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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第六章:欠落証明
130/154

009 宵闇の訪問者

 自ら定めた投稿日時を大幅に遅れてしまい、誠に申し訳ございませんでした。これは続きが書ききれなくて投稿が出来なかった自分の判断ミスです。これからは、僅かながら投稿を楽しみにして頂いていた読者の皆様に多大な迷惑を掛けたと思い、執筆を頑張っていこうと思います。

 前回のあらすじ

 ● リテイクから別れた主人公は夜飯を食べるも何やら不穏な空気が近づいて来てる。

 それでは本編をお楽しみ下さい。


 かつて、死体たちの身体を繋ぎ合わせ死者の蘇生を試みた愚か者がいた。

 それは誰にも──否、神様にでさえ成し得ない禁忌。嘆きの物語(はなし)。人造生物が辿る一つの定石(セオリー)

 幾つも異名を囁かれる一冊の書物こそ、世論に一大ブームを扇動した──その取るに足らないつまらない物語を描いた女は千八百十八年のイギリスにいた。


 名は、メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリー。

 彼女こそ、世にフランケンシュタインという作品を送り出した小説家だ。


 大雑把に物語の全容を語るなら、死体を繋ぎ合わせた人造生物が自身の境遇に苛まれ独り寂しく死んでいくという何の救いもない話。

 大体を語るならば、『自ら創造したものに(フランケン)滅ぼされる者(シュタイン)』と呼ばれる科学者が自ら死体を繋ぎ合わせて造り出した人造人間によって殺されるという──科学者にとってはありふれた話から始まり、その人造人間が人々から畏怖され迫害され、やがて一人寂しく死を選ぶという──ある意味、実験には失敗が付き物という悲劇なのだ。


 「グゥルルルルアアアア!!!」


 大木を易々と薙ぎ倒す巨体の死体の男たち。

 その後ろに続く血の跡が彼らが成した功績を物語っている。


 「う、撃て! 撃て、撃て、撃てぇえええ!!!」


 此処、第三共環魔術研究所は人類生存の要という城塞基地である。

 それが抑えられた時、それは人類の死を意味するといっても過言ではない。


 「何としても時間まで抑えろ! 生きて帰ることを放棄してでも此処を死守するのだ!」


 弾奏は止まない。

 だが、超大型腐乱死体(フランケンシュタイン)の進行も止まらない。

 それほどまでに圧倒的な物量が彼らの防衛を無慈悲に破壊する。


 「グゥウウウウ、──ッラァアアアアアアア!!!!!!」


 制圧、蹂躙。

 その二文字こそが、この状況を物語るに相応しく、世界の滅亡とやらに怪物たちは興味を抱くことは無かった。


 「キィーッヒヒヒ! 愉快、愉快! これほどまでに愉快な祭りは無かろうて!」


 信徒とは、命じられるまま指令(オーダー)を完遂させる殺戮兵器に過ぎず──人の意志を気遣う必要はない。

 それが彼ら、『外なる神』に付き従う神話生物に担う宿命である故に。


 ◇


 「さて、お互い腹も膨れたことですし、話の続きをするとしましょうか」


 黙々と夜ご飯を食べ終わった僕を見てそれまで口を閉ざしていた古本が話し出す。


 「続き、ね。そうは言っても、大体のことは屋上にいたリテイクさんから聞いたけど、古本は何を話してくれるのさ?」


 それに対し今まで考えていたことを聞いてみた。


 「何を、と言われますか。……そう、ですね。リテイクさんから何を説明されたかは知りませんが、私からは貴方のことを皆さんは何故『藤岡友喜』と呼ぶのかの説明の続きをしようと思ってますよ。──まあ、そうですね。他に聞きたいことがあるのであれば、話せる範囲内なら説明しますので疑問があれば言って下さい。私は優しいので質問は受け付けますよ」


 「そ、そうなんだ。じゃあ、先に一つ聞いても良い?」


 「構いませんよ」


 年相応に微笑む古本。

 その姿に一瞬見惚れてしまうが、直ぐに切り替える。


 「う、うん。なら、この世界が『外なる神』によって滅亡させられるって聞いたんだけど、それって本当なの?」


 「────」


 「……あ、あれ? もしかして、話せないことだったりするの?」


 「いえ。先ずそれから聞いて来るとは思ってなかったので驚いただけです。……ええ、そうですね。概ねその解釈で十分ですが、正確に言うなら貴方を造りだした世界に存在する外なる神『ナイアルラトホテップ』の端末の一つであるナイ神父によって、ですかね。彼はこの世界の負荷蝙蝠(ビヤーキー)と違って復元には時間を要しますが、それ以上の異能(ちから)の行使する権限を持っています」


 「……ごめん、ちょっと、ナイ神父と負荷蝙蝠(ビヤーキー)との違いがよくわからないや」


 「おっと、少し説明が雑になってしまいましたか。これは申し訳ありませんでした。……ふむ、そうですね。ざっくりと表現するなら、ナイ神父の方が負荷蝙蝠(ビヤーキー)より出来ることが多いという認識で構いませんよ」


 「そんな曖昧で良いの?」


 「ええ。最も貴方の場合、彼ら『外なる神』の信徒は、強大な異能を持って現実化(リアルブート)したこの世界の幻想たちと言い直した方が解りやすいかもしれませんね」


 微笑みながら説明する古本。

 だが、そこに以前の余裕な雰囲気が感じられない。


 ──あれ? なんか違和感がする。


 ドクン。


 幻想。

 僕が生まれた夢の世界で造られる人間モドキ。

 そう言えば、どうして彼らは影絵ではなく幻想なんて呼び方をしたんだろう?


 「フフフ、……おや? どうなされましたか、七瀬勇貴さん?」


 気になる。

 何で、影絵という生物から人間の皮を被っただけの存在をどうして区別する必要があったんだ?


 「……ねえ」


 「はい、何でしょう?」


 恐る恐る口を開く。

 それに対し、古本は何でしょうと言う。


 「あの世界の人間はどうして幻想だなんていうんだ?」


 「────」


 古本の笑みが無くなる。

 空気が変わった、そう思った。


 「どうして今、それを気になったんです?」


 逆に聞き返される。


 「いや、何となくだけど」


 だがそれに対し、正直な気持ちを答える。


 「そう、ですか。……まあ、良いですよ。聞いてるとは思いますが、あの世界──というより夢世界(ドリームランド)では本来、人間は居ないんですよ。そもそも真世界帰閉ノ扉(パラレル・ポーター)を通じ、影絵という意識生命体が人間の感情をエネルギーとして取り込まないとあの世界は維持できないんですから、その大本である人間が生身の状態で来訪するなんてことはないのです」


 そんな僕の態度に怪訝な顔をするも彼女はゆっくりと説明してくれた。


 「つまり、人間という存在はあの夢世界(ドリームランド)存在することが出来ない。故に、擬似的な人間の枠組みとして生まれた彼らはそれ以外の名称を求めた。夢の中でしか存在出来ない泡沫の幻のように、生ある者を惑わす想いとして。そんな意図を組み込んで、あの世界に潜む魔導魔術王(グランド・マスター)の人格を複製した疑似知能生命体(アルターエゴ)が名付けたといったところです。……まあ、これも情報から推察しただけの憶測に過ぎないのですが、ね」


 彼女はそう言うと、空中から黒い本を取り出す。


 「さて、どうやらアポも取らない不躾な訪問者が来たようですね。──直ぐ此処は戦場になります、構えて」


 「──え?」


 すると、窓が割れ、冷たい夜風と共に侵入する黒い影。


 「イーッヒッヒッヒ! 待たせたな。待たせたぞ。バッドはこの時、この瞬間を今か今かと待ちわびたぞ、無知蒙昧なるユー共!」


 それは大仰しく翼を広げ、部屋にいる僕たちの前へ姿を晒す。


 「……負荷蝙蝠(ビヤーキー)!」


 「そうとも! クールなバッドは、グッドなバッドは、パーフェクトなバッドはいつだって浅はかなユー共を狙ってる。宛らそれは、能ある鷹のように!」


 カチカチと音を鳴らす鋭いかぎ爪。

 滴る唾液を隠しもせず、それは悠然と傍若無人を振る舞うのを止めない。


 「『忘却の物語(ミッシング・ローグ)』!」


 それに対し古本が魔術を発動させると硝煙が部屋中に充満し出す。


 「バッツ、バッツ、バッツ! それはイージー! それはミスショット! それは砂糖菓子の如く甘いデス!」


 負荷蝙蝠(ビヤーキー)の翼がはためき、突風が硝煙を吹き飛ばす。


 「──っ」


 そして、瞬時に獰猛な狩人となり、彼女の首へかぎ爪を伸ばす。


 ドクン!


 「やぁあああ!」


 心臓を無理に鼓動させ、魔術破戒(タイプ・ソード)現実化(リアルブート)しそれを弾く。


 キィン!

 閃光が走る。


 「来たか、フーリッシュなるユーよ! ああ、実にグッド。グッド、グッド、ベリーグッドタイミング。この奇跡的な巡り合わせにバッドは感謝するしか有るまい!」


 「──っひ」


 ギラギラと赤い(まなこ)が僕を捉える。

 まさに獲物を前にした肉食獣のような感覚で睨むものであり、対するこちらは哀れな小動物の気分と言ったところだ。


 「下がって! 『戦乙女の(ヴァルキリー・)(ティアー)』!」


 古本が叫ぶ。

 すると氷の飛礫(つぶて)負荷蝙蝠(ビヤーキー)目掛けて飛来する。


 しかし。


 「イーッヒッヒッヒ! 無駄、無駄、無駄! クールなバッドは、グッドなバッドは、パーフェクトなバッドにはそのような攻撃は通じない。故に戦け。故に怯えろ。そして跪け!」


 翼が羽ばたき、突風が氷の飛礫を吹き飛ばす──かに見えた。


 「『拷問処女の鉄檻(カーミュラス・ケイジ)』!」


 流れるように古本が次の魔術を重ねて発動する。


 「ヴァッツ!?」


 そうして氷の飛礫から鉄の檻が形成され、瞬く間に負荷蝙蝠(ビヤーキー)を閉じ込めていく。


 「おお!」


 その手際に圧巻し、間抜けにも僕はその場で立ち尽くしてしまう。


 「何してるんです、今の内に退きますよ!」


 叱責するように立ち尽くすこちらの手を古本は強引に引く。


 「う、うん!」


 そうやって彼女の行くままに部屋を後にする。


 「小癪な!」


 鉄檻に囚われた負荷蝙蝠(ビヤーキー)が待てと叫ぶもそれに答えることはなかった。


 次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!

 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!

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