港街グレンツェ・ジーニ
▽ [クエスト:グレンツェ中央海横断の船旅護衛]──
▽先行受注書で契約を交わしたよ!
▽のちにギルド扱いにすることができるよ。どちらにしよう?
▽あとで 対応が良かった方で!
レナがにこりと言うと、アリスがニヤリと口角を上げた。
現在、荷馬車で移動中。
「ふつう、こういうのでどーちーらーにーしようかな、なんてならないんだけどね? レナお姉ちゃん?」
ガタゴト、ガタゴト。……というほどのことはない。車輪はわずかに浮くという高級仕様だ。ゆったりと揺られている。
「いやあ、私たちも仲間が増えたからいろんな意思があるんだよー。それぞれの分野でルールは守ってるから大目に見て」
「私は大目に見ている方だよ。冒険者ギルドには困ったときのお助け屋さんたちに助けられているし、商業ギルドには取引でお世話になっているから、この大口取引の先はどちらでもいいんだよね。けれど、レナお姉ちゃんがひっぱりだこになっちゃうのを心配してる。そういうの苦手だったでしょ?」
「うん。ひっぱられた時に、思いやりがある方で契約しようかなって。あ、世間体は悪くならないかな?」
「そのくらいは大丈夫。ギルドの姿勢が問われるだけだよ。それにしても、ひっぱられるところまでは覚悟してるのね。覚悟が深くなったかも、レナお姉ちゃん。その後で従魔のみなさんが怒っちゃわないかも心配だよ?」
「みんなオトナっぽくなってるんだからね〜?」
「モスラは意外と取り乱して怒っちゃうかもって」
「アリス様!? ごほん、そこはあまり幼生扱いしないでいただけると……」
モスラが咳払いをする。
レナとアリスは、からかいすぎちゃったねと、クスリとして従者を愛でた。
調子を取り戻したモスラが「きちんと制御した怒りでトドメを刺します」というので、蜂みたいなことをしないの、とたしなめる。
レナの方針としては、そのあたりは法に任せたい。縛ってシヴァガン王国に放れば、妥当な罰を与えてくれるだろうし──。
レナたちは馬車に揺られる。
商品が入った荷馬車が連なるのはキャラバンといえそうな光景だ。
商人だからこその「ここを商品が通った」証明のためである。わざわざ船を使うのと同じ理由。
レナは(旅っぽいな)と思った。最近ではどちらかといえば騎乗による滑走だったから、余計に。
馬の尻尾もまったりと揺れる。
その馬たちは、魔人族になるまで至らなかった魔物たち。種族はパピーホースというらしい。まるで犬のようになつきやすく、従順な性格で多頭飼いに向いている。管理しているのは馬耳の政府所属魔人族だった。
『調子 良い 脚 軽い♪』
『いい天気 散歩気分♪』
『朝ご飯 美味しかった 良いものだった♪』
……というパピーホースの会話らしきものをレナが聞けたのは、アグリスタの主人になった影響だろう。
最近、レナパーティは魔王国選抜の魔人族たちに訓練をつける日もある。
そのときにはレナの”周辺にいる従属魔物を成長させる”というギフトの恩恵がうっすらと及んでいるらしいが……。
(調子がいいって。ただのラッキー? それとも、馬車を引いてくれてる馬たちも私の体質が効果を及ぼしてる? 私たちがまるで従えているみたいってラナシュの判定になっていたりして。振りまかないように気をつけないとなあ。でも別に悪いこととは思わないけど)
……と、レナが気を緩めると、
『走りたいな♪』
『走っちゃう?』
『走ろう!』
レナが鞭を構える。
「おおっとーー!? 馬たちが張り切ってるみたいだからみんな気をつけて! モスラ手綱のお手伝い、クレハとイズミ商品防御体制!」
『『あいあいさー!』』
▽ものすごい勢いで 馬車が走る──!
