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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第六章:欠落証明
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011 前途多難


 現在、6000ユニークは執筆中ですので少々お待ち下さい。


 平凡な日常を送りたい。


 「────」


 いつだってあーしはそう思って生きてきた。

 胡乱な世界を傍観し、普通の女の子とやらを夢見てた。


 ドラマや映画なんかでよく見るそれは、この滅び掛けてる世界ではお伽噺のようなものだって分かってた。


 でも、欲しい。

 欲しくて、欲しくて、そんなもしもを幾度願ったことか!

 けれど、それは手に入らない。

 どんなに未来を想えども、そういう当たり前から遠ざかるばかりで空回るだけだった。


 ……普通の女の子が将来について悩むのを見たことがある。

 自由だと思った。

 そんな風に自分の将来を悩めるなんて、心底憧れた。

 自由。

 そう、自由なんてものもなかった。

 十歳の誕生日に両親を失くし、施設を転々とするあーしにはまさに無縁の言葉なんだから。


 辛かった。

 寂しかった。

 何処に行っても、不運が重なり、遠ざかられてきた。

 両親が生きていた時のような温かな家庭が恋しくて仕方なかった。


 でも、それを表だって出すことはしなかった。

 不運が起こる度に無理して、何でもないと強がって。誰にも涙を見せないよう、ピエロみたいに誤魔化し生きてたら周囲は更にあーしを疎むばかりで何もしてくれないの。


 うん、そう。現実では、ちっとも王子様は駆けつけてくれないし。救いの手を差し伸べるヒーローなんか現れてなんかくれないのが当たり前。


 その時に悟ったの。

 結局、みんな自分のことが大切なんだって悟ったの。


 ──そうして、今の今まで生きてきた。優しさを教えられることもなく、無感情に不幸でない人間の仮面を被り続けてきた。


 どうしてそうして生きてきたのか自分でも解らない。

 本能のようにそうしなければならないと偽ることで他人との衝突を避けてきたのかもしれない。


 きっと、そんな自分という人間を表す言葉があるとするならそれは『何もない空洞』がお似合いだと思う。

 誰が教えてくれた覚えてないが、そういう何もない空洞を人は『がらんどう』と言うらしい。

 優しさの欠片もない空虚で塗り固めたあーしには実にピッタリの言葉だ。


 幸せになりたい。

 幸せになりたい。

 幸せになりたいと願うのに、何でそうなりたいのか解らない。


 そうして、訪れることのない未来を夢想し時間を費やす自分が居ることに何の疑問も浮かばないのは、どうして──


 目が覚める。


 「う、ううん?」


 ベッドから起き上がり、窓を見ると日が落ちていて、すっかり夜になってしまってるのに気が付いた。


 「あ、ああ。まーた寝てたし、困るよねーこういうのさ」


 ナルコレプシーだったけ、こういう夢遊病の類いの病気。

 どんだけ改善しようと身体を弄くり回しても、それだけは改竄出来ないのは困ったものだ。

 いつの日か、ナコっちゃんにも概念的なものだからそれを失くすのは出来ないのですと呆れられもしたっけ。


 「今、何時って──ああ、もう八時半じゃん。食堂閉まってるしぃ、最悪ぅ」


 売店ならカップ麺の一つぐらい売ってるだろうと思い、財布を手に取る。


 「あー、自棄に財布軽いしぃ──って、本当にすっからかんだしぃ!?」


 念のため財布の中を確認したところ、そこには千円札はおろか百円の小銭も入ってなかった。


 「うぇえええ、マジかー」


 財布の中身に対し悲観に暮れていると、きゅるるるると腹の虫が盛大に鳴った。


 「ううう、ナコっちゃんにでも頼るとするかー」


 そう言って、ナコっちゃんの部屋へと向かおうとする。


 だが。


 「──ん?」


 部屋の窓が割れ、突然の黒い影があーしに襲い掛かってきたのだ。


