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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第五章:真世界帰閉ノ扉
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虫けら観察日記

 投稿再開しました、と言いたいところですがすみません。

 4000ユニーク突破記念SSの方を先に投稿したいと思います。

 今回は、四章のとあるシーンで彼女が助けに来なかったらのifシナリオとなっております。 ……え? そんなことより本編を早く投稿しろですって? ……それでは、記念SS『虫けら観察日記』をどうぞ、お楽しみ下さい。


 暗い、暗い海の底。

 足掻けど、足掻けど消えていく全身の感覚。


 ゴポゴポ。

 ゴポゴポ。


 沈む身体。

 壊れていく魂。


 「うっ、──っが、あ、ああ、……は、ぁあ!」


 此処ではどんなに足掻こうとも、負け犬にスポットライトが当てられることはない。


 ゴポゴポ。


 息が出来ない。


 ゴポゴポ。


 幾度、手を伸ばそうと僕の声は届かない。


 どれだけ救いを求めようが、差し伸べてくれる誰かは決して現れない。


 「──、──!」


 遂に、魂がバラバラに故障する。

 身体がグチャグチャに潰されて、再起不能に陥り出す。


 ザシュ、ズプ、ジュク!


 そうして、二つの残留思念が合わさり『結木■瀬』が形成されていく。


 「ちく、しょう」


 砂嵐がやって来る/ジジジ。

 どうしようもない理不尽がやって来る/ザー、ザー。

 敗者の末路なんて決まってるけど、これはあんまりだ/ザー、ザー!


 それを呆然と眺めるしか出来ないなんて、これじゃあ、(るい)に会わせる顔がない。


 「■■■■■■■■■■■■■■■!!!」


 フィルムが巻き戻るように、視点がぐるぐる回りだす。


 舞台が変わる。

 物語が紡がれる。


 ちぐはぐな人形が、無様なピエロのように、──惨めで、哀れな虫けら(少女)へと変貌を遂げる。


 キキキ。

 キキキ!


 それを影絵たちが嗤って、可笑しなものだと転げ回った。


 カチリ、とまた大切な何かが欠ける。


 「っぐ、ううう」


 欠けたまま、愚か者は目を覚ます。


 「──?」


 ああ、分かってる。

 モニターに上映されるストーリーが、蛇足でしかないのは分かってる。


 けれども。

 哀れな虫けらだって、叶えたい夢があるんです。


 ◇


 ■月■日。


 「私、七瀬。結木七瀬、十六歳。好きなものは『週刊少年漫画』で、嫌いなものは『すしざんまい』。座右の銘は『未来への投資』で、趣味は『課金』。そんな今を生きる私『結木七瀬』は、第二共環高等魔術学園に通う花の女子高生だよ!」


 誰かの視線を感じた『私』は、その場で自己紹介をする。


 「え? すしざんまいが何か知らない!? えー! 君ってば、遅れってるー! ……ふぅー、困った、困った。これは困ったぞぅ。今を生きる女子高生な七瀬は未曾有の窮地に立たされてしまったと言っても過言じゃないかもねー」


 視線の先にピース!

 もう一つオマケにピース、ピース!

 ドヤ顔ならぬキメ顔の私ってば、超ナイスでイケテるよね?


 クスクス。

 クスクス。


 何もないところから声がする。

 指を指されて、笑われてるのも分かってる。


 でも、嘲笑う誰かを私は見たことない。

 ……だから、構わない。

 この身の毛が弥立つ感覚さえ、見ない振りしてやり過ごせば上手くいく。


 クスクス。

 クスクス。

 キキキ。


 そうです、誰も見ていないんです。

 期待されることもないんです。


 だって、私は──。


 ザー、ザー。

 ザー、ザー。


 おっと、危ない! いけない、いけない(汗) またペナルティが来ちゃうところだった。

 ヤバい、ヤバい。地味に痛いんだよね、アレ。まさにテヘペロだね(・ωく)

 ……おっと、ペナルティとは何ぞと思ったそこの皆さん! この花の女子高生『結木七瀬』ちゃんが説明するとですねぇ、……アレです。突然やって来る理不尽とかそういう類いのヤツです。

 え? わからない? うーん、困りました。どうしましょう? …………あー、そうだ。ビックリするほどユートピアって言えば伝わります?


