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土偶とハマルとガララージュレ

 



 ▽レナの 声援!

 ▽ハマルは 張り切っている!


 一人ぼっちで草原にいた頃のように自由で、それなのに今はあの頃がさみしそうに感じるのは、ここにいるハマルが自由なのに仲間達と立っているからだ。

 遠いのに、じゅうぶん近く感じる。

 羊の耳がぴこぴことした。


『えへへー。おっと、いけない、いけないー。レナ様の声援だけで満たされるようになっちゃ、ボクらしくないもんねー。あんまりらしくないことしちゃうと、今のラナシュは危ないですからー、あとで鞭と踏むことをおねだりしよーっと。体型変化して小さな羊になったら絵面もそう危なくないでしょーし。んもーラナシュのせいでーしょうがないなーっ♫』


 るんるんと足踏み。


 遠くから、黒と緑の魔力が飛んできたのは土偶にもわかった。

 しかし、内容までは把握ができない。


(この土地に 早く 根付かなければ。配下にせねば)


 目の前の羊が湧き立ったことだけはわかる。


 らんらんとスキップするように立ち上がると、あくびと伸びをしてみせていた。


(攻撃するつもりなら 好都合。さて……)


『ねー。きみさー。弱そうだねー』


(!?)


『やあっぱりー。ヒツジの声聞こえてるのー? そういうわけわかんない存在はねー、たとえばキラ先輩みたいにー、定義があまり定まっていない新種かつ・支配欲が強いタイプの魔物かもしれないんだよねー。あってるー?』


(ヒツジがこうもしゃべるとは 希少種か変異種 もしくは仮の姿という線もある。分析・照合・結論 この一帯の支配者として 不足なし 従えよう。

 どうやったら従えられるのか)


『お?』


(知能高きもの プライドあれば 交渉により 引き抜きも可能)


 ハマルが待ちの姿勢をとっているので、土偶からしかけた。

 羊の言語を把握すれば、会話をすることもできる。

 言いくるめるつもりである。


「好きなことは?」


『鞭』


「・・・」


 ▽鞭が 生成された!

 ▽鞭は 地面に転がされた!

 ▽鞭を 見つめる二人


 ▽ハマルは ただの鞭には興味が無い。


 ▽土偶は わずかに混乱した。


「ほ 欲しいものは?」


『威力のある踏み躙り』


 ▽土偶ジャンプ!

 ▽土偶プレス!


 ▽ハマルを 踏みつけた!

 ▽地面に ヒビが入った。


『もー。いきなりなにすんのさー。毛並みが汚れたじゃんー』


 ▽お前が欲しいって言ったのに。

 ▽土偶は わずかに混乱した。


「……欲しい名誉は?」


『褒められることー』


 ここで、土偶は考えを改めた。


 相手が言った言葉がそのまま真実であるとは限らない。

 言葉は覚えているものしか使うことができないのだ。

 たとえば、ハマルのなかになにかしらの気持ちがあるとして、それを正確に表した言葉ではないかもしれず、必要なのは、ハマルの[心の中]それそのものを知ることであった。


 土偶は自分の情報を操作する。

 土造りの人形だからこそできることだ。

 まるでヒツジのように、形状を改めた。


『ほほー』


「めえー」


『めえええ〜』


 呼び合ってみれば(いける)と、もし人のような表情があればにやりとしただろう。土色の無表情の羊である。


 羊となり種族が近いとラナシュに誤解させたことで、ハマルの心の内に辿り着くことすらできた。


 欲しい名誉、といったものをまだ想像しているだろう。ハマルは土偶との会話に興味を示していたのだから。


 ▽土偶の ココロ・フュージョン!

 ▽ハマルの真実を つかんだ。


 ▽三つ編み少女が鞭をかまえ ハイヒールで踏みつけながら 高笑いをしていた。


 ▽エラー!エラー!

 ▽理解不能! 古代にはこんな趣味ありませんでしたよ!

 ▽映像と 要望が 一致しない。

 ▽エラー!エラー!

 ▽このヒツジは 狂っている!


