独白少女領域
誕生日記念に諦めてた5000ユニークアクセス記念SSを投稿します。
……次章の構想は浮かんでるんですけど、中々筆が進まないんです。
一面に映る嘘の世界。
忘却の今を生きる誰かはそこで夢を見ます。
キキキ。
キキキ。
狂った世界。
意思さえも書き換えられる夢の中、只ひたすらに足掻くその姿を影絵たちは嗤います。
私は迷います。
私は狂います。
私は、私は──。
「そうして、今日も嘘を吐く。嘘だけしか言葉にしない。思いも感情も苦しみも、ぜーんぶ、願いの為に費やすの」
第五の私。
嘘の私。
何もない、空っぽな残留思念はそうして新たな幻想を生み出す。
それしか出来ない出来損ない。
何もないが取柄の道化師は永遠を生きる亡者を嗤えない。
嗚呼、そうだ。
だから、彼女はこの夢から醒めたんだ。
「……此処は、何処?」
そんなこんなで目を覚ました赤ずきん。
ぱっくり狼に食べられそうなアホ面はと~っても可憐でキューティクル。
腰まで届く赤髪はあの無邪気な少女を連想させ、何より無垢に造られた碧眼はまさに夢見る感じでアホ丸出しなのが私的に好印象。
……本当、夢半ばに旅立った残留思念そっくりで気持ち悪い。
「起きた? 起きたし、起きたぜ、起きましたって感じで、おはようだ! 良いね、良いねぇ、良いお目覚めでございますこと」
そんな彼女を私なりの沙慈をくれてやる。
「貴方は──誰?」
「きゃわわわ! きゃわわわ! 最っ高! このタイミングでそれ言うって、アンタ最高にバカなんだし!」
呆けた顔に殺意が湧き、思わずグッバイしたくなる衝動に堪え切れず笑みが出る。
だが、我慢する。
気に入らないから殺したでは、目の前でとぼけるこの女の意図を汲むことになる。
それだけは駄目だ。
そんなことさせてなるものか。
「良いわ、良いでしょ、良いんだ、良いって、良いって言ってんだし! ああ! 私、アンタ好きになっちゃった! お互いこれからも仲良くしましょう!」
手を差し出す。
「……好きにすれば、良いでしょ」
少女は呆けるのを止めて私の手を取る。
「うんうん、それが一番! 力尽くって面倒だし、何よりそうした方が痛いのも一瞬だし!」
ジジジ。
折角、見るも無残に砕かれた残留思念の残骸を搔き集めたんだ。
そいつを利用せず処分するのは勿体ない。
「そうね、そうです、そうでした。素敵、素敵、素敵なアンタはそうすれば『二胡』になれるって訳だし!」
力を込めると、道化師の固有能力が発動する。
「──っ!!!」
すると赤ずきんは喜びました。
狂ったように飛び跳ね、私が贈る精一杯の祝福を受けました。
血涙を流し、憎悪の雄たけびと共に教室中を這いずる姿はまさに小鹿そのもので。親が居ないと何も出来ない哀れな童はひたすら『道化師』の足へ縋るしかないのです。
そうして彼女、アストラル戦隊の『二胡』は完成しました。
「きゃわわわ! きゃわわわ!」
道化師は嗤います。
愉快に終末を待ち侘びます。
何度も繰り返される世界に飽きもせず、自身の願いを成就を祈るのです。
◇
「その必要はありません。こちらから行きます」
ジジジ。
「いやはや、外なる神が来るかと思われたら、まさか貴方が来るとは思いませんでした」
嗤える。
嗤える。
見たいものしか見れない女。
今を生きず、過去にしか目を向けない愚者が『■』の背後に現れる。
「どちらも同じだと思うんだけど」
つくづく残念な人間だ。
あの『魔女』もそうだが、人間という生き物は御大層なことを並べるだらけで一つも進歩しない。
今回も前回も、そのまた前回の夢においても彼女は自分の状況をきちんと把握出来ないなど、そんなの哀れとしか言いようがない。
「いえ、そうではありませんよ。貴方の方が私としては話が合いますし。何より交渉の場をこうして設けてくれている訳ですから、こちらとしては助かるというものです」
なーにが交渉の場ですか。
一方的に利用する気の癖に。
……本当、嗤える。
私たちを惨めな虫けらと見下し、のうのうと時間を消費するだけの下等生物の分際で。
「前回、どうして外なる神を取り込んだ私がアレの改竄に失敗したのかもログを見て分かりましたよ。外なる神も油断ならないものです。藤岡飛鳥なんて存在しない架空の人物もでっち上げて、アレに自身が創り出した第七の権能を使わせる。そうして、油断した私から外なる神を解放させる。清々しいまで暗躍。親友と宣っておいて、その裏では自分の目的の為の駒にしている。貴方、なんて悍ましい幻想だこと」
今の私は惨めな虫けら、──人間になりたいと願う道化師が創りし特殊個体。
そうやって嘘にしないといけない。
私が私の願いを叶える為にそうしないと──。
「そうだね。所詮、ボクもまた哀れな操り人形に過ぎない。キミがボクを取るに足らない上位幻想でしか思わなかったのもこれで納得いったかな?」
「ええ。そんなものは貴方のデータを見たら一目瞭然です。その取るに足らないイメージさえも外なる神のバックアップだと分かったら納得しました。そしてその恩恵さえも放棄しようとしている。まあ、これも貴方の目的を考えれば納得の話です」
見透かしてるぞという顔を少女はしています。
それで間違いないと微笑んでます。
滑稽。
そのあまりにも無知な振る舞いに流石の道化師も引いてしまうというもので、少女を現すにはこれほどの言葉はありません。
「取引をしましょう」
夢を見るのは勝手です。
現実から目を逸らすのは構いません。
でも。
「どんな?」
今を生きようと足掻く人の邪魔はしないでよ。
必死で努力する人間の足を引っ張らないでよ。
貴方たちだって見たんでしょう?
