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ポジションチェンジ

 

 ▽レナは バニー=モグラを紹介された。

 ▽レナは 混乱している。

 ▽ポジティブシンキング 「まあいいや」

 ▽レナは 受け入れた!


「よろしくお願いします。モグラさん」


「よ、よろしくお願いしちゃっていいのか……? 俺がいうのもなんだが、いいわけないだろう……。なぜ、そのように結論づけたのだ」


「敵じゃないんですよね。だからです」


「なぜそれで」


「なぜ、をモグラさんが知りたいだけでしょう? 探究心なのかな。私たちの関係性って、敵じゃないなら協力できるし、今はそれくらいできてたらいいかなって思いました」


「……地上のルールはわからん……」


「揉めたら、時間をかけて解消。力が足りなかったら、協力。繋がりなのですねー」


 レナは、はい、とバニー=モグラにもポーションを渡した。

 すでに体質変化させられているモグラは、これくらいで影響力は変わらないのだからと、半ばヤケに、回復を受け入れた。ぐいっと。


 そもそもレナパーティに拒絶反応さえなければ、ただ工夫して生まれた美味しい回復薬である。スポーツドリンクのように、レナたちはさわやかに喉を潤した。


 ▽レナパーティは 回復した!

 ▽夕方のかけっこ お疲れさまー!


 なんとなく、沈黙が流れる。

 これからどうする? という指示を従魔たちが待っているのをレナは感じる。


(どうしよっかな。危険なドグーたちは回収できたから、目的は達成なんだよね。となればやっぱり、回復しつつもう少し親交を深めるのがいいかなー)


 みれば、スライム二人がモグラの肩のあたりで、ぷよーん、ぽよーん、と跳ねている。

 がちがちに肩を緊張させているモグラはレア種族情報におそれおののいているのかもしれないが、しだいにリラックスしていったのが、レナには見て取れた。


(ふふん。その素敵プヨプヨに触れていると癒されちゃうんだよね~。クレハとイズミはモグラさんに興味がある感じなのかな。ここに来るまでに一緒に働いたらしいから、親近感を持っているのかも)


 スライムが手のひらに乗ったので、あわてて落とさないようにしてやれば、自ら跳ねて飛ぶのをくりかえして、いつのまにか大道芸人チャレンジにまきこまれたモグラであった。困ったようにしながらも、乱暴にスライムを掴むような様子もない。


 レナは少しホッとする。


 キラからの連絡もとくにない。

 クエスト的にレナたちがこなすことはないようだ。


(けれど問題は、あちらからいずれ来るんだ)


 レナはきゅっと抱えたブランケットを抱きしめた。


 ふと思った。

 兄のことを。

 どうしてだかわからないが。

 今考えておかなくちゃいけない気がして。


(お兄ちゃん──。ちゃんと覚えてるよ、私。以前のお兄ちゃんが働いてくれていたのは、私の生活を支えようとしたからなんだろうね。今ね、私も同じように守りたい子たちがいて、守れるのかなって心配になると不安で胸がくるしいの……。

 でもそういうときこそ、笑うようにしてるよ。ポジティブに考えることを頑張ったら、きっとほかのどんな可能性よりも、よりよい未来になっていくはずだから)


「──レナさん」


「ん、なに? オズくん。その手は?」


「ブランケットずり落ちてる。俺も持つから、貸して」


「ありがとう。でもこれ一枚きりのやつなんだけど、ど、どうやって持つ? 二等分するのは切るのが勿体無いなあ」


「切らないよ……。ていうか、テンパってるだろ。ベンチに横に座って持てばいいんじゃないか。大きいのを引っ張り出しちゃったようだから、はみ出た分を手伝おうってだけ。ほら、丸ごと抱えてるから、子羊一匹分ほどもある……。……」


「……」


「座ろう」


「そうだね」


 ▽オズワルドは ブランケットを少し開けた。

 ▽シュッ! 黒猫の腕が 飛び出した。

 ▽避けた。


 ▽ガッチリホールドしてブランケットを固定した。

 ▽『にゃ~ん。ご主人様助けて~』 と黒猫の猫撫で声。

 ▽『信じられない……なんかいや……』 と金色猫の絶望の声。


(第三者からすればちょっと面白い)とオズワルドは口元を押さえた。小さな咳払い。

(でも主さんはルーカがかわいそうだって同情していそうだな。たしかに昔の未熟な自分の姿を晒されて、好き勝手喋られたら、たまらないものがあるだろうな。主さんにもきびしい過去があったんだろうか)


 ▽黒歴史とかねー。


「あ、ほら主さん。流れ星が綺麗だよ」


励まそうとオズワルドは頭上を指す。


「あれ、凍土に帰されていくシロノアールさんじゃないのかなー……」

「けっこううまいこと乗りこなすもんだな」

「オズくん、流れ星って言わなかった?」

「上から下の方に流れていく光、って点で類似じゃん」

「むしろそこしか合ってないのに」


 レナは自然に笑った。


 ブランケットの中から、黒猫が、モグラのことを”視て”いるようだ。


『あいつばっかりずるいんですけどー。あいつだって暴れたんだから、僕も外に出されて、優しく仲間に迎え入れてもらえるべきじゃないの?』


「きみはまだ、やっちゃったことのゴメンナサイが足りないでしょー。電撃攻撃をルーカさんに当てたり、黒歴史をほじくるようなことしたり」


『でも可愛い姿に絆されてみない?』


 黒猫の腕がぴょこぴょことブランケットから出ている。


(危険な奴だ)オズワルドが半眼になる。


 み”ャン!! と鳴き声。

 どうやら、するりと移動していた金色猫が、黒猫の尻尾を噛んだらしい。『にゃにすんだ!』『こっちのせりふ』と乱れた猫の鳴き声。荒っぽいので、契約によりネコ科の言葉が聞き取れるはずのレナも理解ができないよう。


 オズワルドは獣耳をそちらの方向に向けた。

 犬科に属するオズワルドだが、長らく魔王城で暮らしていたので、さまざまな種族の発する鳴き声をそれとなく聞き取ることができる。


『あ、噛みかえした!? イヤなめにあったし怪我もさせられたけど、これでチャラにしてあげようって思っていたのにさ』

『ふん。そんなつもりないくせに』

『分かるはずだ。僕が落とし所を見つけようと努力していること』

『……』

『ヒトの気持ちを理解するほど、きみには心が育っているでしょう。ドグー=ルーカときみのことを呼ぼう。ただの操り砂人形ではなく、きみという個体の名称だ』

『はめたな!』


にゃごにゃご、み"ゃフー!!


『きみはたしか、面白いことを考えていたよね。弱い魔物からレア種族に形がかたまったのは、そのように信じてくれる主人の心があったから……だと。しくみは同じだよ』

『ドグー=ルーカから”変われなく”なった!』


に"ゃーーーん!!


『そういうこと』

『一生これでいろって!?』

『一生なんて概念が生まれたんだね』

『うるさいな。そこじゃないだろ。この姿から変わるつもりだったのに……そうして重要人物を混乱させるつもりだったのに、暗闇様からのミッションができなくなっちゃったじゃないか!』

『もう、どうでもいいんでしょ』

『……』

『命令聞かなくったっていいんでしょ』

『……』

『だから全部言ったんでしょ。それで様子を見てる』

『……。……にゃフ』

『ずるい奴だよ。僕は』

『つながりがないこと、どーせ僕には視えてるんだろ。でも僕は、ある意味モグラよりも危険さ。おまえたちのこと騙すかもしれない。従順になったふりをしておいて、寝返るかもしれない。だって、命令が消えたってどのように働くのかは僕がきめてもいいんだ。僕の心のままに、君たちから離れるような行動をとるのかもしれないよね!』

『……』

『……』


「あ、静かになった。オズくん、猫ちゃん寝ちゃったかな?」

「俺が聞いておくからいいよ。それよりもさ、お願いがあるんだけど」


『僕がなんとかするよ。僕はレナに助けてなんて言いたくないんだ。天秤は同じくらいがいい。助けてもらったぶんをまだ返せていなくて、これからきっとレナを助ける。その機会がやってきたと思うことにするよ』

『助けてって言いなさいって命令されたことは?』

『……アリマス』

『飼い猫!!』 煽るように黒猫。

『君もね』 ここぞと大声でルーカ。

『うわーっ! 情報固定された、しまった!』

『……僕はわりとバカなのかもしれない。生まれたばかりの心も混ざっているからうかつなんだ、ということにしておこう』


 やれやれとルーカは離れた。


 そしてひょっこりとブランケットから顔を出すと、"レグルス"と目が合う。


 なるほどね、と思う。

 そして子猫状態で会うレグルスは、それなりに恐怖を覚えるのであった。


「ケンカもひと段落したみたいだし、レグルスも来たし、レナさん、俺そろそろシュシュの方に行くよ。屋台の店じまいの手伝いをしてくる」


 じゃ、と片手を挙げるオズワルド。


「黒猫もそっちのウサミミ野郎も、おもしろおかしくなっててもさ、危険じゃなくても安全でもない。クレハとイズミはスライムのまま潜む、猫たちは布の中な。モグラ……にはとくに期待してない」


 すたこらさっさ。


「楽しかった。またね」


 ▽レグルスが 加わった!


 モグラはショックを受けている。

 つい先日までは誇り高きダンジョンマスター、そのあとは古代人のしもべにされ、本日は侵入者かつ不審者かつバニーである。また一段階尊厳を削られたような感じがした。


「ライオンは猫科の頂点とされている。猫科がここにいるならば、さぞ、威圧感を与えられていることだろう。ここに私がいることで反抗が抑制されるならば、護衛の変更を受けよう」


「私?」


「……勤務中の言葉です」


「俺でも私でも可愛いよ」


「可愛がるのがお上手でいらっしゃる」


 レグルスはこほんと咳払いをした。

 レグルスはレナを眺めた。(無事でよかった)と、ホッとしたように眉尻が下がっている。


 反して、背中の毛を逆立てて違和感に心を掻きむしられているのは、ドグー=ルーカとバニー=モグラである。


(なにこいつ!?)

(古代生物……の先祖返り、か!?)

(でも情報がまとまりすぎている。近代にフィットしすぎている)

(ということは……無理やり蘇らせたものじゃない)

(そのままではなく、再構築のノイズもない、退化……でもない)

(進化……とはこういうこと?)


 ▽アップデートっていうんだよ!

 ▽原点を大事にしつつね。


 レグルスの声には不思議な響きがある。

 おおよそ古代の空気にしか含まれていなかったような音だ。

 現在ラナシュの外の空気はいわば、うすっぺらく、わずかにしか魔力が含まれていない。モグラも黒猫もそのように感じているし、だからこそ暗闇様は弱体化している。全盛期のように命令の声が空気中に伝わらないため、支配がむずかしくなっているのだ。


((この雌ライオンの声音、これを暗闇様が真似できてしまったら?))


 モグラと黒猫は同じことを考えた。

 同じことを考えたであろうと、ともに同じ砂から生まれた存在であるゆえに、気づいた。

 どちらかがうらぎるのだろうか。

 うらぎると考えている時点で、現在は味方であると言うも同然であるが。


 レグルスのひと睨み。


 黒猫はブランケットに沈み、ウサミミを合体されてしまったモグラも震え上がった。


 ルーカが「にゃふにゃふ」お手並み拝見、と言った。



 ライトが消えた。







読んでくれてありがとうございました!



今週もお疲れ様でした₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑

暑くなってきましたね〜……日焼け止めとドリンク、日傘を忘れずに出かけましょうね!


よいゴールデンウィークを〜!

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……モグラは悟りを啓いた! モグラ(ただの遠い目です……。     と言うか糸目は仕様です!)
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