ゴールデンクワガタを探そう!
▽経理向き・昆虫種族・目撃情報を組み合わせたベストなクエスト。
▽ゴールデンクワガタをテイムしよう!
<こちらです>
「パンドラミミックの箱の内側が案内板みたいになってる!
ナビゲートしてくれてありがとう。この辺りの地形はよく知ってるの?」
<従魔たちがそれぞれ行けるところを巡回して、それに私の分身体がついていって、フィールドワークにより案内できるところが増えました>
「ありがとうね」
<マスター・レナお一人ではとてもこのラナシュ世界を冒険しきれませんもの。ともにがんばらせて下さいませ!>
キラの案内板には地形の特徴が書かれている。
航空写真のように上から見た図になっていて、スカーレットリゾートと赤の聖地、シヴァガン王国、そして目的地までが画面に映っていた。
山になっているところは高さの表記があり、レナにはそれとない懐かしさがある。
高校の地理の教科書によく似ていたのだ。もう覚えていないけれど。
「わかりやすい。そろそろ着きそうだよ。ハーくん、キサ、準備はいいー?」
「『はーい』」
キサは珍しく動きやすそうな格好をしていた。
ぴっちりとしたスキニーパンツと、袖の短いラミアの伝統着物を合わせたら、忍者の仮装のようである。普段は長いスカートに覆われていて見ることはできなかったが、体つきはむっちりと肉付きが良く「最近スカーレットリゾートで売る予定の試食をしたり、スイーツモムが美味しすぎるのじゃ……」とのことだ。
ハマルは小さく[体型変化]してキサに抱えられている。
近頃たくさん商業仕事をこなしているらしく、いつも以上に目がとろんとして眠そうだ。
(二人は万全の状態ではないけど……今回のゴールデンクワガタの特徴を聞いていると、この組み合わせがベストだと思うんだよね。クワガタは色が特徴的なだけでまだ強くないらしいし、捕まえられることを優先した人選にして、きっとこれで良かったはず)
レナは久しぶりに自分の胸に手を当てた。
(頼むよー。私の幸運さん!)
▽あいあいさー!
▽とか言ってるかもね。
▽でも 幸運を使いすぎると 悪運に転じることもあるからさ。
レナの向かう先の草むらががさがさと揺れた。
(さっそくクワガタかな?)
ひょいと顔を覗かせようとしたレナの前に、キサが腕を伸ばす。
「下がってくれ、レナ様」
「キサ……危ないの?」
「妾にはそう感じられる。どうにもこの瞳でも実態をとらえられない。よく見える目であるのに、じゃ。警戒をするには十分であろう。
人数が少ないのは、クエストクリアには問題ないけれど、他所からちょっかいをかけられる可能性は気にしていた方がよかったかも」
レナはごくりと生唾を飲む。
甘く見てきたつもりはないが、十分な警戒だったかと言われると、オズワルドやレグルスも誘えたはずだった。
出かけるとき「俺も一緒に行こうか?」と声をかけてくれたのに、忙しいだろうからまた今度お願いするね、二人も頑張って、と遠慮をしてしまったのだから。
ざわざわと風が揺れる。
レナが今いる草原は、見晴らしもよく、少々の背の高い草があるくらいのところだ。危険度は極めて低いルートをキラは選んでくれていた。
それでもラナシュの空が暗くなることもある──。
▽空が 暗く なり始めた。
▽昼の空に 黒い竜巻のような渦が レナめがけて降りてくる。
「レナ様!」
キサが氷のドームを作って、自分たちを覆った。
「……ありがとう。今のうちに来れる子を助けに呼んで、キラ。ここからは私たちでなんとか耐え忍ぶよ、称号も全てつけて、まずは追いつかれないようにして暗闇の範囲外に[逃亡者]──あっ、ハーくんにダッシュしてもらったらそれにも逃亡つくんだっけ!?」
<マスター・レナ。日常的な確認不足ですね>
「あちゃー。日頃の練習を先送りにしてしまってたな。反省……」
<よし。もういいでしょう>
「ん? ああそうだ、呼び笛も吹いちゃおうかな。えーと、モスラとシロノアールさんとサディスティック仮面、誰が最初に来るかなー」
<ストップ・ストップです! いったんストップでーーす!>
「ええ? どうし……」
どうして、と聞く前に理由は、現れた。
キサが、
「怒ってしまうぞ〜!!」とプンプンしている。
氷のドームを幻のように解いた。
空に現れていた暗闇のうずも、幻のように消えてなくなってしまっていた──。
草むらから、ぴょっこりと金色猫が飛び出す。
