玉という玉を潰します。
「えぇー...いや、なんで?弟くん今日は来てないじゃん。」
「暇だったんで。」
いや、勉強しなさい。
今日もまた姉の方が遊びに来ていた。
弟くん回収係としてちょっと寄っていくくらいだったのに、最近では弟くん以上に僕の部屋に入り浸っている。
コンビニから帰ってきて、こやつがドッカリ座っているのを見つけて、悲鳴を上げかけた。玄関の鍵は閉めたはずなのに。聞くと、「ベランダの鍵が開いてました。」とケロッとした顔で答えてくれた。完璧に不法侵入じゃないか。
「あんまりさ、あのー...君一応女子高生だろ?こういう...。」
「男の一人暮らし部屋にノコノコ上がり込んで何されても文句言えねえぞってことですよね?大丈夫です、そんな素振りをしたと判断した瞬間玉という玉を潰します。」
日に日に過激派していっているきがする。おかしいな、初めてあった時は物静かな文学少女のイメージだったのに。
「ところで佐藤さん、突然の話で申し訳ないんですが、」
椅子に足を組んでふんぞり返っているポーズからは申し訳なさが1mmも感じられなかった。
「私、佐藤さんの前世の人がどうしても好きになれません。」
突然僕がフラれたみたいじゃないか。
「あっへぇ...。」
「私が...前世の鶏が殺されるってわかっててなんで名前なんて付けたんでしょう?」
「奇遇だね。僕も同じことを考えてるよ。」
僕はペットボトルのお茶を2つのコップに注いだ。
「それこそ馬鹿だったんじゃないかな。」
おじいさんは馬鹿みたいに優しかった。
「おじいさんの前世も、そのまた前世も、そのまたまた前世も、ずーっと馬鹿だったのさ。」
「どうしてそんなにはっきり?分からないでしょ。」
「分かるさ。覚えてるんだから。」
「やっぱり佐藤さん、変わってる人だったんですね。」
素で微笑む顔を、初めて見た気がする。
「...否定はしないけど。」
「前世が沢山分かったところで、何もいいことはないけどね。」
前世で関わりのあった人に会う度に、自分の前世の死に際を思いだす。僕らが前世の記憶で苦しむというと、これくらいだ。
「そうですね。」
人以外の前世を持つ人の死に際の記憶はショッキングなものが多いと聞く。少し申し訳ない。
「私はあの夜、スプラッタな夢を見て眠れませんでした。」
「大変申し訳ない。」
土下座した。
「まあ、あのおじいさんすごく優しかったし。死ぬって分かっててもペットみたいに愛情注ぎたかったんじゃないんですか?」
「どうだろうね。」




