虚構恩讐目録
なんか急ピッチで書き終わったので、6000ユニークアクセス記念SSを投稿したいと思います。
今回は、五章の『夢みたいな話』でフィリアが主人公の元へ行けずに道化師の少女に囚われてしまったらの話です。
本編はしばし待たれよ。
それでは物語をお楽しみ下さい。
「その顔が、もう言ってんだよ! お前なんか消えちまえって言ってるんだよぉおおお!!!」
部屋を勢いよく飛び出す僕。
「ま、待って!」
それを呼び止めようとする少女の手を振り払い、必死で遠くへ逃げていく。
何処までも、何処までも。
ただ、独りになりたくて七瀬勇貴は独りになりたかったんだ。
そうして、走り続けていると辺り一面が真っ暗闇に包まれる。
「僕じゃないんだ」
誰もいない。
誰も助けない。
「僕じゃ、なかったんだ」
傍に誰も寄り添わない。
ただ、独り寂しく深い奈落の底へ僕は惨めに取り残されている。
「うぐ、──ぐずぅ」
ああ、孤独は好きだ。
嘘を吐かれることがないから。
けれど孤独は嫌いだ。
胸を穿つ寂しさを埋めることがないから。
「ううう」
相反するこの気持ちは誰にも癒せない。
自分で自分を責めるだけで、救われることは決してない。
癒せるものか、苦しめ、死んじゃえ、消えちまえ!
「何だよ。僕が一体何したって言うんだよ!」
そんな愚者を遠巻きに影絵たちは嗤い合う。
ドクン。
「あ、ぐぅ」
永劫不滅の呪いが心臓の鼓動と共に痛みとなって、刻一刻とこの魂を蝕んでいく。
「う、あ──っが! ……嫌だ、嫌だ」
本当に神様って奴はクソ野郎だ。
いつだって救いを求める声は聞かず、どうでも良い連中ばかり幸福を優遇するんだから、そうに違いない。
「ハア、ハア……何で、僕ばっかり」
いくら嘆いても、世界は僕を愛さない。
愛を振り撒く嘘つきを寄越すだけで、みんな僕のことなんか興味もない。
「ふざけんな。僕だけこのまま消えるなんて、そんなのあんまりだ」
暗闇は代替品を愛さない。
虚しさは七瀬勇貴を傷つけない。
代わりに飛びきりの寂しさを与えるだけで、手を差し伸べることもしない。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ」
死ぬのは怖い。
消えるのはもっと怖い。
何も遺せず、無意味に失われるなんて嫌だと偽物はえずいてる。
「だったら──」
そんな時思った。
ドクン/ソレデ、良イ筈ナイダロウ?
「思い知らせてやらなきゃ」
ソウするベキだと強く願った。
頭に悪魔の声が木霊する。
いや、この場合は天使の声と言い直すべきか。
ドクン、ドクンと心臓が鼓動する度、僕を取り巻く暗闇が濃くなっていくのを感じた。
「幸せな奴らも、不幸を振り撒く奴らも──みんな、みんな同じ目に遭わせてやるんだ」
理不尽に心が泣いている。
怨嗟の炎が胸の内をメラメラと燃え始める。
「そうだ、そうダよ。ソウしなくちゃ気が済まない」
顔を上げる。
嘘つきたちを殺そうと決意するのが堪らなく心地好い。
「でも、ドウしよう? ドウすれば世界中の奴らを皆殺しニ出来る?」
そうなると独りでいるのが邪魔だった。
人を絶やすことには先ず仲間を得なければ、この夢から出ることすら叶わない。
────「くだらん。実につまらない幕締めだ。やはり、こんな姿をしているから都合が悪くなる」
ソウ言エバ、現状ニ都合良ク退屈シテイル奴ガ居ルナァ。
「アハ、アハハ────アハハハハハハハハ!!! ソウだ、ソウだ、都合の良いヤツが居タじゃないか!!!」
ソウと決まれば、ヒッチハイクする要領で神父を味方に引き入れヨうか。
キキキ! キキキ!
キキキ! キキキ! キキキ! キキキ!
キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ! キキキ!