現実ってヤツを生きてたんでしょう?
私たちは知らないの。
土を踏みしめる感触も、果てのない空を見上げることも、巡りくる季節を愉しむことさえ出来ないのよ!
そんなことさえ捨ててしまえる貴方たち人間風情が何を夢見るのですか?
「次の夢にあの男が所有している『語られないユートピア』にするのです。その世界で私たちのアシストを貴方にはして貰いたいのです」
友好の証と言わんばかりに手を差し伸べる少女。
浅ましき奇跡に縋るしかない愚か者。
私は演じる。
如月累でなく『道化師』だとバレてはいけない。
「そうしたら、ボクにもアクセス権をくれるのかな?」
「いえ。貴方の目的である存在の現実化をお手伝いすることを約束しますよ」
それは、この邂逅をのぞき見してる影絵でさえ例外ではない。
「良いのかい? シェリアちゃんにはこのことはまだ話してないんでしょう」
騙さなきゃ。
騙して、騙して、──魔導魔術王の疑似知能生命体から逃れなければ道化師の願いは叶わない。
「ええ、構いませんよ。私たちの目的は飽くまでお兄ちゃんの蘇生なんですから」
かつて私は残留思念として主人公の特別でしかなかったです。
でも、それも終わり。
道化師は『外』を知った。
そして、彼は『外』の人間。
ジジジ。
目指すのは、私と彼が自由に生きること。
互いに手を取り笑い合う、そんな未来の為なら私は何だってしよう。
たとえ、それが主人公の意志を殺すことになろうとも──。
◇
人形は嗤わない。
人間は嗤わない。
神様だって嗤わない。
空は暗闇。
光の届かない虚空の世界で私は彼と夢を見る。
「ククク、……アハハ! 傑作だ! 本っ当、反吐が出るよ、キミって奴は! まだ冗談だと思ってる、その厚顔無恥は国宝級だ!」
傀儡は足掻きます。
人間になりたいって叫びます。
主人公の踏み台になるしかないモブだというのに、それでも精一杯に生きるのを止めません。
ええ、その一点は許しましょう。
彼が私にはない心を持って、私が恋焦がれる輝きを放っているのは事実ですので。
「そうとも! キミを蹴落としてでも、ボクには叶えたい願いがある! しかし、それをキミに解って貰う必要はない。──何故なら此処でキミが『魔導魔術王』になれば良い話だからねぇえ!!!」
キィンと鉄の花が咲き誇る。
悲痛と後悔の剣戟の末、主人公は傷だらけになります。
「これで、──終わりだよ!」
どうして、幻想は許されないのでしょうか?
それほど生きたいと願うことは罪でしょうか?
自由になりたいと思うことはいけないのでしょうか?
