ジェットコースター・モム
▽クーイズ チョココ ジレ マイラ アグリスタから通信。
▽<遊園地ゾーンでジェットコースターをしたい?>
▽<今すぐ?>
▽<ちょっとマスター・レナに確認を取ってきますね>
▽<では代わってマロがOKしておくぞ。ポチッとな>
▽マシュマロは 世界への勘を褒められて 自信をつけている!
▽子育てって難しいね……
▽レナに ママ友ができた。
赤の聖地の入り口門の辺りに、小薔薇のアーチがある。
これは生花だ。
アーチを守るのは屈強なマッチョマンフラワー二体であった。
▽マッスルポーズ!
▽ゲートが開いた!
アーチには鏡のような膜がはり、しかしそこに自分たちの姿は映らず【スカーレットリゾートへようこそ】と書かれていた。
クーイズたちが足を踏み入れると、幕をくぐって涼しい通路へと入る。
どうやら異次元へとゆく【ラビリンス】の機能を制限して、細い道のようにしたようだった。
かがやく銀色。
コツコツと足音が響くのは、クーイズたちがここに確かにいるという、ラナシュ世界への念押しである。
「へえ、ラビリンスをこんなふうに繋げたんだ!」
<そうなのだ。近未来感というのはマロのお気に入りである>
「近未来感……なるほどね〜。アニメであったよね。ん? アニメって言い方はオッケーだっけ」
<オッケー。赤の女王様のアニメを制作中だから>
「わーお」
クーイズは飄々と話しながら歩いていく。
他の従魔たちは、それぞれの服の裾を持ちながらどこか恐々と歩いていった。ラビリンスを通るということにまだ慣れていない。
そしてジレたちはまだ、犯罪者扱いの自分たちが、という負い目もあった。
そうやって控えるからこそ、まだ子供という年齢もあり、赤の聖地の敷地内であれば歩いてもいいだろうとギルド・シヴァガン政府も判断しているのだが。
クーイズは、背中の服の裾をつまんでいるジレの手をぐいと引いてあげた。
(やれやれだ。チョココが誘いに乗ってくれてよかったな〜。それに、この子もスウィーツパラダイスに引きこもりになりがちだもん。我らが従魔の先輩として導いてあげましょう。ねっ、しっかりやってるぜ、マリン・ローズ。えへん)
背伸びして歩くクーイズであった。
その耳たぶにピアスのように淡いアクアマリン色、薄薔薇色を色づかせている。
アンらしき悲鳴とデッドらしき笑い声が、ほんのりと聞こえた気がしたのは気のせいだろう……。なんとかやってるでしょ。
「出口もシンプルだねー」
<シンプルにして情報量を減らし、そのかわりに、一人一人の情報をはっきりとさせるサーバー管理。鮮やかな手腕、どや。マロはキラママにも褒められたのだぞ>
「えらーい」
レナだったらこう言うかな、とクーイズはマネをする。このタイミングでいいっけ、と首をかしげつつも。
<すごーいのだよ>
マシュマロは自慢げだった。
通路をひたすらに進んだのは約5分くらい。
ラビリンスは現実空間から離れたところにあるので、いわゆるワープが可能になったようなものだ。
たまご型の銀の扉を開けて──。
そこは別のエリア。
▽仮制服の オズワルドと シュシュの お出迎え!
「「ようこそお越し下さいました。スカーレットリゾート遊園地へご来場ありがとうございます」」
どう? と二人は目で訴えかける。
キャスト然とした立ち振る舞いを覚えてはいるが、まだどこか初々しさがあった。制服にも着られているような感じがある。二人とも、すこしブカブカの服の裾を折っていた。
「オズとシュシュだ〜! やっほー!」
ぐーん! と背が伸びたクーイズ。
マダムミディよりも高くなって、また元に戻る。
不安定でもあるが、リカバリーできるならば自由にのびのびとして特性を知ろう、というルーカ先生の指導である。
きらきら、ピカピカ、クーイズの豪華な見た目には、目の肥えたオズワルドとシュシュも驚かされた。
「うああ。スライムキングだっけ、ほんとうに、さらに進化したんだ。聞いてたけど現物を見てみると、目が眩みそうなくらい……!」
「だな。俺も眩しい。こんな魔人族見たことないぞ。それに細くて繊細な容姿とはうらはらに、どうせかなり強いんだろ?」
「やーん。我らはガラスハートなのにー☆」
「「よく言う」」
こればかりはオズワルドとシュシュが同意見でハモる。
泥を食ってでも生き延びそうなのが、クレハとイズミだというイメージがあった。スライム種の弱点である核のしまい方も今となってはとても見事なのだ。
「うへへ〜。我らはね、宝石ボディなら防御力がすっごく高いし、スライムボディなら包容力がとっても高いんだよ。どちらもいけるナイススライムだぜ。さらにモムも生めるし〜」
それをしにきたんだ、と伝える。
ジェットコースター・モムについて説明しようとしたが、オズワルドとシュシュが興味津々に観察しにきてしまい、先にショーケースの宝石になってあげることにした。
「あのさ。単体で完成してるよなあ……」
「一人だけでできることが多すぎだよっ!