 ▽土偶は 混乱した。


『ありゃー。頭からケムリがぷすぷすしてるけどー、だいじょーぶ? なんだか火山の噴火みたいになってるよー』


「供物扱い!? ぐはっっっ」


『NGワードだったみたいですねー。へえー。ヒツジの丸焼きが供物だったんですかねー』


(早く対処しないと まずい 矮小な生き物に成り下がってしまう……。 い、いやだ せっかく生み出されたのに 用済みと消されて 代わりのものになりかわられる? いやだ 暗闇様は使えないとなれば 新たな土偶を送り込むだけ 誰にも 知られず 消えていく)


「──!! 否、これは復活の儀。焼かれ 灰になり 再生することを 意味するものである」


『ほほー』


「望みを叶えよう」


『そーなの?』


 見事。ラナシュ世界の常識を言いくるめた・・・・・・土偶は、エラーを落ち着かせることに成功、土造りの体を変えてゆく。


 こうなったらやってやんよ!!


 望みの姿とやらはこちとらトレース済みさ!!


 くらえ!! これが古代式の従え術・改【賄賂】望むものを与えてやるから言うことを聞けえーーーー!!!!


 ▽土偶の 変身!

 ▽土作りの 三つ編み少女・鞭装備・ハイヒール装着!

 ▽踏んづけて差し上げる!



 ▽とりあえず受けてみることにしたハマル。


 ▽うーーんこれはなし。


 ▽ハマルのテンションが 下がった。



『というか侮辱かなー。どっせい』


「何ィーーーーーーーーーンンン!? ただの突進でこの威力ゥーーーーーーー!? ぐわあああーーーーっっっ手足が割れてヒビだらけの土人形にーーーーっっっちくしょう、こんなはずでは、なかったっ!! だが 再生できるゥ!!」


『いちいち言葉にするのってさー、ラナシュ世界に情報固定させるためってやつー? キラ先輩が言ってた状態に似てるよねー。ってことはさー、情報戦のことを知ってるけっこうヤバい存在なのかもねー。キミってさー。おなまえなあに?』


「フン レナ様だ」


『わかってるんだー』


「それくらい把握している なぜなら お前の友人らしいからな」


『で?』


「ん?」


『土造りの壊れかけの君は なーに?』


(……。……ここで もしも偽名を名乗ったら どうなる? 崩壊が進む? それとも消えてなくなるのだろうか?

 …………グウウウーーーーっっ! またしても、突進だと? 答えるまで続けるつもりか、この草食雑魚生命! なぜ このような存在が許されている いやそれよりも、どう答えたらいい? …………また! 壊され! た! 口が再生したときに! 何か! 言わなくては!)


 土偶は何度も突き回され、土人形の三つ編み少女が地に倒れふす。


 その形相はそもそもレナに対して似ておらず、なぜならハマルの頭の中を覗いたため、きらきらの色眼鏡を通された「レナっぽい女王様」であったのだ。

 それをお出ししたら「いやレナ様じゃないですね」されてしまうので、いきものの心を満足させるのって難しい。


 土偶少女は、きらきらした顔つきの、さらに魅力的にしようと古代風味を足したためにボインアハンな体つきの、これぞまさにサディスティックレディなよからぬ姿であった。ただし土色。


 現在は、つつかれるたびに手足や三つ編みなどが割れてしまい、壊れた土器そのもの。小さな破片は砂のようになり風に飛ばされてしまった。つまり、ラナシュ世界から見放され始めているのだ。


(この状態が 暗闇様に 知られてしまったら?)


 ヒビだらけのところに破片を収集していくことで直りながら、土偶は思いつく。


(そうだ! 代行をしろと 言われていたではないか……)


「我 暗闇様なり」


「そっかー。レナ様ってー、暗闇様っぽさもあるんだー?」


「のああああああーーーー!? すごく、すごくまずい気がするっ! ……おい、なぜ今、ヒツジから人型になり空に高らかに宣言した? お前、お前、わかっているなーーーーーー!?」


「声おっきいのは古代聖霊ならではなのかなあ。カルメンやソレイユも声おっきいもんねー。というわけでボクはそれなりにわかっているヒツジでーす。キミに勝ちましたー。ぶい」


「それは勝利のVサインっ!?」


「古代にも同じようなサインがあったんだねー。そりゃラッキーだなー。

 ボクこう見えてけっこう運を貯めててねー、ほんとならレナ様に蹴ってもらうための運だったのに使っちゃったなー。まあいいや。ボクって今、愛されるところから愛したいところにいこうとしているのでー。やーん大人っぽーい」


