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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第一章:欠ける記憶、日常再生
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015 まるで魔王に挑む勇者の気分だ


 カチ、カチ、カチ。

 時計を見たら、針は午前一時を通り過ぎていた。


 カチカチ、カチ。


 秒針の音が静寂を破る。

 音が何処から来ているものかは解らないが、兎に角、テンポの良いリズムなのは理解できた。


 「──(るい)


 いつの間にか先輩の姿は消えていた。

 神父の最期を見届けたからか、何処かに帰ってしまったのだろう。


 そんなことより。

 今は目の前の人物に意識を集中しないといけない。


 彼女を思い出させてくれた人。

 騎士に恥じない剣(さば)きで、またも僕のピンチを助けてくれた。

 そんな友達が立っている。


 「愚者七号、積もる話は有るだろうが、今は一刻も真弓(まゆみ)の元に行くのが先決ではないかな?」


 沈黙を保っていた魔導書から声が掛けられる。


 「解ってる。──けど、こればかりは聞いて置かなきゃいけないんだ」


 それは、絶対だった。

 どうしようもなくしなくてはならない大切なことだと言っても過言じゃない。

 置き去りにして良いものでは決してない。


 「累は僕の友達?」


 真夜中の時間。

 先ほどの喧噪が嘘のように静かで、累の顔を見るには月明かりだけではよく見えない。


 それでも、この問いは僕が彼を信じる為に必要なことだった。


 「当たり前じゃん。もう、ユーキってば何言ってるのさ?」


 素っ頓狂な、裏表がない澄んだ声。

 嗚呼、いつも通りで当たり前の彼とのやりとりだ。


 「そっか。うん、そうだよね。当たり前のことだったよ」


 差し伸べてくる彼の手を握り返す。

 その手のひらは温かく、優しさが溢れるものだった。


 「ピンチの時に駆けつけるのが騎士道だって言ってんの、ユーキ、忘れたの?」


 ヘヘン、だと胸を張る彼は何処から見てもいつも通りの日常そのものだ。

 向日葵(ひまわり)のような陽気な横顔を見ていると安心して力が抜けそうになる。


 「ごめん、ごめん」


 そんな僕らのやりとりを魔導書は新鮮なものを見る目をしていたが、


 「さあ、愚者七号。早くしないと、地下への門が閉じてしまう。そうなると真弓を連れ出すのは困難極まる」


 囚われの姫を助けることを呼びかけるのであった。


 「うん、累も一緒に行こうよ」


 乗りかかった船なんだから良いだろうと呼びかける。

 それに対して彼は、


 「勿論さ!」


 くるくると剣を回しながら鞘にしまうと、そう返してくれた。


 月明かりが眩しい夜。

 さあ、念願の彼女の下を目指そう。


 ◇


 人は死んだら何処に()く。


 地獄か、天国か。

 それ以外の何処かに逝くかなんて、生きた人間には解らない。


 死んだ兄に会いたかった。

 只、それだけだと言うのに願いは叶わなかった。

 後もう少しのところで、邪魔が入ってしまったからだ。

 これもあれも、あの名城真弓(なしろまゆみ)所為(せい)だ。

 あんなものを(のこ)すなど、裏切りも程がある……!


 悔しさに身を震わせ、虚数の海を私は漂う。


 生産性のない輪廻転生(りんねてんせい)

 ウロボロスの蛇のように、記憶を失くしてはぐるぐると繰り返す。

 そうして、調整を重ねなければ魂は壊れてしまうというのに──。


 理不尽を感じる。

 このどうしようもない現実が憎たらしい。


 死を逃避先に選んだ愚か者(バグ)がいた。

 簡単に生を諦めるのなら、もう一度諦めても問題ないと思ったのに……。

 だから、それが禁忌と知りながらも手を取ることが出来た。


 だが、失敗した。

 これ以上ないほどの権能(チート)を手にして挑んだというのに、私のアクセス権限は抹消されてしまった。

 これでは、この世界で私の目的は達せられない。

 それは、失敗以外の何物でもなかった。


 ──そんな時、


 「捨てる神あれば拾う神あれってな」


 聞き覚えのある少女の声が虚空の海に響き渡った。


 「──え?」


 声と共に散り散りになった、私のアストラルコードが収束する。

 そうして、消失(ロスト)した筈の私は人型として再構築を果たした。


 カチカチカチ。


 運命の歯車は、欠けることなく回り続ける。


 ◇


 普段使う中庭。


 運命のドラムが鳴り響くみたいに、ゴゴゴと音を立ててその門は開かれた。

 まさか昼休憩には絶好の休憩スポットとして人気のその場所には不可解なオブジェが置かれていたがまさかそこが地下へと通じる門となろうとは思わなかった。


 「っふぇー、此処があの有名な地下聖堂へ続く扉となってるとは思わなかったよ」


 累が知らなかったと呟く。


 「まあ、愚者七号が知らないのは無理もない。此処は認識阻害の結界が張られてるんだから滅多に人が寄りつかないんだろうさ。……カレが知らないというのもそこまでの権限が与えられていなかったからか。それとも単純にそこまでの管理が追い付かなかったからか。まあ、考えたところで今のところカレが障害となるリスクは少ないか」


 それに対し、ブツブツと何かを呟く魔導書。


 白い柱のようなそれが開かれて、地下へと続く階段が僕らの進入を今か今かと口を開けて待っている。


 「囚われた王女様には魔王城ってのが王道だけど、この地下聖堂ってのは何とも言えないモノを感じるね」


 聖なるモノを(つかさど)るから聖堂と呼ぶ。

 そんな善性で包まれる世界が異質なものを込められているのだから可笑しな話だ。

 てっきり地下聖堂なんて言うのだから、僕が知らないだけで学園の何処かに教会があるのかと思っていた。

 雅かこんな身近にあるとは予想もしてなかったけど、それでも魔導書が後回しにしていたのもわかる気がした。


 だが、それ以上にそこに入ることを禁忌として恐れる自分が何処かにいた。

 きっとその第六感は正しい。

 異質な闇がその口は(おぞ)ましいものを抱えているのだから。


 「さて、中に入ろう。躊躇(ちゅうちょ)していたらそれこそ門が閉じてしまうよ」


 魔導書が先を促す。

 まるで魔王に挑む勇者の気分だ。



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