でも、そういうものなんだっけ……。
シュシュはげっ歯類魔物だったから、親元を離れて1匹だけで自立できるようになっていくという種族。おそらくスライム種族もそうなんだよね。群れを作らないから、一個体で完結するためのもの。
対して、集い群れる固有種族ならば、それぞれが技能を補いあっている。一人だけでたくさんできるようになるんじゃなくって、一人ずつが要る技能を持って、それぞれが縁をつなぐことに時間をかけているから、まるでひとつの大きな生き物のようになるの。種族まるごとがね〜、そう感じちゃうというか〜」
口籠もってゆき、シュシュは舌を噛んでしまった。
あかんべーをして痛がっている。
「シュシュは今、考えていることを言葉にする練習をしてるんだよ。天使族のディスと並んで大勢の前に立つことがあって、言葉を身につけたいって思ったらしい。ちょうどいまは”説明口調すぎる”ところがあるんだよな。シュシュの説明、わかった? 俺が言い直そうか?」
「オーズー。あのね、オズだって、体力つけようと練習してるくせに! 練習途中なのに! そりゃオズの方ができてるけどさ……シュシュ、そのうち抜かすからっ」
「シュシュはいろいろやりすぎてるんだよな。天使の弓の練習をするためにエルフの里に訪問、言葉を覚えるために天使族と会議したりお宿♡に行ったり。
いろんなことを同時期にやってりゃそれぞれの進みが遅くてあたりまえ。俺の方ができることは、頼った方が効率いいのにさ」
「効率厨!」
「負けず嫌いだな」
「まー、まー、まー」
▽クーイズは クレハとイズミ に戻った!
▽クレハは シュシュをぎゅっとした。
▽イズミは オズワルドをぎゅっとした。
「「やっぱり手が多いほうがいいよね〜。多めに抱きしめられるもんね。従魔はさあ、それぞれがレナの手の分身みたいなもんだから、ほれほれ癒されてもよいぞ〜」」
合体してから分裂するとクーイズ一人だけで話していたときの癖が抜けないのか、それとも同じことをしみじみと思っているのか、どちらだろう、とシュシュは思った。
オズワルドはシンプルに照れた。
▽ジェットコースターにのろうぜ!
うねるラミアの尾のように、はたまた自在なクラーケンの腕のように、スカーレットリゾート遊園地ゾーンの全体をめぐるようにジェットコースターレーンが張り巡らされている。
レーンは赤色。だからリボンのようでもある。
ここを、流線型ののりものがものすごいスピードで滑るのだ。
▽それはもう楽しそーう!
これまで脚の速さに憧れていた魔物はそのスピード感を知る。
これまで海を泳いでいた魔物は空を飛ぶことを知る。
進化していく魔物たちの、その進化先に影響を及ぼしていくことにもなる。
搭乗ゲートにて、シュシュがにんまりとなる。
「ジェットコースターが一番最初に完成したんだっ。これが一番時間がかかりそうで、けれど絶対に安全じゃなきゃいけなかったから、すごく気をつけて作ってたし点検してるの。
ドワーフ族がようやく太鼓判を押してくれた。シュシュたち天使族は、何度もこのジェットコースターに乗ってみたんだよ!」
シュシュはバサリと翼を広げた。
「翼がある魔物が乗っても空気抵抗は問題なかったよ。けれど興奮して翼が開いちゃう天使族がいたから、翼があるものが乗る場合は、布のベルトを翼にしてもらうのがいいかもしれないってシュシュたちが提案したの」
「「いいね!」」
「俺の場合は、体重をすごく重くして点検をしたんだ。ジェットコースターは何キロまでならば耐えられそうか……200キロまでだな。魔人族としてヒトらしい体格のままジェットコースターを利用するなら、それほど太りすぎてるやつはそういない、ほとんどが体重制限をクリアできるはずだ」
「……チョコレートプリンスなら……?」
チョココが弱々しく言う。
メンタルがプリンのように脆いときなのだ。
クレハとイズミは、フッとニヒルに笑った。
「「我らぷるぷる!」」
「!」
▽クレハと イズミの 左右フレンズ固め!
▽やっぱり 手は多いほうがいいらしいね!
