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シヴァガン会議新体制

 


 ▽クエスト[リリーの未来]をクリアした。

 ▽ジュエリーデザイナー リリーは部下を得た。

 ▽事務能力が 向上した。

 ▽作品作りに専念できるようになった。

 ▽プリンセスフェアリー・ダーク の基盤が 整いました。


<キラママ。また記録ログ眺めてる>

<ふふふ。私の趣味でもありますし、こうしていちいち記録していかないと別の解釈をされたりだとか、無かったことにされて、いつかリリーさんがヒョイと消えてしまうようなことがあったら嫌ですもの>

<夜更かしせずもう寝る時間なのだ>

<ままごとしてます?>





 ──シヴァガン王国会議室。


 その扉に手をかけようとした女史のヘラをとめて、悪魔マモンが扉に指輪を近づけた。

 すると魔法陣が浮かびあがり、扉は左右にすべるように開いたのだ。



【経済部】悪魔 マモン



 文字が浮かび上がる様を、ヘラはしげしげと眺める。


「はー。新しいシステムが導入されたと聞きましたが、目に見えて違うものですわね」


「ええ。あなたは経済部を支えてくれていますが秘書部の所属ですから、このたび扉を開けることはできなかったのですよ。各部署の長が責任を持って連れてきたものである、という記録になるよう、長が指輪で開けたあとに通る順番にしてください」


「いつもでしたら、もし不審なものがあったならば、ボコって退室。後始末方式でしたのにね。それでは足りない時代になりましたか」


「そもそも余所者を入れない、情報を漏らさないことが重視されたのだとか……。最近、世界情報の重要性が高まっておりますから、そのあたりに堅実だったヒト族の手法をとりいれてみたそうです」


「魔物的にはちょっと窮屈です」


「ですね。だからレナパーティの手法とブレンドしております」


「だから……って……それは、おもしろすぎるのでは」


 女史は笑いを堪えようとして口元に手をやり隠し、しかし頬が膨れているので、笑いたいだろうことは丸わかりだった。


 その隣で、扉が開いているからと入って行こうとした者たちがいる。

 うきうきと踏み出した「タツノオトシゴの頭をした偉丈夫」がふっとばされて後頭部を打った。

 それを幸いと治癒樹脂を売りつけているのは肌が白い樹皮を思わせる樹人レディである。


 普段は忙しくて会議を欠席しがちな面々も、このたびの招集には興味を惹かれたようだ。


「あらマモン氏。ごきげんよう」


「いや商売の舌の根も乾かぬうちによそに視線を移しすぎなんよ。まったく、愉快なレディじゃわい」


「気になるのですもの。彼らなら知らないはずないですもの。ね、レナパーティって最近取引ありましたわよね。たしか冒険者なのでしょう。シヴァガン政府が後ろ盾を保証しているとはいえ、会議にまで手法を取り入れるほど信用してよいものでしょうか。わたくしまだ知らなくて。だからすべて知りたくて。まだ、十年も運用されていないシステムだと聞いたのだもの」


「私、少し知っていますわ。運用は1年未満かしらね」


「まっ」


「しかし曰く、システム自体はかなり長く使われたものだと耳にした。今のラナシュが成立する前の古代の情報を使ったそうだ。ソレを発見する優良ルートというのがレナパーティにあるそうな。余は興味深い」


「それはそれは」


「ほほほ」


「オズワルド君やレグルス嬢とともにおられる、ソレイユ様、カルメン様が実在することを目にしていれば古代発見について疑うこともできないものね。あら、ズーズーちゃま。そんなに怖がらなくてもよろしいわ。ここにはあなたが適任だと思ったから連れてきたのですもの。コートの下に入ってうとうとしてていいのですよ」


