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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第三章:終結螺旋
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014 殺戮人形の最期


 交信の杖。地下聖堂。降霊術。祭壇。

 生け贄。外なる神。異星からの来訪者。地球外生命体。

 知識生命体。概念。アストラルコード。複製人間。


 深淵を見つめる者。

 深淵を覗く者。


 来たれり、来たれり、来たれり。


 魔導兵器。

 プロトコル。


 エラー。エラー。エラー。


 電波ジャック。未知との遭遇にて、同調せよ。


 開くは、新世界の門なり。

 舞い降りて、その身を我らに捧げたまえ。


 バグ。愚者。ドンキ・ホーテ。

 役者よ、舞台に降ろせ。さあ、不確かな権利を剥奪せよ。


 踊れ、踊れ。

 愚者よ、踊れ。


 運命の糸により手繰り寄せられし哀れな操り人形たちよ、舞台にその身を投じるのだ。


 ──さすれば、少しはマシな物語になることだろう。


 銀のブロンドにして、碧の瞳は深い海原へ広がる色彩。

 盤上の駒の一つを手にとって、クスリと微笑む青年。

 誰も彼に気づかない。

 気づいたところでその記憶は奪われる。


 「さて、次は彼女かな」


 椅子から立ち、盤上の駒の一つをつまみ上げ、支配者は嗤う。

 その哀れな者の末路を想像しては、狂おしい声で次の計画を告げるのだ。


 ◇


 沈む夕日を背に邂逅する僕とシェリア会長。

 その夕暮れが沈んだら、影絵の猿(エイプ)のような化け物が僕らを襲ってくる気がしてならない。


 「急ぎますわよ」


 カチカチカチ。


 こちらの話を拒絶していたとは思えない迅速な行動でシェリア会長は中庭へ向かっていく。

 多分、タイムリミットを気にしてるのだろうけど、時間という概念が曖昧なこの世界だとあまり意味がないと思う。


 「それでも、出来る手があるのですから急ぐのですわよ!」


 オホホホ、なんて高笑い今時使わないのに、この人だけはそれを使ってる。

 それが絶望的に無理してる感じがして似合わない。

 だが、その取って付けたようなお嬢様口調に突っ込むと面倒になる気がして口に出すのが省かれる。

 ああ、そうか。これが地雷案件って奴なんだね。


 「……幾らワタクシが世間に疎いからって流石にそれは無いですわよ」


 なんか呆れ顔されてる!?

 まさか、残念な奴だって思われてるのか!?


 「当たり前ですわよ! というか、今までそんなんでよく火鳥に文句言われませんでしたわね!?」


 ビックリ仰天と言いたげにシェリア会長は憤慨する。

 その姿に思わずカルシウムでも不足してるのかと心配してしまう。


 「ムッキー! 温厚なワタクシでも流石にこれは怒りますわよ!」


 温厚?

 はて、僕が思いつく温厚は普段から誰彼問わず突撃するような性格だったかな?

 もしかして、僕が知らないだけで実はそれが温厚という字の意味なのかもしれない。

 今度、辞書を引いて調べてみよう。


 「バカにして! どんだけワタクシのことをコケにすれば気が済むのですの!?」


 ヒステリックになったシェリア会長が僕を睨んでくる。


 ……からかうのはこれぐらいにしておこうかな。


 「いや、何だかシェリア会長とこうして喋ってると普段のバカさが取り戻されるようでさ。……なんかスゲー癒されるんだ」


 「いや、なんかこれ幸いにいい空気作ってますけど、それ聞く限りだと普段からワタクシのこと頭が抜けてる人間に思ってる解釈になりますわよ!?」


 あれ? 褒めたつもりが逆に火に油を注ぐような結果になってるだと……!?


 「当たり前ですわ、このおバカ!」


 なんか無茶苦茶怒りだしてる。

 どうして!?


 「それが解ったら、アナタは天然だなんて言われないのですわ!!!」


 胸ぐらを掴まれた!?

 親父にも掴まれたことないのにー!


 「だー!!!」


 そんなバカをやって中庭に無事到着する。


 ジジジ。


 耳障りな雑音と共に馬鹿をやってた僕らの前へ殺戮人形(キラーマシーン)が現れる。


 それを合図に夕暮れが沈み、昼と夜の境界が入れ替わっていく。


 「ピー、ガガガ」


 星一つ無い、落書きジミた夜空の下でそれがゼンマイを回し始める。


 「まあ、解っていたことですわ」


 グキリ!


 骨が砕ける鈍い音と共に(マネキン)の首関節が一回転。

 人間を逸脱した動作で、無機物のあいつはこちらを見下し嗤ってる。


 「そう、だよね。何となくだけど分かってた」


 魔術破戒(タイプ・ソード)現実化(リアルブート)する。

 目の前の悍ましい何かが音を立て、赤子のような這い這いで、けれど人間離れした速さで腕を突き出す。


 「──来ますわ!」


 シェリア会長が銃口を構え、狙いを定める。

 そのままワンクッションも挟まず、彼女は正確にその(マネキン)の頭を打ちぬく。


 ──が。


 ぐるんと首を回してスピードを緩めず這う殺戮人形(キラーマシーン)


 間合いが三メートルを切る。

 すかさず、幻影疾風(タイプ・ファントム)を発動させ、コンマ一秒の世界に僕は埋没させた。


 「──っつう!」


 瞬時に横へ一閃。

 すると火花が散り、仰け反りつつも敵も再度一撃を繰り出そうと腕を伸ばす。

 何度もそうすることで互いの一撃を凌ぎ、弾いていく。

 その常人では決して捉えることが出来ない動きにシェリア会長は置いてけぼりをくらう。


 構わない。

 今、幻影疾風(タイプ・ファントム)を解除してしまったら、それこそ(マネキン)の動きに僕は付いていけなくなってしまう。


 「ガ、ガガガガ!」


 止まった時間の中で(へいき)が口を開く。


 「──っ!」


 嫌な予感がし、後ろへ下がる。

 すると怪物(マネキン)の目が赤くなり、僕が居たであろう場所に蜃気楼が発生した。


 「と、溶けてる? ──ぐぅふ!」


 地面が溶けてるのを見つけると、背筋が凍った。

 同時にドバドバと口から何か熱いモノがこみ上げた。


 「七瀬勇貴!」


 せり上がって来る悪寒。

 再び魔術破戒(タイプ・ソード)を構えると、口から吐き出したそれの正体が赤い液体だと理解した。


 「な、んで?」


 二発の銃声。

 追撃を仕掛けようとする(マネキン)に火花が散って、その四肢を吹き飛ばす。


 「ギギギ!」


 けれど、ぎこちない動きだがそれだけでそれが生き物としての機能(つうかく)がないことを伝えてる。


 「やぁあああ!」


 だが、それでも怯むことなくシェリア会長は(マネキン)が動こうとする度に二丁拳銃を撃ち続けた。


 「ギ、ギギギ!」

 

 身体が削られても尚、殺戮人形(キラーマシーン)は動こうとするがその度に吹き飛ばされ、最終的に四肢が完全に欠損した達磨となった。


 カチカチカチ。


 ノイズが合わさる。

 やがて吹き飛ばされた四肢と同調するように(マネキン)は活動を停止する。


 しかし。


 「いえ、まだですわ! 速く魔術破戒(タイプ・ソード)で斬ってしまいませんと再生致しますわよ!!!」


 安堵した僕にシェリア会長が声を大にして叫ぶ。


 「──え?」


 ガキン!


 鉄が軋む悲鳴と共に再生する怪物(マネキン)の右腕。


 「────」


 油断した。

 というより、現状を理解出来ていなかった。

 そんな愚かさに(マネキン)の顔がニタリと嗤う。


 ドクン。


 心臓が飛び跳ね、脳内のアドレナリンが沸騰する。

 ドバドバと脳内麻薬が飛び散る中、それが僕の腹を貫く。


 ズブ、シャア!


 真っ白になる頭と衝撃で出来上がる風穴に絶叫する。


 「七瀬勇貴!!!」


 コンマの世界が点滅する中、少女が叫ぶ。


 「──ぐっ!」


 余りの激痛に冷静さが増していく。

 人形は動けない。

 だが、四肢が欠損しても尚、足掻くその意地の悪さに口元が歪む。


 ドクン、ドクン。


 急げ、早く始末しないとまた再生してしまう。


 ドクン、ドクン──ズキリ。


 割れるように痛くなる頭。

 痛むのが風穴を開けられた腹ではないのが何故だか無性に腹立たしくなった。


 「……クソ」


 傷だらけの身体に無理やりエンジンを掛ける。

 ブルン、ブルルルゥンとかそういう類の擬音は聞こえないがご愛好。


 「──今度こそ、これで終わりだ」


 腹に風穴を開けられてから、コンマ三秒。


 そうして、原型を留めてない物言わぬ人形(マネキン)に向かって魔剣を振り落とす。


 グシャ!


 胡桃の殻を砕くような一撃が夜の中庭に響き渡った。


 ◇


 それは、世界秩序を調べるより簡単なことでした。


 盤上に倒れる一つの駒。

 情報生命体となった青年はそれをクスリと嗤いながら見つめています。


 カタカタカタ。


 テキストを改竄する誰かは少女でした。

 黒い髪の虚ろな目をした少女は何処かで見た風貌をしていましたが、よく覚えていません。


 「やっとオートマンの魔導兵器を仕留めたところか」


 優し気な青年の声は聴いていてとても心地が良いものなのに、何故か畏敬の念を抱いてしまいます。

 いや、この場合は畏怖の念と言い直す方が適切なのでしょう。


 誰かを先導する圧倒的なカリスマ。

 それこそが青年の地位を上げたポテンシャルなのです。


 盤上にある駒を数える青年。


 「同調はそろそろ融合出来るとして、残りは四つか」


 意思、傍観、同調、改竄、強奪、創造、欺瞞。

 全ての権能(チート)を得る時、彼の用意したシナリオは完成します。

 螺旋の下でその完結を待ち遠しくなる青年は生者ではありませんが、死者でも幻想でもありません。


 所詮、彼もそれらを統合する為に用意された黒幕でしかないのです。


 「────」


 青年はモニターに映る誰かを見つめますが、その姿は誰にも認知されません。

 嘘ばかりの世界ですが、確かに真実は魔導魔術王(グランド・マスター)の手の平の中にあったのです。


 物語は中盤に入りました。

 世界は更に構築されるでしょう。



 作品が面白い、続きが気になる、応援して下さると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けるととても嬉しいです!


 批評、アンチ何でも励みになりますのでこれからもよろしくお願いします!


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