 「グッド、グッド、グッド! 蒙昧なるユーよ、会いに来てやったぞ!」


 「──な! どうして、負荷蝙蝠(ビヤーキー)が此処に!?」


 あーしの問いに敵は答えない。

 否、答える間もなく奴のかぎ爪があーしの身体を引き裂く。


 「──っつぅ!」


 斬りつけられた痛みを我慢し、全身に魔力を込める。

 それと同時に眼前の敵を容赦なく吹き飛ばす大砲をイメージする。


 「この──」


 ガツン。

 頭の撃鉄を下ろす。

 すると両腕が幾つもの砲台と姿を変える。


 「無駄、無駄、無駄!」


 負荷蝙蝠(ビヤーキー)の手から黒いモヤを纏う何かが飛び出す。


 「暗黒融解波動フルオーバー・ダーク・メルト・ブラスト!」


 それに構わず、眼前の敵へ有りったけの魔力を込めた黒い稲妻を放つ。


 しかし。


 「──え?」


 放電が搔き消える。

 黒いモヤが部屋中に広がる。

 放たれたであろう黒い稲妻を喰らうそれにあーしは目を丸くする。


 「キィーッヒッヒッヒ! 言ったであろう、無駄であるとな!」


 ザクッシュッ!

 嘲笑と共に鮮血が舞う。


 「うっ──っきゃ!」


 悲鳴が漏れるも、怪物は容赦なくかぎ爪であーしの全身を引き千切っていく。


 「う、ぐぅ──が、は!」


 「ああ、痛かろう、痛かろう、蒙昧なるユーよ。けど安心したまえ、まだ殺しはしない。何故ならユーは更なる獲物を引き込む為の撒き餌にする故、無事に生かすとも。──さて、それではお待ちかねのショータイムと逝こうではないか!」


 その言葉を最後にあーしは意識を失うのだった。


 ◇

 

 負荷蝙蝠(ビヤーキー)を吹き飛ばした外壁がパラパラと瓦礫を出す。


 「すまない、古本。駆け付けるのが遅れた」


 「構いません。それより、状況はどうなっています?」


 それを背に謝罪する黒い騎士に対し、古本は状況の説明を最優先させる。


 「念話で聞いていると思うが、状況は最悪と言っても良い。研究所のあちらこちらに負荷蝙蝠(ビヤーキー)超大型腐乱死体(フランケンシュタイン)の大群を引き連れ襲撃しに来ている。今のところ一階フロア前で超大型腐乱死体(フランケンシュタイン)の大群は抑えているが、核となる負荷蝙蝠(ビヤーキー)を処理しないことにはこのままだと制圧されるのも時間の問題だ」


 「そう、ですか」


 黒い騎士から淡々と説明される現状に古本は苦虫を噛み潰したような顔をする。


 「それにしても今回の負荷蝙蝠(ビヤーキー)はいつもに況して復活が早すぎるわ。おそらく『繭』の加護が掛けられてると見て良いわね」


 追従するようにリテイクさんが警告を促す。


 「……それはどうでしょう? 対峙した負荷蝙蝠(ビヤーキー)には今までと変わらず何の特異性も見当たりませんでしたし、加護も復元する時間に充てたと見るべきなのでは?」


 それに対し古本は異を示す。


 「……まあ、それも核となる負荷蝙蝠(ビヤーキー)を見つければ解ることかしら、ね。『外なる神』に関して言えば何が起きても不思議じゃないんだから、万が一に備えて警戒するに越したことはないわよ、ナコト」


 けれどリテイクさんはそんな彼女に更に強く警戒を促した。


 「解りました。では、これから私たちは芽亜莉と合流します。彼女の力なら、負荷蝙蝠(ビヤーキー)など再生する間もなく消滅出来るでしょうし、ね」


 自分で言っておきながら、何やら迷ってる様子を見せる古本。


 「有無、そうするのが懸命であろう。貴殿もやむを得ないが仕方有るまい。この状況では、彼女の改竄の異能に頼らざる得ないのは承知の上であろう?」


 それに対し、後押しする黒い騎士。


 「解っています。これでも魔術師の端くれですよ、覚悟は出来てます」


 「……そうか。ならばその言葉を今は信じよう」


 古本は意味深に答えると黒い騎士は再び口を閉ざす。


 「念のため聞くけど、芽亜莉は部屋に居るのかしら?」


 今度はリテイクさんが古本に質問する。


 「おそらく居ると思われます。監視していた職員から最後に彼女を見たのはそこですし、あれから部屋を出たとは考えられません。──一応確認しますが、お二人は芽亜莉の姿を見ましたか?」


 「いいえ、私たち二人は見てないわ」


 「でしたら、出てはいないのでしょう。きっと、いつもの()()で倒れてると思います」


 少女たちはそう言いながら、足を進め出す。


 「発作? ──って、あれ? お、置いてかないでよ~!」


 それに僕は急いで追うが──。


 「「「……これは」」」


 三人の足が止まる。

 どうやら目的の──芽亜莉の部屋前らしき場所に着いたようで。


 ドクン。


 いや、違う。

 これは、きっとそうじゃない。

 着くというよりも早くに気付いてしまったと言うべきか。


 「なるほど、これが今回の負荷蝙蝠(ビヤーキー)の目的という訳ですか。確かに敵の対抗策を潰すのは道理です。少し考えれば誰でも解ることでした、ね」


 口を開く古本。


 「うん? 一体何が起きて──」


 立ち止まる三人の後ろから前を覗く。


 「──な? これは、酷い」


 すると、思わず僕は充満する錆びた鉄の匂いに顔をしかめてしまう。


 「……有無。しかもあの下郎、弱った獲物で遊んでいたな。見ろ、あちらへ無造作に片腕が放っておいてあるにも関わらず、此処にはその反対側が並べてある。──良い趣味とは言えんな」


 夜風が冷たい。

 部屋の壁には大きな穴が開けられており、黒いモヤのようなものが漂って戦闘の余波が見受けられる。

 そして、その一面に血の海が出来ており、ポツンと捥がれたであろう四肢が散らばっていた。

 そんな形跡に僕は何を言えばわからず、呆然とするしか出来なかった。


 「四肢が捥がれた、と見て良いわね。他の部位が見当たらないのは、きっと動けないようにしてから運んだと考えるべきでしょう」


 リテイクさんが冷静に物事を分析する。

 冷たいとは思わなかった。

 思わなかったけど──


 「何だよ、これ」


 冗談と思いたかった。

 嫌な悪夢だと思いたかった。


 ────「やーだね! んべーっだ!」


 数時間前まで話をしていた姿を思い出す。


 でも、この汗が。

 負荷蝙蝠(ビヤーキー)と戦闘していた名残の痛みが目の前のこれを現実だと教えてくれる。


 古本が床にぶちまけられた血を触る。


 「良かった。血がまだ乾いてない」


 するとそんなことを言って、安堵してみせた。


 「良かった? これが良かったって言うの?」


 飽くまで冷静でいる古本に理不尽ながらも声を荒げてしまう。


 「ええ。だって、まだ連れ去ったであろう負荷蝙蝠(ビヤーキー)に追い付ける可能性があるんです。これが良かったと呼ばず何と言うのでしょう」


 この惨状にもめげず、まだ古本はその目に闘志を宿してる。


 「何で、そんなに冷静でいられるの? 友達なんじゃないの? この惨状を前に何とも思わないの!?」


 僕は問う。

 身勝手にも我が儘にも、感情に任せ大声を上げてしまう。


 「だからこそ、私は彼女を取り戻さなくてはならないのです!」


 けれど彼女はそんなこちらに対し負けじと声を張る。


 「──っ!」


 「時間がないのです。今こうしている間も負荷蝙蝠(ビヤーキー)は芽亜莉を連れて逃げてしまっている。──ええ。正直な話をしてしまうと貴方とこうして会話している時間も惜しいですが、我慢してるのです。……確かに私は、この第三共環魔術研究所の管理者です。時には冷静な判断が求められる立場ですが、同時に芽亜莉の友人でもあります。例えそれが空っぽでも、偽物でも、一刻も早く彼女を助けだし、傷を癒さねば気が済まないのです」


 首もとを掴まれる。


 「四肢が捥がれた? 空を飛行する負荷蝙蝠(ビヤーキー)に近づく手段が見つからない? でしたら、そんなもの異能と魔術を駆使し解決して見せてやろうではありませんか!」


 そのまま、力のままに突き放される。


 「聞きなさい、七瀬勇貴! 今から作戦を伝えます!」


 そうして、声高らかに即興で思い付いたであろう作戦を古本は語りだす。








 キキキ。

 キキキ。


 この時は気付かなかった。

 そんな僕たちを嘲笑う黒いモヤが部屋から抜け出していることに気付けなかったんだ。


 次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!

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