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バッドエンド・ガールズ  作者: 青波 縁
第一章:欠ける記憶、日常再生
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000 プロローグ的な何か


 見知った少女がいた。


 「う、うぅう」


 傷だらけになりながらも、歯を懸命に食い縛りながらも、立ち上がろうとしている。


 「がっ、──ぁあああ!」


 でも、その姿は痛々しく──とてもじゃないが見ていられない。


 それを──。


 「くだらないですね」


 グシャリ、と修道服の男が少女の頭を踏み潰す。


 「キ、キキキ、──キキキキキキ!!!」


 傷だらけになりながらも、それでも尚、立ち向かおうとした少女を男は嗤う。


 「……なん、で」


 グチャ、ベチャ、ビチャ!

 しかも修道服が返り血に染まるのを気にせず、潰した頭を踏み続けたんだ。


 「や、やめ、ろよ」


 僕は少女が好きだった。


 あの妖精のような翠眼で見つめられると頬が赤くなったし、栗色の髪を弄る姿に目を奪われたこともあった。


 「──やめてくれよぉお!」


 でも、それももう見られない。

 目の前の男が少女を殺してしまったから、叶わないのだ。


 何故?

 どうして、彼女が殺されなきゃいけない?


 「まーだぁ、そんなこと考えてるんですか」


 いつの間にか少女の頭を踏み潰すのを止め、男は何も出来ない僕を嘲笑う。

 そうして女言葉でしつこいと罵りながら、横凪に腕を振るった。


 「……え?」


 その人間離れした芸当に驚くも束の間。


 バシャン!

 一瞬で体勢を崩し、僕は口から真っ赤な吐瀉物を出す。


 「ぐぅふぅ!」


 血溜まりに身を伏せ、感じたことのない激痛に身悶える。


 「呆気ないものですねぇ」


 そこに追い討ちを駆けるよう顎を掴まれ、無理やり立たされる。


 痛い。

 とても痛い。

 でも、そんなことより■■さんの死を憐れむ暇もないことが辛かった。


 「これで、終わりです……っよ!」


 男が告げる。

 すると耳鳴りが起こり、頭がかき回されるように痛くなる。


 「──がっ! あ、ぁあああ!!!」


 押し寄せる激痛にもがき苦しむ。

 止めてと必死で手を伸ばすものの、男はそれを愉快げに嘲笑う。


 ──そんな中、唐突に夕焼けを背に僕を励ます■■さんの姿が過った。


 「あ」


 彼女は向日葵のような笑顔で、僕を希望と言った。


 「あ、あ、」


 記憶が無く、途方に暮れていた僕に声を掛けてくれた。

 いつだったか忘れてしまっていた■■さんとの日々はとても輝かしいものに見えた。


 「あ、あ、ああ、」


 たった数日の出来事。

 けど、そんな日常をどうしてか僕は忘れてしまっていた。


 ────「勇貴(ゆうき)さんはそんな嫌われ者の私にとって、希望なんです」


 少女は僕の前でしか笑えなかった。

 声を押し殺し、震える声で泣く彼女の姿が脳裏に浮かぶ。


 ふざけるな。

 こんなところで終われない。

 こんな奴に殺されるなんて真っ平ゴメンだ。


 何より。


 「あ、あ、ああ、ああああああ!!!」


 好きな男の前でしか笑えないなんて認められるかよ!


 「これで終わりだってのに、まだ抵抗するんですか!」


 必死で身体を動かし抵抗するも、耳障りな怒声と共に一層強く頸が締め付けられる。


 「────、────! ────、────!」


 男が何かを喚き散らす。

 周囲はいつの間にか暗闇になっている。


 ズキズキ。

 ズキズキ。


 更に頭痛は増していく。


 「ふ、ふざ、け、ん、な」


 掠れる声しか出ない。

 それでも、これだけは言ってやらなきゃ気が済まない。


 「終わ、り、じゃ、な、い。ぼ、く、は、ま、だ」


 こんな僕を希望と言った彼女の想いを嘘にしたくないから、此処で諦めるわけにはいかなかった。


 「じ、ぶんのじ、ん、せ、い、を、ぼ、く、は、ま、だ、生、き、て、い、な、い!」


 カチリと響く、パズルの欠片が填まる音と同時に──。


 「恩恵(ギフト)の発動を確認。これより、対象の時間遡航を開始します」


 突然、聞き覚えのある少女の声が響いた。


 「──っ!?」


 いつもと違う抑揚のない、機械的な口調だった。


 「なん、ですって!?」


 そんな声に修道服の男が驚いた。

 グラリ。

 狼狽える声を聞いた瞬間、平衡感覚が失われる。


 夢を見る。

 悪夢に溺れる。


 ゴポゴポゴポ。


 僕の記憶が軋みを上げる。


 意志の剥奪。

 無意識の洗脳。

 静かなるディストピア。

 永遠に抜け出せない煉獄。


 雑音(ノイズ)が脳に走る。


 ゴポゴポゴポ。


 未だ少女たちは鍵を見つけれない。

 ゼンマイが巻き直され、僕の意識は次の■へとシフトする。


 「ルールの改竄? ■■を殺したらそうなるって言うの? なら次は──」


 ──意識が途絶える間際。

   いつの間にか、男の声色は女のものへ変わっていた。



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