 「よ、よーし、とりあえず話したいことも話せたし。やれることもやったし、それじゃあ今日も頑張って生きまっしょーう!」


 不穏な空気を振り払おうと、そう言って『いつも通りの私』へスイッチを切り替える。


 ザー、ザー。

 ザー、ザー。


 ちぐはぐな人形。

 無様なピエロ。

 惨めで、哀れな虫けらは今日も女王様のご機嫌取りに奔走する。


 それだけが私の生まれた理由で。それだけが私の存在価値なのだから。

 だから、笑え。

 道化にならなきゃ、きっと私は壊れてしまう。


 「本当、惨めですこと」


 けれど、そんな努力は無碍にされるのが相場と決まってる。


 ブチッ。


 何かが潰れる音と共に真っ暗になる視界。

 その唐突な理不尽に、在りもしない痛みが私を狂わせる。


 「あ、ぐぅ! がぁあああ!!!」


                痛い。

 痛い!

        痛くて、痛くて仕方ない。

   つぃ、熱い、熱い。

                ■■!

 くるじぃい、       ぐるじぃいよぉう!

 痛くて、痛くて、どうしようもないのに『私』はまだ生きている。

 最早、身体はグチャグチャのミンチだってのに、意識があるのはどうかしてる。


 ────「大丈夫よ。ちゃんと■■から殺してあげるから安心しなさい」


 けれど。


 ズブズブ/踏み潰されようとも。

 ザシュ、ザシュ/手足をもぎ取られようとも。


 幾度も行われるお仕置きに私は抗うことを許されない。


 「う、──ぎぃ」


 これは、しがない虫けらの物語。

 惨めで、哀れな女王様が綴る『虫けら観察日記』だ。


 ◇


 ■月×日。


 キーン、コーン。

 カーン、コーン。


 響く鐘の音。

 教室の窓際に独り立たされる私。


 「…………」


 青い空。

 雲一つない快晴の登り詰めた太陽が眩しい。


 クスクス。

 クスクス。


 そんな空を眺める私をクラスメイトたちが嘲笑う。

 何が笑えるのか教えて欲しいけど、聞いたら聞いたで面倒になるからそのままにしておく。


 「バーカ」


 遠巻きに笑っていた一人が私にそんなことを言う。

 すると、濁流のように罵声が飛び交うのだから、まあ不思議。


 「死ね。死になさいよ。……貴女なんか、死んじゃえ!」


 顔の見えない誰かが私の頬を叩く。

 それは、女王様からのペナルティに比べれば痛くもないけど、とても痛かった。


 「生きてる意味あるの、アンタ?」

 「ウケる!」

 「お前なんか! お前なんかが居るから!」


 その後も、殴る蹴るの暴行は続いた。

 痛い。

 痛くて、痛くて仕方ない。


 どうして私なの?

 何がそんなに嫌だって言うの?

 私が何したっていうの?


 「う、ううう」


 言いたいことはあった。

 どうしてと聞きたい時もあった。


 でも今は謂れのない中傷に我慢するしかなかった。

 だって、反抗してもロクな目に遭わないのが分かってたから、諦めるしかなかったんだ。


 「何、余所見してんのよ!」


 バシャア!


 そんなことを考えてると見覚えのない女子生徒がバケツいっぱいに入った水を掛けられる。


 「…………」


 冷たい。

 真冬じゃないから寒くはないんだけど、濡れた制服がとても気持ち悪い。


 「────」


 クスクス。

 キャハハハ。


 そんな姿を顔のないクラスメイトたちが嘲笑う。


 「…………アハハ」


 どうやら、今日の女王様はこういうシチュな気分らしく、何故か私も笑えてきた。

 本当、良い趣味してると思う。

 特に水ぶっかけるところに品性が感じられる気がする。


 そう考えてたら。


 「へぇ。……そうかしら? それなら、こんなのはどう?」


 突然、耳元に少女の声が囁かれる。


 「──っ!?」


 ゾッとして思わず後ろに振り向いたけど、そこには誰も居ない。

 当然だ。

 そもそも窓際に立たされているのに、誰が私の背後に回れるというんだ?


