029 どうか夜露死苦ね!
やった! 続きが書けたので投稿しますね。
夢を見るのは、哀れな人間。
今を見るのは、愚かな神様。
暴かれよ。
暴かれよ。
人類滅亡のカウントダウンはもう鳴った。
終末を気取る伏線はもう尽きた。
なれば、後はその筋書きを追うだけでお前たちに残された時間はないと青年は言う。
これは、完成された楽園計画。
これは、停滞を嫌った奴らの断末魔。
それに一言文句があるなら、こんなのはどうだろう?
「あれ、さ。もう少し、何とかならなかったの?」
世界の終わりに立ち会う人は口を揃えて、青年にそう言った。
◇
崩壊する世界。
ひび割れる空の下、自己投影で作った道をオレたちは進んでいく。
「ハア、ハア! 本来、ボクはこう言うの得意じゃないんだけどね!」
息を切らしながら、走る飛鳥。
「そう、ですね!」
それに同調するよう、真弓さんも相づちを打つ。
「けど、走らなきゃ後がないぞ!」
そんな二人を叱責しながら、先頭を走るオレ。
「それは分かるんだけど、ねぇ。…………それにしたって、一向に中庭すらたどり着かないのはどうかと思うんだけど──」
飛鳥が何か言おうとした。
いや、それは始めからそのタイミングで訪れたと言っても良いかもしれない。
ドクン。
唐突に嫌な気配がした。
「──っ!?」
咄嗟に魔術破戒を現実化する。
そして、そのまま勢いよく振るう。
「シャッ!」
キィン、と現れた赤と青の刃が何かを弾く。
「ヒッ! ヒヒヒ、ヒィ!」
切り払った先に現れる何か。
空間を歪ませ、その姿を晒すのは禍々しき存在。
「助けで、──助げでぇ!」
ヒタヒタと這い寄る黒い泥。
いつか見たウェイトリーが呼び寄せた異形の怪物──『混沌』がこちらへと無数の手を伸ばす。
「──っ!?」
後ろの二人が息を飲む。
けど、それは仕方ない。
それは、観測するだけで狂気を呼び起こすモノであるのだから。
「ま、さか……いや、そうですね。ウェイトリーが召喚したんですから、此処に現れるのも道理です、ね!」
口を開けて閉じてを繰り返していた真弓さんが、正気を取り戻すようにそう口にする。
「あ、……う、ぐぅ……っが! ……ハアハア」
くらくらとその場を倒れそうになる飛鳥。
「見るからにヤバそうなのは確かだけど、──どうする?」
青と赤の螺旋を構える。
どうするかなんて問いは決まってたけど、それでも敢えて聞いたのはオレなりの二人を気遣ってのものだった。
「──ん、ああ。すまないね。取り乱した。■■、ボクは大丈夫だよ」
後ろにいる飛鳥が言う。
「私は……いえ、確かに絶望的な状況です。でも、私たちは進むしかないのです」
そうでなくては、叶えられないと真弓さんもオレに続いて怪物を見定めた。
「なら、──やるぞ!」
幻想殺しの魔剣に力を込め、その勢いのまま振るうと虹の極光が放たれる。
「アビャビャビャ!?」
同時に、ブルブル震える黒い泥の怪物へとオレは駆け出す。
「はい!」
「勿論!」
そんなオレを追うように、二人も駆け出す。
「ン、ビャアアア!!!」
奇声と共に魔の手が伸びる。
「──っ!」
空間を軋ませるそれが放たれると、周囲の世界を真っ黒に侵食していく。
それを。
ドクン。
襲い来る無数の死をコンマの世界で掻い潜る。
「──光よ!」
真弓さんの詠唱が聞こえる。
駆けるオレを包み込むように、光の雨が怪物へ降り注ぐ。
だが。
「──っつぅ!?」
止まらない。
怪物の手は光の雨を物ともせず、オレへと真っ直ぐに伸びていく。
だが、それは当然のことだった。
寧ろ、そうでなくてはあの時の真弓さんの魔術は破られなかった。
だから、慌てることはない。
「ミズデェ、ナイデェエ!」
怪物の手が撫でる。
一寸の間合いへとそれが触れられ、オレの中の何かが悲鳴を上げる。
「うぐぅ、……が、──ハッ!」
だが、違う。
あの時は二人だった。
今は──。
「そうとも! ボクが居るのさ!」
飛鳥が叫ぶ。
すると、ぐらりと何かが傾く。
同時に、うなじへビリビリとした閃光が走る。
ジグザグ、ジグザグ!
