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クジラ激闘

 


 ▽巨大クジラを 補足した!×1


 ▽レナの指示 「船内防御体勢!」


 ▽クーイズが シートベルトになった。

 ▽アリスを パトリシアに託した。


「従魔のみんな、いっくよー!」


(ステージでも始めるつもり? この始まり方、いいかも)

「なぁんか商売のこと考えてるだろアリス? 緊張感持てよな。私が見てるから行ってこい、レナ」


「はいはい。どわっと、クレハとイズミ、私が倒れそうになったらスライムボディ膨らませて受けとめてー! そうそう背中のところで膨らんで、そしたらバランスボールみたいに反発して、はいっ元どおりの立ち姿」

『『ご主人様、カッコイイー♪』』


 ぼよーん、ポヨーン、と弾みながらレナは駆けていった。


((カッコイイ……?))


 パトリシアとアリスは首を傾げながら見送った。



 レナが甲板にやってくる。

 その後ろには、キサ、マダムミディ、モスラが付き添っていた。


 トンチキ金持ち令嬢と保護者御一行様か? と言いたくなるメンツである。


 けれどそんな常識(常識でもないが)は、巨大クジラの知識にはなかった。

 そこに備えられているのはあくまで海を我が物にするための技と本能と制御部分のみである。

 かなりの制度を誇りときには壁もすり抜ける特殊なソナーにより、船とその乗組員や、使われている魔法道具に至るまで、巨大クジラの頭の中には、まるで立体設計図のようなものが完成していた。


 たったこれだけのもの、いける、と本能は計算する。


 ──だから突き上げた。


 ──けれど舟底にイカが貼りついている。


 ──ここまでの流れを、怒りに呑まれながらもクジラは"思い返した。"


 この巨体ゆえ、戦闘経験は少ない。

 だからこそ貴重な戦闘の機会から学ぼうとしていた。

 超絶技巧のUターン、船の真正面に顔を覗かせる。


 一目見てやろうと思ったのだ。

 そうしたら逃げていくかもしれない、という気もあった。

 だって海の王者として作られた。

 そう生きなければ駄目なのだ!


 気迫によって海面が波打ったほどだ。

 [威嚇]はどこまでも波紋のように届き、まず半径数十キロの魚がパニックになって逃げ出した。あらゆる船が岸に向かって全速力で走った。


 しかしクジラが学ぼうとしたのはレナパーティ。学習などできるはずもなく。


 レナはくじけず膝もつかず、特別な赤の装束に身を包んで、鞭を掲げた。

 自らが戦うわけではない。やけにテクニカルに練られた魔力は、すべて従魔に送られた。


「スキル[伝令]──」


 主人と従魔のつながりがとぎすまされる。

 信頼と安心感。だから緊張せず全力を出せる。


「──モスラ、水力を風力で相殺!」


 返事の代わりに即動く。

 モスラはブレスレットを光らせて執事服を収納しつつ”天帝ヴィヴィアンレッドバタフライ”となる。

 コマが回転するように飛び、海上に現れ始めていた[うずしお]を消した。


「──ミディ、後方離脱」


 うずの抵抗もなくなった海面はミディの独壇場。

 イカの脚を思いきり曲げて、それから急激に伸ばす。魔力をまるで込めていない透明なイカスミバブルも追加したら、その発射力でなおスピードアップ。ミディなりの工夫だ。

 ものすごい勢いで遠ざかり、船体は衝撃に耐える。


「キサ、捕らえて!」


 ミディを追いかけてきていた巨大クジラ。

 その前に小さな泡が一つ……アサシンのごとく中に潜んでいたのがキサ。いつもとは違う体にぴったりと沿うスーツを着ていて俊敏に動く。[壮絶耐久]ギフトでミディにくっつきながら水圧に耐えた。そしてクジラを見てニコリ。[蛇睨み][魅了]からの「水魔法[クリスタロスドーム]」特別な水でクジラを包み[氷の息吹]で全て凍らせた。


「「完了」」

「なのヨー♪」


 海からざばあっとあがったキサとミディは水も滴るイイ女。

 空からは執事が隕石のように降ってきた。

 クレハとイズミがぷよぷよ踊る。

 なので、レナがポーズを決めたくなるのも道理だよネ!


 ▽きめっ☆


 船長室でダァンと机を叩く音がした。


「なにがなんなんだ!!??」


「ごきげんよう。船長の荒海体質への不安は取り除かれましたね。嵐が来ようが大丈夫な時は大丈夫なんです。船が頑丈なら冒険者がわりとなんとかしますから。Sランク専用海洋運行をスチュアート商会から商業ギルドにオススメしておきますね〜」


 アリスが営業をした。


 ▽嵐は去った。

 ▽空も晴れた。



 船員のすすめで貸切にしてもらった食堂で反省会。

 とはいえ、反省するところはまったくない。

 レナパーティの完全勝利である。


「復習はしておこう。私、レナパーティのリーダーの藤堂レナ。従魔たちに支持をして、脅威から船を守ってもらうことに成功しました。……と、報告書の冒頭はこれでいい?」

「”船を守ることが成功しました”または”船を守りきりました”でいいかな。レナお姉ちゃんの下についた子たちは運命共同体みたいなもの。この書き方だとレナお姉ちゃんと従魔のやりとりのようだから、代表藤堂レナさんとギルド員、という関係で交わされる文書にしあげるといいよ」

「さすが。あとは、うずしおが生じていたので風魔法で解決」

「うん」

「船が狙われていたので、巨大化した従魔に一時的に運んでもらった」

「うん」

「船が離れたから大規模な魔法でクジラを捕獲した」

「うん」

「約15分」

「うん」

「頷いてるだけでいいのかよアリス。レナは正直に書いてるけどさあ、これ信じてもらえるの?」

「えっ信じてもらえないの!? シヴァガン王国よりもヒト族の国の方が、報告書厳しい感じ?」

「まあそうだね。どちらも利用している人に聞いたことがあるけど、シヴァガン王国はそれぞれの技能が個人に生じるからどのように解決したのかは深追いしない。ヒト族の国では”共有の職業を高める”という理由から細かい報告が推奨されている。助け合いの雰囲気があるから隠してるとみられたら自分も助けてもらえないよ。

 でもレナお姉ちゃんの場合は、書いたところで、だけどね〜」

「それな」

「えー」


 レナは書く手を止めて、ペンを鼻と唇の間にのせて拗ねた顔をした。

 つん、とインクがついて、ほほに小さなホクロを作ってしまった。


 いわゆるドジをする少女を眺めて、船長はうなった。

 独り言のようにブツブツ呟き分析をしている。


「まったくわからん。信じられん。どうしてこのような技術者が今まで隠れていられたんだ? ミレーの港中心に噂を仕入れていたが、レナパーティがすごい!というような者はいなかった。箝口令でもしいていたのだろうか。それにしても目立つだろうが、これは! 海賊が求める宝のような力だ」


「もしもーし。だんだん声が大きくなってしまってますよ」


「ああ……すまないね。失礼した」


「身だしなみに気をつけていらっしゃるなら、無意識に出る言葉も気になさるかなーって思って声をかけました。こちらこそ無粋に話しかけてすみません」


「……藤堂レナ様、でしたな。それほど流暢にきれいな言葉遣いもできる、大きな力もある、それなのになぜ有名ではないのかうかがってもよろしいでしょうか? 興味ゆえなので無理強いはできないのですが……このままでは航海の話を強請られた時、嘘がつけずにそのまま伝えてしまうかもしれません。そちらの話を聞けば、口を塞ぐ理由となります」


「正直ですね。わかりました。それは……弱くて小さくて目立たなかったから、必然的にかな」


「はい?」


「みてもらったほうが早いかも。こうです」


 レナの指示で、クレハとイズミはぎゅっと体を縮こまらせてミニスライムの大きさになる。

 ミディはたくわえていた水分を放出すれば、体つきは小さくなる。

 キサとモスラは[体型変化]をしてみせた。それぞれ抱えられるサイズのラミアと蝶々となる。


 それをレナがぎゅっと抱えていると、女の子とぬいぐるみたちにしか見えない。


 冒険者パーティごっこ、が関の山だろう。


 船長は両手を挙げた。降参の印だ。

 まさかこんなスタイルの冒険者がいるとは思いもしなかった。海は広いし世界は深いのだ。


「わあ……お二人も体型変化を学ばれたのですね!」

「ノアちゃんも警備ごお疲れ様」

「いえ、手を出す間もなくて任せきってしまいすみません。もしヘルプが入ったら助けに入るつもりだったのですが……」

「うん。いざとなったらよろしくね」

「ところでこの戦闘の様子は報告させていただいてもよろしいでしょうか?」


 船長が「そういえばその確認でしたな。衝撃的な告白をされたのですっぽ抜けた」と自らの頭をコツンと叩いた。


「いいよー。ギルドの報告書にも書くしね。私たちはシヴァガン王国近郊で力をつけてからはまあまあ目立つこともしているから、噂が広まるのはかまわない。へんな称号が着くのはイヤだけどさ〜」


「「「引き揚げできましたー!」」」


 ▽船員が 現れた!×3


 凄まじいマッチョだ。と見ていたら、体がみるみるしぼんでいった。筋力を大幅アップさせる魔法を一時的に使っていたようだ。


 それとともに、船とともに生きてきた一族らしいスキルを駆使してクジラを船につなぐことに成功していた。引き揚げとは言葉のあやであって、船にあの巨大なクジラが乗ろうはずもない。氷にロープを通して、クジラの体が同じほうにたゆたうよう、波の流れをコントロールしているのだ。幸いにして極寒の海に浮かぶ氷のように、それそのものには浮力があった。


「「「……あのクジラどうしやす?」」」


「うーむ……アリス・スチュアート様はどう思われますかな」

「ここもまたレナお姉ちゃんの出番かなと。個性的な特徴の生物全般、扱い方に慣れているから」


 船長、船員、アリスがレナを見る。


「まあたしかにね。オッケー承りました」

「そうやって藤堂レナ様は魔物使いとして希少種を手に入れていたのですな。成る程」


 それはちょっと、とレナは苦笑して船長を止める。


「違いますよ。保護だけです。アリスちゃんが言う通り、”扱い方に慣れている”からというだけ。従魔契約は魔物と主人が同意するもの。そして私から魔物に望むものがなければ、従魔契約を持ちかけたりしません。これは魂につながりができるものなので、雇用関係以上の、そうだなあ、家族に近いほどの関係になるんですからね」


「なんと。たしかに家族全員を食わせていくのは大変ですからな」


 船長にとってはこの船、船員がともにそうなのだろう。

 うんうん、と頷くその仕草に深みがあった。

 いつも金欠。これから稼ぐ。


「というわけで、私が、面倒を見るまでやるね。クジラさんを確認しにいくよ〜」

『はーい!』というように、レナの腕の中で従魔が身動ぐ。


 後ろから見たら、レナが身一つで散歩しているかのような気軽さで、レナパーティはクジラの元に向かった。


 ▽クジラからはまだ殺気が漏れている。

 ▽クジラに会って 調べてみよう!






読んでくれてありがとうございました!


レナさんだけが工夫していた頃が懐かしいですね。レナさんは方針、従魔が工夫もできるようになってきました。


これからも楽しんでもらえたら嬉しいです!


引き続きよろしくお願いいたします₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑



今週もお疲れ様でした。

よい週末を!


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― 新着の感想 ―
[一言] 更新有り難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 アリス「……今、何時ですか?」 レナ「9時ら(クジラ)!」>鉄板ギャグ(投稿時間21:07)
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