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ウソつき!



【レポート:馬車への侵入者】ーーーー


 ヒト族 13歳 黒魔法適性


  入国直後の行商馬車に乱入。[トライ・ワープ]で逃げようとしたところを捕縛。


 供述


「ギルドカードが欲しかっただけだ。商業ギルドの高ランクカードがあると、提携している医療品が安く買える。家族のための医療品を買って、そのあとカードは返すつもりだったんだよ。

 でも、そもそも様子見をしていただけで、乗り込むつもりはなかったんだ! 急に体が動いちまって……。俺以外の誰かがこうさせたのかもしれない! 俺だけのせいじゃない!」


 目的:カードの窃盗


 結果:失敗


 処置 :厳罰


 責任者:ロマン・ティブ・****。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー



「げ、厳罰?」


 レナがうーんと唸る。


「だってぇ、急に体が動いてしまったとか、そんなことするつもりなかったってね? つまり、また急に気が変わったらドロボウだけのつもりから傷害事件に悪化する危険がある、って言ってるようなもんよ? そんなもの軽い刑罰で野放しにできない」


「……でも、なんで彼の気が大きくなったかの理由がに心当たりが……」


「レナちゃん。ハトモデルはまだ認められていないの。そのような作用があるんだって信じてもらえない。なんでそんなものを持ち込んでるんだって批判をされないために、味方を増やしてから、認めさせて要求を通すの」


 レナはハトモデルをギュッと手で包んだ。


「もともとそのために入国しましたしね。じゃあ、第二目標にします。第一目標は、ローランド辺境伯のお届け物を完了すること」


 ノアが報告書をじーっと見る。


「供述、こんなにペラペラ話してくれたんですか?」


「ええ。ご好意で☆」


「意味深ですねー……?」


「まあまあノアちゃん。刑罰ってことは、命は保証されてるってことだよ。チョットダケ痛いことされた可能性はあるけど」


「それならば、お優しいことですね」


「ハードボイルドね。二人とも……」


 ロマン・ティブは、資料をふたりの手元からピッと取り上げた。そして切り替えるようにニコッとする。可愛い子たちがしょんぼりしてしまっているのは、きっとお腹が空いているのも理由なのだ。


「さあ、夜市にくりだすわよ!」





 外に行くと、ガーランドに光が灯っている。


 まだ光がついていないところにレナがふと目を向けると、月光教会のマフラー(薄い布をかさねて首の辺りに巻いており、布の端には月のマークが描かれている)を巻いたものたちが、ペンのように小さな杖をガーランドの紙にあてて、光魔法であかりを灯していた。

 このあたりの名物風景だそうだ。


 寒くキンとした風に紙がゆれている。


 てんてんてん、と光が増えていくのは(星みたいだな)とレナは思った。


「星の羊ハマルだね」とふと声をかけてみたら、ハマルはじぶんのマフラーの下の口元を微笑ませ、うっとりと目を瞬かせた。


 夜には馬車を走らせてはいけない。大通りは歩行者天国となり、いたる方向にヒトが歩いていくのだった。帰路を急いでいるものと、これから夜遊びをするものにだいたい分かれていた。夜遊びするヒトが向かう方向を、ロマン・ティブは指差した。


「ビアガーデンなのよ。ミエネット王国まできたらやっとビールとおつまみにありつける。本場からはちょっとずれているけど、そのぶん家庭的なお惣菜が多くって私は好き。みんなもこっちの方が食べやすいでしょ」


「あの、お酒は大人になってから……ですよね?」


「なに言ってんの。魔王国ではそうなの? ここでは何歳でも飲んでいーの。まあ小さい子達は、低い度数のものがいいかな。ほとんどジュースと変わらないような……あ、炭酸もあるよ」


「それなら」


「炭酸のほうがいいのね? レナちゃんたち、お子様なのねえ。ノアお嬢様はどうかな?」


「ノアはビールをいただきます」


「ノアちゃん、飲めるの!?」


「嗜んだことがありますわ。草の苦味っぽくて美味しい。それに酔いませんし……蜘蛛はコーヒーの方が酔うくらいです。まあノアは雌の影蜘蛛なので、コーヒーにもそうそう負けませんけれど! お父様はコーヒーに弱……」


「あ、ストップ。身内の弱点をあんまり言わないほうがいいかも」


「たしかにそうです。わたくしってばもしかして、はしゃいでしまっているのかしら」


 大きな車輪をつけた屋台車が集まってきて、台を引っ張るための金具を持っているヒトがラッパを吹く。そのあと「ジャガイモのガレット!」「焼き牡蠣!」などと言った。他にも次々と声が上がる。


 この活気は、立っているだけでも楽しい気持ちになる。


 ほろ酔いのヒトたちは、昼間の真面目そうな様子はどこへやら(チュナ帝国などよりも静かな雰囲気のヒトが多かった)うってかわって、リラックスしている。


(私はまだ経験したことないけど……。お父さんが言っていたような……仕事仲間との飲み会、ってこんな雰囲気なのかなあ?……)


 レナは頭の片隅で少しだけ思った。


 キラがちゃめっ気を出す。


<席の空きを把握しました>


「それに計算リソース使っちゃったのー!?」


「レナちゃん?」


「──従魔のアドバイスを受信しました。こちらへどうぞ」


 と、キラのおすすめの通りに人混みを進むレナだった。

(キラもなにか参加したかったんだよね)


 あまりに酔っ払いすぎていて絡んできそうなヒトは、アヌビスが事前に教えて、そちらの道には行かずに済んだ。

 ギルティア・チョココ・バニラはみんなで手を繋いでついてくる。チョココが真ん中になっているのは必然的で「チョコレートボンボンのフレーバーを思いつきそう……!」とよそ見ばかりするので、しかたないなあと二人がひっぱっているのだ。


 席は、かんたんな木の丸椅子。


 連れあった人数のぶんだけテーブルに集めて座る。


 フードコートのような雰囲気である。


「きたきた。キー・ユー様~!」


 独特の声かけでロマン・ティブは連れ合いを呼んだ。


 キーユウは品のいいスーツで優雅に歩いてきて、ニコニコと「親父狩りとやらを対峙してきました」と言った。


「だ、大丈夫でした!?」


「ご覧の通り、スーツの汚れ一つないじゃろ。愉しかったぞ、初めて冒険者ギルドのクエストクリアをしてしもうたわ」


 言葉遣いが変。

 テンション上がっているらしい。


「満喫していらっしゃいますね……。よかったです。キーユウさんには、ついてきてもらった、って気持ちがあるから。個人としても旅路を楽しんでくれているのであれば、そのほうが嬉しい」


「愉しんでいると何度も伝えておったろう?」


「言ってくれてましたけど、どこか使命感があるような、そんなふうでもありましたので。って、私の思い込みならごめんなさい。言葉を信用しなかったわけじゃなくて」


「気を遣ってくれたんだろう。ありがとうね。おじいちゃんも嬉しい」


「なんですかそのキャラ!?」


「お小遣いじゃ。これでいいドリンクを買ってきなさい」


 スッと横から手が伸びてきて、ぐわし。


「ありがたき幸せ!」


「ロマンさん!?」


「みんなの飲み物買ってくるわよ。ネコババしないから。魔法使いはモノを浮かせて全員分運べるから、こういう席ではよく働くのだわ。もー、おじさまが話し始めたら、あっという間に時間が過ぎていくんだもの(※ふざけが長い☆)さて、飲むもの教えてちょうだいな!」


 ロマンの時間管理に感心するレナであった。



 ノアはビール。


 キーユウもビール(一度庶民の酒を飲んでみたかったらしい)


 レナはアセロラサイダー。


 チョココはカシスオレンジ(高度数)。


 バニラはカルーアミルク(低度数)。


 ギルティアはレモネード。


 ハマルは濃~いお茶。


 それぞれロマン(ビール)が運んできてくれて、乾杯をした。


 カラフルな色の液体が、透明なグラスの中でタプンと揺れる。これほどさまざまな色の飲み物があること、グラスにたっぷり注がれていること、ヒトが集って笑顔でいること。まことにミエネット王国は豊かそうであった。


 夜の風がつめたくても、アルコールがめぐる体はほかほかと温かい。


 アルコールをとっていないレナなどは、上着を一枚重ね着した。


「っふぁーー。仕事終わりのビールは美味しい!」


「やっと街での仕事始めではないのかね、ロマンくん? それにしてもこの大衆ビール、うっすい風味ゆえどれだけでも飲めそうですな。ふふ、新しい遊びがまたひとつ」


「ほ・ん・じ・つ・の、お仕事おつかれさまでした。レナちゃんもね」


「え? 私、仕事ってしていないですよ」


 ロマンはほろ酔いに顔を赤くしながら、小声で、


「魔物使いが従魔と出かけたでしょ」


「まあ……? んーでもそれって……好きでやってることですもん」


 レナはレナで、従魔と出かけることは快適なのだと主張したいようだ。

 眉をキリッとさせて、頬も赤く……周りの空気に酔っているのだろうか?


「し・ご・と・よ」


 ロマン・ティブはレナの小さな鼻をつつく。


「魔物使いが従魔と行動していたら仕事。だから、成果があれば冒険者ギルドに連絡して報酬をもらうの。従魔に手を出されたら、ギルドを間に挟んで交渉する。だれかに見つかるようにするのよ、こういう街ではね。誰もあなたたちのことを知らないと庇ってもらえないし、嘘つかれて損するし、ギルドカードランクも信用が薄い時だもの〜」


 レナは理屈に納得しつつも、気持ちがおさえられないようで、頬がぷくっとしていた。


 アヌビスはチラリと、ハトモデルを横目で眺める。


(反応はなし……)


「だからねぇ、今も仕事よぉ~」


「まじめじゃないですよーう!」


「そう、そもそも仕事じゃないでしょ今の時間は」


「……? ロマンさん……ボケツッコミを両方するタイプですか……? 自分で言っといて、ツッコミも自分でやってみせて。もー、なんなんですか~」


 混乱して、すっかり肩の力が抜けたレナ。


(アリスとエリザベートが混ざったようなヒトですねぇー)とハマルが思う。楽しげにはしゃぐ従魔の世話をしている。酔ったチョココを寝かしつつ、意外にもなごやかなギルティアとバニラを見守った。


「なんなんですか、ってレナちゃんの質問に答えてあげる。まあアレ、ヒトの言葉を魔に受けないための練習なのよ。言葉が力を持っていた一年前までに比べて、どんどんと言葉が軽くなりウソも多くなっているからね。あーやだやだ」


 ロマンは軽口を言い、ぐいいーーっとビールのジョッキを空にしたのだった。






 全員の帰路を後ろから眺めて、夜道の警備にあたるロマンの部下たち。


「ロマン・ティブ様、レナパーティに入れ込んでいますよね。どうみても」


「そもそもこの旅路も我々の不始末のフォローをしてくださっているんだ。そういう言い方はやめろ。だが、まあ、そうだな」


「珍しいなと」


「まあ、普段はもっと気を許さない方のはずだ」


「所感、教えてもらえませんか。若手からのロマン様の噂……。富裕層特有の"多少ゆずってもまだ有るから、わけあたえることに嫌味がないかんじ"というのは、ロマン様特攻なのだとか?」


「な、なんだその言い方?」


 明るい道からは影になっている植え込みの影に身を潜めながら、少し歩いて後をつけ、話を続けた。


「あー、彼女の履歴書によれば。路上生活していた孤児から、裕福な富裕層に拾っていただき、今の地位まで育てられている。努力や才能だけではありえなかったことを与えられているゆえの、思い入れのことは……上流階級属性=ロマン様特攻、というのかもしれないな」


「さらに美形ですよね。可愛さ系の美形が弱点です」


「そこにレナパーティ、か……。恐ろしい巡り合わせがあったものだな。巡りあうべくして、巡り会ったのかもしれない。キーユウ様があそこにいらっしゃることだってそうだ。上流階級優遇に傾いてしまうロマン様を、キーユウ様が止めていらっしゃることで、バランスが保たれている。一体誰が、このようにヒトたちを会わせてくださったのだろうと思うよ」


「……ロマン様、今、楽しそうですね」


「ああ。彼女のこれからの人生は辛いものだろうが、せめていい思い出作りができたようで、何よりだ」


「死なないといいのにな」


「ヒトはいつか死ぬものだ、できるだけ長く生きていられるように、という言い方をしなさい」


「はい、先輩……」


 二人は、夜闇の中でも目がきくようゴーグルをつけていた。

 とくに、動くものは発見しやすい。


 ▽不審者発見!


 [影縛り]スキルで足止めをした。


 不審なヒトはくねくねと立ち止まりながら、去っていくレナたち一団をくやしそうに眺めている。


「スリだと思いますか?」


「まだ犯行していないんだから、何とも。犯罪はさせなきゃいい。──それなのにハトモデルのようなものがあったら困るよな。もっとも、容れ物におさまらず垂れ流しならもっと困ったことになるんだが。その辺りを理解してくれるヒトに繋がれるまでの間、周りの警備は我らがやるぞ」


「はい。引き締めます」


「馬車の入り込みなど一度きりだ、二度目はもう許さん」


「はい」


 レナたちは何事もなく──、知らないところで守られながら、宿に帰った。


 そんなことは自分たちの当然の仕事だと、警備員は思っている。


 だから、レナたちがたまに口にする、自分たちへのお礼に驚くのだ。それは「送ってくれてありがとうございます」「今日も警備お疲れさまです」という言葉だが、ふしぎと好意を抱いてしまうもので。


 警備”役”としてあるまじき。


 自分たちも仕事”をするヒト”なのだと思うなど。


 思うなど……ッ!


 厳重に訓練されてきた警備員たちは、社会の部品であることをしばし忘れて、自然の光をめいっぱい浴びた葉がそうするようにやんわりと、頭を下げて挨拶を返すのだった。


 ▽ここに新たなファンクラブ 魔物使い旅団推しが誕生した。


 ▽注意! これはあくまでプライベートな推しである。


 ▽注意! 仕事はプライベートより優先される。


 ▽注意! ウソは上手につくこと。






「ちょいと聞きたいんだけどね」


 翌朝、早くに宿の受付に現れたガタイのいい男(警備員)たちに、頬杖をついていたおばさんが尋ねる。


「あの子たち、何者なんだい? 教えとくれよ」


 いかにも嘘が苦手で仕事馬鹿というふうに私服の男たちは見えるのだ。


 彼らは、不器用な笑みをごつい口元に浮かべた。


「「雇われがそこまで教えてもらえませんよ」」






「ウソつくとこ聞かせてあげるわよ」


 そう言って、ロマン・ティブは朝食後のレナたちを誘った。


(ウソ? あんまり気分がいいことではないけど。今後のために聞いとくか。ヒトのやり方を教えようって気はあるらしいし。従魔や、キーユウ様は、こういう噂好きなんだよなぁ)


 ワクワクとしている従魔たちが、噂好きなのはどうしてなんだろう? とレナは考える。ふと横を見ると、ノアも首を傾げていた。二人は目が合い、また首を傾げた。


<お嬢様なんだろうよ。二人とも>


 と、アヌビスが毒付いた。


 [お嬢様]……群れの内側において大勢から大切に育てられてきた少女のこと。比較的裕福な環境で育てられているときに、その名称がふさわしい。レナの場合は、ラナシュの平均と比べて日本の少女は上流階級のようであるという意味でも適用される。


 それは警備員の部屋だった。


 部屋に入ると、まず玄関スペースがあり、ここで靴を脱いでスリッパに履き替える。今はとりあえず「噂を聞きに」きただけなので、靴のままみんながギュッとつめる。


 玄関スペースとリビングスペースは分けられており、すぐ近くに閉められた扉があった。レナは(旅館のお泊まりみたいな間取りだよね、ここ)と、耳をすませた。小さくなった従魔を抱えているので、耳だけ扉に添えた形になる。


 レナ・ノア・ロマン・キーユウが扉に耳をつけた。


 聞こえてきたのは若者の文句だ。


「ギルドカードが欲しかったなんてウソだ。ただ、高級馬車だとみて金目のものかリルを盗もうとしただけ! 自分の意思で[トライ・ワープ]を使った。遊ぶ金が欲しかった。こないだはお涙頂戴するためにウソをついただけだ。こっちに書き換えりゃいいだろ!」


 ガシャンガシャンと金属製の檻をゆすっているらしい音。


 部屋の中に檻と犯罪者だなんて、やりたい放題だが、ロマン・ティブはその謎の権限でもって、無茶を可能にしている。何かしらの必要が生じたのだろう。


 四人はその声を聞いてから、警備員の部屋を出て、また元のスイートルーム(商業ギルド提携にしてはもっとも大きな部屋)に戻る。


 ロマンは、


「どっちがウソだと思う?」


 と、報告書を見せた。

 真逆のことが書いてある。


「さっきの叫びがウソなんだと思いました。馬車では、あの子が、なんで急に乗り込んじゃったんだろう……みたいな声を聞いたし……」


「かの若者にはね。ギルドカード詐欺狙いの方が刑罰が重くなるわよ? って教えてあげたの。そうしたら供述を変えたわ。まあ、最初の報告書のまま提出するんだけどね」


「私たちに聞かせたのは、ウソの例にするためですか?」


「そうよ。気をつけてね」


 レナはムムムと口元を動かしながら「はぁい」と言った。





 ▽都のエライ人が レナが持つ文書求めて 来訪!


 ▽ピンポンピンポンピンポン!!!!


 ▽キーユウ「商業ギルドに行っていただけと思った? ウソですな」



読んでくれてありがとうございました!


タイトルを【魔物使いちゃんとレア従魔は異世界ゆる旅がしたい】に変更いたしました。

長期連載とともに、タイトルと内容が離れてしまって たための調整です。


自分たちのペース守ってトラブル旅のりこえたいよー!!!という雰囲気で続けますので、ぜひ読みにきてくれたら嬉しいなっと思います₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑


いつもありがとうございます!!


今週もお疲れ様でした。

よい週末を♫



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更新有り難うございます。 おやおや? どっちが本当かな?(お裁きだーw)
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