「わ、わからない」


「てきとうに話してるからねー。そりゃ、情報制御しかないキミにはわかるはずもないものだよー」


 ハマルはニコーーーっとした。


 土偶は最大のエラーを出した。


「勝敗、どーなのかな?」


「負け、た」


「ぶい」




 ハマルは一番大きな割れかけの土偶を抱えて、さっきまで日向ぼっこをしていたひだまりに腰を下ろした。陽の光の量と通り抜ける風、さわさわ揺れる草の根色がいちばん心地よいところである。


 そして「スキル[夢吐き]粘土作りの夢〜」とレナの夢を取り出すと、足りなくなっていた土偶の欠けを補うようなパーツが現れた。


「直してあげる」


「直して 差し上げる ということだな」


「へいへいキミのパーツにレナ様の魔力が混ざりました〜」


「ぐああああああああっっっ」


 といった具合に、コミュニケーションをとっていった。


 土偶には生き物としての基礎的な本能、そして暗闇様からの命令はあるものの、それだけしかまだもっていない。

 負けた恨みであるとか、はめられた悔しさであるとか、そのようなものは知識として判断することはできても、感じられていないらしかった。

 そのため、どこかさっぱりした様子でハマルの前にいた。

 混乱はしているが。


「土偶っぽいよねー。土偶のどぐりん、でいいじゃんー」


「随分と興味がなさそうに」


「だって侵略が阻止されたら慌てなくてもいいでしょー。そしてボク、自分が凝った名前をつけてもらったことには感謝してるけどー、それはレナ様のポリシーなのー。

 ボクはといえばそーでもなくって、分かりやすくて誰かに嫌われないようなものならいーんじゃないかなーって。どぐりんって名前、怖がられたりしなさそうだしー、そこから良いほうなのか悪いほうなのか成長していくのは、キミが育てていったらいいんじゃないー?」


「……。…………?」


「あ、ボクはキミを従えたことになるのでー。だって勝ったので」


「あ……あ……!?」


「そっちが従えさせようとしてたんじゃんー。返り討ちにあったら同じようにされてもしょーがないでしょー?」


 唖然としている土偶のどぐりん(決定)。


 ハマルが欠伸をして、またヒツジに戻って眠ろうかとしているときに、リリリリと夢の尻尾の中にしまわれていた電話が鳴った。


 同じようなものを夢の中にしまっているのは[かつてのナイトメア]「マルクパイセン」とハマルは呼んだ。


<……ぐ、ううう……>


「マルクパイセン?」


<……はあ、はあ……世界同時に土人形が派遣されていると、言っただろう。ガララージュレ・エリアにも数体、紛れ込んだ。そっちはどうなんだ……>


「おっそーい」


<このやろう!!>


「だってー。もう一体配下にしちゃいましたもんー」


<…………今、なんて?>


「倒しきらないでー、配下にしてみたのー。どう?」


<ばっかもーーーん!!!!>


 キーーーーーン!とハマルの耳を大音量がつんざく。


 何か理由があるのだろうから、ブチっと切ってやることはしないが、耳を押さえながら悶えるハマルの額には怒りマークが現れている。

 痛みを与えられたいのはこの世でただ一人なので他の人はお呼びでない。ジェネリックとしては先輩の従魔仲間につつかれるのも悪くはないと思っている。


<すぐ手放せ。破壊しておけ。そやつらは近くにいるだけで情報汚染を引き起こす。周りのものを自分たちの支配下に置くために、あの手この手を策略する。そのような不和の元を招き入れるなんて、とくに、なまやさしい環境下では危ないにきまっているだろう!>


「マルクパイセン……ボクらにボコられた時のこと完全に忘れてるのー?」


 ▽なまやさしいどころか容赦なかったね。懐かしい。


<それはそれ。これはこれ。身内となると、とたんに甘くなるのがお前たちだ。以前の諍いも我々がしかけたようなものなのに、こうして情けを見せている! レアクラスチェンジがなんだ! そのうち、身の丈に合わないような災いを招いて滅びに向かったらどうするつもりだ>


「ギルティアが誘っちゃったイヴァンみたいにねえー」


<思い出させるな……あたまが痛くなる……>


「自分で言っといて」


<今日とてデッドとアンのうるさいことよ。シェラトニカ女王もスイもどうかしているし>


「うーん」


 ハマルの頭にピンと閃いたものがある。


 むんずと土偶を掴んだ。


「そっちにどぐりんを送ろうー」


<は??>


「ボクらの近くにいることが心配なわけじゃんー。だったらガララージュレの方で面倒みてよー。いっぱいいるわけでしょー?」


<あ・ほ・か>


「違いますう〜。ちょっと落ち着いて聞いてちょーだい。ボクに負けたこの土偶は、そっちに送ればマルクパイセンの手足にしてもらうこともできると思うんだよねー。従属させようとしてきたのをー、返り討ちにしたら、同じ古代の法則にのりそうなのー。

 で、そっちの土偶をボクらの方にもらうよー。レナ様がみた夢の中にね[とりかえっこの夢]があったから。血縁が近いもの同士をとりかえられちゃうのー。土偶と土偶のとりかえっこならできそうでしょー」


<……。……それは【オペレーション:夢の世界】のために使うはずだったとっておきなのではないか?>


「なにかに使おうとは思ってたよー。アラタお兄様とレナ様をとりかえっこしてー、レナ様のところまでまた行けばいいや、とかねー。ボクの思う夢の世界っていうのはー、レナ様がとびきりの笑顔でいてくれて従魔もうれしいなーみたいなことですからー。

 けれどアラタお兄様ってばなかなか安全なところに行ってくれないですしー。スケコマシしてるみたいですしー。マルクパイセンもなかなか連絡くれないしー」


<すまない>


「ふう。愚痴言ってすっきりしたから、マルクパイセンだけは許しまーす。あのね。クーイズ先輩やリリー先輩はスムーズに成長していらしたのにボクはなかなか進まないなーって、ルーカは羊の石板探してくれてるけど見つからないなあーって、もやもやしていたんですー。どちらかといえばやつあたりしちゃったのでー、ボクもごめんなさい……。お詫びにこっちの土偶を送りますねー」


<関連性があまりないような気はするが>


 ハマルはノリで生きている部分が大きい。

 物理的ダメージをあまり受けないことで、のんびりと構えていられるのだ。


「どぐりん、いいリアクションしますし場が明るくなりますよー。暗いじゃんガララージュレ・エリアって。そういうのよくないですものー」


<わかったよ>


 すっかりとハマルの話に聞き入っていたマルクは、このように中身のある会話をするのは久しぶりのことであり、生前のことを思い出してなつかしさを感じていた。


 すねてみせるのも、わがままも、けれど頼ってくるところも、その声はマルクという人格をきちんと覚えてくれているからだ。

 世話焼きで心配性なマルクはもう昔繋がりの縁の中でしか存在できない。


 ハマルはマルクのことがわりと好きだ。

 それから夢の魔法については美食家の彼をちょっぴりだけ尊敬してもいる。


 ▽ハマルは [とりかえっこの夢]を発動した!


 ▽魔法陣が地面に現れる。


(こーいうのかあ。この魔法陣はレナ様の足元に最初に現れたものなのかもなー? 書かれているのはたぶん元の世界の文字だしー、それをガララージュレのヒトが画像みたいに書いたものだから、ごちゃっとしてて読めないやー。記録記録っとー。ルーカに見せてみようかな)


「いってらっしゃい。土偶のどぐりん」


「アーーーーーっっっっ」


「だいじょーぶ。恐れてる暗闇様とやらはねー、キミを使い捨てにしようとしてたんだから、どこにどんな土偶がいるのかまで把握してないはずだよー。そうなってたらか弱い草食獣の野生の勘がもっとさわいでいるはずだもーん。

 マルクパイセン、ボクの夢を掴めますよねー?」


<やっている。監視していた土偶の下に[夢映し]したさ>


「どぐりんをかわいがってやってね」


<そっちにいくのは凶暴な土偶だぞ>


「わかってる。戦闘パターンを分析させてもらおうと思いますー」


<自信家だな>


「いざとなったらレナ様に進化させてもらうもーん」


<これ以上何になろうというつもりなんだッ!?>


 慌て方を聞いて、ハマルはケラケラと笑った。


「どぐりんと相性よさそー。そっちが賑やかになるといいねえ」



 ▽とりかえっこ 完了!


 ▽ガララージュレ・土偶が 来訪した。



 ▽戦闘開始!!






読んでくれてありがとうございました!


夜遅くになっちゃってすみません><

週末の楽しみにしてもらえたら嬉しいです♫


いい週末にしましょうね。

今年もあと少し!

よろしくお願いしまーす!₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑



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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 土偶「土偶の名前はどぐりんと言うハニ!」 レナ「語尾がそれ!?」
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