「あーーーー!」
『ふふふ』
「楽しそう!」
『やあ。よくできていたじゃないか。危機対応、合格』
「この間までメンタルガタガタだったくせにー!」
『それはそれ。これはこれ。ニャン』
ごほんごほん、と金色猫が咳払いをする。
みなさんもお分かりであろう、ルーカティアスことネコマタヒト族のルカニャン(遠隔獣型)である。
ほとんど透明だった姿が、実態を伴い草をかき分けるほど質量をもって、レナのすぐ足元にやってきた。
キサの目で見えなかったはずだ。
それよりも圧倒的な瞳の魔法を使ってここに来たのだろうから。
現れた金色の毛並みをレナは少し遠慮がちに撫でてやった。
ルーカも少し背中の毛を逆立てて緊張しながらも、しだいに猫の喉がゴロニャンと鳴った。
「案内役をやってくれるつもりなの?」
『うん』
「よろしくね」
▽林の中へ──。
木々がまばらに生える林はそれなりに範囲が狭い。
このように土地の特徴が「ざくっと区切られたように変わる」のは、気候の特徴が偏っているジーニアレス大陸ならではの特徴だ。
ミレージュエ大陸ならばゆるやかに変化していたところだろう。
林エリアに踏み込めば、空気感も違うように感じられた。
湿気が多めで蒸し暑さがあり、影の部分につい足を踏み入れたくなる。
それは虫たちも同じようで、日向よりも影の方が、過ごしやすいらしい。
しかし日向のあたたかさによりちょうど良い木が育っているから、蜜を吸うことに困らず、虫たちはこのエリアをすみかにしようと決めたのだろう。
(お兄ちゃん、虫取り、好きだったな)
レナは虫取り網を手に、思い出す。
▽いつ調達したのかって?
▽わざわざ過去写真フォルダと似たものを特注しておきました!
『で、だ。ゴールデンクワガタはあそこだよ』
「はっや!!」
木の影になっていてさらに腐葉土が重なっている外からは見えない部分。
少し掘ってみればゴールデンクワガタが出現するだろうというのだ。
「ゴールデンクワガタは魔物なんだっけ?」
『確認不足。モム以上、魔物未満というところなので、少々相手をしてあげたらレベルが上がり、テイムができるようになるでしょう』
「すみませぇん」
『ハマルとキサっていう選択はよかったよ。テクニカルな戦い方を得意とするんだからね。けれど、どうやって捕まえるのかは僕にも不明だ。レナの発想を楽しみにしているよ』
「まるで退屈して水槽を覗き込む猫ちゃんみたいですね?」
レナはじりじりと腐葉土に近いていった。
(たしか、カブトムシやクワガタって、浅く地中に潜るのは好きなんだっけ。せっかく飼ったのに姿が見えないって幼い私が泣いて、そうしたらお兄ちゃんが解説をしてくれたんだ)
腐葉土の上から見ていると、わずかに身じろぎをして、土の表面が動いた。
このあたりだ、とレナが目星をつける。
「ハーくん、この周辺の虫たちを眠らせておいてくれるかな。ゴールデンクワガタと混ざっちゃわないように」
『ドーナツ型ってことですねー。了解ですー』
「キサ。冷気を細く操って、土の表面を撫でてくれる? クワガタはおそらく魔力の層を敵とみなして向かってきそうだから、蹴散らさずに、ちょうどよくはぐらかして」
「体力を削りつつ相手をしてやるということかの。了解なのじゃ」
『手加減しつつ手抜きはなさそうだ。それに面白そう』
ニャン、と尻尾が揺れた。
さわさわと生き物の活動の音が聞こえていた林は、しんと寝静まっていて明るい夜のよう。
ひときわ冷たい空気の手のひらで撫でられると、なにごとかとゴールデンクワガタが早々に様子を見にきた。
性格は「びんかん」なようだ。
目の当たりが外に出たら、目立つ体色をさらさないように、しんちょうに動きを止めたのもよい。
(うん。経理と相性良さそう)
「捕まえるよー!」
▽虫にしては 慎重で思慮深かった。
▽ただし相手が悪かったのであった。
▽そしてこれから 新たな扉が開いていくのである。
ゴールデンクワガタは逃げようとした。
いつもならばこの程度では見つからなかったのに、すでに強い視線が自分に注がれていたからだ。
まったく音を立てずに動ける。
この静かさで彼女はこれまで捕まらずに生き延びてきた。
獣人の子どもに見つかったって、変なコレクターに追い回されたって、いつも撒いてきた。すばやかった。
しかし、見えない壁に阻まれてしまった。
格好の逃げるルートに違いないのに、そこを通ることができない!
