第一話その3
よろ
キノボウとフンドシを装備したハヤトは、サヨと訓練場へと向かう。現実では恥ずかしい恰好であるが、どーせゲームの世界だと割り切っている。てゆーかもう慣れた。
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「ねえサヨ、訓練場では何をやるの?」
隣のサヨは僕の前に出て振り返る。そのまま後ろ歩きをしながら教えてくれる。
「基本的な技を体験していただきます。そうですねー、レべル1になると、戦国時代の忍者と同じくらいの技が使えるようになりますよ」
「基本的な技って?」
「5遁の術って知っていますか、敵の前から消える術です。木・火・土・金・水とあります。消えるといってもホントに消えるわけじゃないよ」
手振りを併せて説明する、サヨの横髪がぴょんぴょん揺れる。
「水遁の術ってのは聞いたことあるなあ。たしか水中に隠れるってやつでしょ」
サヨは嬉しそうにうんうんと頷く。
「ハイそれですよ、さすがはハヤトさん。あーとは飛翔の術、分身の術、水蜘蛛の術、変装の術なんかもやっちゃいます。それと、術というか基本的な武器の扱いの体術、剣術、弓術、手裏剣術はみっちりガッチリです」
サヨの一つ一つの動作が可愛らしい。また横髪がぴょんぴょんしている。
「沢山あってたいへんだなあ」
「忍者って大変なんですよー。忍耐が必要なんですから!あ、でも楽しいですよ忍法」
サヨは僕の顔色を窺いつつ、自分の言葉にフォローを入れる
「うん、分かったよ」
「ハヤトさん着きました」
訓練場は城から一キロほど離れた山の上の盆地にあった。木々の間に赤土の獣道がいくつもある天然の迷路のような土地だ。その中央だけは平地が30m四方に開けている。
どうやら先客がいるようだ。
「遅かったじゃないかハヤト!」
「・・・・・・」
ど派手な着物を着たゴエモンが右手を挙げて迎える。そのとなりには恥ずかしそうにコタロウが手を振っている。
「ゴエモン、コタロウ、二人はもう着いてたんだね。忍術訓練も一緒なんだ。ヨロシク」
「ああ、俺様の素晴らしい忍術が見れるなんてお前はなんて幸せ者なんだ。喜べよ」
ゴエモンは右足を出し見得をきるような仕草をした。
「・・・ハヤト・・・ヨロ・・・」
コタロウの言葉は最後まで聞き取れなかった。それにしてもいつもなんで赤くなってるんだろう。
「では早速ですが火遁の術をやっていただきます。なーに簡単ですこの火薬玉に火を点けて相手に投げつけるだけですから」
サヨは軟式野球ボールに紐のついた形状の火薬玉に、火付け具で火を点けそのままゴエモンに投げつける。
「くらえっ!!」
シュルルルッ、パーーーーン!!
「っげえええええ」
火薬玉は爆発し眩しい光と音を出しながらはじけた。と同時にゴエモンの声が辺り一面に響いた。
ゴエモンの周りは白い煙が棚引いていて本人の様子は分からない。
僕はゴエモンの事が心配になって叫んだ!
「ゴエモーーーン!」
冬休みに書き溜めます