 でも、確かに聞こえた。

 妖艶な雰囲気の少女の囁きが聞こえた筈だったのに……。


 「よく見たら良い身体してんなぁ、お前」


 肩に手を掛けられ、後ろを向いていた顔が前へと向かされる。


 すると。


 「──っひ」


 濡れ細った四肢を男子生徒たちがなめ回すように見つめている。

 ハアハア、と荒い息遣いで彼らはいつの間にか私を取り囲んだのだ。


 逃げることもままならず、餓えた狼と化した彼らの欲望を一身に受け止める。


 「……誰からやっちゃう?」

 「オレだ。オレにやらせろ!」

 「じゃんけんだ! じゃんけんで決めようぜ!」


 男は下半身で生きている。

 彼らは性に従順な獣で、瑞々しい赤ずきんを見かけると衝動が抑えられない生き物なのは知っている。


 でも。


 「い、嫌」


 血眼で見つめる顔なしたちを。

 ワキワキと私の動きを封じる猥褻物を受け入れるかは別物だ。


 「は、放して!」


 慟哭は届かず、願いは叶わない。


 そこに倫理はなく。

 唐突に開かれる饗宴は、真昼の教室で執り行われる。


 「や、止め──」


 身に纏った制服が剥がされる。

 初々しい肌が晒され、この日、私は獣たちの欲の捌け口へとなったのだ。


 ◇


 ■月○日。


 真っ白な廊下。

 校舎へ続くその道はいつもと違って、終わりの見えない迷路になっている。


 カツン。カツンと行儀よく歩いてみる。


 終わらない。

 どうやら、今回の趣向はこの『終わりの見えない廊下』の探索らしい。


 「なるへその文字です」


 ガッデムと叫びたくなる衝動を抑え、私は廊下を歩き続ける。


 カツン。

 カツン。

 カツン、カツン。


 数分が経った。

 何百歩という距離を進んだ。

 けど、その『終わりの見えない廊下』をまだ歩いてる。


 「あー、あー。ラジオネーム、『どんぐり加奈子』さんからのお便りです。『今日もオマエのガイアは囁いてるぞ』で、お馴染みの神父さんに質問です。私、『どんぐり加奈子』は今、困ってます。永遠に続くかもしれない廊下が抜けられません。どうしたら良いですか、とのことです」


 ペラペラと独り言を言いながら、私はステップを踏む。

 気分は、ラジオのディーゼイ。

 ブラックで、ジョージアなハイテンションを心掛ける。


 カツン、カツン。

 カツン、カツン、カツン。

 カツン、カツン、カツン、カツン。

 カツン、カツン、カツン、カツン、カツン。


 「続いての臨時ニュースです。『今日のアテクシはハイカラで超マラカスな気分だから~、色々と決めてきちゃうっていうか~』でお馴染みの神父さんが自棄を起こしました」


 誰も会わない。

 独りで歩き続けるのは──もう疲れた。


 でも、終わらない。

 私を嗤う魔女がそれを許さないから。


 「──が」


 そんなことを思ったら、正体不明の痛みが私を襲う。


 「あ、う、──っが」


 腹を裂かれたように熱く。

 腕を引き千切られかのように痛く。

 目の中に得体の知れない虫が住み着いたように見えなくなる。


 「ぎぃ、が、あ、……ぁあああ!」


 ドバリと臓物が溢れた気がする。

 グシャリと頭が潰された気がする。


 幻覚だ。

 私は、この痛みに耐えられない訳じゃない。


 しかし所詮、私という存在は『取るに足らない妄想』でしかない。


 「ず、ずびま、ぜん……まぢ、が、ヴぇ、ま、じ、だぁ」


 だから、全身を走る激痛に悶えながらも、必死に懇願する。


 それは、滑稽で。

 あまりにも哀れな道化に見えたことだろう。


 クスクス。

 クスクス。


 影が嗤う。

 すると、痛みが和らぎ身体が楽になる。


 「か、──っは。……ハア、ハア」


 嗚呼、死にたい。

 こんな惨めな生活を強いられるなんて、終わってる。


 そんなことを思いながら、立ち上がるとあることに気が付いた。


 ガヤガヤ。

 ガヤガヤ。


 澄まさなくても聞こえる雑踏の演奏。

 見渡すと名前の知らない生徒たちが苦しむ私を除け者に騒いでる。


 どうやら痛みに悶えてる内に、いつの間にか教室へ着いていたらしい。


 「う、ううう、……うぇ」


 吐き気がする。

 涙が止めれない。


 でも、虫けらの私は自分の席に座ることしか許されない。


 ジジジ。


 そう、地を這う虫けらは。

 なんの役にも立たないゴミクズは、気まぐれに潰される理不尽を受け入れるしかないのです。


 キキキ。

 キキキ。


 それが、女王に歯向かった愚か者の末路だと悪魔が囁くのです。


 ◇


 ■月■■日。


 「遺言は聞かないわ。それで時間を戻されちゃ、堪ったものじゃないもの!」


 目が眩むような閃光と共に響き渡る銃声。


 「──っ!」


 悲鳴はない。

 只、破裂音がして、飛び散る■■さんの血肉が頬を掠めただけだった。


 「……あ」


 すると、空へと少女の身体が消えていく。


 「ま、──待って」


 伸ばす手が空を切る。


 「ごめ、ん、なさ、い」


 ■■さんが何かを呟く。

 でも、その言葉は僕の耳には届かなくて。


 それを最期に彼女は──。

























 「クスクス、──キキキ! やった、やったわ! 遂に仕留めたわ! これで! これで、ようやくワタシの時代が訪れるというもの!」


 ビクン、ビクン!