わずかに体が前に進むので、パワーで突き抜けようとする。
この空気の層は薄いように感じられたのだ。
しかし、またすぐに空気の層がある。また、突破。
せっかくここまできたのだから、と、クワガタは意地になってそこを通ることにこだわってしまっていた。
観察するレナたちを満足させている。
「おー、根性あるねえー」
「妾の冷気の制御もなかなかいいかんじじゃ。使い所がなかったから試していなかったものの、少々冷やす、というのも妾の才能やもしれない」
『それはそうだねー。キサも何かクリエイターのお仕事してみるー?』
『チョココと組んでチョコレートの温度調整をしてあげたり、クレハとイズミと組んでアイススライムごっこをしたり、ミディと組んで冷凍イカ商品の開発も面白いかもしれないね』
「ルーカさんの考察がガチだ。おっ、疲れていたクワガタが、ちょっと元気を取り戻したようですよ。何もないのにパワーアップしているし、成長率はどんなものでしょう。ルーカ先生」
『テイムできそうニャン』
「まってました」
レナがにっこりとする。
網を振りかざして、ゴールデンクワガタを捕まえた!
網をねじるようにして振りおろしており、地面に再び潜ることもできない。クワガタのハサミで網を切ろうとしているが、影蜘蛛製の糸はクワガタにも切れない代物だ。
▽私の発注です☆
▽サディス宰相は嫌そうな顔をしていましたが 普段ギブしている分テイクしてもらいましたとも。
「私はあなたをテイムしたいです。魔物使いレナは、ゴールデンクワガタをテイムすることを望みます。スキル[従魔契約]」
輪のようにした指を、クワガタの上に置いた。
クワガタは挟んでくることもなく、契約は行われたようだ。
このようにテイムすることは事前に打ち合わせていた。
鞭は虫取り網に絡ませており、万全のはずである。
「あれ、でも、感触が薄いけど……」
『強い魔物とばかり契約をしていたからさ。大丈夫、レナとこのゴールデンクワガタは、うっすらと魔力の繋がりができている。きちんとテイムできているよ』
「よかった。成長させてあげたらもっと実感できそうですね」
『今は回復してあげるのがいいだろう。それから少し育てること。メジャーな魔物でもないし、本体と合わない命名をすれば消えてしまうかもしれないから、考えて名前をつけてあげるといいよ。きみは従魔が消えてしまったら悲しんでくれる人だろう。慎重にいこう』
▽従魔 ゴールデンクワガタが 仲魔になりました!
▽魔物使いステータスに 追加します。
▽クエスト:従魔ゴールデンクワガタに 名前をつけよう。
▽クエスト:従魔ゴールデンクワガタに 初めての命令をしよう。
▽クエスト:従魔ゴールデンクワガタの レベルを一つ上げよう。
▽クエスト:従魔ゴールデンクワガタの 進化先を予想しよう。
レナが持っているパンドラミミックの蓋がパカリと開かれて、ウィンドウが縦に展開されると、ズラリと通知がならんだ。
「わっ。キラ、これなに?」
<これからマスター・レナがやるべきことをクエスト形式に整理してみました。このようなご時世ですからね。前にも増してあいまいだから、いい加減に過ごしていれば情報が消えてしまうかもしれない。こうすると決めたことなら仰々しく主張していきましょう>
「助かるよ」
<あとでいっぱいハートのスタンプ押してね♡>
<キラママが甘えているところ見るの、マロ、微妙〜>
<ただ反抗期が来ているだけですよ。もともとこんなものでした。慣れるか目を瞑るか致しなさい>
<ふりきれてるーー!>
キラは業務過多で疲れているのかもしれなかった。
「キラ、昨日は私のことを大人びて諭してくれたよね。してあげてばかりで、自分のことは甘やかしてあげられなくて、限界が来たんじゃないかな。相互にケアしていこーね」
▽ハートをタップ!
<あっ♡ マスター♡ 嬉しいです♡♡♡>
<普通のことしか言っていないはずなのにいかがわしい気がするのはなぜだろう。そして金色猫が消えかかっているが>
「ルカニャーン! 潔癖に磨きがかかっている……。たまには赤の聖地に遊びに来なさいね!」
『リハビリが割と劇薬』
ゴールデンクワガタは困惑していた。
従魔になったからには働くように言われるだろうと覚悟したのだが。
従魔とは? 主人とは?
ただただ仲良くわたむれているレナパーティを前に、虫としては優れた知能を捻っても、答えは出ないのであった。※これからも未来永劫答えはでないよ。
▽Next! リリーにゴールデンクワガタを見せよう。
読んでくれてありがとうございました!
クワガタちゃんをリリーさんに教育してもらいますね。どんな成長を遂げるのかワクワクです(*´ω`*)
書くまでわからないことも多く、最近はキャラがいっぱい動いてくれて書くたび発見があって作者も楽しいです!
ともに楽しんでもらえるように、伝えられる書き方を心がけますね。
今週もお疲れ様でした。
よい週末を!₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑




