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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第四章:影絵情景
57/154

011 告白


 投稿遅れました、ごめんなさい。

 1章書き直すって言っときながら、前から考えてた続きを書きました。

 因みにストックはないです。

 遅筆ですが、今年中にはこの作品を完結させたいです。

 うーん、長い。


 前回のあらすじ

 ● 吸血鬼の少女に真弓さん(?)殺されてよく分からないけど、夢落ちになってる?

   なんか頭痛くて真弓さん(?)に八つ当たりしちゃった、どうしよう!?


 それでは続きをどうぞ!



 先ほどまで食堂にいた。

 二胡さんと話をしていた。

 そう、累が僕の傍にいた筈だった。


 ──は、ずだったのに。


 「教室の前?」


 生徒たちの喧噪が聞こえる。

 ドア越しに教室の中を伺っても、累の姿は何処にもない。


 時間が巻き戻ったのか、進んだのかは分からない。……そもそも、これが一度目の再現であるかも疑わしい。


 「ええーい! ままよぉ!」


 思い切ってドアを開けると、ルーチンと言わんばかりに喧騒が僕を迎えた。


 「おはようございます、勇貴さん」


 生徒たちを掻き分け、真弓さんがやって来る。

 さっきまで彼女の姿はなかったというのに、不思議だ。


 「おはよう、真弓さん。さっきはゴメンね。気にかけてくれてたってのに、追い払うような真似しちゃって」


 真弓さんに今朝のことを謝っておく。

 何となく、それがベストのような気がした。


 「──え? ……え、ええ! そうですね! ……全く反省して下さいよ、勇貴さん。勇貴さんが見捨てるから、()()()が調子に乗るんです」


 酷い責任転嫁。

 そして、これは一度目と同じ反応。


 「────」


 やはり、朝起きた時に出会った真弓さんと今の真弓さんは違う気がする。


 ジジジ。

 いや、それ依然にこんな責任転嫁を、あの真弓さんがしていたかも怪しい。


 「どうかされましたか、勇貴さん?」


 心配そうな顔をする真弓さん/不審そうに目を細める少女。


 彼女の名前を知っている。

 腰まで届く栗色の髪をイジる/ざっくばらんに切りそろえた黒髪を掻く姿は忘れもしない。


 キキキ。

 キキキ。


 「う、ううう」


 雑音が酷く、また頭が痛くなる。


 少女は真弓さんだ。

 真弓さん。

 そう、名城真弓さんである。


 あの優しげで、儚い少女こそ、『名城真弓』であった筈なのに。


 キキキ。

 何処からか嗤う声。


 耳障りだ。

 目障りだ。


 もう、うんざりだ。


 「……ごめん。変なことを聞くけど、良い?」


 痛い。

 痛い痛い痛い。

 頭が痛くて、真弓さんをマトモに見れない。


 「……何でしょう?」


 だってのに、少女の表情が影となって伺えない。

 否、それ以前に彼女が何を考えてるか分からない。


 ──けど。


 「真弓さん。君は──」


 ブツリと意識がそこで途絶えた。

 自我が薄れていたのは確かで、僕の冒険の旅は今終わりを告げた。


 ザー、ザー。

 そうして、永い永い眠りへと誘われる筈だった。


 キキキ!

 キキキ!


 戯れ言が脳をかき乱す。

 思考がブレて、何も考えることが出来ない。


 けど、僕が見なくてはいけない真実がそこにはあった。


 「君は、誰?」


 ピシリ。

 硝子の砕ける音がした。


 息が止まる。

 時間も止まる。


 すると暗闇が僕を包み込み、世界が停止した。


 「──っ!」


 混濁する意識。

 またやり直せと、誰かが僕の足を底無し沼へと引っ張った。


 「──っ!」


 何も出来ない。

 息をすることも。体を動かすことも。あらゆるパターンを思考することさえ七瀬勇貴には許されない。


 ありとあらゆる事象が僕を置いて暗闇に消えていく。


 「──ぅあ」


 苦しい。

 痛い。

 辛い。


 どうして?

 ねえ、どうして?


 何を間違えたって言うの?

 何が正しくなかったと言うんだ?


 だって、そうだろ!

 あんなにも必死だった。

 ■■も、天音も、四葉さんも、六花も自分の大切なモノのために足掻いてた。 


 それなのに、何も出来ないまま終わるのか?

 こんな場所で、一人寂しく死んでいくってのか?


 僕は。

 ──僕は!


 「あーあ。どうして、気づいちゃうんですかねー。このまま脳天気にしてれば、全て終わったっていうのに、ね」


 暗闇の中で現れる■■(だれか)は、とても馴染みのある声なのに名前が思い出せない。


 「所詮、貴方は哀れな実験動物でしかなく。換えの利く部品(スペア)なんです。それが、自由に生きたいだの言い出すんですから、笑っちゃいますよね」


 少女の嘲笑は止まらない。

 底なし沼に僕は堕ちていく。


 ズブズブ、ズブズブと意識が途絶えていくんだ。


 「ぐぅ、が」


 痛い。

 頭が酷く痛い。

 まるで、自分が自分じゃなくなるみたいで怖くなる。


 「い、やだ。こんな、……ところで、死、に、たく、な、い」


 朦朧とする意識の中、必死で手を伸ばす。


 そうして、場面が切り替わる。

 永遠にも思える暗闇からドアを開いてそれは訪れた。


 「──っ」


 朦朧とする意識の中、自分が教室に立っている。


 「此処は──」


 ピシャリ!


 水に弾く足音。

 いつの間にか血の海となった教室の床を僕は踏みしめてる。


 「アハ■ハ破!」


 濁声のような笑いが頭に響く。

 何が可笑しいのか解らないが、廊下にいる少女はずっとゲラゲラ笑ってる。


 「う、あ」


 酷い女だ。

 いい加減、その耳をツンザく嗤いが忌々しい。


 グラリと傾く感覚。

 神経が麻痺して、現状の把握が朧気になる。


 ジジジ。

 お膳立てされた殺戮舞台(コロシアム)

 クルリ、とスカートを靡かせてる様は少女の異様さを語る。


 悲しいとは思わない。

 それをするだけの虐殺を少女はしてきた。


 なら、此処で僕が■■■■先輩を殺すのは、道理だ。


 ピシャリ!


 少女と僕の間合いは十メートルを切った。


 思い出せ、僕。

 何をしなくちゃいけないのかは、もう十分解ってるだろ。


 「──っ」


 イメージする。

 あらゆる幻想を葬る最強の魔剣だ。


 ピシャリ!


 鮮血が迸る。

 血迷うように得物を現実化(リアルブート)し、意識が苛まれる。


 「──っ、──!」


 血反吐を吐く。

 汚らしい湖にみっともない姿が映り、自嘲する。


 嗚呼、とてもくだらない夢を見た。


 「あ、──あはは」


 笑えない。

 全く以て笑えない。

 何故か傷だらけの少女(てき)はこちらに歩み寄って来る。


 ビュー、と風が靡く。

 それに呼応するよう、この手に握る魔術破戒(タイプ·ソード)が熱を帯びる。


 五メートル。

 切り込むには、まだ遠い。

 持てる力を総動員し、僕が打てる最高の一手をシュミレーションする。


 ドクン。

 心臓が跳ねる。

 緊張で息が詰まりそうだ。


 ドクン。

 目映い月に手を掲げる。

 吸血姫は、不遜な笑みを浮かべて見下してる。


 ──ドクン。

 脈動を繰り返す心臓。

 空に浮かぶ偉大なお方を降ろすには、チカラが足りない。


 ナラ、オマエはココデ死ネルノカ?


 頭の中で誰かが囁く。

 それは明確に現状を理解してる。

 悪魔のように残虐で、天使のように無垢で、人間のように傍観した言葉をひたすら投げ掛けてくる。


 ジジジ。

 乱雑する思考。

 継ぎ接ぎで足していく倫理観。

 ゴチャゴチャと綯交ぜに、見ている世界が崩れてく。


 ピシャリ!


 ──同時に自分の中の価値観が、遂に壊れた。


 何気ない幸せも。

 何でもない日常も。

 そう有りたいと願ったことだと心の中で決めつけて──。


 「──ああ、笑えよ。笑っていれば良いさ」


 見たいものしか見れなくなって、聞きたいことしか聞こえなくなった。


 本当のことは何一つ見つからない。

 自分にとって大事なモノが何なのか分からない。


 けど、僕はそれを見つけたい。


 ──だったら、それを見つける為に此処で貴女を打倒する他ないんだ!


 「亜ッハ■■■はハ!」


 砂嵐(ノイズ)が晴れる。


 圧倒的な実力差。

 絶望的な状況。

 誰かが決めた強者と弱者の境目。


 ──満月の下で吸血鬼に常人が敵う訳がない。


 「──っつぅ」


 駆け出す僕。

 それを受け入れる少女。

 ジグザグと何かが切れていく中、僕は彼女に向けて得物を構える。


 ──「ねえ、■■の声、聴かせて」


 月明かりにいつか見た光景を幻視する。


 そうだ。

 僕は、彼女の傍に居たかった。


 ──だが、それは叶えられない。


 僕にはそれを許容するだけのチカラが足らない。

 何もかもを犠牲にしなければ、奪ったものへの手向けも出来ない。


 忘却していた魔術器官を呼び覚ます。

 体中が重く、胸に突き刺さる痛みが辛い。

 一秒が止まって、数分が永遠のように感じた。


 ドクン。

 跳ねる心臓。

 脈動する度に痛くなる動力回路。


 手に汗を握る感覚に神経を尖らせて──。


 「──っつぅうう、らぁ、」


 ジグザグ、ジグザグ。

 狂ったように手を伸ばす吸血姫。

 只、ひたすらに間違いを訴える声を僕は無視し続ける。


 「起動(コード)確認、幻影疾風(タイプ·ファントム)の発現を許可します」


 頭の中で機械的な少女の声がした。

 幻聴に連れられて、渾身の一撃が放たれる。


 ジジジ。

 そう。決定的な何かが欠けているのに、この身体は止まらない。


 「──ぁあああ!」


 弧の字を描く、僕の斬撃。

 慣性の法則に従って振り下ろされる一撃は、停止命令は受け付けない。


 「アハハハハハハハハ!!!」


 ──そうして。


 星の見えない夜。

 虚ろな視界の中、断罪の魔剣が少女の体を両断した。


 「──あ。ア、ぁア亜ア!!!」


 宙を舞う少女の身体。

 口から吐血するのも無視して、彼女は空へ手を伸ばす。


 ジジジ。


 見えない。

 見えて。

 どうか目を覚まして。

 私の声を聞いて!

 こんなにも貴方のことを思ってるのに──!

 何で? どうして!? ……嗚呼、そうか。そうだった。──ア、アハハ! 私、馬鹿みたい。


 幻聴が途絶えない。

 ■■■■先輩が塵となって消えていく。


 「────?」


 紫の髪を揺らし、必死で手を伸ばす姿に違和感を覚える。


 「──わた、し、」


 リテイク。

 リテイク・ラヴィヴロンツ。


 死に際に目を細める少女。

 今になって、そんな彼女の名前を思い出す。


 「わたしだ、って、三木、あ、い、し、て、る、よ」


 その言葉を最期に少女の姿はかき消えた。

 それを呆然と見ていたら、頭に言葉が浮かんだ。


 ────「それをどうして何も持たない私が蔑ろに出来ると言うの?」


 「──あ」


 権能(チート)を手にしてからの日々の記憶が頭の中を駆け巡る。


 何もかもが嫌になった僕を立ち上がらせ、窮地を何度も救った人。

 傷ついても僕の味方でいてくれた恩人を、どうしてか忘れてしまっていた。


 「あ、ああ、あああ、」


 暗雲に月が隠れる。

 頬に涙が滴る。


 「ぁあああああああああああああああああ!!!」


 すると、張り裂けんばかりの慟哭が喉から溢れたんだ。



 面白い、続きが気になる、応援してると思ったらと少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!


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