ぷるぷる震えながら瞳を丸くしているチョココに、クレハとイズミは宝石みたいな笑顔を向ける。
「スライムもプリンもぷるぷるしてるじゃんね」
「だから皮膚とか体表面が弱い魔物がここに乗ったらどうなのか。試してみたらいいんじゃない?」
「ていうかチョココはどうしてシュシュとオズワルドに張り合おうとしたの?」
「我らとのモム・バトルは?」
「「もー!」」
「「きっとキミが不安定なのはさ。進化した自分がどんなもんなのか、よくわからないんだと思うぜ。いま、ラナシュの情報曖昧らしいじゃんよ。あたりまえにあったステータスが信じられなくなるんだよ。そんなん混乱してとーぜんよっ。
足元がこわくなるときってね、周りにいる君の友達が、あなたってこうね! って言ってくれるのがいちばんさ!」」
「まあなんて可愛いスライム」
「私の従魔になってちょうだいよ」
「「こーんなふうに。ね?」」
クレハとイズミは弾むように駆け出した。
ジェットコースターの搭乗口はいかにも遊園地らしくポップなゲートがつくられているが、まだ関係者しか立ち入らないところなので、電気も魔力も通っておらず、ただの愉快な置物である。
搭乗ゲートをくるくると面白く通り過ぎて、
「「ちょうど横に三人掛けなんて運命だね☆」」
「……ぷるぷる。すみませんが、髪の毛先の黄色いところなど、かじっていただいても?」
「「? ぱっくんちょ」」
レナが遠方からモニターで眺めながら「それいるー!? いりそうかー! チョココだもんねー!?」と叫んだところである。
そう、必要だった。
チョココはニコッとした。あとでわかったことだが、しばらくスウィーツパラダイスにいてばかりのチョココは、誰にも美味しく食べてもらえなかったことがストレスになっていたのである。
前はそういうときは自分から「スウィートミィ♪」と声をかけていたが……。
プリンスとなりプライドが芽生えた今は、少し言いづらかったようなのだ。
「やべー。美味しいじゃん」
「自然生成される甘みってレベルじゃないぜ」
「複雑で濃厚な卵のうまみ……いや卵混ぜたのどうやって?」
「そもそもチョコレートってどうしてそうなったんだろ?」
「コピー能力みたいなものがチョコレートクイーン系統の遺伝子元なのかなあ」
「って、わーーーーーーーっ!」
▽ジェットコースターが 動き出した。
「落ち込んでる暇があったら動けば何かは変わるんだよ。押忍」
「お前ってそういうとこある。スイッチ押す前にせめて一声かけようぜ」
▽チョココの気持ちが 盛り上がっている。
▽髪の毛先が とろとろととろけていく。
▽宝石の髪が きらきらと舞う。
▽モムが生まれた!
▽プリンチョコレート:宝石=100:1
▽マシュマロメモより。
オズワルドが効率よく指示を出す。
「ほらお前たち、突っ立ってないでさ。シュシュはもう行っちゃったぜ。
アグリスタ、軍馬ペガサスになって飛ぶ練習をしてこい。ジレはGーレックスで地面を走り回って地面の耐久確認だ。マイラはまだモムになりきれていない宝石を拾ってやって」
「オラオラオラオラオラー!」
『ひいっ。天使族なのにすごく鋭く飛んでるぅ……』
『ジャンプしてみました。さすがに地面にひびが入りそうですね。補強してもいいかもしれません。そして、もっと走ってきます。心配しなくても俺たちは赤の聖地敷地外には出ませんから』
『私もシルキー・リトルになってみます……そうしたら少し浮遊ができるし指先が器用になるの。欠けた小さな宝石が多くて、クーイズ先輩は悔しそうにしてますね』
「俺は寝ておこうかな。ふあああ。昼は鍛錬、夜は勉強で忙しいし……効率的にやらないとな……。……。主さんを……レナさんを守るためにならさ……どれだけでも強くなっておくのがいいし……」
翼を持つものたちは空を飛び、強脚のトカゲが全力で走り、それよりも早くジェットコースターは遊園地ゾーンを巡ってしまう。
搭乗ゲートに戻ってきたときには、クレハとイズミ・チョココの髪は逆立ちをしまくったボンバーヘッドになっていたので、遅れてやってきたレナは、笑ったらいいのか叱ったらいいのか。結局笑わせられてしまった。
▽進化したてなのにちょっと無茶しすぎでした。
▽ノリで生んじゃったモムの教育、どうするの?
▽Next! モムを遊園地係にするという試み
読んでくれてありがとうございました!
聖地の整備も整えて
従魔とレナさんの日常生活を書いてあげて
では何が起こっていて、問題なのか、
レナパは自分たちの進み方が安定してきたので
世界のことを書いていきますね。
引き続きよろしくお願いします!
今週もお疲れ様でした。
なんだか雨が多くて体がだるくなりますね><
みなさまご無理なさらず、お過ごしください。
よい週末を₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑




