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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第六章:欠落証明
124/154

003 あ~~もう面倒だなぁ~、──うん、じゃあ眠るって単語にも百ヵ国以上あるって知ってた? 不思議だよね! スゴいよね! あーしが今適当に考えただけなんだけどね! じゃあ、そういうことでオーケー!?

 やっぱり書こうとしないと執筆が出来ないんだと思った今日この頃です。

 パソコン、スマホに向かって次話を書いていると次々に話が書けているんですから間違いないです。


 前回のあらすじ

 ● 部屋で古本と話していると『外なる神』の端末『負荷蝙蝠』が襲撃して来たが撃退に成功する。


 それでは、本編をお楽しみ下さい。


 覚えてる。

 この異能に目覚めた時のことは今でも忘れられない。


 「キキキ」


 そうあれは、あーしが十歳になった誕生日のことだった。


 ジジジ。


 住んでたところは、都内なら何処でもありそうな二階建ての一軒家。

 小さな庭付きのベランダがあり、親子で仲良く料理をするのにうってつけなキッチンにはバースデーケーキがあった。


 これといった珍しさのない平凡な環境だったと今でも頬を弛ませれるよ。


 「やめて」


 血塗れのお母さんが倒れてる。

 肉塊となったお父さんを人形(ひとがた)に切り取られた黒いモヤのようなものたちが取り囲む。


 「やめてよ」


 ぐちゃぐちゃと音を立てるそれは化物だ。

 黒い切り絵と表現に値する──常軌を逸脱した怪物だ。


 何でそんな化物がこんな場所に現れたのかは解らないが、その時のあーしはそれに意思があることに何故か気付いた。


 「おかあさん、おとうさん! へんじを、へんじしてよ!」


 泣き叫ぶ子供でしかなかった。

 震えるあーしを庇って、両親は化物の攻撃を受け続けてた。


 何も出来ず、その光景を唯々見続けるしか出来なかった。


 「もう、あんたは一体なんなの!」


 助けを呼ぶことも、逃げ出すことも、両親の言葉を汲み取ることも叶わなかった。


 「わかんない。ちっともわかんないよ」


 そんなあーしを、泣き喚くしかない憐れな生命を見て、キキキと黒いモヤは嘲笑う。


 「あんた、なんなの?」


 あーしはあーし一人だけ。

 そんなのは普通の人間なら当たり前の事実だし何の違和感もない。


 でも、目の前で嘲笑う黒いモヤの中心にあーしと同じ姿の人間が居るのはどうして?


 意味が解らない。

 理解出来ない。


 それなのに、キキキと繰り返すそれの名前すらあーしは知らない。


 ジジジ。


 突然、頭が痛くなる。

 まるでぐちゃぐちゃに掻き回されてるようで気持ち悪く、そうすると目の前の存在がどういうものなのかを途端に理解出来てしまう。


 「ねえ、あーしは──」


 知らないのに、知るはずがなかったそれの名前が『影絵』なのだと理解する。


 意味が解らない。

 意味が解らない。

 理解出来ないというのに、頭の中で誰かがあーしに教えてくれる。


 うん、だからこれは夢。

 質の悪い──飛び切りの悪い夢だ。


 そうじゃなきゃ、こんな訳が解らない現象が起こる筈がないんだから。


 「あーしは、……あーしは一体なんなの?」


 その問いかけに誰も答えない。

 答えがないのに、あーしは問わずには居られなかった。


 「バッツ、バッツ、バッツ! イーッヒッヒッヒ! 狂おしい、狂おしい。まさにクレイジー! 然れど面白愚かしくともそれはユーのメモリー! 受け入れろ、受け入れろ。これからユーが犯す哀れな宿命(フェイト)を受け入れろ、メ■■ー・■ゥ・ド■ー■!!!」


 何処かで地球外生命体(ビヤーキー)の嘲笑が聞こえて──。


























 「────っ!」


 飛び起きたあーしを見知った白い天井が出迎える。


 「ハア、ハア……最、悪」


 ぐしゃぐしゃのベッドシーツで、ベタベタと汚れた顔から汗を拭う。

 えーと、確か例のナコっちゃんが言っていた異世界人(?)とやらと会った後、疲れてそのまま寝ちゃったんだっけ。


 「──って、うわーマジかー。メイクも落としてないし、服も皺だらけじゃん」


 悪態を吐きながら、昨日会った人間のことを思い出していく。

 名前は──そう、確か七瀬勇貴って言ってた。

 ロシアかそこら辺のハーフかと言わんばかりの銀のブロンドヘアーをした碧眼の男の子。

 細身で、生真面目そうな──言い方悪いけどなんか弱っちそうな印象の奴……だけど真世界帰閉ノ扉(パラレル・ポーター)を通じてこの世界へやって来た魔導魔術使いなんだそうだ。