そうして、僕は不完全な『■■の■』へと至るのだ。
◇
「ククク、まさかオマエ自身がそれを望むとはな」
意外にもナイ神父はコチラの用件を受け入レてくれた。
「ふん、実際ワタシの望みは今のオマエの目的と同じだ。名城真弓にこの夢世界を造らせ、真世界帰閉ノ扉を使用出来るようにしたのも全てはこの退屈な世界を滅ぼす為。ダーレス亡き今、下らぬ塵芥が有象無象する世界など存在する価値はないのだからな」
主に祈りを捧げる姿は聖職者ノ鏡そのモノだというのに、既ニ男は説法を説くことモなく世界に見切りをつけテいた。
「いや、しかし、な。ククク、どうしたものか悩むところでもある。オマエを座標とし、並行世界に散らばった終末装置を起動させ滅ぼす計画だったのだが、今となってはそれを実行するのも気が引けるというものだ」
「何ソレ? 別ニ僕はソレでも構わナイよ」
「まあ、そう焦るな。聞けば、オマエはワタシの目的よりも更にその上の地獄を体現したいそうではないか? 全ての人間の抹殺となればそれは全ての世界の人類の抹殺を願うということと同義。ならば、ワタシが本来計画していたことを実行するだけではあまりも規模が小さいとは思わんかね?」
勿体ブッた言い方をする神父。
ニヤニヤと嗤うソノ顔は見てるダケでムカムカする。
「それは、ソウだけど。……デモ、実際ニそれしか方法はナイんでしょ?」
「ククク──ハハハハハハ! 出来ないのではない、単純に抑えていただけだ。しようと思えば更にその上の規模を実現することは可能だ」
ドクン。
「良イねぇ、話を聞かセてよ」
悪魔ノ誘惑だった。
この燃え滾る復讐心ニハ振り留まる理性ナドない。
「構わん、教えてやろう。聞くが良い、同胞よ」
こうシて、僕たちノ世界滅亡計画ハ始まった。
◇
「アア、君だっタんだ。僕ノ残留思念ってのは」
張り付けにサれた栗色の髪ノ少女ヲ見る。
頁越しニ閉じ込められた姿ヲ眺めても、不思議と何モ思わなかった。
「きゃわわ! きゃわわ! それで、それで貴方様はナコっちゃん様に何を見せてくれるんでしょう!?」
緑ノ髪ノ少女──古本ガソウ言って僕ニ手ヲ伸ばシ催促する。
「はいはい、慌てナイ、慌てナイ。今更騙したりしナイよ。はい、これガ欲しかったんでしょ。ホラ、受け取りナよ。……えート。確かソレ、並行世界の自分へ引き継ぐアストラルデータだッケ? どうせ肉体ヲ得たところで僕たちノ計画ガ叶ったら無意味なのに、物好きなダね。……まア、アレだ。君ノような子がイルからこうシて助かったんだケドね」
互いに交換するソレが仲良く本物カ確認する。
しまった、ツイ本音ガ出た。
「ええ、ええ! 別に叶わなくても良いんですぅ! 只、これはナコっちゃん様が──いや、あーしと彼が最後に叶えたかった願いだから。その半分でも達成出来るのなら、あーしは悪魔にでも魂を売るよ」
ソレヲ意に返さず、逆に儲けもノでしょト笑う古本。
「まあ、ソレもソウだね。半分も叶えられナイよりはマシか。欲をかいて台無しにするヨリはよっぽど良いか」
そう言って僕たち別レ、中庭に積まレた死体の山を後ニする。
ズルズル。
ズルズル。
しかシ、先程交換シタ残留思念ノ死体ヲ引キ摺るノハとても疲れル。
◇
「ハア、ハア。……此処ガ並行世界、か」
直ぐ近くのベッドに自分トよく似た青年ガ眠っているのヲ確認する。
ガシャン!
「──!」
突然現れタ僕ニ驚いた年老いた女ガ花瓶を落とシ割っテしまってイた。
「──っ! ──っ!!!」
ソンな人ニ恐る恐る声ヲ掛けテ見ようか。
「あのー、貴女ハ誰デす? 見タところ僕ノ見舞いトやらニ来たって感じニハ見えマせんが」
「あ、──ああ」
押シ黙る女。
ヤガテ不愉快ヲ晒す虫ケラは閉ざしたソノ口を開く。
「────蘇ったのですか、あなた様」
恍惚ト頬ヲ赤らめル姿を見て、新たナ世界滅亡計画ノ仲間ガ得らレたコトに安堵シ僕は口ヲ歪ませル。
サア、幸せ者ニ地獄ヲ見せテやルんだ。
◇
ウー、ウーと鳴リ響くサイレン。
白い大理石ノ廊下ヲ歩いテ、逃げ惑う人間ヲ殺シていく。
「止まりなさい!」
向けられル銃口。
進路方向ヲ閉ザす迷彩服ノ人間たち。
「邪魔」
手ニした青ト赤の螺旋ヲ振り回す。
グチャ!