【観光部】 淫魔ピーチィ

【環境部】 樹人ネルネフ

【外交部】 水龍クラウディッカ


 三名はそれぞれ付き添いを一名まで連れて、会議室に入室した。

 時間を確認する。まだ少し早い。

 そして他の面々もやってくる。


「よーうロベルト。連れてきてくれたのカイ、古代聖霊様のごきげんはどうダイ、アタシ気になっちゃって夜も眠れないヨオオ!」


「好奇心のためにそう言っておられるならば本日の議題からは離れますし、私も会議にかけられる時間は限られていますし、あなたは睡眠の必要がない種族ではありませんかグルニカ様。片腹痛い」


「キミそんなキャラだったっけ!?」


「話しかけられて情報を求められることが増えましてな。同じことを繰り返し説明することは、部下の時代ならば幾度でもやりましたが、上官となれば効率を求められるところもあり、グルニカ様との会話は無駄が多いと判断したのですな」


「ショックーーー!」


「よしショックを受けて動作が停止したぞ。今だ。五秒で立ち直るから、その前にさっさと室内に運び込んでしまえクドライヤ」


「樹人の大先輩の前で難しい仕事押し付けんのやめてくれねえかなーー!? おらあっ」


「マリアベルちゃん参上☆」


【聖霊対策本部】 雪豹ロベルト

【情報試験部】  検体グルニカ

【警備部】    妖精マリアベル


 真新しい腕章をつけながら、いかにも急いで駆けつけたというように騒がしい入室。

 実際、ロベルトたちは気難しいカルメンから世界情報の聞き取りをしており時間に余裕はない。

 ぼろっとした髪にとヘアオイルを売り付けられて思考停止で樹人の言いなりのマリアベルも、忙しい街の警備から帰還したばかりだ。移動がありここの長になったばかりである。


「──時間です。ここに集まるために都合をつけたみなさんを褒めましょう。よくできました」


【秘書部】 影蜘蛛サディス


 無表情で拍手をしている。

 周りのものたちは動揺して視線をうろうろさせている。


「我がもっとも褒められるべきという結果になるのだが?」


【魔王】  ドグマ


 だるそうに頬杖をついてドグマはぼやいた。


 皆、ゴングが鳴った幻聴を聞いた。


「……。これは部下の行動の是非をただしく評価して口にすれば、世界にわずかに刻まれるそうで、くりかえすことによって世界情報に固定されるという効果を狙った声かけなのです」


「つまり、これまで通りの、すり込みではないか!」


「理解がお早いこと。ぜひ感覚の理解だけでなく、空気の読み方と呑み込み方も学習していただきたい。さきほどの説明のとおり、魔王ドグマ様は絶対王者であるため褒めるという作用は必要なく、部下にのみ作用するのが”言うことを聞けたのでよりよい部下でした”という言葉です。割って入る必要はなかったことがお分かりになりましたか」


「とんでもない早口だな」


「時間がもったいないので。三倍速でも魔王ドグマ様であればお聞きできるでしょう」


「三倍に圧縮して嫌味を言うな。ああくそ、最近お前と顔を合わせる機会が多かったせいでどこが嫌味でどこが本心でしかも我からの煽りを受ける気もないことが手に取るように分かるぞ。疲れる。これなら体を動かしていた方がよほど快適に回復するというもの。オズワルドと訓練だ、午後からの時間は邪魔するな」


「会議後はご自由に。それにしても対抗して即三倍速の早口を言いなさるとは」


(ねえー! 最近魔王様とサディス宰相の仲が悪くなーい?)


(デスクワークが続いていて疲労しているようですよ)


(なんか存在が消えちゃいそうだから助けてーって、そのために大組織に入るのが一番だって本能的に思った魔物が押し寄せてきてるんですよう。信用できるものなのかを魔王様が直感で調べて従わせて、サディス宰相が書類上の分類をされてるからねー。んもうめっちゃ大変なんだから。警備に移動になってすぐこれよ。フェアリーアイも酷使よ。とほほ……)


(ほとんどは木端の小市民となるが、稀に、それだけにとどまらぬ期待株もいるらしいな)


(そういう存在は採用したいですものね。ヒトの国家が世界危機を前に手を取り合っているといいますもの。まとまってこられたらたまらないですわ)


(で、オズワルドが巻き込まれているわけだ)


(そう憐れむものでもないですよ。あれはあれで意欲的に立ち位置を利用していますから、大丈夫そうです)


(ね、ね、オズワルドくんが魔物使いの女の子に惚れてるって本当?)


