スライム進化!
※イラストは土日にチャレンジします!
お待たせします(。>ㅅ<。)
▽パトシリアの家の裏庭にやってきた。
▽訓練設備を貸してもらおう。
持ち主がいなくなった裏の土地を、買い取って広げたのだという。アネース王国で唯一無二の花屋の売上は好調で、パトリシアは少女にしてはなかなかの資産持ちだ。
パトリシアは売上はかなりあるものの、ほとんどを珍しい種の取り寄せなどに使ってしまううえ、試行錯誤の品種改良により失敗も多いので、純粋な資産としては一般人の範疇に収まっている。
「だから街中に家があってもダイジョーブってわけ。思い入れもあるし仲間も来やすいしな。もし私が大金持ちだったら、防犯のためにもアリスの家がある資産家通りに引っ越さなきゃいけなかったかもしれない」
と、パトリシアは話した。
玄関先にはドライフラワーが置かれている。
「あ、これ、ゴルダロさんたちが前にプレゼントしてくれた物だね」
レナがいうと、パトリシアは照れ臭そうに後ろ頭をかいた。
彼らは今、パトリシアの花屋アネース店を手伝ってくれているそうだ。ジーニアレス大陸の方にパトリシアが行くときには、冒険者としてのゴルダロパーティにクエスト依頼をするらしい。
▽訓練をしよう!
▽レベルアップするぞ〜!
「「おなしゃす! きびしめで♡」」
「私が相手だとそんなに厳しくはならないぞ。クレハもイズミも動くのすっげー得意じゃん。だからモスラも誘ったら?」
「そりゃ頼もしいんだけどさー。せっかくレナ充してるのになーって」
「我らパイセンだから後輩のこと考えてあげるわけよ〜」
「なるほどね。じゃ、私で足りなかったら、モスラにお願いしてみるかい」
「「わお!? 殺気だー!」」
「よーくーもー、私のことを実力不足って言ってくれたなあー!? 最近花屋のことばっかやってて鈍ってるの気にしてたんだよおー! オラオラオラ」
「「きゃーっ♪♪」」
▽パトリシアの みだれ突き!
▽パトリシアの 炎の剣!
▽クレハに熱が吸収された。
▽イズミに熱が冷まされた。
▽斬撃のみが向かっていく!
▽クレハと イズミは よく逃げる!
▽パトリシアの 挑発。
▽攻守交代!
▽クレハと イズミは ステゴロだー!
薄闇に、きゃあきゃあとはしゃぐ声がする。
訓練だからといってただ気を引き締めるのはレナたちには似合わない。
楽しい時間にできそうならば、楽しい思い出が多い方がいいから、ゆるーく過ごすのである。
クレハとイズミ、それぞれの、紅葉とか泉とかをキラキラの宝石みたいにして櫛で梳かしたみたいな髪が夜にも明るい。
「リーチが短いな」
「「パティお姉ちゃん手足ながーい! 我らもいっくぞー合体!」」
「というか融合な。来いクーイズ!」
たまに二人が混ざって、紫色になってみせれば、それはすんなりと闇に潜むみたいになじむ。かと思えば、レナを振り返るその瞳は金色と銀色だったりする。古代聖霊の加護がみせる彩りだ。
(ひゃ〜……。……ハッ、見惚れちゃってた。しまった、しまった)
レナは目を凝らして、二人をよーーく、観察する。
(どんなふうにしてあげられるだろう。あの子たちの進路を幅広く取れるように、特徴をできるだけたくさん見つけてあげたい!)