鈍い音ト共ニ鮮血ガ飛び散ル。
「あ──うが」
「ひっ!」
「──!」
「うご、──バ!?」
悲鳴はナイ。
ソレよりモ速く息の根を止めルだけ。
「『忘却の物語』!」
何処カラか少女ノ声ガ響キ渡り、一瞬デ目の前ヲ硝煙ガ視界ヲ遮った。
「アレ? コレじゃ周り見えナイや」
手ヲ翳し、硝煙ナどナイと僕ハ思い込む。
「──!」
すると自己投影が発動シ、瞬く間ニ煙を消滅させル。
ダガ──。
「覚悟!」
ソノ隙ヲ突いて現れタ黒い騎士ガ一閃する。
「ギャハ!」
鮮血ガ舞う。
損傷すル僕ノ身体。
ドクン。
畳み掛けるようニ虹ノ連撃ヲ繰り出ス正体不明。
「調子ニ乗らないデよ」
ソレヲ浴びナがらも、コンマの世界ニ埋没シ距離ヲ取ル。
「──っく!」
空いタ数メートルの間合い。
傷ナド無かったト自己投影ヲ発動シ、修復すル。
「今度ハ僕ノ番ダ」
「させるものですか!」
また新シい少女の声。
同時ニ吹き飛ぶ僕ノ身体。
けレど。
「無駄」
ソレヲ無かったコトにし、一瞬デ青ト赤の螺旋ヲ虹ノ輝きニ変え一閃すル。
「──っ」
マトモに黒い騎士ガ一閃ヲ受け、塵トなる。
「シスカ!」
悲鳴ガ響く。
ダガ命乞いハ聞かナイ。
容赦なく人間ヲ殺すコトが今ノ僕ノ生き甲斐なンだから、ソンナコトはしナイのだ。
「『戦乙女の涙』!」
氷の飛礫ガ飛来すル。
大した威力じゃナイケド、いい加減鬱陶しイ。
「隠れテナイで出テ来なヨ」
手にシた魔術破戒デ氷の飛礫ヲ搔き消ス。
前衛ノ居ナイ連中ナド僕ノ敵じゃナイと言うノニ。
「ソウか。大人シく出て来ナイんなら、引キ摺り出すマデだ」
ソウ言っテ思い込むト二人ノ少女ガ僕ノ前へと現れル。
「──な!」
「……え?」
驚いてルねぇ。
死にたくナイと足掻いてルネェ。
デモ──。
「じゃあ、バイバイ」
ザシュ!
ソレを嘲笑うノが堪らなく良イんだ。
深い、深い森ノ奥ヲ歩いてル。
アレから転移シた世界ノ人間ハあらかた殺シ尽くシたケド、ヤッパリ他ノ世界ノ人間たちモ殺さなきゃ気が済まナイ。
ダカラ、今僕ハ青森ニある『ンカイの森』ノ奥底ニ眠るソレへ向かっテる。
「アハハハ、アハハハ! 楽シいなぁ、楽シいぞ!」
サア、神様ニ会いニ行こう。
モット多くノ人間たちヲ殺す為ニ彼を起こすンだ。
「そうかい、そいつは良かったな」
声ガした。
居る筈のナイ人間ノ──聞いたコトのナイ男ノ声ガしたんだ。
「──誰?」
視線ヲさ迷わせル。
周囲ニハ誰ノ姿モ見えナイ。
マルで幻ヲ探シてイルような錯覚ヲ覚えル。
「誰だって別に良いだろ。これから死ぬ君には関係のない話だ」
目ヲ凝らシ、先ニ待つ男ノ姿ヲ捉えル。
ソレは老人トいう程じゃナイがソレデも結構な年配の金ノ髪ノ男ダった。
「可笑シなコトを言うンだね、おじサん。僕ガ死ぬって? 見たところ、もうこの世界ノ人類ハおじサん一人じゃナイか。ソンナのでドウやって僕ヲ殺すっていうンだよ」
瞬時ニ魔術破戒を現実化する。
「……ああ、哀しいな。そうまでして、まだ他人に愛されたいだなんてよ──つくづくこの仕事がおじさん、やんなっちゃうぜ」
「聞けヨ」
フト、互いニ森ノ中ヲ歩くニハ似つかわシい格好ヲシているナと思っタ。
僕ハ権能をフル活用して此処まで来たケド、眼前ノ青い制服ノ男ハそんな異能ヲ持っていルとは到底思えナイ。
「でも、まあ。流石にこの限りない世界を滅ぼされちゃ意味ないか。うん、うん。悪いんだけど、君、此処で大人しく殺されてくれない?」
青い制服かラ黒光りするリボルバーが抜きデる。
「嫌ダね。此処マデ来たンだ、僕ハ繭ト融合し真世界ノ神ニ成る。ソウして、全てノ世界ノ人間たちを抹消すルんだ!」
幻影疾風ヲ発動シ、コンマの世界デ男へ一閃する。
「そうかい、そいつは残念だ」
ダガ、ソレは叶わない。
一閃シようと斬りかかった瞬間、向けられタ銃口カラ黄金ノ光ガ放たれたカラだ。
「──え?」
穴ガ空く。
僕ノ身体ガ塵トなる。
今起きたコトが信じラれナイと目ヲ見開く。
「なん、デ?」
バタン!
唐突ニ力が抜け、倒れ伏す身体。
どんな魔術デモ僕ハ死ななカったノにソウならなかっタ。
「さあ、な」
落ちた薬莢ヲ回収スル誰カハ悲しそうナ顔ヲしていル。
「コンナノ可笑しイ、──可笑シいよ」
急速ニ光ノ粒子へと身体ガなってイく。
意識ガ遠くなるノヲ感じなガらも必死デ手を伸バす。
「ドウして? ネエ、ドウしてだよ、神様」
嫌ダった。
何もカモが嫌ダッタ。
ダカラ僕ハ──。
「アア、ドウして僕ナンカ生まれテ来たンだよ!!!?」
最期ノ断末魔ヲ上げル。
ケレド、ソレが神様ニ届くコトはなく『ンカイの森』ニ虚シく木霊するダケだっタ。
次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!
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