(思春期だものね。恋の100回くらいするのではないかしら。発情期はまだしばらく先でしょうけれど)


(やめてやれかわいそうに)


 妖精の歌うような小声であるとか、樹人のさざめくような小声であるとか、波打つ声、魅惑の吐息、冷ややかな風が吹き抜けるような声など、さまざま入り混ざり、ここはまさに魔物のるつぼであった。


 ふと、どうにも勝手がちがう笑い声。

 ここにいない者かのような、ぽんと出現したかのような声がする。


『三倍速にしようともっと早かろうと、我々には”視えて”しまいますけれどねえ』


 声は一見「ふつう」だ。

「特徴がなさすぎる」ヒトのような音だとも言える。

 みなそちらを見た。

 すると、ぼんやりとした光で形作られた「メデューサ」がそこにいた。

 頭の先から鎖骨のあたりまでのみ、胸像のように佇んでいる。

 発される音がそこからなので、メデューサの発言だと伝わった。


 サディスは「声に特徴がないことが課題ですね」と呟き、映像を指差した。


「これもまた新しいシステム。遠方にいる者と会話ができるんです。シヴァガン政府に所属する長、それに協力関係にある各地部族長、ジーニアレス大陸内の心当たりのあるところとは連携の調整ができました」


「すごいものですね」

「どのような仕組みであろうのう」


「グルニカさんの出番だったんだヨー!」


「ええ、グルニカには生体実験に協力してもらいました。彼女は共同生活を壊すような蛮行をしてしまいますが、そのひらめきの多様性は利用価値が高いです。試作段階で通信を何度も試してもらい、そのつど”ここが至らないのではないか”と魔道具を再建して、ときには体の情報を一部消し飛ばしながらの、システム成功となりました。

 ”プラネタリウム型通話システム”

 中央にある映像魔法装置[幻影]により話者の姿を情報固定。

 話すときの音について[超音波]を[声]に変換しています。

 この音を通す仕組みがグルニカにより”なぜだか”できてしまったのですが、再現性があることを、レナパーティの世界情報研究者キラ博士が保証してくれました」


 マモンが手を挙げた。


「そんな名称ありましたっけ」


「自称だそうです。カルト思想の一つとしか今は言えませんし、立ち位置としては、赤の教団の教義ドグマを尊重するというあいまいなものになります。長年使われたものではなく世界に定着してはいない、しかし現在世界が安定していないため、長年使われてきたことはもはや保証されていない」


「だな。一からやり直すのも我は興味深いが」


 魔王ドグマの手を下げさせることにサディスはためらいがない。なんなら睨む。


「お黙りください。それ以上はいけません。ドグマ様には明確に存在して頂きたい。

 ──なにを信用するのか”選ぶこと”がより重要になってきた今、声をかける個人がどれだけしっかり踏ん張り立っているのか、という事のほうが重要です。これまで大丈夫だったから、で判断をしてはならない。今からに期待ができる存在か、生きてゆく体力があるのか、性格はどうなのか?

