第一話その2
お待たせしました11月1日のアプデです。
VRニンジャギアギアを起動したハヤトこと霧野隼人は、現在百地城にて忍者体力測定の真っ最中。
★----------
五〇メートル走、尖刃を切って飛び出したゴエモン。
ズボッ!!
「ノワーッギャーッ!!」
ゴエモンは前のめりになりながら直径二メートルの落とし穴に豪快にダイブした。
「・・・あぶな・・・い」
あいかわらず小声のコタロウ。僕は地面に向かって目を見張る。
「まだあるね。注意しよう」
僕とコタロウは足元の確認とつま先走りで罠らしい枯れ草をよけた。先ほどゴエモンが落ちた穴は枯れ草で偽装されていたからだ。
落とし穴から這い出たコタロウは僕達から遅れること約十メートル、遅れた分を取り戻そうと猛烈にダッシュした。がその瞬間!
「ウギャー!またかー」
ゴエモンを残して二人ほぼ同時にゴールした。僕が七秒〇〇でコタロウが七秒〇二、ちなみにゴエモンは十五秒を超えている。ここで思ったのだが、コタロウだけ靴を履いてないんだよね・・・なんだか可哀そうな気がするが砂利道を裸足でこのタイムを出せるくらいだから。ま、いいか。
「少し休んだら次はソフトボール投げだ。サヨや、ちとお茶を持ってこい!」
{はーい」
タンバに言われたサヨはテケテケと小走りで建物の方へ向かった。
「少し休もう」
僕は杉の木の下へコタロウを誘った。
「ぼ・僕はいい・・・です。疲れてないん・・・で」
断られた、なぜ照れてるのか彼の頬が赤い。男同士なんだから恥ずかしがること無いよね。
結局一人で太い幹にもたれ掛かる。ふとため息とともに瞬きした瞬間、スッと目の前にPCウィンドウが開かれた。
「そういえば、チュートリアルにはCMが入るっていってたなあ」
★----------
「どうもー!ヒラガゲンナイです」
教科書の挿絵で見たあの平賀源内、と感じの似た男が映っている。パイプの代わりにボックスレンチレンチを持っているのが印象的だ。
「日本は電気自動車の普及が遅れてるよね」
ババーンとかっこいいEV(電気自動車)が映る。
「世界はもうEV時代。エ・レ・キ・テ・ルで予習しなくちゃ」
大きな駅の隣に未来感覚のレンタカーショップが映る。
「駅前レンタルステーション、エ・レ・キ・テ・ル」
日本地図の上に沢山のお店マークが描かれていく
「レンタルEV専門のエレキテルは全国に一〇〇店舗」
最後に平賀源内がアップになり親指と人差し指で輪を作る。
「充電もワンコインでOK!」
★----------
PCウィンドウが消え視界は元に戻った。
「電気自動車か……そういえば近頃ガソリン車が海外で売れなくなったとか、父さんが言ってたなあ」
ハヤトの父は国内シェア第4位の自動車会社でハヤトは小学生なので自動車だのレンタカーには興味がなかった。
それよりも平賀源内とエレキテルに興味を抱いた。確か江戸時代の学者兼、作家。
近くの木陰てごろ寝するゴエモンに聞いてみる。
「ねえ、ゴエモン。平賀源内って知ってる?」
「ガハハハハハ!吾輩が知らぬ訳なかろう。そうだなあ、明日教えてやろう」
「つまり知らないんだね」
コタロウの前髪に隠れた目が笑っている。
ちょうどタンバが戻ってきた。
「皆の者休憩終わりだ。これから走り幅跳びの計測を行う。心して掛かれ!」
タンバの指さす場所には、とげとげイガ栗がぎっしり撒かれていた。
「皆さん履物をお脱ぎください」
サヨの言葉に僕は靴と靴下を脱いで籠に入れる。
「ゴエモン、パンツを脱ぐなよ・・・・・・」
確かに穿くものだけど。
コタロウはもとより裸足だ。だからこの種目は有利なのだろう。ゴエモンは高下駄を履いてない方が普通速そうだけど、イガ栗の上となると不利かな。
僕はイガ栗の上など走った事もないからどうだろう。
「3人一斉に跳んでもらいます」
えっ、誰かの踏んだ所を走ろうと思ったのに・・・ズルはできないか。
サヨの可愛らしい高い声が響く。
「皆さんよろしいか、ぴょーんですよ。ヨーイ、ドン!」
一斉にスタートした僕たちは、次の瞬間真上に飛び上った。
「「「イッツテエエエエッ!!!」」」
3人の声が城下に響いた。
★----------
体力検定を終えた3人は皆一様にボロボロの傷だらけとなった。不思議な事に疲れはあるが痛みは残っていない。イガ栗を踏んだ瞬間ははチクっと痛かったんだけどね。
「皆さんお疲れさまでした」
それから僕たちは屋敷にてタンバさんから訓示を受けた。
忍者とは非常なもの心に刃を持て。常に徳操を養い心身を鍛え技能を磨け。
だいたいこんな内容だったと思う。
「散開!」
タンバの散開の令で、ゴエモンとコタロウは左右にサッと出て行った。
僕も見よう見真似で後に跳び上がり、部屋を出た。
★----------
どこに行こうかと長椅子に腰かけているところでサヨと出会った。
「あ、サヨちゃん」
サヨも同じ椅子に腰かけると話し始めた。
「ハヤトさん、ステータスパレットって知ってます?」
「ステータスってゲームキャラの能力のことだよね」
「はい」
サヨは僕のおでこに人差し指をあてた。少し緊張するなあ。
「ステータスパレット」
と彼女が言うと、今度は視界の右上に半透明のウィンドーが開きパラメーターが表示される。
★----------
NAME ハヤト
LV 0
HP 5
MP 0
STR 3
INT 6
AGI 5
DEX 6
MND 5
CRI 5
LUK 7
WEPON -
GOLD 200G
★----------
サヨは静かに人差し指を離した。
「これが僕の能力か」
「チュートリアルが全て終了すれば、LVが1に上がるので数値は変わりますよ」
「全部の値がちょっとづつ上がるのかな?」
HP(体力)MP(魔力)はレベルごとに上がっていきます。
STR(強さ)INT(賢さ)AGL(俊敏さ)DEX(器用さ)MND(精神力)CRI(一撃)LUK(運)は最初のうちは少しづつ上がりますが下がることもあるようです。
「ちなみに、おでこに指を充てて『ステータスパレット』って言えばいつでも呼び出せますよ」
「うん、わかったありがとう」
「それではハヤトさん、次はお買い物をしましょう!」
「うん。お店は遠いの?」
「いえいえ、先ほどの要領で指をおでこに充てて『ショップ』て言えば」
彼女は僕のおでこに指を充てた。
すぐに沢山の武器の名前、性能、値段と図がが入ったウィンドーが表示された。
★----------
ショップ
キノボウ 10G
ボクトウ 80G
サビタクナイ 100G
クナイ 500G
サイ 700G
ワキザシ 700G
ニントウ 1500G
カタナ 5000G
マキビシソウ 10G
マキビシ 50G
シュリケン
カエンシュリケン
フンドシ 30G
マエカケ 50G
サヨは僕に指差したまま言う。
「まずは武器ですが、予算は100Gしかないから、ンーっと、キノボウがいいと思います。この後武器を使用した訓練を行うので、武器を買わないという選択はありません」
「たしかにボクトウを選ぶとフンドシ買えないしね」
サヨはを胸を張って自慢するように続ける。
「一見ただのキノボウですがただのキノボウじゃないんですよ戦闘用のキノボウです。絶対に折れ無いスゴイキノボウです」
僕はキノボウとフンドシを音声入力で選択し購入する。
「じゃ、買った武器と服を装備してください。音声入力で『装備したい物の名前の後にソウビ』です」
「キノボウ、フンドシ、ソウビ!」
僕の着ていたトレーニングウェアが一瞬で消え、ふんどしに木の棒というワイルド過ぎる状態になった。
サヨは新入生の初々しさを眺めるような目で僕をしたから見上げる。
「ところでサヨ、元の服に着替えたいんだけど」
サヨの頭の上にはてなマークあが浮かんだので、僕はもう一度聞きなおす。
「あのー、最初に着ていたジャージに戻りたいのだけれど」
「えー、だってもう無いですよ。さっきの予算100Gがトレーニンングウェアを売った代金です」
「ええええ-!」
ごめんなさい。まだ今回はサムライギアませんでした。
次回は戦闘訓練始まります。