▽港街グレンツェ・ジーニに 到着した。
▽電車みたいだった。
▽予定よりもかなり早い。
依頼人アリスグループとレナは、ぐったりしながら馬車から降りる。
魔物たちはさすがの頑丈さで酔っていないようだ。
「……レナパーティに頼んでなかったら商品がどうなってたことか。お仕事完璧、ありがとう」
「う、うん。けど、コントロールできない曖昧さは困るな……。今後の課題かな……」
「コントロール?」
「アリスちゃん、あのね。懺悔きいて叱って欲しいことがあるの」
「フェチ目的ならお断り。コンプライアンス違反です。けれど、コンサルタント業務なら別料金で引き受けますよ。友達としての叱責なら無料だけど心配のぶん厳しくなるから覚悟して」
「ご飯おごるから友達扱いで、かつ優しめに〜」
「もー。しょうがないなあ」
▽グレンツェ・ジーニ港街 準高級レストラン(個室)。
▽シーフードランチを 堪能した!
▽アリスに 叱ってもらいました。
▽アリスは 頭を抱えた。
▽所蔵の魔道具コレクションから レナのオーラを隠すものを探してくれるそうだ。
▽クエストクリアで 手に入れよう。
▽レナの体質は 有名になるにつれ 拡大しているかもしれない。
グレンツェ・ジーニ港街をみんなで見てまわることに。
出港予定時刻までまだしばらくある。
モスラとパトリシアはレストランに行かず、キャラバンを引いて荷物の積み込みをしてくれている。
そこにレストランのお弁当を届けに行こう。
▽ストリートへ。
▽現地ならではの飲み物を買っていこう。
レナ、アリス、キサ、紫クーイズ、特大マダムミディのグループが歩く。
可愛い子揃いのため目立つのは必須。それならばマダムミディを2・5メートルにする! その迫力でほとんどは道を開けるように離れていくし、この港街には治安維持部隊が多くいるため、からまれたら助けを呼べばいい。
道中の証拠作りのため顔が分かるようにしておきたいアリス以外は、それぞれつば付き帽子を買ってかぶった。服装はシンプルなアオザイ風で揃える。白のなめらかな布地に赤のリボンタイ。
帽子の下から、なつかしいグレンツェ・ジーニの湊街をレナは面白く眺めていた。
帽子がキョロキョロとあちこちを向くので、面白がったミディがツンツンとつついたくらいだ。
「店がかなり入れ替わってるよね。この服を買ったお店も前はなかったのに。いろんなサイズ展開と珍しいデザインで流行モノって感じがする。なんか、他もそんな感じ? シヴァガン王国付近とはまた違うというか……なんて言ったらいいんだろ?」
「目の付け所がいいね、レナお姉ちゃん。”既製品が多い”ことが気にかかってるんじゃない?」
「あ、そうかも」
「ね。この既製品って、ミレー大陸の最新のものが入り込んでいるんだ。そればっかりってわけでもないはずだけど、このストリートはそう。それには政治的というか、環境的な理由があるの」
「えっ、難しい話……?」
「難しくはないよ。秘密の話でもないし。それはね、これまではバラバラだった各地の特産品や店の傾向をまとめるという動きにより、文化がすっきりと区分されて、認知されやすくなる。そうなればラナシュでまれに起こる”曖昧性によって消失・変質”という事態を防ぐことができる」
「!!」
レナが小さく拍手する。
アリスは優雅に淑女の礼をして見せてから、ちょっと照れてはにかんだ。
「そっかあ。ラナシュでの認知って大切だもんね。この世界の……というか国の王様とかはそんなところまで計算するんだね。すごい。王様が、っていうか商人の皆さんが?」
「んー、アネース国王から商業傾向の方針が出されたから、今言ってもらった流れでいいよ。商人だけではたどり着かなかったところだと思う。文化が分かれていた方が細かい商売はやりやすいからね。利益や自分たちの商売維持を考えると、わざわざリスクの高い統合事業をしようとは思えない。メールシステムのようなものが普及したら違うのかもしれないけどねー。
国王がそこまで進めたのは、最近の”暗闇”現象のせい」
「あ、あれか〜」
レナが、当時の緊張を思い出して肩を落とす。やれやれといった風だ。そうすると従魔がギュッと集った。