 みなさんもキャリアに胡座をかいていたら”ご相談”申し上げますのでしっかりお立ちいただきますよう」


 宰相の一瞥を受けて、各部署の長たちは沸いた。

 喧嘩を売るような気配を差し向けられたのだ。

 魔物としての闘争心が騒ぐ。


「これはこれは」


「ぐわっはっはっは。よいではないか。余も立場をなくすかもしれぬと思えば、ちょっとワクワクしてきちゃった」


「水龍の、我もそちら側だぞ。せっかくだから午後前にひと試合」


「ならぬよ〜魔王ドグマ様。そなたはまだ若いのじゃからホレ、息子一人くらいしっかと育ててから己に夢中になれい。余は龍宮城に孫もひ孫もめちゃくちゃおるもん。それで世界中に外交行けるのじゃしね」


「ううーむ……」


「お待ちになって。かといって魔王ドグマ様を我慢させてても本来のスペックが発揮されるのはそこではないもの。いい子に首輪をつけられたケルベロスになられてはいけないわ。それでは魔王ではない。ズーズーちゃま、彼の闘争本能を少しだけ眠らせてさしあげて下さる?」


「ピーチィ姫、前はズーズー様って呼んでなかったっけ?」


「まだレナさんが恋しいみたいなのよ。だから母親感を増すように呼んでいるってわけ。そういう世界もあるのよマリアベル嬢」


 サディスが時計をちらりと見る。

 このくらいの脱線であれば、じゅうぶん、マシな範疇だ。

 種族ごとの特徴で喧嘩させてしまうのではなく、喧嘩心は相性がどこともましな影蜘蛛に向けさせておいて、凸凹のパズルをうまいことはめるように各部署長に収まってもらう。計算通りに進んでいる。


 またしても、光が集まり、桃色の髪と純白の翼の上方がつくられた。


『先にそちらの声がしばらく聞こえていました。なんだかすみません。身内の実家がお騒がせしております』


「おお、天使族は族長ではなくそなたが出席するのだな!えーとディス。呼びやすくなったぞ」


 水龍クラウディッカがにかりと笑う。


『はい! 次期族長の私が勤めさせていただきます。ご老人は最新技術にアレルギーを起こしてしまったのですよ』


「エー? アタシわかりやすくデザインしたのにィ。んもう天使族の老人会、そんなことじゃあ次の時代に置いてかれちゃうのにネ!」


『いざ消えるかもってなったら必死に学び始めるんじゃないでしょうか。その時にはきちんと頼んでくれたら私たちが教えますよ。まあなりようにしかなりませんよね』


「「い、いうじゃん」」


『恐れ入ります──』


 各テーブルに部族長がつき、いないところには光が集まり顔を形作っている。

 顔が映っていないところもあり、それは機材の改善でなんとかしていけるだろう、とサディスは算段する。


 そして声をワントーン低く。

 話し始めた。


「本日の目的はまず、入室の動作確認。プラネタリウム型通話システムの動作確認。各部署の名称をこれから刻みなおしてゆくこと、またその名称により適切なものがあれば発言してもらうこと。

 そしてスカーレットリゾートが無事に開催されるための話し合いです。こちらの魔物押し寄せ騒動があちらにも余波とならないように……」


 手元で連絡音が鳴る。

 スマホのメール着信のような音だ。


 一言「本日の議題のため赤の聖地と繋がっております。声はあちらに聞こえません、即時手紙のやり取りです」と告げる。


「おや、レナパーティの最新情報……。……」


 読み上げようか迷ったが。



 ▽従魔[クワガタフェアリー]ゴルゴが 仲間になった!



「なんだそいつーーーー!?」


 マリアベルが立ち上がった。

 やっぱり、と思いながら時計を見る。

 まだ、雑談タイムとしては余裕がある。


「マリアベル。あなたは妖精種族について広く把握していますね。心当たりは?」


「知らない妖精種族です! リリー様の近くにいるんでしょうねジェラシイイイイ」


 この会議が長引くであろうことを、誰もが察して、テーブルの端に寄せてあった軽食セットをおもむろに広げ始めたのであった。

 会議は腹ごしらえから。





読んでくれてありがとうございました!


【ドリームジョーカー】攫われた子が日本に帰るため奮闘する話

連載始めました。

挿絵もいただいてますから、ぜひ読んでもらえたら嬉しいです♫

あ、ダークファンタジーです。


今週もお疲れ様でした。

良い週末を₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……事件は会議室で起きているんじゃ無い! レナ様で起きているんだ!
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