 魔導魔術。

 あーしの異能もその恩恵によって生まれた特異能力。

 魔術の中で最も人類を狂わせ畏怖されてきた、まさに悪魔の学問だ。

 そんな代物を自由自在に扱えるんだから、あいつも相当な糞野郎に違いない。


 「……あんなのの何処が良いんだか」


 ナコっちゃんはイケメン(本人曰く正当な評価)だそうだけど、あーしのタイプではない。

 どちらかと言うとズッシリとした筋肉質で町中をブイブイ言わしてるような益荒男なのが好みだ。

 断じてあんなヒョロガリを好きになることはあり得ないっしょ!


 「まあ、あーしには関係ないっしょ」


 取り敢えず軽く身支度を済ませてシャワーにでも入ってスッキリしよう。

 そう思い、震えるあーしはベッドから起き上がるのだった。


 ◇


 『外なる神』ナイアルラトホテップの一端末である負荷蝙蝠(ビヤーキー)を芽亜莉さんが死体も残さずぶっ飛ばして数日のこと。


 「しかし、今回の件で解って頂けたと思うのですが七瀬さんがこの研究所から当分の間は外出することは出来ません」


 古本はそんなことを言いながら、優雅にティータイムを楽しみ出す。


 「いや、それは身を以て思い知ったと言いますか……うん。あの、さ」


 紅茶の香りが鼻をくすぐる。

 相変わらず黒いスーツを身に纏う古本がティータイムに勤しむ姿は様になっていたけど。


 「何で思っクソマッタリしてんのさ! 大事な話するんじゃなかったの!?」


 大事な話なのでとか、とても話が長くなりますのでとか言って黒スーツの男を数名引き連れてやって来た時は吃驚したのに!

 しかも僕が緊張した面持ちで居たら、ティーカップ片手にブレイクタイムと洒落込んでるのだから更に開いた口が塞がらなかったよ!!!


 「まあまあ、どうか席にお掛けください。焦っても良いことはありませんし、──あ、そうです。クッキー有りますよ。それもチョコチップのヤツとかバラエティが豊富です」


 「だから──」


 「それに嘘は言ってませんよ。現にこうして何から説明しようか考えてる次第ですし」


 「いや、何からも何もこの間の続きからで良いよ」


 「この間の続き? それは確か──これで貴方も異性にモテモテ百選の話題でしたね」


 「違うよ!」


 呆れたようにじっと見つめる僕。

 それを意に介さずはぐらかす古本。


 全く、最初会った時は協力的だったのに、一体どうしたって言うんだ?


 「雰囲気が大切なのです。天からのお告げ的な──そう天啓。主の導きが無いと私、どうにもシリアスが維持出来ない体質らしくて」


 「初めて聞いたよ、そんな体質!」


 「おや? どうしたのです、迷える子羊よ。そんなに苛々していては良き考えも纏まりませんよ」


 「どの口が言うのさ」


 長々本題に入らない古本が何をしたいか分からなくなる。

 まさか、こんな無駄話をする為に来たんじゃないだろうに……本当、古本は何がしたいのかさっぱりだ。


 「それはそうと、今日は貴方のお母様は随分と遅いのですね」


 そう考えてたら、部屋の時計を見ながら不意に彼女はそんなことを言い出した。


 「──そう、だね」


 いつもなら来ても可笑しくない時間帯だ。

 母さん、どうしたんだろう?


 ガラガラ。


 ドアが乱暴に開かれる。


 「おっはよーう、諸君! あーしだ、あーし、みんなのアイドル芽亜莉ちゃんがお昼の時間を伝えに来てやったぜぃ!」


 きゃわわわと笑いながら青い髪の少女が部屋に入ってくる。


 「痴呆ですか、芽亜莉。昼食には遅い時間ですし、何よりもうアフタヌーンです。全く、これだから貴女という人は」


 「痴呆じゃないわい! つーか知ってるし! これは……あれよ、ジョークよ!」


 「だとしてもセンスが無いにも程があります。来世から出直して下さい」


 「酷い!」


 ズカズカと入って来る彼女は──。


 「えーと、め、芽亜莉さんでしたっけ? すみませんが今、古本さんと大事な話をしてたんですけど──って何さ? 古本さん、そんな驚いた顔してどうしたの?」


 負荷蝙蝠(ビヤーキー)を塵も残さずぶっ飛ばした少女──芽亜莉にそう話し掛けると、古本がワナワナと震えだした。


 「ズルい、ズルいですよ、芽亜莉。私でもそんな顔向けられたことないのに」


 「いや、意味が解らないし──って、ナコっちゃん?」


 「……何ですか」


 「いやいやいや嘘でしょ! これだよ、これ! 解ってんの?」


 呆れたようなあり得ないモノを見たかのような眼差しで芽亜莉さんは僕に指を指す。


 「──?」


 「ほら、わけ解んないって顔してるよ。こいつはあれだ、とんだスケコマシだ!」


 「~~芽亜莉!!!」


 「本当のことでしょ……それとも、何? もしかして妬いてる? 妬いてるんでしょ! いっけないんだー、保護観察対象に余計な感情抱いちゃって、まあ!」


 この部屋に来てからポンコツと化してきた古本をケラケラと芽亜莉はからかう。


 「──フフフ。良いです、良いです。良いでしょう。そんなに絵本の中に閉じ込められたいのなら閉じ込めて差し上げましょう」


 そんなからかいに耐えきれなくなったのか古本がいつぞやの黒い本を取り出し、頁を捲り出す。


 すると、どうだろう。

 周囲に霧のようなものが現れたのだ。


 「──っな」


 パラパラ。

 パラパラ。


 少女を囲う霧に得たいの知れない何かの気配を感じる。

 クスクスと嗤うよう、こちらを覗くそいつはいつ飛び出してきても可笑しくなかった。


 「わー! わー! ジョーク、ジョークよ! 悪かった、からかい過ぎたよ! だからこんな場所でマジになんなし!」


 「解れば良いのです、解れば、ね」


 そう言って古本が黒い本を閉じるとそれは弾けるように消えていく。


 「……これは?」


 「ん? ナコっちゃんのこれのこと? あー、それはねぇ──うーん、教えて良い?」


 「どうぞ。感覚派の貴女に出来るものなら」


 「へいへーいっと……じゃあ──ナコっちゃんのはあれは、ね。『絵のない絵本』って名前の魔導魔術なんだと。えーと、どういう魔術か説明すると、あーしみたいに魔力をこうっ、ズドンって爆発させる感じで組むんじゃない、なんか細々とした複雑な術式なんだってさ!」


 ……ん?


 「そーいうお堅い術式のことを確か……そう! クトゥルクトゥー式だっけ? みたいなワケわからん魔術系統の中でも異例中の異例という──あー、忘れた。メンゴ、メンゴ。んで、ズシャーのガシャーでミリっミリに編み出されたナコっちゃんオリジナルの魔導魔術系統をあーしたちは『複合型魔導魔術(キメラテクスチャ)』って呼んでるわけよ」


 ……はい?


 「ごめん、なんか途中説明が雑過ぎて解んなくなった」


 「フフフ。私もです」


 「んー、あ~~もう面倒だなぁ~、──うん、じゃあ眠るって単語にも百ヶ国以上有るって知ってた? 不思議だよね! スゴいよね! あーしが今適当に考えただけなんだけどね! じゃあ、そういうことでオーケー!?」


 「全然オーケーじゃないよ!?」


 待って、待って!

 この子、本当に説明するの雑過ぎるでしょ! 途中から面倒になったのか変なこと言い出したし、こればっかりは僕が『理解する』って概念持たないとか関係ないよね!?


 「ええ~~私~ナコっちゃん、よく解んなーい! 教えて、芽亜莉センセーイ」


 ツッコミする僕を横目に今度は古本が芽亜莉さんをからかい出す。


 「ブッ飛ばすよ、ナコっちゃん!」


 「そんなこと言われましても~私どもにはサッパリ理解出来ませんし~。何より──」


 古本が一瞬、僕を見る。


 「まだ誰にも『複合型魔導魔術(キメラテクスチャ)』の名を公表した覚えはないのに、どうして貴女が知っているのか検討もつかないんですよ」


 空気が一変する。


 「──あ、ヤバ」


 「ん? ヤバいとは?」


 「う、ぐ……あ、そうだ。チョ、チョコチップあるじゃん! あーし、これ好きなんだよね! 一個貰うよ!」


 あ、芽亜莉さんの顔が引き摺り始めていく。

 ……なんか純粋に古本の笑顔も怖い。


 「フフフ、良いですよ。チョコチップ美味しいですしね」


 「そ、そうだしー、あ~美味しい!」


 「ところで話が変わるのですが、芽亜莉、先週の木曜の奉仏市で負荷蝙蝠(ビヤーキー)襲撃事件があったの知ってました?」


 ドクン。


 「……え? あー、あれね。知ってる、知ってる。しっかしあーしもついてるのかついてないのか解んないよなー。先週の木曜もそうだけど一昨日の此処だって負荷蝙蝠(ビヤーキー)のヤツ現れたんだもん。でも、あん時は確かナコっちゃんと一緒に──」


 芽亜莉さんの目が赤くなる。


 「失礼。その日はゴルバチョフ総監と内密で青森に現れた『ンカイの森』の『繭』を調査していましたが──貴女はその時一緒には居ませんでしたよ」


 だが、そんな彼女を気にもせず古本は淡々と追い詰めていく。


 「ん? あ、あれ? あれれ? そう、だっけ?」


 ……うん? あれ、芽亜莉さんの目の色が戻った?


 「ええ。……それでまた話が変わるのですが、何でもその『奉仏市』にある『奉仏一夜ヅケ』というライブハウスで貴女の好きなバンド『ミリオンフィッシャーズ』のライブが開催されていたそうですね」


 「ア、アハハ。そうだよ~。行きたかったけど、強制規制の所為で研究所から出れなかったんだよね~」


 「そうですね。とても残念でしたね。貴女、あのバンドの五右衛門という方のファンでしたものね。ええ、心からご冥福をお祈りしますよ。──それが本当なら、ね」


 古本の含みのある言い方に棘があった。


 「アハハハ、──ほ、本当も本当よ! ちゃんとこの研究所にあーしは居たし!」


 それに対し芽亜莉さんは言い訳をする子供のようだった。


 「芽亜莉」


 「……んぐぅ」


 まさに蛇に睨まれた蛙だった。

 というより、これではもう容疑者を追い詰める刑事そのものだ。


 これじゃあ──。


 「使いましたね」


 「う、ううう」


 今の芽亜莉さんは例えるなら、ケータイのバイブレーションだった。

 いや、最早プルプルと限界を迎える爆弾と化していると言えど過言じゃない。


 「使ったんですね」


 ピタリと震えが止まった。

 これは止めを刺したなと同時に思った。


 そして──。


 「……ええ。使った。使いました! でも良いじゃん! そのお陰で街の平和は守れたんだし!」


 芽亜莉さんの顔が真っ赤に弾けた。

 マシンガンを乱射したみたいに言葉が出るわ、出るわ。


 「それは結果論ですよ、芽亜莉。……一応、これでも私は魔術師の端くれ。暴走した同胞を討つ覚悟はいつでも出来てます」


 「ううう。分かったし、分かってるしぃ……ちょっと好奇心が出ただけだし、そんな問い詰めなくても良いじゃんよぉ」


 「芽亜莉。何度も言ってますが、これは貴女の為でも有るんです。私とて、友人の貴女を手に掛けたくありません。これに懲りたら、今後『改竄』は控えて下さいね」


 何だか知らないが、二人の会話から察すると芽亜莉さんがいけないことをしたようだし僕から特に言うことは無い。


 けど。


 「へーい、へーい」


 「もう、本当に分かってるんですか!」


 「あ~~もうっ良い! あーし、部屋に戻るから!」


 「──あ、待ちなさい、芽亜莉! まだ話は終わってませんよ!」


 じゃあねと手を振って嵐のように去っていく芽亜莉さん。

 それを待てと制す古本。


 「やーだね! んべーっだ!」


 呼び止める声を無視して少女がドアを勢いよく飛び出していく。

 けど古本は追わなかった。

 いや、追うことは無かった。


 「……芽亜莉」


 ただ、走り去っていくその背中を見つめているだけだった。


 「────」


 その姿に何処か哀愁が漂って見えたのはきっと気のせいじゃない。

 だって、その証拠に芽亜莉さんを呼ぶ声が微かに震えていたんだから。


 次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!

 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!

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