「対応おつかれさま。シヴァガン王国を手伝ってたんだよね。冒険者ギルドの調査によってこの現象が”ラナシュの乱れ”だろうとわかった、って、そこまでのことが断言されるならキラさんもいるレナパーティの活躍だろうなって私たちは思うもん。
”乱れ”は認知の乱れだろうって研究が進んでるの。
それなら認知をまとめてみようと国連が重い腰を上げたってわけ」
「国連になってるよ。うーんまだまだ知らないところって多いなあ。私たちが行くこともなく済んじゃう国もたくさんあるんだろうね」
「レナお姉ちゃんはけっこう引きこもるのも苦にならないみたいだしね」
「というか、レア従魔が安心して暮らせるようなところにたどり着きたいって、クレハとイズミを育てながら決めたのが当初の目的だったし。それを赤の聖地にしたいなって、まだ調整が不完全だから地盤を固めているところ。
従魔の誰かや、アリスちゃんみたいなお友達が、一緒にお出かけしようって誘ってくれたら私はどこにだっていくよ」
「きゃっ」
レナがアリスの手を取りキメ顔をすると、アリスはくねりながら照れてみせた。
二人は吹き出すように笑う。
「おうおうおう姉ちゃんたち、いいなあ遊ぼうぜ、俺たちも間に入れてくれよお〜!?」
▽荒くれ船員が現れた!×6
▽街の警備隊に引き渡しました。
▽周りには蜘蛛の糸がきらめき 船員たちが近寄ることはできなかった。
▽レナたちは 蜘蛛の糸を じっと見ている。
▽こそこそと ノアが登場した。
「やっぱりお気づきになりましたか? さすがですね」
「ノアちゃん。なにか爪痕を残すように言われてた? アリスちゃん、こちら影蜘蛛のノアさん」
「ご挨拶するのはお久しぶりです。シヴァガン王城ですれ違ったりなどしていましたね。もしかして”同乗するための挨拶を印象的に”などありましたか?」
「はわわ……」
動揺するノアに、にこやかに手を差し出すアリス。
「貴方方に助けていただきました。船上でも頼りにしてもよろしいですか?」
「は、はいっ。レナパーティの皆様が海上死しないように守るのが第一の目標ではあるのですが」
「海上死。そんなことになったらカルメンたち荒れるだろうからねえ」
「ええ。同乗させていただく身として、全体的な護衛の協力もさせていただきますとも。複数人、追加で乗せていただけないでしょうか? 姿は隠していますので」
「もちろん。心強いです。けれど万が一、私が断っていた場合は?」
「レナさんに相談したら乗せてもらえるだろうと思っていました。もしくは、”荷物に外来種の虫が張り付くなんてよくあることですよね”」
ノアも当然、たくましく育っている。
アリスとのノアは握手をした。仲良くなれそうだ。
「おおっとそこの激マブなお嬢ちゃ…………」
▽手を挙げた船員が 一瞬で消えた。
▽ノア自身にも 手出し無用の護衛がいるのではないだろうか。
▽ゴリゴリの護衛部隊が 同乗してくれることになった!
レストランのランチお弁当セットを、パトリシアとモスラに渡した。
それを食べているときに気配のない数人がするりと会釈して船に乗り込み影に潜んだ。
これから嵐になる。
青く澄んでいた空に、うずまくように雲が増えていく。
湊街放送が鳴り響く。
<近海に潮柱が確認されました。クジラ型の魔物がいる可能性があります。これから出航する船は各自注意して、ぶつからないように運航してください。船上で倒せる大きさではないため、くれぐれも攻撃をしないようにお気をつけください。刺激しなければ寄ってこない温厚な性格をしています──>
▽スチュアート商会の船が出航した。
▽グレンツェ・ミレーまでの海上護衛(護衛され)クエストをこなそう!
読んでくれてありがとうございました!
少し駆け足につめこむことになりました。
みんなの和やかな会話を聞くのは楽しいし、まわりの環境を眺めるのも面白いものですよね。新しい場所にいくといろんな景色が見れるので、あれもこれもと書きたくなるのでいつもより多めにお届けしています。
今週末、久しぶりに感想返信をさせてもらいますね!
お声を聞かせてくれてありがとうございます₍˄·͈༝·͈˄₎◞ ̑̑
今週もお疲れ様でした。
よい週末を!