 痙攣する誰か、──茶色の髪の少女は何も言わない。


 「あ、ああ、あああ」


 ただ赤い吐瀉物を地べたへ垂れ流すだけで、■ィ■■は物言わぬ置物と化したんだ。


 「なん、で。……何で、だよ?」


 ドロリと濃密なそれが地を伝う度、僕という人間は壊れていく。


 「分かん、ないよ。どうして、──どうしてなのさ?」


 無様。

 無能。

 それらの単語が頭の中を駆け回り、その場を呆然と突っ立ってるしか僕には出来ない。


 「ありがとう、ワタシの宿敵。ありがとうですわ、ワタクシの友達。シェリアは貴方が無能で助かりましたの」


 ガシャコン!


 これは、悪い夢。

 救いのないバッドエンドで、叶うことのない願いの果て。


 銃口が向けられる。

 トリガーが引かれ、必殺の魔弾が放たれる。


 「──あ」


 パァン!


 「これは、そんなワタシからのお礼です」


 そうして、冒頭の展開へと堕ちていく。


 「キキキ」


 神父の嗤いが聞こえたような気がしたけど、きっとそれは気のせいだ。

 何故なら、これも虫けらの私が見る夢なんだ。

 そう。

 これも、あれも全部、私のもの。

 だ()ら、キット……、コレモ悪イ夢ノ続キナンダ。


 ◇


 ■月○■×日。


 「何故、アナタが此処に居るのです? いや、そもそもどうやって此処に侵入したと言うのです?」


 モニターに釘付けだった緋色の髪の少女は、突然の訪問者に驚きました。

 萎縮してるというのに、気丈に振る舞う姿は本当に哀れで好きになりそうで困りました。


 でも殺します。

 散々バカにした虫けらにナブラレ死ぬのは決定事項なのです。

 アハハ、楽しいな。

 楽しいな!

 どんな風にイジメましょうか?

 虫けらのように潰しましょうよ、そうしましょう。


 「質問に答えなさい!」


 パン、パンうるさい女王様は、何にも気付かない哀れな道化師。

 あーあ、可笑しいなぁ。可笑しいぞ?

 ククク。

 キキキ!

 まーだ、気付かないとは呆れたものだ。


 「……まさか」


 思考停止の猿共め。

 知能低下の愚民共め。

 どうだ、悪い魔法使いの呪いが解けただろう。

 醜悪な怪物から王子様のお目覚めはクライマックスと相場が決まってるのだから、質が悪い!


 「いや、嘘。そうよ、アナタは死んだ。確かに古瀬勇貴と相討ちになった筈……ううん、そもそもアナタは何ですの?」


 向けられる銃は、意味をなさない玩具というのに。

 権能(チート)の異能を宿さない魔道具(アーティファクト)なぞ役に立たないというのに、少女は愚かにもそれに縋るしかなかった。


 「フム。ワタシトシテハ、別ニ此処デ答エヲ教エテシマッテモ良イノダガネ」


 結木七瀬の身体が崩れる。

 それを見て、ルーベンの女王様は目を見開くほど仰天する。


 「ナーニ、マダ舞台ハ幕ヲ閉ザシテイナイノダ。此処デ種明カシナゾ、興醒メモ良イトコロダト思ワナイカネ?」


 腕を振るう。


 「ウグッ──カハ」


 ただそれだけで、ワタシが持つ色欲の権能(チート)はシェリア・ウェザリウスの身体を貫いたのだった。













 チクタク、チクタク。


 時計が回る。


 チクタク、チクタク。


 世界が回る。


 Hello,New_World!


 ──さあ、今度こそワタシの悲願を叶えようか。


 次話の投稿は未定となっております。そんな作品が面白い、続きが気になる、応援してると少しでも思ってくださったら画面下の☆からポイント入れて頂けると嬉しいです!

 批評、アンチ何でも励みになりますのでよろしくお願いします!

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