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人生、7回目なんで!  作者: 三輪
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こんのガキャァ...。

僕が最初に前世が分かったのは、小学2年の頃だった。僕は1人の男性の生涯を見た。見たというより、「思い出した」。勉強も運動もあまり得意ではなかったけれど、皆に好かれていた。枕元に白い百合が飾られた病院のベッドで、涙を流しながら、妻と子供と孫を見上げている。


友達は自分の前世が消防士だったとか、サッカー選手だったとか、さながら父親を自慢するように自分の前世を言い合っていた。ただのおじいさんだと分かった時、僕はつまらなかった。だから友達には「僕の前世は宇宙飛行士だぜ」と嘘をついていた。

今考えたら、失礼なことをした。



弟くんも丁度、その時の僕と同じくらいの年だろう。少し懐かしい。



「あ、骨なしチキン下さい。」

レジ横のショーケースを指さす。...特に理由はない。

チキンとサンドイッチの入った小さなビニール袋を受け取り、コンビニを出た。

行きが下り坂ということは当然、帰りは上り坂だ。飲み物を買わなかったことを後悔した。

若干息切れ...正直に言おう、息も絶え絶え、僕は玄関前についた。

早く自動車かバイクの運転免許を取ろう。僕はかたく決心した。

ポケットから鍵を出そうとして、玄関に鍵をかけていなかったことに気づき、そのままドアを開けた。

息切れが収まらないまま靴を脱ぎ、再び運転免許を取る決心をして、部屋へ入る。


「あっ、あんときの変なおにーさん!」

おう、弟くん。お茶でも飲むか。


...。

僕は一旦玄関の外へ出た。

うん、部屋番号は合ってる。自信を持って入れ。


「おにーさんどうしたの?やっぱり変だよね!」

弟くんの茶髪がモサッと揺れる。


...。

僕は外へ出て部屋番号のプレートを指差し確認をして、玄関のドアを開ける。ドアを閉める前に、もう一度指差し確認した。うん、合ってるな。


「おにーさーん。お腹空いた!なんかちょーだい。」

...いや、まあこれで消えてたら怖いんだけどなあ...見知らぬ少年が我が物顔で僕の部屋にいるのも怖いんだよな。セキュリティ江戸時代系アパート(僕の不注意による)と言えど。


「何馬鹿みたいな顔してんの?お客さんにはお茶くらい出してよ。馬鹿なの?ねえねえ馬鹿なの?」

こんのガキャァ...。

僕が首根っこをつかんで外へ放り出そうとした時、インターフォンが鳴った。

こんな時に誰だ。

「すみませーん。お宅に小さい男の子がお邪魔してたり」

女の人の声がして、勝手にドアが開いた。

「しますよね...うわっ。」

入ってきたのは、弟くんの姉さんだった。いや待って、さっき「うわっ」って言ったか?

「あっどうも...。すみませんうちの弟が。」

顔が死んでいる。いや、可愛いことには変わりないけど。

姉さんはズカズカと僕の部屋に入り、まさに僕がしようとしたように弟くんの首根っこを掴んで戻ってきた。

この姉弟は断りなく人の部屋に入ることに抵抗はないのだろうか。

「それでは骨なしチキン(370円)は退散しますね。失礼しました。」

馬鹿にしたような笑みを浮かべたつり目が僕を見上げる。

「いや、その節は大変申し訳っ...ふっ...」

「カイト、よく覚えておくのよ。馬鹿は真面目に謝罪もできないの。」

「おにーさん馬鹿だったんだぁー。」

おい卑怯だぞ姉!!!

「そーよ。馬鹿なのよ。」

いや、初対面の人に馬鹿を連呼するな。

姉さんが僕の目の前を通り過ぎる。真っ黒なロングヘアーが揺れた。

「あ...。」

またこの感覚だ。

「どうしました?」

姉さんが立ち止まる。

まあわざわざ言うことでも無いだろう。前世の記憶が蘇ることなんてざらにある。姉さんの方も早く帰りたがっているし。

「いえいえ、なんでもありません。」

僕は慌てて手を振った。

お姉さんは一瞬、何かに気がついたように目を見開いた。...のは気のせいか否か。お姉さんが顔を背け、玄関のドアノブに手をかける。

「そういえば貴方、大学生ですか?...就職先に困っても養鶏場は選んじゃ駄目ですよ。」

ふっと小さく笑う声が聞こえた。多分笑ったは笑ったでも鼻で笑うの方の「笑った」だ。

「...やっぱりそうですよねぇ。」

僕の前世のおじいさんは職を転々としていた。30代になってから、彼は養鶏場で働き始めていた。養鶏場の、食用肉の鶏の担当。

「ねーちゃん、何の話してんの?」

「何でもないわ。帰りましょ。」

インパクト強めの姉弟は、僕の部屋を去った。

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