幻聴が響き渡る。
「ピィ、──ッギャ!?」
時間が止まる。
現実が変わる。
その光景は、事象の改変とも言えるそれで、ジグザグと目の前の現実を切り取っていく。
ビュン。
オレを捉えた怪物の手は、伸びない。
それどころか、無数の手は黒い泥の周りの空を切っている。
そして。
「これで、」
一瞬で怪物の間合いへ踏み込むのは、オレ。
懐に潜り込むのも、オレ。
ジョキジョキと何かが切り離され、継ぎ足される。
それは、都合の良い世界改竄。
今と今を繋げ合わせる、『あり得ない妄想』の現実化。
不確かなリズム。
必殺の一撃が今、飛鳥によって紡がれていく。
ジョ、──ッキン!
「ンビャギャア!!!?」
最強とも呼べる怪物が叫ぶ。
皮肉にもその断末魔は、赤子の悲鳴のようで。
「──どうだ!!!」
不出来な塊が伸ばした手はオレに届かず、切り払われたのだった。
◇
「ククク。まあ、そうだろうな」
役者は踊る。
舞台は進む。
生命が危機を感じた時、それを回避しようとするのは当然の帰結だったと神父は自嘲する。
「クスクス。……良いのですか?」
紺色の髪を搔き上げると、少女は意味深に問うが──。
「良い。これは愚かなる人類最期の足掻きだ。ならば、神であるワタシは笑って許すのが道理であろう」
くしゃくしゃと白い髪を搔き上げ、神父は中身のない返答をする。
まるで、全てを理解していると言わんばかりの振る舞いであったが、少女はそれを見つめるだけで何もしなかった。
「寧ろ、失敗作よ。オマエの方こそ良いのか?」
ニヤリと男は嗤う。
どろどろとした黒い瞳が未だ行動に出ない少女を捉え離さない。
「……はて? 何のことでしょう?」
クスクスと素知らぬ顔をする少女だったが、それを神父は許さなかった。
「とぼけるな。神の前には隠し事など一切出来ぬと知れ。──あの男の遺産に会っていたであろう?」
キキキと嗤う声が聞こえる。
「……ああ、それ、ですか」
ゆっくりと粗食するようにその問いを飲み込む姿は魔性の女のよう──否、それ以上の何かであり、それがいっそう少女の不気味さを表していた。
だが。
「クスクス。心配して下さるのですね、ナイアルラトホテップ。──でも、それには心配は及びません。楔はもう打っていますので」
「ほう? ──楔、か」
何も心配はないと言いたげに少女は微笑む。
そんな彼女を嘲笑うように、同じ単語を繰り返す男は何やら怪しげだった。
「ええ。それに貴方がこの世界を滅ぼそうが、私には些末なことですし、ね」
「そうか、そうか! それは、楽しみだ。このワタシの目を以て欺くとは、大した自信。──故に楽しみだ。その顔の歪む時が今か今かと待ちきれぬ、ぞ」
互いを嗤う二人。
「────」
それを、未だ踏みつけられている男は歯を食い縛るしか出来ない。
ピピピ!
そんな時。
「……む?」
「──おや、随分と早かったですね」
それは、やって来た。
「きゃわわわ! きゃわわわ! お届け物デェス!?」
何処かで聞いたような声がした。
清廉そうな声色なのに、何処か残念なものを感じた。
ゴトリ。
何かが落ちる。
グシャリ。
何かが弾ける。
「何だ、貴様は!?」
突然の来訪者に神父は言葉を乱した。
「はい、はぁい! 私が何者なんて別にどうでも良いと思いまーす!」
モニターから発せられる警告音。
なす術もなく目の前が、何かの絵に塗り潰されてしまい呆気にとられる誰か。
「それでも聞きたい? 聞きたいのなら、しょうがないから答えましょうかね! きゃわわわ!」
這いつくばる男は見た。
「──っな!?」
あれほど脅威だった神父が子供の落書き染みたモノへと変えられていく光景を見てしまった。
「私、ナコっちゃん様こと、二代目残留思念『古本ナコト』でーす。どうか夜露死苦ね!」
少女はそう言うと、落書きとなった神父を持っていた一冊の本の中へと収納するのであった。
次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!
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