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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第三章:終結螺旋
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002 赤い糸に結ばれて


 ノイズが乱れ、虚空の狭間へと光は収束する。

 その光景を見て、■■は救われないと思った。

 だってそれは、とても弱々しいものだったからそう見えたんだ。


 ■■は夢を見る。

 否、夢しか見れなかったと言える。


 「──ッギリ」


 歯を噛みしめる。

 目の前の苦難を、苦痛を、苦渋の選択を■■たちは強いられて来た。


 ジジジ。

 六つの光は星となった。

 星のように輝くそれが希望となる為、その身を光へ変えたことを『外なる神』を自称する男は知っていた。


 滑稽だ。お前らは所詮、キャラクターでしかないのだと嘲笑う。


 醜い男。身勝手な人間で、嫌悪されるべき存在。それこそが、『外なる神』と持てはやされた愚者の正体だ。


 「ふ、ふざけんじゃない!」


 見下されたことに男は腹を立てたのか。

 それとも下位幻想へ堕ちた奴に見下された事実が堪えらなかったのか、憤怒した。


 「テメェらにお似合いの最期だろうが!」


 そう喚き散らし、結末に終止符を打とうと重い腰を上げる。


 すると、青年が跪く姿がモニターに映ったのだ。


 「そうだ。それで良いんだ。所詮、テメェらは只のテキストデータでしかねぇんだ。外の世界なんかお前にとって堪えられない『現実』だ。現実でない世界ならオレは神様でいられる。外に出る必要なんかねぇえ。此処では、お前は主人公で居られるんだからよぉ」


 ──でも。


 なのに、どうしてか。

 男は満たされなかった。

 空しくて仕方なく、時折涙を流すのだ。


 「なんだよぉ……何なんだよぉ、その目は!」


 ピシリ。

 モニターの画面に亀裂が入ると、誰かの意識が浮上していく。


 そこに、美しいものは無かった。

 それは、空白の名前も埋められなかった。


 ──だから花嫁姿の少女を抱き寄せる■■■■は、何も変わらない。


 「そんな奴見たって何も変わらねぇえよ! ああ、そうさ! どうせ今度だって廃棄処分に決まってる!」


 男は未だ手を伸ばし続ける少女の肩を揺らす。

 そんなものを見るなと怒鳴りつける姿は、どこまでも醜く哀れだった。


 「だから、こっちを見ろよぉ。オレを、オレを愛してよぉ──」


 少女には届かない。

 服を幾ら変えようと、ステータスを弄ろうと、幻想を増やしたところで何も変わらなかった。


 少女へ縋る男に、神様は何の救いも与えない。

 それが余計、画面越しの運命(せいねん)を憎悪することになった。


 嗚呼。そんなことしか出来ないから、■■■■は今も暗闇に堕ちている青年を虐げるのだ。


 「お前なんかに! お前なんかに彼女を渡してなるものか!」


 幾ら嫉妬しようとも。それが叶わないと恋慕であると知って尚、男は諦めれない。

 そうして心の隙間を埋めようと、必死で自分だけのヒロインを作り続けるのだ。


 ──そんな中、■■■■(しょうじょ)は懸命に手を伸ばし続けた。


 ◇


 「やはり、こうなる運命だったか」


 廃騎士から放たれる鋭い眼光に僕は思わず怯む。

 しかし、リテイク先輩は臆することなく優雅に髪を掻きながら対面する。


 「ええ、こうなる運命だったのでしょう」


 その仕草に心臓が掴まれたようになり、僕は思わず頬を赤らめる。

 つまるところハートキャッチ。

 僕のリテイク先輩の好感度は滝登りだ。


 「それで──」


 カツン、カツン。


 甲高い足音を立てるリテイク先輩。

 まるで舞踏会に出席するような足取りで、少女は廃騎士との間合いを詰めていく。


 ──カツン。


 そうして一頻り歩くと立ち止まり、スカートの端を持ち上げ一礼した。


 「それで、貴女はどうするのかしら?」


 今、此処に強者と強者がぶつかった。

 そうなったら、どうなるかなんて決まってる。


 「どうするもこうもあるまい」


 ガシャン。

 重い鎧が音を立て軋む。

 それは、そこから一歩でも近づけば殺すと言外に告げてるようだった。


 「あら、血気盛んなのね。格好良いとでも思ってるのかしら?」


 路肩の石と言わんばかりに廃騎士を見つめるリテイク先輩。

 その言葉は、廃騎士(おまえ)など眼中にないと告げていた。


 「何とでも言うが良い。こうして貴殿を炙り出せたのだ。戦果を求めるのならば、それで充分というもの」


 挑発に物怖じせず、言葉を並べる廃騎士。


 「そうなの? ──クス、騎士道とやらも安いものね」


 そんな廃騎士にリテイク先輩は可笑しい人と言って、笑った。


 瞬間。


 「口が過ぎたな──吸血鬼!!!」


 ガシャン!

 日の光を反射させ、構えた両刃の剣が煌めいた。

 それだけで絶対王者の貫禄を見せつけ、僕たちでは敵わないことを示唆した。


 「──っ!」


 震える身体に研ぎ澄まされた殺気が身を縮ませる。


 だが。


 「だから?」


 ──カツン!


 しかし、リテイク・ラヴィブロンツは怯まない。

 上位者としての矜持が、一歩進むことへの躊躇いも与えない。


 「──では、逝くが良い!」


 ガシャン!

