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人生、7回目なんで!  作者: 三輪
8/14

夢の低気圧系男子デビュー

その日は、雨だった。多分梅雨入りしたのだろう、ここのところずっと雨だ。気が滅入る。

寝相が悪いことに定評のある(推測)僕は、気づくと半裸状態だった。なんでパジャマが脱げてるんだ。


今朝は、頭痛が特に酷かった。

テレビをぼーっと眺めながらお茶をすする。

『速報です』

先程まで「梅雨も楽しんじゃおう!!レイングッズ特集♪」をしていたニュース番組を流していたテレビから、アナウンサーの緊迫した声が聞こえてきた。

「怖いくらいイソスタ映えするレインコート」、ちょっと気になってたんだが。

画面が慌ただしく切り替わる。

『今日未明、Q県T市で殺人未遂事件が発生しました。』

「...近くじゃん。」

周りに誰もいないのに、反射的に呟いた。

近くというか、僕が住んでいる市だ。

『現場から中継です。』

ブルーシートで囲まれた、小さな食堂が画面に大写しにされた。

「...近くじゃん。」

大学へ行く時に通る所だ。

『はい、こちら現場です。えー、今日未明、こちらで40代の男性が、何者かによって切りつけられました。えー、』

まあ、すぐ捕まるだろう。逃げ回れるほどこの市は広くないし、身を隠すにしても森しかない。いや、森は絶好の身の隠しどころなのか?

男性アナウンサーの声を聞き流しながら、窓の外を見る。雨はかなり強く降っていた。起きた時より強くなっている。

『犯人はまだ捕まっておらず、警察は捜査を進めています。』




頭が痛いのは、低気圧のせいなのだろうか。ついに僕も低気圧系男子デビューだろうか。

一日中頭痛と闘い...時に負け...いや、ほぼ負け...やっと家に帰ってきた。

図書館で調べ物をしていたらいつもより帰りが遅くなった。

雨は降り続けている。日が暮れたのか、雨のせいなのか、空は真っ黒だった。

「おぅわ!!」

真っ暗な玄関前に、何か黒いものがぼうっと浮き上がってきた。

待ってくれ、僕は呪われるようなことはしていないぞ。梅雨の亡霊か?なんだ僕がジメジメしてるって言いたいのか?

...いや、違う。人だ。

玄関ライトが点灯した。僕のアパートの唯一文明の産物っぽい、センサーライトだ。

僕の玄関先で、誰かが体育座りしている。

「佐藤、さん...」

「舞ちゃん!?」

制服姿だ。いつも制服だが、今日は様子が違う。屋根のある玄関前に、座っている周りに水溜りができるほど雨に濡れていた。

髪の毛から、水滴がポタリと落ちた。

「......白.......。」

「なんですか。」

なんでもない白のレースなんて見ていない。

「どうしたの、そんなにビショビショで。取り敢えずタオルでも」

舞ちゃんが僕を見上げる。目元に、泣き腫らしたあとが見えた。

「どうしよう佐藤さん...海斗が、帰ってこない...。」

「え」

「さっきまでずっと捜してたけど見つからないんです。」

時計を見ると、もう8時前だった。



「僕は上の方を捜してみるよ。」

「じゃあ私はもう一回コンビニの方まで捜してみます。」

雨は止む気配はなく、むしろ激しくなっていた。

「あっ待って!」

僕は震える手で鍵を回し、部屋へ土足のまま入った。

「今更だけど、傘とタオル。使って。」

この前傘を忘れて購買で買ったビニール傘が思わぬ所で役にたった。傘も忘れてみるものだ。

「...ありがとうございます。」

よりによって慌てて掴んだタオルは、ボロ雑巾のようだった。申し訳ない。

「じゃあ捜そう。」

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