。
「あ、ああ、あああ、」
暗雲に月が隠れる。
頬に涙が滴る。
「ぁあああああああああああああああああ!!!」
すると、張り裂けんばかりの慟哭が喉から溢れたんだ。
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