昔はギルドカードに流されるがままだったのが懐かしい。
今は、それよりも手段多く進化先を考えてあげられる。
だからこそ、どのように、というところを間違えばトンデモ進路にさせてしまうだろう。主人の責任が増したのだ。
レナはクーイズを見つめる。
(体も柔軟だし、火と水の特徴どちらもがあるって、なんでもできるかのようだけど、実は苦手なこともあるんだよね。……あ、足の小指をぶつけたみたい。ヒト型だと、実はちょっと目が悪いところがあるらしいんだよなあ)
クーイズについては、ルーカのような目がいい方針を目指すのはNGだろう。体の特徴に合っていないので伸びにくい。それを望んでいるわけではないなら、選ばないということを決めておこう。
それから、ラナシュ世界にその存在が「居る」ところをイメージしてみること。オーダーを世界に馴染ませるのだ。
(柔軟性と、薄く広がれば周りに溶け込めるところがスライムボディの強み。いざとなれば派手な輝きで目立つことによってラナシュ世界に存在を示して、世界に溶けてしまうことを防ぎたい。世の中で悪目立ちすればいいってもんじゃないはず……)
レナはイメージを組み立てていく。
そしてクーイズの容貌を振り返る。
(アンさんの手伝いをしてあげたいって言ってたんだ。モムたちを送り込むためにスライムキングになりたい。このモデルケースは、チョココとネッシーだね。王族魔物としてリリーちゃんも参考になるかも)
イメージは固まった。威厳をまといつつもきっと可愛らしいのがうちの子らしいのだ。
(ふふふ。想像だけですっごく可愛いぞ。……でも、思い出すなあ。きれいな魔物だからって、ダナツェラギルドの怖い人とかに追いかけられた時のこと。怖かったし、危なかった。そんなことで捕まったりはしないようにしてあげたい……。
……いや、それは私の願いすぎる。すぎることはあの子たちの気持ちを縛ってしまうよね。私はこれまでずっと助けてもらってた。クレハとイズミにはとくにだよ。今度は手助けをできるようにしたい……)
ここでふとルージュの顔を思い浮かべた。
レナは異色の魔物使いになろうとしていると彼女は語った。
魔物使いは、自分のために振るう力を魔物に求めることができる職業。
しかし魔物使いレナは、自分を契約してくれた魔物への恩を返そうとしているからだ。
どうしてそうするの?と困惑混ざりに聞かれたことがある。その時、そうしたいからですかね? とたしかレナは答えた。
あの当時は、レナ自身にもわかっていなかったから。
この気持ちをどのような言葉で表したらいいのか、というところが……。
今レナが思う答えは、「レナにとって従魔たちを大切にするというのはこういうこと。そうして大切にすることで、同じ気持ちを返してくれる従魔たちなのだということが分かったから」──である。
レナの真価とは、深い繋がりを作ることができる部分にあった。
深く深く、心の底につながりが生まれるのだ。
側にいなくても、遠くにあっても、それこそ死に別れていても。
レナが亡くなった両親を想う気持ちを持ち続けていたところが、異世界において、魂の真価であると判断されて、それにともない適正職業は魔物使いとなった。ラナシュ世界はレナとは魔物使いがふさわしいと自動的に処理して、その転移の術式においてはヒトが勇者であれと刻んだのであった。
──このあたりはまたしても、まだレナが気づいていない深淵の話。
<マスター・レナ。ルージュさんから伝言です>
(え。なあに?)
<”弱いスライム種が成長できるのは天候穏やかなミレージュエ大陸のほうだからこそですわ。ジーニアレス大陸ではモムのままほとんどが消えてしまいます。最適な進化環境ですし、さらには生まれ故郷に近いなんて、タイミングは完璧! 良き魔物使いライフを。きっとうまくいきますわ”>
(ありがとう! って伝えて!)
レナは胸のモヤモヤが晴れていくのを感じた。
無自覚のところで、ガララージュレのダナツェラ付近のできごとはトラウマとしてレナの心に何度も襲いかかる。
でも、いったん大丈夫そうだ。
何よりクレハ・イズミがあんなにもやる気になっているんだから。
目の前に二人の顔が。
「「うひょうっ」」
レナの方に走ってきたクレハとイズミは、それぞれが左右から首のところに抱きついた。
クレハは熱く、イズミは凍えるよう。
「熱っ! 冷たっ!」
「「ごめーん。混ざるね」」
紫色のクーイズになっていく。レナの頬を手のひらで包んでニコッとすると、ちょうどいいヒトの体温みたいだった。
「我らピンときたよ。そろそろレベルが上がったんじゃないかなあとね!」
「そうかもしれない……。はつらつとしててエネルギーが溜まっている感じがまさにそんな感じです。でも、キラ、レベルが上がりましたって世界のアナウンスが聞こえてこないよ?」
<ストライキしてるみたいですね>
「ストライキ!?」
<ああ、私の感覚からすればストライキのようなものなんですが、いわゆる処理落ちのようなことです>
「そうなんだ……」
<これについては自然災害のようなものだと思って下さい。あちらでいう、太陽フレアによって磁気が乱れるだとか、隕石が降ってきて氷河期が訪れるとか、そのように環境が大きく変わるタイミングのようなんですよ>
「ああ、その例えは、ちょっとピントが合ったかも」
「ほほう~。助かるねっ。ねーキラ先輩、我らのレベルや進化についてはわかるの? それもストライキ?」
<マスター・レナが巡り合った面々はその部門のスペシャリストに育っておりますからね!!>
ババーン!! と効果音が鳴る。