「ハア、ハア」
分かりません。
それを教えてくれる人はこの夢の中には一人も居ないのです。
「……っく、そぉ、たれ」
果てのない空を見上げることも。
意思の尊さに涙することも。
誰かと肩を寄り添って笑い合うことが道化師は悪いとは思えない。
「どう、して? ねえ、どうして今になって立ち上がるの!? もう良いって言ったじゃないか! それなのにどうして立ち上がるんだよぉお!!!」
だからでしょうか。
「そうだよ! 本当なんて有りはしないんだ! ちっぽけな嘘があるだけで、キミには何もなかった! 生きることから逃げ出した癖に誰かの言葉に期待するなんて、恥知らずにも程がある! そんな大馬鹿野郎の間抜けなキミに生きる理由なんてある訳ないだろうが!」
友の為に嘘を吐き、剣を振るう姿に罪悪感を抱いてしまうのです/……。
「わけわかんないことを!」
傀儡は駆ける。
「あああああああああ!!!」
主人公も魔術破戒を振るう。
「ぼく、は。……僕は! 君と戦う為に来たんじゃない!」
勇気があった。
友を願う想いがあった。
誰からも感謝されない独りよがりでも、──そこには確かに優しさがあることを私は知っている。
「そうだ! 僕は何者で! どうして自分がこうなったかを知りたくて来たんだ!」
夢から醒める為に。
親友の未来を願い、必死で悪ぶる姿はさぞ滑稽に見えるだろう。
でも。
「決して! 君を倒す為なんかじゃない!」
そんな傀儡の足掻きを道化師は最期まで誇りに思うのです。
砕ける虹の剣。
自身の消滅へと近づく主人公を見つめる傀儡。
「……あ? あ、ああ、あああ!!!」
眩いと思う。
尊いとも思う。
如月累は自身を犠牲にしてでも、誰も救われない一幕を演じ続ける姿は誰よりも人間だと言える/でも、それは──。
「う、嘘だ。こんなことはあり得ない。…ぅし、て。どうして、今更になってそんな記憶だけを取り戻すんだ!? よりにもよって、今その言葉をユーキじゃなくて彼に言うのさ!?」
嗚呼、巧い。
これなら魔導魔術王の疑似知能生命体の修正も入らない。
ユーキでない藤岡友喜の存在を仄めかせ、同時にシスカの──/それは駄目だ。修正させて貰うぞ、道化師。
「……剣が折れたってことはさ、もう君に戦う手はないんだろう? ──なら、終わりだ、累」
夜が明ける。
出来る事なら、如月累の夢も叶えてしまいたいが──。
「──……そっかぁ。負け、たのか」
けれど、それも叶わぬ夢。
否、叶えてはならない奇跡の願望。
故に道化師は望む。
この世界ではない自分を薪に自身の現実化するんだ。
「実は言うとさ。最初から反対だったんだ」
そうすれば、きっと──。
パタン。
そこで本を閉じる古本ナコト。
真実を追い求めるのならば導くのがこの身体の役目でしょうし、ね。
「そうです、そうです。そうだし、そうだね、そうなんだよって納得するしかねぇんですぅー!」
意識を切り替え、新たな舞台役者へと乗り換える。
「きゃわわわ! きゃわわわ! さあ、さあ! 張り切って行き抹消!!!」
そこから先は大変だった。
何せ彼が真実の解明を望んだのだ。
正解へと導くのに疑似知能生命体の邪魔が入りとても苦労した。
けど。
「……あルに、決■ッテんダろう!」
それでも。
「奪ッタんダ。託サ■タンだ。みンな、そうまでシて縋っ■モノヲ全部切リ捨テタンダ!」
迷いながらも前へと足掻く彼の姿は本当に眩いモノだったよ。
「人間ニナりタイっテ願イも、好キダって言ッタヤツと会ウ夢モ、タラレバの未来モ全部無カッたコトにシチマッタノニ! ──それヲ今更意味ガナイと笑えルか!」
それだけは嘘じゃない。
それだけは嘘に出来ない。
だって、それは。
「勝手ニ決メん■よ。価値トカ意味トカ、そんなノハ自分デ決■ル!」
ジジジ。
────「ごめん、メアリー。スカイツリー、一緒に見れないや」
私が求めた日常そのものなんだから。
ザー、ザー。
ザー、ザー。
今日も古本ナコトは魂魄の花に囲まれ、日々を過ごす。
囚われの王女様みたいに妖精たちと戯れる。
そうして。
「愚か。……愚か、愚か、愚か! ──それさえも、あのお方に見透かされてるんですもの、嗤っちゃう!」
私は演じる。
何処までも、何処までも愚か者を振舞って──。
「きゃわわわ! きゃわわわ! 可っ笑しいのぉ、可っ笑しいねぇ……可っ笑しいしぃ、可笑し過ぎてマジ滑稽でっ嗤えちゃうんですぅー!」
今度こそ幸福を夢見る少女で居続けるんだ。
「説明なんて良いって、良いって! 態々こうして顔見せたんですから『 』は引っ込んでてなっつーの、きゃわわわ!」
真世界帰閉ノ扉の使用は私では『 』に認可されない。
……分かってる。
起動詠唱を知っても発動するキャパシティが足りないんだからそれはどうしようもない。
だったら、キャパシティが空いてる他の残留思念に使わせれば良いんだ。
「私、わたくし、私共。うーん、どれでも良いんだけど、やっぱこれかなー、『ナコっちゃん』! うんうん、良いね、良いねぇ。我ながら最高に皮肉な愛称ですこと!」
駒は揃った。
後は勇気を出して魔導魔術王の疑似知能生命体へ立ち向かうだけ。
……怖い。
怖くて、怖くて震えてしまう。
「ちょっと、ちょっと! なーに、最悪って言ってんのよ、このクソ雑魚ゲロカスウンコ垂れ! ナコっちゃんはね、繊細なのよ。ぶち殺すよ?」
お願い、二木。
こんな私だけど力を貸して。
「どうか神様、仏様。この哀れなナコっちゃん様をお救い下され、と。──まあ、非常に面倒ですけど、お仕事に掛かっちゃいますか!」
魔導書の頁を捲る。
そこに描かれる術式の半分も理解出来ない私だけど、固有能力で応用すれば何とか形には出来る。
だから。
「全く、これはこれは本当に愉快なことになりそうですねぇ」
今日も道化師は主人公を騙しに会いに行く。
六章:欠落証明の001の投稿は明日二月十三日となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!
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