 一瞬で姿を蜃気楼のように掻き消す廃騎士。

 二秒と経たずリテイク先輩の胸元へと振り落とされる両刃の断頭台。


 それは、光速を越えた早業。

 助走なく行えるその身軽さこそが、騎士を絶対王者とさせるステータス。


 「油断したわね、廃騎士」


 ──だがそれは、力を以て能力で制する常識を忘れていなければの話。


 「──っ!?」


 リテイク先輩が踏みしめた先に魔法陣が浮かび上がる。

 頸を落とそうと微笑む少女(てき)の前へ()()()に跳ぶ廃騎士。


 「──あ」


 単純な話。

 光速を越える一撃を相手にするならば、それを絡めとる罠を用意するのは当然の帰結。


 「──っ」


 つまり。

 リテイク先輩は戦う前から廃騎士に罠を張っていたということ。


 眩い光を発する魔法陣。

 それを踏み締めたリテイク先輩と廃騎士の距離は零に等しく──現れた光によって廃騎士の身柄は拘束されていく。


 「────」


 断頭の刃が止まる。

 コンマ一秒の早業でそれは果たされる。


 リテイク・ラヴィブロンツ。

 彼女こそが、この第二共環高等学園で、真祖の『吸血鬼』と恐れられる者。


 その絶対的な実力(カリスマ)を以て、今此処に廃騎士は封じられたんだ。


 ◇


 画面が切り替わる。

 終わりのない悪夢がリピートされていく。


 それは続きを求めて巻き戻っても結果は変わらなかった。


 夢を見る。

 夢が見る。

 夢に見入られて、■■は意識が堕ちる。


 暗闇は封じられ、この世界を終わらせようと愚者が此処に向かってくるのは明らかだ。


 「──っ」


 どんな手を使っても愚者を処理しなければならない。

 そうしなければこの夢の世界が終わってしまうと考え、急いで愚者へと構成プログラムを向かわせる。


 ジジジ!

 ジジジ!


 雑音が自分の脳を軋ませる。

 視界に亀裂が生じ、構成プログラムの一部が欠損する。

 キキキと奇声を上げるそれを後目に、魔術師は術式を起動させる。


 「再現の夜だ。再現の夜を始めよう」


 同じ言葉をリピートする。

 壊れたオーディオになるそれは最早、冷静な判断が出来ないでくの坊と化した。


 そんなことを思っていると、何処からともなく杭が現れモニターに突き刺さる。


 「僕は、『でく』ではない!」


 酷い八つ当たり。

 大人の姿で子供に戻るなよ、アズマ。


 「ウルサイ!」


 白衣を着飾った魔術師が暴れる。

 モニターだらけの部屋で暴れては、地団太を踏む。

 子供だ。

 大きな子供がそこにいた。


 「そうだ! そうすれば良いんだ!」


 一頻りそうしていると、思いついたと言わんばかりに魔術師は叫び出す。


 構成プログラム如きでは愚者は止まらない。

 だったら、他の上位幻想を使ってしまえば良かったと喚き散らす。


 中庭へと向かってくるヤツの姿を見て、魔術師はほくそ笑む。

 そうして停止コマンドを解除し、最強の上位幻想の眠りを覚ます。


 起動を確認。

 認証パスをスキップし、邪魔者の排除を任命する。


 「そうだ、そうしろ。そうでなくっちゃ、始まらない!」


 癇癪。

 いい大人がしていいとは言い難い行動だ。


 「良いんだよぉ。勝てば良いんだ。結果が全てなんだ!」


 だが、気づかない。

 魔術師は自らの思考が誘導されていることにも気付けない。


 彼も所詮は子供だ。

 どんなに優秀でも、まだ十一歳になったばかりの子供に何の期待をしていたのだろうか。


 「さあ、目覚めろ。──廃騎士!」


 滑稽だ。あまりにも滑稽だ。

 最早、そのあり方は埋め込まれた呪詛、道化のあり方そのものだ。

 もう少し思慮がある天才だと思っていたが仕方ない。


 神様は嗤う。

 こうなる運命が正しいと。面白可笑しくチープになれよ、幻想共。

 お前らが意志がある人間だと幾らほざこうが、その事実は変わらねぇんだよ。


 不衛生に髪を掻き上げて、手にしたコーラを飲む男の姿を誰も見ては居なかった。


 「クスクス、クスクス」


 幕が上がった。

 懺悔の時間だ。


 だから不細工な男(オレ)をほくそ笑む少女なんか誰も見ていないんだ。


 ◇


 「ぐぅ、ううう!」


 魔方陣に拘束されても、尚、抵抗の意志を見せる廃騎士。

 魔法陣(あれ)がどういう原理かは知らないが、束縛されているというのに廃騎士の眼光には未だ殺気が衰えていない。


 「……まだ、動けるっていうの?」


 思わずそんな言葉を漏らしてしまう。


 ──が。


 「無理に決まってるでしょ」


 いつの間にか隣に来たリテイク先輩がその言葉を否定する。


 「でも、スゲー睨んでますよ」


 「当然でしょ。負けたから、ハイそうですと戦意を削ぐヤツは居ないわよ」


 しかし、理由は不明だがリテイク先輩には今回も助けられた。

 此処は一度、感謝としてキスの一つでもするべきだろうか?


 「……あのねぇ、七瀬君。君の考えてることは、上位幻想(こっち)にも筒抜けになってるのよ」


 リテイク先輩が冷めたような目をして睨んでくる。

 ……なんか、いつぞやに聞いたことがある台詞だなぁ。


 「プライバシーとかないんですかねー」


 そんなことを言ってみる。

 すると、リテイク先輩は呆れながらも言葉を返してくれた。


 「アハハ、──そんなのある訳ないでしょ」


 実に清々しい一言だった。


 「ですよねー」


 空はまだお天道様が昇ってる。

 星が煌めくことは当分はないんだろうね。



 面白い、続きが気になる、応援してると思ったらと少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!


 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!


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