<この私キラが、観測者を務めます。ルーカティアスさんが命名者を務めて、マシュマロが学習者となるでしょう。シルフィネシアさんの風が世界を巡ってゆくように、自然の魔力にのせて私たちの力ははるかミレージュエ大陸まで作用しますよ。お声をかけていただければ必ずや進化と存在確率をお約束いたします>
「「よくわかんないけど、すごーい!」」
<ありがとうございます。そうなんですよね~、メタ的な視点で語らないとおかしな辞書登録をされてしまうので、現状、言葉が分かりにくくなってしまうんです。まあ私を信用してくだされば大丈夫です☆>
レナは、相談を見守ってくれていたパトリシアたちに断って、簡易型のテントのようなものを作ると、クーイズとともに中に入った。
難しい儀式をするので、周りの情報をシンプルにするためである。
電子タブレットを地面に置くとキラの姿がバーチャルで投影されて、その隣に置かれた鏡にはルーカの顔が映ってひらひらと手を振った。一応のようにふつうのオヤツのマシュマロも一つお供えされた。
クーイズは「我らが望むのは、みんなそれぞれに相談した通り」と緊張した声で言った。
ラナシュ世界にまだ生まれていないスライム種の王族を認めようとしているのだ。
それぞれの想像力が、ラナシュ世界からも提案されることのないまったく新しいイメージを生む。
シン──……と空気が静止した。
キラリとキラが光る。
<パンドラミミック[黙示録ver1]キラ。
これより記録を開始する。このものの可能性を掲示しよう。
光魔法[祝福の鐘]……これまでの功績をふまえて、称号[最優の王族]を授与する>
言葉をつなぐようにすぐにルーカが口を開く。
『ヒトの魔性を示されしネコマタヒト族・ルーカティアス。
これより証明を開始する。このものの命名をしてみせよう。
ギフト[魔眼]が見つけし未来……”クレハ・イズミ・クーイズにふさわしい存在意義を与えよう。種族はブリリアント・ジュエルスライム、旅路の経験と混ざりあい、新たなるジュエルスライム・キングと成る”』
マシュマロがあるので、そちらにも作業を振り分ける。
居るだけで場を整える効果があるから参加させたほうがよい。
<マシュマロが聞き届けたなり。えーとこうすればいいんだっけ……ポチッとな>
<(※文字で主張)確定ボタンはもっと丁寧に扱いなさいっ。さあマスター、締めて>
レナはにっこりとした。
「あなたたちのご主人様である魔物使いレナです!
これからあなたたちの未来を願うよ。幸せでありますように。
ギフト[レアクラスチェンジ体質]により……あなたたちが願うとおりのジュエルスライム・キングになることを、私も願います」
「従魔のクレハ・イズミでありクーイズは、良いジュエルスライム・キングになるからね……!」
クーイズに変化が訪れた。
紫色の髪がぐんぐん伸びて地面に流れてもまだ広がって、テントからも出てしまって、パトリシアの家の裏庭のすべてがきらめく紫色に染まってしまった。
それから伸びきった紫色が地面を滑るようにしてまたテントの中におさまり、とろけてぐにゃぐにゃしていたスライムボディが、ヒト型を形作った。
レナよりも年上のお姉様かお兄様のような、大人びた姿のクーイズが見下ろしていた。
スライムボディにはいつでもなれる。
チョココのようなヒト型に近しい姿を先に想像したのであった。
「わたくしが新生クーイズで御座います」
「そういう感じ!?」
「にゃっはっは。そんなんじゃないぜ! 我らはいつまでも我らだし、けれどやりたいことをやれないままは嫌だから、力はとても強くなって、その力でレナの役にも立ちたいなあって思っている、良いスライムだよん!」
スライムの粘性で地面がぬかるんでしまったのでテントの支えの部分が内側に倒れた。シートが引っ張られて、羽化する蝶々が翅を広げるかのようにシートがひらひらとする。
モスラが「なんだか懐かしい気持ちになる」と言い、
キサがうっとりとして、ミディは「キレーイ!」とはしゃいだ。
背が高いクーイズは華やいで微笑んで、そのまましゃなりと一歩前に踏み出そうとして、しかし足首からぐにゃりと崩れてしまい「「おっとっとぉ!?」」
存在が分かれそうになったり、またくっついたり、グロテスクでありながら鉱石の美しさが覗き、たいへんな事態になってしまった。
<ひーん、情報処理でオーバーヒートしそうですううう>
『キラが耐えているうちに頑張るんだレナ! こう、肩を貸してあげるんだ』
「クーイズが3メートル越えのヒモみたいになっちゃってるけど、どうすれば!?」
『綱引きの準備みたいに背負うとか……ああそういう感じ!ほらだんだんとクーイズの体が安定してきた。今日は一歩も動かさないほうがいいくらいだろう。存在確定するまでちょっと夜更かししてほしい』
「スパルタですルーカ先生!」
『僕はどちらかといえばモスラほど甘くないんだよね。君ならできるよご主人様。ファイト。それじゃまたね』
「やってやろーじゃんですよおおおお」
レナが側にいるほどクーイズがラクになるというならば。
レナはご主人様としてふんばり、キラは情報処理を頑張り、夜が明ける頃にはクーイズの存在はだいぶ固定されて、やすやすとクレハとイズミに分かれることすらも自在になった。その場合は少し幼い見た目になる。
▽クレハとイズミは 進化した!
▽【ブリリアント・ジュエルスライム】→【ジュエルスライム・キング】
▽さらにモムを生み出せるよう 練習をしよう!
読んでくれてありがとうございました!
ちょっと用事で出掛けてきます!
今週もお疲れ様でした。
よい週末を₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑




